障がい者、車の運転で社会復帰-ホンダの40年超挑戦(日刊工業新聞電子版)

全国7カ所施設で安全教育

 ホンダの障がい者向け安全運転支援の活動が広がりを見せている。1976年に障がい者向け運転補助装置を開発・提供開始したのを皮切りに、今では疾病や事故で障がいを負った人の運転再開に向けた運転評価や安全運転指導にまで領域を拡大。障がい者自身の安全・安心な移動につなげることで、自立を後押しする取り組みとしても注目される。

 「少し右に寄ってきたので気をつけて」「車線を意識して走りましょう」。
 12月初旬の平日の昼下がり。東京都内で自営業を営む関根義寛さん(57)は、ホンダが運営する交通教育施設「レインボー埼玉」(埼玉県川島町)の運転コースで、施設の指導員の助言を聞きながら慎重にハンドルを握っていた。

 関根さんは2月に脳梗塞で倒れた。懸命のリハビリを経て日常生活を送れる状態まで回復したものの、今も注意障がいと左半身麻痺(まひ)の症状が残る。社会復帰を目指してリハビリに励む中、「復帰したらハンドルを握ることが必ず出てくるので、もう一度運転に挑戦しよう」(関根さん)との思いが強まり、実車を使ったホンダの運転訓練などの受講を決めた。

 ホンダは安全運転の普及を目指し、1970年に専門組織「安全運転普及本部」を設立。現在、全国7カ所に設けた交通教育施設で企業や一般者向けの安全運転教育を実施している。また障がい者向けには、運転操作の反応や認知・判断の適応性を測る運転シミュレーション装置を12年から病院向けに販売しているほか、13年には交通教育施設で車両を使った現状の運転能力把握と課題確認のための実車訓練を始めた。

 疾病などで体に障がいを負った場合に運転復帰するには、病院側が発行する診断書を提出した上で、運転免許試験場で臨時適性検査を受ける必要がある。しかし診断書は日常生活の基本動作を評価するものであって、病院側では運転能力の評価ノウハウを持っていないのが実情だ。

 ホンダはシミュレーション装置や実車訓練を、障がい者の運転への適応性や能力の把握につながる評価支援手段と位置づける。安全運転普及本部開発普及課の塚本末幸チーフは「運転の課題を見つける機会を提供していきたい」と狙いを語る。また実車訓練の受講後にホンダの車両購入につながったケースもあるなど、同社のブランドイメージや販売にも貢献している。

 関根さんのように脳機能障がいを抱える人々は全国で50万人に上り、過去3年間、障がい者全体の訓練希望者数の約7割を占めているという。塚本チーフは「疾病やスポーツなどの事故により、母数(希望者数)は今後も増える」と予想する。

 ただ訓練場所はホンダの教育施設7カ所だけでは足りず、受け皿の整備・拡充は課題の一つだ。そのためホンダでは、運転コースや指導員などのリソースを持つ教習所に訓練実施の提案や訓練ノウハウの提供に取り組んでおり、既に青森県と長野県では実施し始めた教習所も出ている。また、運転能力評価方法の確立を目的とした病院との協力関係作りも進めている。

 専門機関を含めた地域での連携体制を今後どう広げていけるかが、安全・安心な自動車社会の実現に向けたカギとなりそうだ。

水害時の太陽光発電、感電するか? NEDOが水没実験(日刊工業新聞電子版)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と太陽光発電協会、奥地建産(大阪府松原市、奥地昭統社長)は、水害時の太陽光発電システムの感電リスクを把握するため、太陽光発電システムの水没実験を実施したと発表した。実験による知見をもとに、2017年度末までに水害時の点検のほか、撤去における安全性の確保や対策の指針策定を目指す。

 実験は、11月28日から4日間、山梨県北杜市の太陽光発電所横の調整池で実施した。22枚の太陽光発電パネルを実使用に近い状態に組み、水没させた。屋外自然環境での大規模な水没実験は初めて。

 水没時に発電が継続した場合を想定し、発電設備から水中への漏電状況を測定した。実験結果を解析し、水中での感電リスク、水没後の設備の状態を定量的に調べる。大雨などで太陽光発電システムが水没、浸水すると絶縁性能が低下し、システムに近づいたり接触したりした場合、感電する危険がある。

