春闘、経営側が方針決定 改革の成果還元、労使双方の努力期待(日刊工業新聞電子版)

 2018年春闘における経営側の交渉指針がきょう決定する。今年は働き方改革が本格的に始まって最初の春闘。長時間労働の是正をはじめとする改革の成果を従業員にどう還元するか、労使双方の努力に期待する。

 経団連は16日の幹事会で、経営側の交渉指針となる経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)を了承する。23日の連合とのトップ会談を皮切りに各社の労使交渉がスタートする。

 18年春闘は開始前から異例ずくめの様相だ。経済の好循環とデフレ脱却には高水準の賃上げが不可欠と考える安倍晋三首相は、昨年秋に早々に3%の賃上げ率(定期昇給とベースアップの合計)実現への期待感を表明。これに呼応し、経団連は経労委報告で「3%」に言及せざるを得ない状況となった。

 政府が経済界に賃上げを促す“官製春闘”は5年連続だが、賃上げ率は鈍化している。3%台の賃上げ率は94年の3・11%を最後に実現していない。政権と経済界の攻防を前に「3%」の達成の行方に目を奪われがちだが、とりわけ今年は重要な論点がある。働き方改革に伴う時間外手当の減少分の還元策である。

 経営側もこの点を強く意識し、経労委報告で「時間外労働の削減などによる長時間労働の是正は働き方改革の一面に過ぎず、労働時間管理だけが目的化することがないよう留意しなければならない」と言及する。その上で時間外手当が減少した場合には、何らかの形で社員への処遇改善へつなげる方針を明らかにするよう求めている。

 残業時間の上限規制の趣旨を踏まえれば、社員の健康増進への助成や職場環境の改善などを有力な手法と挙げている。新たな手当の創設も選択肢となろう。

 これら方策は当然のことながら、各社が実情にあわせ採用するべきだ。労使自治の原則が貫かれるはずの春闘にまで政権が介入する昨今だからこそ、経営側の知恵と努力で働き方改革とデフレ脱却を確実なものとし、経済界の面目躍如としたい。

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政府、ものづくり日本大賞の受賞者発表(日刊工業新聞電子版)

■内閣総理大臣賞に24件

 政府は15日、突出した技術や技能などをたたえる第7回「ものづくり日本大賞」の受賞者を発表した。内閣総理大臣賞に日立製作所やJFEスチールの研究など24件、71人を選出。このほか、経済産業大臣賞、特別賞、優秀賞の受賞者51件、244人、3団体も決めた。第4次産業革命への対応、地球温暖化など社会課題に向き合う取り組みに着目。IoT導入などを促す経済産業省の戦略「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」に通じる案件も選んだ。

 日立の受賞案件は「世界最高性能のIoTセンサー」がテーマ。2・5ミリメートル四方と小型ながら、従来比2万5000倍の高感度で計測できる。機械、医療、建築分野などをIoT化できる技術として期待される。

 JFEスチールは、二酸化炭素(CO2)排出を大幅削減できる製鉄技術が評価された。同技術で製造プロセスを改善し、数百億円規模のコスト削減も達成したという。

 今回は、既存の製造業の枠にとどまらず事業展開する企業を選出する「ものづくり+(プラス)企業」枠を新設した。IoTや人工知能(AI)を用いライン監視サービスを提供するi Smart Technologies(愛知県碧南市)などが対象となった。中小企業発のIoTビジネスを創出する同社の取り組みは、CIの先進事例としても注目される。

 内閣総理大臣賞は22日、経済産業大臣賞と特別賞は2月5日に表彰式を開く。ものづくり日本大賞は、経産省と国土交通省、厚生労働省、文部科学省の4省が連携し2年に1度実施している。

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富士フイルムHD社長兼COO・助野健児氏「コア育成分野へ積極投資繰り出す」(日刊工業新聞電子版)

―2019年度までの3カ年中計の2年目に入ります。不適切会計問題の余波は。
 「富士ゼロックスはオセアニアでの人材刷新の影響で出遅れてしまい、足元は計画を下回っている。半面、富士フイルムはインスタントカメラや体外診断システム、半導体材料などが好調で、各事業がしっかり力を付けた感触。実は写真フィルム市場の消失という危機を乗り越えられた裏には、富士ゼロックスによる利益面の支えがあった。今度は富士フイルムが支え、全体で成長していく」