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1勝44敗―筑波大・相山研究室 最強の“ジェンガ”専用ロボ VS 人間(日刊工業新聞電子版)

■多軸ロボに“引き抜く”技

 1勝44敗―。多軸ロボットが人とジェンガの引き抜きで勝負した結果だ。筑波大学システム情報系知能機能工学域の相山康道教授の研究室は、視覚と力覚を使って多軸ロボットでジェンガのブロックを引き抜く技術を開発した。だが、人と勝負すると勝てない。少しでも人に近づけるよう、日々研究を続けている。

 相山教授の研究室は、ロボットの手に当たる部分を制御するマニピュレーション・システムを研究している。ロボットにとって、持つ対象物が何処にあるか分からない、場所は分かるが誤差があるといった場合の作業は困難を伴う。そうした難しい作業を多軸ロボットに行わせようというのが大きなテーマだ。

 ロボットにとってかなり難しいのが、ブロックの引き抜きだ。積み重なったブロックのタワーから下のブロックを抜くとき、上からブロックの力がかかり、無理に力をかけると他のブロックがついてきて倒れてしまう。

≪ツメ・手首にセンサー、視覚と力覚統合≫
 相山教授らは、ブロックをつまむツメに3次元力覚センサー、手首に6次元力覚センサーを装着。カメラとレーザー距離計による計測データも加え、引き抜きたいブロックにかかる上からの力を算出して、タワーを崩さず引き抜く技術を開発した。ロボットのアームで2カ所からカメラで撮影。計測した配置を基に力学モデルを作成して計算する。そのデータから引き抜き候補のブロックを見つけて距離を測りつつ、引き抜く。視覚と力覚を統合して器用な操作を実現した。

 相山教授によると、ロボットだけでも、ロボットと人が交互に引き抜いても「10数個から20個は引き抜けた」と言う。だが、抜いたブロックを上に積み上げていって人と対戦すると負けばかり。「さらに器用にするにはもっと戦略が要る」と苦笑する。

 ロボットは最近、AIの進化で画像や音声認識のほか、データ分析といった頭脳の部分が進化した。一方で、手や脚は物足りない状況が続く。相山教授も「例えば食品工場で使う場合、シートを敷くとか、分量別に分けるとかものすごく大変。コストも考えると10年はかかる」と、動きの部分で社会に役立つには時間がかかるとする。

 だが、ロボットの活躍の場を広げたいとマニピュレーションの研究を地道に続けていく。将来は、研究室の知見を生かしてシート状の対象物を折りたたむことや、ケーブルを穴に差し込むといった「柔軟物をロボットで上手に操作したい」(相山教授)としている。

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アイダエンジ、EVモーター用プレス機増産(日刊工業新聞電子版)

■生産能力1.5倍、EVが設備需要を喚起

 アイダエンジニアリングは電気自動車(EV)のモーター部品を製造するプレス機械の生産能力を現在比1・5倍に引き上げる。近く正式決定し、2018年度に津久井事業所(相模原市緑区)で増産体制を整える。これとは別に中国での生産も検討する。同プレス受注高は17年度に16年度比1・5倍の60億円になる見通しだ。長期で拡大基調が見込めるため、能力増強を判断した。EVが設備需要を喚起している。

 アイダが増産する大型高速プレスは、モーターの基幹部品であるモーターコアの製造に向く。津久井事業所に約10億円を投じ、受注高で110億円規模の生産能力を確保する。同事業所で生産している小型プレスは、マレーシアへの生産移管を進める。

 大型高速プレスの販売は急伸している。アイダは17年度に16年度比5割増、18年度に同8割増の受注高72億円を計画した。18年度計画で現在の生産能力に達する見込みとなり、以後の成長分を今回の能力増強で当面補う。

 同社は中型、大型の高速プレスの国内シェアが約6割で首位級とみられる。中でも加圧能力300―400トンの大型は日本での競合が少ない。

 モーターコア以外にもEV関連の受注が続いている。米テスラからは14年に、今年は中国ベンチャーのフューチャーモビリティ(FMC、南京市)から、それぞれ車の外板を形作るプレス成形ラインを受注した。

 欧州や中国、インドなどでEVシフトが進み、自動車大手はEVの増産計画を掲げている。これに伴い、EV用モーター関連の部材各社も増産に動く。モーターコア製造では最大手級の三井ハイテックが19年に岐阜県に新工場を稼働させる。黒田精工も国内で増産計画を進めている。

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CO2濃度別 稲収量予測 高精度に 温暖化対応活用へ 農研機構(日本農業新聞)

 農研機構は7日、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度による稲の収量変化を高い精度で予測できるようになった、と発表した。世界9カ国18機関と協力し、従来の複数の予測法による予測値を平均すると、実際の実測値に近くなることが分かった。気候変動に対応した農業政策や技術開発には作物の正確な収量予測が欠かせないため、国内外や国際機関などに活用を提案していく考えだ。

 地球温暖化を引き起こす大気中のCO2は化石燃料の燃焼などで年々増えている。濃度は1960年頃に320ppmだったのが現在400ppmに増加。CO2が増えると一般的に作物は増収するが、条件によっては下がる場合もあり、食料生産への影響を見るには正確な予測が必要となっている。

 農研機構と世界の研究機関は、それぞれ開発した16の予測法を使い、CO2が約50年後、1・5倍に増えた場合の予測値を計算。実際にCO2濃度を変えて育てた稲の収量と比較したところ、個々の予測法はばらつきが多かったが、平均値は実際の収量に近い数値になった。予測によると、国内の収量は約15%増える。

 同機構・東北農業研究センターの長谷川利拡農業気象グループ長は「既存の予測法にばらつきがあること自体これまで調べられてこなかった。それぞれの予測法は過大や過少に見積もるくせがあるが、平均すると実際の値に近くなる」と説明する。同機構では地球温暖化を研究する国際機関、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などに同技術を提案し、活用を促す方針だ。

日本農業新聞

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人を追尾して照らすLED照明 ミネベアミツミが投入(日刊工業新聞電子版)

■1台のスマホで最大100台まで同時制御

 ミネベアミツミは追尾タイプの発光ダイオード(LED)照明を2018年1月に市場投入する。無線通信や赤外線センサーなど自社の電子部品を搭載した。人の動きを自動で感知し、遠隔で明るさを調整できる。価格は個別見積もり。ホテルやレストラン向けを想定しており、従来機種を含めて18年度の売上高を16年度の数千万円から50億円に引き上げる。

 新製品はミネベアミツミの照明器具「SALIOT(サリオ)シリーズ」のラインアップに加える。17年1月に統合した旧ミツミ電機のセンサー技術を応用し、追尾機能を搭載した。講演者が壇上で移動する際、センサーが小型マーカーからの赤外線を検知し自動で対象を照らし続ける。

 無線通信機能を搭載したことで、スマートフォンやタブレット端末による遠隔操作が可能。1台のスマホで最大100台まで同時に制御できる。また薄型レンズなどの光学技術とモーターなどを搭載しており、光が広がる角度「配光角」を可変できる特徴も備えた。自社で開発した専用のアプリケーション(応用ソフト)を利用することで、明るさや配光角などを記憶させることもできる。

 ホテルなどのほか百貨店や美術館に訴求する。すでに従来機種は伊勢丹新宿店(東京都新宿区)や米国のニューヨーク歴史博物館などで採用されている。

 照明器具は明るさや配光角などを変える際、演出内容など用途に合わせて設置場所や照明機材を変えて対応していた。高い場所に取り付けられた照明を人の動きに合わせて調整する場合、脚立や調整棒を用いて手動で行っていたため、作業効率が悪かった。遠隔操作機能と追尾機能の付加により、作業効率の向上や作業コストの削減にもつながる。

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名大、乳がん専用のPET装置開発(日刊工業新聞電子版)

■検出器リング径小型化、乳房のみ高感度・高分解能測定

 名古屋大学大学院医学系研究科の山本誠一教授らは、乳がんを高感度、高分解能で撮影できる小型陽電子放射断層撮影(PET)装置を開発した。高感度の新型シリコン光センサー「シリコンフォトマル」採用により、高性能化と小型化を図った。頭部撮影によるアルツハイマー病診断も可能。今後、メーカーと製品化を目指す。

 同装置はリング径を26センチメートルに小型化して乳房のみを測定、体幹でのガンマ線の吸収がなく、高感度で検出できる。検出リングを理想的なほぼ円形にでき、空間分解能は2ミリメートル前後にまで高めた。