―前中計では最終年度に世界情勢が大きく動き、計画未達となった経緯があります。
 「外部環境がどう変わろうとも、それを補えるだけの“現場力”を磨き上げてきた自負がある。現中計で掲げる営業利益2300億円という目標は絶対にやり切る覚悟だ。18、19年度はミラーレスカメラやバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)、半導体材料といった成長を加速させるべき分野、それに医薬品・再生医療のような将来のコアに育成する分野への積極投資を繰り出していく」

―ヘルスケア領域では医薬品・再生医療の黒字化が課題です。
 「現中計では、ヘルスケア領域で19年度に営業利益400億円を目指している。そこには当然、早期に医薬品・再生医療を黒字化するという大きな柱がある。ただ医薬品事業というのは時間を要するので、なかなかリターンを得られない。そこで独立させたのが、バイオ医薬品と低分子医薬品のCDMOだ。迅速な意思決定で経営資源を投入し、短期間で収益に寄与する仕組みを整えたつもりだ」

―素材メーカーでは検査データの改ざんが相次ぎました。
 「一瞬を切り取る写真の性質上、フィルムに欠陥は許されない。私自身、入社直後から上司に『我々は信頼を売っているんだ』とたたき込まれてきた。その“DNA”は今も根底で強く息づいていると感じる。当社の場合は商材のわずかな不具合が性能に直結する事情もあるだろうが、品質保証に対してはやり過ぎるくらい徹底する姿勢で臨んでいく」

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公道走れる電動アシスト付き人力車 府中技研など5社が開発(日刊工業新聞電子版)

■車夫の引く力、リニアアシストセンサーで検知

 府中技研(東京都府中市、乙津昇社長)など5社は、公道でも走れる電動アシスト付き人力車を共同開発した。電動アシストによって従業員の体力に依存しないサービスを実現できる。えびす屋の屋号で人力車を使った観光事業を全国展開するベリープロジェクト(京都市右京区)をメンバーに加え、実用性を高める。今春に実証実験を始める。

 プロジェクトは府中技研とベリープロジェクトのほか、小川優機製作所(横浜市保土ケ谷区)、高山自動車(東京都狛江市)、システムクラフト(東京都立川市)が携わる。電動アシスト付き人力車の導入により、女性や高齢者など車夫の幅を広げ人材確保につなげられるほか、これまで人力車が参入できなかった坂道の多い観光地も開拓できる。10月までに試作を終え、販売や量産化に向けた事業化を目指す。

 電動アシスト付き人力車は、開発したパーツを既存の人力車に組み込み導入コストを抑える。車夫の引く力をリニアアシストセンサーで検知し、モーターや減速機が入った駆動機構部がスムーズな移動をサポートする。登坂能力は6度で、乗車定員2人。下り坂用にブレーキも備える。プロジェクトリーダーで府中技研会長の波多野和明氏は「東京五輪・パラリンピックの時には量産化し、売れる値段の人力車を走らせたい」と意気込む。

 宅配便やリヤカーなど、荷台に積載物を乗せて引く仕事をアシストするさまざまな支援機器としての応用も検討する。同プロジェクトは東京都立産業技術研究センターの東京都ロボット産業活性化事業の公募型共同研究開発事業に採択された。

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飲食店の倒産件数が過去最多、増加件数は大阪府がトップ(帝国データバンク)

 人手不足問題で注目を浴びる業界のひとつとなっている外食関連業界。流行のスピードは速く、競争相手が数多くひしめく中、倒産動向はどのように推移しているのだろうか。帝国データバンクは、2000年~2017年の外食関連業者の倒産動向(※)について集計・分析した。

※ 飲食事業を主業とする事業者(法人・個人事業者)で、負債1000万円以上・法的整理のみを対象

2017年の外食関連業者の倒産は707件、業態では「酒場・ビヤホールが」最多

調査結果(概要)

1. 2017年の外食関連業者の倒産は707件となり、前年比で150件増加(26.9%増)。過去最多となり、2000年(147件)比で4.8倍となった。負債額は359億1900万円となり、前年比91億2400万円増加(34.1%増)となったものの、2000年以降の18年間でみると5番目に小さい水準となった

2. 707件を業態別にみると、居酒屋や焼鳥屋、おでん、もつ焼屋、ダイニングバーなどを含む「酒場、ビヤホール」が133件(構成比18.8%)で最多。態様別では「破産」が677件(構成比95.8%)、負債規模別では「5000万円未満」が573件(同81.0%)、都道府県別では「東京都」が132件で最多。前年比増加件数は「大阪府」が最多となった

今後は「人手不足」を要因とした倒産増加も懸念される

 2017年の外食関連業者の倒産は707件となり、過去最多となった。707件のうち、623件(構成比88.1%)の倒産主因が「販売不振」となっているが、今後は人手不足を要因とした倒産増加が懸念される。人手不足問題の深刻化に伴い、なかでも多店舗を展開する飲食事業者においては、人件費高騰に伴う収益悪化、人口減少エリア店舗での売り上げ減少、店舗数維持が困難となることでの売り上げ悪化など直面する課題は増加するだろう。また、個人事業者においては、代表者の高齢化に伴う休業、廃業などの増加も予想され、引き続き動向を見守る必要がある。

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スマホアプリ「カレログ」がプライバシー問題で話題、開発元のマニュスクリプトが破産(帝国データバンク)

 (有)マニュスクリプト(TDB企業コード:133004132、資本金300万円、東京都中野区東中野4-4-5、代表三浦義則氏)は、1月5日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 破産管財人は齋藤理英弁護士(東京都港区芝公園3-1-4、齋藤綜合法律事務所、電話03-5776-5921)。債権届け出期間は2月2日まで。

 当社は、1999年(平成11年)3月に映像・出版関連事業を目的として設立された。ビデオ制作会社や出版社の下請業者として、DVDやインターネット動画を主体とした映像の企画・撮影・編集・制作のほか、出版物の企画・編集・制作を手がけていた。

 自社での開発も手がけ、2011年には交際相手などの現在地情報やスマートフォンのバッテリー残量、アプリケーションの一覧、通話記録などをリアルタイムで閲覧できるスマートフォンアプリ「カレログ」をリリースしたことが話題となり、2012年10月期には年売上高約5800万円を計上していた。

 財務面は債務超過状態が続くなか、「カレログ」がプライバシー保護の観点から問題視され、総務省からの指摘もあり2012年10月に同サービスを終了。以降は、同年9月にプライバシーの侵害に抵触しない工夫を施した、目的地到着お知らせアプリ「カレピコ」のサービスのみを提供していた。

 負債は現在調査中。

全国217万台・年間収集距離122億km 日常のホンダ車が街づくりを変えている事実(日刊工業新聞電子版)

■プローブデータ、自治体対策に貢献

 ホンダはビッグデータを使って、安全な社会基盤作りを支援する取り組みに力を入れている。カーナビゲーションシステムで収集した車両走行情報(プローブデータ)を元に、交通情報の高度化を実現。収集データは自治体などにも提供し、地域の交通安全対策や災害時の救済支援につなげるなど、活用範囲を広げている。

 ホンダは2003年に、プローブデータを使ったカーナビシステムを自動車メーカーで初めて開発。車の速度や位置情報を収集し、「道路交通情報通信システム(VICS)」情報と合わせ、渋滞予測精度を向上させた。

 10年には自社のスポーツカー「CR―Z」向けに、プローブデータを活用した最新の交通情報や天気予報を確認できる無料データ通信サービスを開始。「データ取得の障壁がなくなった」(モビリティサービスグループの菅原愛子チーフ)ことで、データの収集量を増やすことができた。

 その後もサービス適用車種を順次拡大し、現在は全車種に対応している。登録車両は217万台に上り、データの年間収集距離を11年の10億キロメートル未満から、16年には122億キロメートルと大幅に伸ばした。

■震災発生翌日、通行実績情報マップ公開

 収集量が飛躍的に増えたことで、データ活用の領域が拡大。11年3月の東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害を与え、被災地への道路も一部遮断された。