 全身用PET装置は腫瘍の早期発見に有用。ただ検出器のリング径の大きさや体幹によるガンマ線吸収が大きく、乳がんの高感度検出は難しかった。

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日本の全需要、ゴミ焼却場35基で賄える 積水化がエタノール製造技術(日刊工業新聞電子版)

■微生物活用、ゴミ処理場はエネ供給基地に

 積水化学工業は6日、微生物の働きでゴミから工業製品のエタノールを大量製造する技術を開発したと発表した。エタノールはエチレンに変換し、プラスチック原料として利用できる。2019年度にゴミ処理場にエタノール製造プラントを建設し、商業運転を始める。年2―4基で普及を進め、大量発生するゴミで化石資源の代替化を目指す。

 開発した技術は、ゴミ処理場で紙や繊維が混ざったゴミを蒸し、一酸化炭素と水素からなるガスを生成。そのガスを微生物に与え、エタノールを作る。微生物は米ランザテックが開発し、積水化学がエタノールを安定製造できるように改良した。ガス中の不純物除去や、ゴミ処理量の変動に追随できる微生物の管理方法なども開発した。

 埼玉県寄居町のゴミ処理場に小規模プラントを設置し、技術を検証済み。ゴミ処理場にあるガス化工程を利用でき、エタノール化に加熱や加圧が必要ない。導入しやすく、化石由来品と競争できるコストでエタノールを製造できるという。

 積水化学によるとゴミ焼却場35基にプラントを併設すると、エタノールの年間需要の75万キロリットルを賄えるという。ゴミは発生量が安定しており、積水化学は全国に1200カ所あるゴミ処理場が化石資源代替原料の供給基地になると見通す。

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『マイカル小樽』(現・ウイングベイ小樽)を運営していた小樽ベイシティ開発、民事再生法の適用を申請(帝国データバンク)

 (株)小樽ベイシティ開発(TDB企業コード060060379、資本金1億2700万円、北海道小樽市築港11-5、代表橋本茂樹氏)は、12月7日に札幌地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 申請代理人は高木大地弁護士(大阪府大阪市中央区北浜2-5-23、弁護士法人関西法律特許事務所、電話06-6231-3210)ほか4名。

 当社は、1991年(平成3年)11月の設立。マイカルグループのほか、道内有力企業の出資によりJR小樽築港駅貨物ヤード跡地の再開発事業として大型複合商業施設建設を目的としてスタートし、99年3月に商業施設『マイカル小樽』(現・ウイングベイ小樽)をオープンした。『マイカル小樽』は、初期投資額600億円内外といわれる延床面積34万平方メートルの大型複合商業施設で、ショッピングセンターのほか、シアター、アミューズメント施設などさまざまな業態が集積。物販施設には、マイカルグループが運営する百貨店やスーパーなどが入居するなどしていたが、収益の柱となる物販部門がバブル崩壊後の消費の冷え込みなどから苦戦を余儀なくされたことで、年間の施設総売上高目標には届かず、購買量拡大が課題となっていた。このため不採算テナントの早期の交代や店舗のリニューアルを行い、集客・購買量アップに努めるなど改善に取り組んでいたが、2001年9月、マイカルグループ中核の(株)マイカルが東京地裁に民事再生法の適用を申請(その後会社更生法に移行)する事態となり、グループ企業として展開していた当社も東京地裁へ民事再生法の適用を申請することとなった。

 2002年7月には再生手続きの認可決定を受け、以降は資産売却を進める一方、2003年3月には施設名称を『ウイングベイ小樽』に変更、小樽市内や道内有力企業からの資本参加を得るなどして再スタートを切り、再生手続きは2005年3月に終結に至っていた。しかしその後、別除権の優先弁済を巡り、一部大口債権者が債務を大幅に圧縮したうえで一括完済する方向にあったものの、一方ではスポンサー候補と最終的な合意に至らず、弁済計画の見直しを迫られる事態となっていた。

 2度にわたる札幌地裁への特定調停によって債務の圧縮を図ったが、返済は計画通りに進まず、今年12月に入って企業再生ファンドのルネッサンスキャピタルが当社の債権者から債権を買い取り、経営再建に向け支援することが明らかにされていた。