 そこでホンダは、プローブデータから災害発生後も通行可能な道を表示する「通行実績情報マップ」を震災発生翌日に公開。被災地の避難・救援ルートを見つけ出すための支援ツールとして大きな役割を果たした。

 もともとは、04年に「新潟県中越地震」が発生した際、防災推進機構から、災害時に通れる道路の把握のためにプローブデータ活用の要望を受けたことがきっかけだ。両者で共同研究を開始し、07年の「新潟県中越沖地震」の発生翌日に公開できた。利用者からは「非常に助かった」という声や「マップのおかげでスムーズに移動できた」との評価を得られたという。

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商社、農業ドローンで“種まき” データ収集競争に突入(日刊工業新聞電子版)

■スカイマティクス、生育解析専用ドローンも

 商社が農業用ドローンを開発するベンチャー企業への出資などを通じて「スマート農業」の実現に向けた取り組みを強めている。三菱商事は日立製作所との共同出資会社を通じ、農薬を散布するドローンなど販売を推進。伊藤忠商事は既に出資していたドローンベンチャーへ増資したほか、住友商事も2017年出資したベンチャーを通じて新たな精密農業の実現を狙う。情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業は、深刻化する担い手不足解消のためにも期待されている。

 三菱商事が16年に日立製作所と共同出資で設立したスカイマティクス(東京都中央区、大口昌芳代表取締役最高経営責任者〈CEO〉)は、同じく三菱商事が出資するドローン設計・製造のプロドローン(名古屋市中区)と協力し、農薬散布ドローン「はかせ」、作物の生育状況を解析するドローン「いろは」を開発。17年7月から農業法人や自治体などに販売を始めた。

 ドローンの販売を始めて間もないスカイマティクスが目指すのは、作物や品種などのデータ収集だ。データを人工知能(AI)で解析すれば、作況の事前予測などと併せて農薬散布のタイミングを決めることが可能になる。また、これまでは経験や勘に頼りがちだった作物の病気の判断や薬剤の散布も、ドローンが自動で実行できるようになる。

■エンルート、半数が農業向け 多用途対応で実績

 農家が農薬を散布する時期は限られており、農薬散布ドローンは常時必要なツールではない。このためスカイマティクスでは、単なる機材の販売だけでなく、散布のタイミングや薬剤の選択なども自動化したトータルのサービス提供を目指している。

 スカイマティクスの渡辺善太郎代表取締役最高執行責任者(COO)は「いかにデータを集められるかが今後の参入障壁になる」と話す。先手を打ってドローンを販売し、そこから得られる情報でサービスを拡充。競争力を高める戦略だ。

 伊藤忠商事が16年に子会社のスカパーJSATホールディングスを通じて出資したドローン開発・製造・販売のエンルート(埼玉県朝霞市、瀧川正靖社長)は、多用途に対応する汎用性の高い機材の開発を進め、すでに約1000台を販売するなど国内のドローンベンチャーの中では実績がある。伊藤忠はさらなるドローン市場拡大をにらみ、17年10月に9億円を増資。エンルートは新たな機体の開発などに生かす。

 エンルートがこれまでに販売したドローンの約半分は農業向けだ。現状、同社のドローンが最も多く活用されているのが、農業分野ということになる。エンルートの瀧川社長は「ドローンはそれまでの無線操縦ヘリなどに比べると安価で機動性が高く、散布のスケジュールもコントロールできる」とメリットを強調する。

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日本を代表する草分け的スキー雑誌 『月刊スキージャーナル』 を発刊、スキージヤーナル(東京都北区)が破産を申し立てられる(帝国データバンク)

 スキージヤーナル(株)(TDB企業コード984293998、資本金1000万円、東京都北区滝野川7-47-3、代表長橋好美氏)は、元従業員ら21名から1月9日に東京地裁へ破産を申し立てられ、受理されたことが判明した。

 元従業員ら21名の代理人は関秀忠弁護士(東京都千代田区麹町2-3、弁護士法人ほくと総合法律事務所、電話03-3221-9873)。

 当社は、1984年(昭和59年)4月、前身会社である(株)スキージヤーナルの事業多角化の一環で設立された。その後、91年に前身会社はスキー場開発・経営、スキー・ゴルフイベント等の事業を行い、当社が同社の出版活動を正式に承継していた。

 『月刊スキージャーナル』『月刊剣道日本』を中心とするスポーツ関連の出版社で、書籍として100点を超えるスポーツ関連の実用書や全日本スキー連盟著作の教本のほか、DVDの販売なども行っていた。書籍の中の教本は全日本スキー連盟のオフィシャルブックとなっていた。

 主力の『月刊スキージャーナル』は昭和41年創刊で、ウインタースポーツであるスキーの月刊誌ということもあり、当時としては画期的であった。ウインタースポーツ誌の草分け的存在として、一般・競技・バックカントリースキーヤーなどに根強い愛読者を抱え、スキー雑誌としてはオピニオンリーダー的な存在として知られ、2004年5月期には年売上高約11億2300万円を計上していた。

 しかし、スキー・剣道とも一時のブームが去っていたうえ、インターネット、スマートフォンなどのメディアの多様化で紙媒体の位置づけが低下するなか、当社の売り上げも減少に歯止めがかからず、2017年5月期の年売上高は約4億4100万円にまで落ち込んでいた。加えて、2期連続で経常段階から赤字計上を余儀なくされ、財務面は債務超過に陥っていた。この間、金融機関から借入金の元本返済猶予を受けるなどして凌いでいたが、取引先に対する支払いも遅延するなど資金繰りは限界に達するなか、12月29日には『月刊スキージャーナル』『月刊剣道日本』の主要2誌について、2018年1月号をもって休刊とすることを公表。こうしたなか、従業員に対する給与の遅配が続き、年明け以降、実質的な事務所閉鎖状態に陥っていたうえ、代表による債務整理の動きに進展が見られなかったため、今回の措置となった。

 負債は2017年5月期末時点で約4億1900万円だが、その後に変動している可能性がある。

フィンガーライム 新かんきつに挑戦 1キロ数万円 鹿児島 後藤さん(日本農業新聞)

 鹿児島県宇検村に農業で新規参入した後藤恭子さん(41)は、インターネット上などで話題になっている新かんきつ、フィンガーライムの経済栽培に挑戦している。色や香りに魅力を感じ、最初は国内業者から苗を入手した。原産国のオーストラリアからも多様な品種を直接入手し、14品種を栽培する。昨年初出荷し、1キロ当たり数万円の高単価で販売した。タンカンや「津之輝」に続く奄美大島の新かんきつとして産地化を目指す。

 教師として赴任した後藤さんは同村が気に入り、2013年に就農した。農地を借りて、約1ヘクタールでタンカンなどのかんきつ、アボカドなどを栽培している。フィンガーライムはテレビで見て興味を持った。

 「タンカンに代わる適作物を探していた。レストランではすしの上に載せたり、サラダのトッピングに使っている。チーズケーキの中に入れてもおいしい。かむと酸味が出てきて、もう一段おいしさが増す」と説明する。

 苗を13年に1本、14年に2本入手し植えた。15年は100本以上植えたが雪で枯れた。だが、諦めなかった。15年6月オーストラリアに視察に出掛け、先進地の品種や栽培法を学んだ。「エマ」「アルストンビル」「クリムゾンタイド」などの穂木を16年に輸入し、台木用のカラタチとシークワーサーに接いで苗を育て定植した。

 後藤さんは「香りも色もバラエティーに富んでいる。夏は爽やかな品種を出荷し、クリスマスには皮が黒で果肉が赤いものなど、季節に合ったものを出荷したい」と夢を膨らませる。

 昨年夏、1果7グラム程度の果実を1キロ弱収穫し出荷。農園のホームページで紹介したところ問い合わせが入り販売に苦労はなかった。東京都内のレストランに出荷した。

〈ことば〉 フィンガーライム

 オーストラリアの亜熱帯林に自生しているかんきつ。親指状の細長い果実を半分に切ると、キャビアに似た、直径1ミリ程度の丸い粒状のさじょうが出てくる。果皮は緑、紫、黒、赤、黄色など色とりどりで、果肉も緑、黄、ピンク、赤、白など多様。高級食材として流通している。

日本農業新聞

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