 負債は2017年2月期で約249億200万円。負債額は、道内では今年に入って最大の規模。

※代表者の「高」は、正しくははしご「高」です。

パンダはグルメ 上質な国産 おいしいとこだけもぐもぐ 竹林荒廃も防いでます(日本農業新聞)

 パンダはグルメで国産志向――。上野動物園(東京都台東区)で今年6月に誕生し、すくすく成長しているジャイアントパンダの赤ちゃんシャンシャン(香香)が、乳離れ後に食べるのは国産の“上質の竹”。しかも竹のおいしい部分しか食べないグルメ動物で、和歌山県のアドベンチャーワールドの子パンダも上質な国産の竹しか食べない。荒廃竹林に悩む地域が多い中、パンダが食べてくれれば荒廃防止や竹林保護につながると関係者は期待する。

もうすぐシャンシャンも

 今5カ月齢の赤ちゃんパンダ、上野動物園生まれのシャンシャンの食事はお母さんシンシン(真真)のおっぱいだ。同園の教育普及係は「8、9カ月になれば母乳と並行して竹を食べ始める。1~1歳半で完全に竹食に移行する」と成長を楽しみに待つ。「年を越せば、次第に竹を食べるようになる」。供給元は、静岡県伊豆半島だという。

 現在、同園では12歳のリーリーとシンシンにモウソウチク、マダケ、ヤダケ、シノダケ、クマザサの5種類を1日50キロ与える。パンダはえり好みが激しく、与えられた中から20キロしか消費しないが、食べ残しはニホンザルやアジアゾウが平らげるので無駄にならない。

 指定業者を通じて伊豆半島から仕入れた竹は、動物園に着いた後もしおれないように冷蔵庫の中に保管し、定期的にシャワーで水をかけて新鮮に保つという。

余った葉 有効活用 残りはカピバラがぺろり

 和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで生まれた結浜(ゆいひん)は現在1歳と3カ月。竹を一日1キロほど食べるようになった。4頭の大人のパンダは1日に与えられる50キロずつのうち、15~20キロを消費する。食べ残しはカピバラたちが片付けてくれる。 

 同園ではヤダケ、メダケ、ネマガリダケ、トウチクなどを週に4度、200~300キロずつ京都府と大阪府岸和田市から仕入れる。動物園専門の飼料業者クローバーリーフが京都から竹を集めてくる。

 供給元の岸和田市では、地元の業者が市有地や民有地の荒廃した竹林から上質の竹を切り出す。「結浜が成長してもっと竹を食べるようになれば、仕入れ量が増える」と同園の中尾建子獣医師。岸和田市丘陵地区整備課は「竹は成長が早いので、パンダの餌の需要が増えても対応できる」という。 

 同市が神於山の荒廃竹林からパンダ用の餌を提供するようになったのは、2005年だ。ミカン農家らの高齢化と耕作放棄で竹が拡大繁茂し、植生の悪化が深刻な問題だった。竹の幹は竹炭加工や垣根の材料に使用するなど有効活用の道を探ってきたが、葉の利用方法は分からなかったという。

 アドベンチャーワールドはパンダのために竹を安定して供給してくれるところを探しており、需要と供給がマッチした。「パンダの餌に使い始めてからは竹を切り出すので、その部分の荒廃を防げる」と同課は喜ぶ。 

 中尾獣医師は「パンダの健康に竹は不可欠」という。パンダの腸は竹を消化するために粘液を多く分泌するため、竹をたくさん食べないと粘液を使い切れず体調を崩してしまうためだ。「健康維持に欠かせない食料を供給してもらえるのはありがたく、パンダが環境保護の役に立っていることもうれしい」と話す。

1日14時間食べ続け

 ジャイアントパンダを保護する国際非政府組織(NGO)世界自然保護基金によると、パンダが生息するのは、チベット高原の東端に接する中国北部から南部にかけての標高約1300~4000メートルの山岳地帯。主食は竹の幹、葉、タケノコ。高地に生えるさまざまな種類の竹を食べる。竹は栄養価が低いが、運動量が少ないパンダは竹食に適応した。竹の部分で最も栄養があり繊維質の少ない柔らかい部分を好む。寝る時間と短距離を移動する時間以外は、最長1日14時間も食べ続ける。(齋藤花)

日本農業新聞

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