伊豆のロングセラー観光銘菓「あけびあん」などを製造していた丸伊が破産開始(帝国データバンク)

 (株)丸伊(TDB企業コード:410022361、静岡県伊東市宇佐美1659-14、資本金1000万円、代表渡邊秀樹氏)は、2月5日に静岡地裁沼津支部より破産手続き開始決定を受けた。

 破産管財人は梅田欣一弁護士(静岡県沼津市御幸町17-12、梅田法律事務所、電話055-931-1500)。財産状況報告集会期日は5月14日午後3時。

 当社は、1957年(昭和32年)10月創業、63年(昭和38年)11月に法人改組した観光用土産菓子製造業者。和菓子70%、洋菓子30%の比率で、伊豆半島一円ほか、一部は神奈川県箱根一帯までを商圏として、観光施設やホテル、旅館、ドライブインなどに販売していた。観光銘菓「あけびあん」などのロングセラー製品を扱い、知名度が高く、商品開発力には定評があった。

 しかし、ここ10数年来は、観光産業の不振が続き、当社においても販売量の低下から売上は減少の一途を辿っていた。打開策として、2008年には首都圏に進出し、鉄道会社や航空会社などとの取引も開始するなど販路開拓を進めてきたが、その後の経済環境の悪化もあって、業績の改善には結び付かず、2012年6月期には年売上高約2億2000万円にまで落ち込んでいた。同時に累積損失の拡大で資金繰りが悪化し、資金調達も限界に達したため、2013年10月8日に事業を停止していた。

 負債は約3億9670万円。

スタンバイOK!! 宇宙で船外活動-金井飛行士(日刊工業新聞電子版)

■宇宙服は“小さな宇宙船”

 こんにちは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の金井宣茂です。2017年12月から国際宇宙ステーションに滞在しており、世界中の研究者から提案されたさまざまな科学実験や、宇宙ステーションの保守に関わる作業を、日々行っています。

 宇宙ステーションを安全に維持していく上で欠かせない保守・点検作業は、地上と同じとなるように気圧や空気に制御されている船内だけでなく、ときには船外の宇宙空間に出て行うこともあります。宇宙服を着て、宇宙ステーションの船外で行う作業は「船外活動(EVA)」と呼ばれます。

 この宇宙服は、宇宙ステーションから空気や電力の供給を受けることなく、独立して宇宙飛行士が活動を行うことができるシステムで、いわば“小型の有人宇宙船”としての機能を備えています。このため、サッと手早く身にまとってハッチの外に出るというわけにはいきません。

■伸びる身長に合わせる

 現在、16日に予定されてる船外活動に向けて、軌道上では少しずつ準備作業が進んでいます。宇宙服は、特大、大、中とサイズがあります。長期に宇宙滞在を続けていると、背骨と背骨の隙間が広がって身長が伸びるなど体形の変化が出ることがあるので、船外活動の前には、必ずサイズ合わせをする必要があります。

 本番と同じように宇宙服に身を包み、内部を加圧してみて、手足の長さがちょうど良くなるように、袖や裾を伸ばしたり縮めたりするのです。

■0.3気圧、エベレストの頂上

 「宇宙服を加圧する」と書きましたが、宇宙服は外気圧よりやや高い圧(約0.3気圧)を常に保つように中を空気(正確には純酸素)で満たして、人間が生存できる環境を維持する仕組みになっています。宇宙ステーションの内部にいるときは、1気圧よりやや高い圧となりますが、船外の宇宙空間に出たときの外気圧はほぼゼロですから、宇宙服の内部はおよそ0.3気圧に保たれます。これは地上でたとえるとエベレストの頂上と同じくらいの気圧なのですが、空気ではなく100%の酸素を使いますので高山病になることはありません。

 宇宙飛行士が呼吸することで減る酸素は、宇宙服の背中についたバックパックに収納された酸素タンクから補充されます。一方、宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素は、特殊な吸着キャニスターで吸収する仕組みになっています。

 このキャニスターの用意も、船外活動に向けての大切な準備作業です。ベイクアウトといって、特別な加熱処理をすることでキャニスターの内部に閉じ込められた二酸化炭素を追い出して、再度使えるようにするのです(船内のキャビンに放出された二酸化炭素は、宇宙ステーションの生命維持システムにより除去されます)。

 酸素タンクとは別に、宇宙服の背中のバックパックには水のタンクが備え付けられています。長時間の作業でのどが渇いたときのため…ではありません。

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なぜ日本では医療系VBが育ちにくいのか、厚労省が「資金・人材」好循環探る(日刊工業新聞電子版)

 厚生労働省は、医療系ベンチャーを育てる好循環(エコシステム)の確立に向けた政策研究を2018年度に始める。日本では医薬品をはじめ、実用化につながりそうな優れたシーズ(種)が複数存在していても、それが十分に生かされていない課題がある。大学や研究機関といったアカデミア、医療系ベンチャーがそれぞれ抱える課題を明確にすることで、ベンチャー育成に向けた環境を整備していく。

 研究対象は、アカデミアにおける医薬品や医療機器、再生医療等製品に関するシーズと実用化に向けた開発状況、医療系ベンチャーの資金調達や人材確保などに関する課題。

 厚労省は医療産業発展のため、医療系ベンチャー振興を活発化している。効果の高い政策を打つために、より本格的な政策研究が必要と判断し、予算を計上した。研究により課題を正確に把握し、今後の政策につなげる。研究費の規模は1課題あたり年間500万円程度で、研究実施予定期間は最長で1年間とする。採択数として1課題の予定。

 採択先としては、医療産業に詳しい大学研究者やベンチャー企業などを想定。審査では、医薬品や医療機器、再生医療等製品に関する研究開発や知的財産、薬事などに関する知見を持つ専門家が研究代表者となるなど、研究体制が構築されていることを要件とする。

 併せて臨床研究中核病院など、革新的な医薬品や医療機器の開発推進で中心的な役割を担う機関との協力体制が築けていることなども求める。これらの要件により、研究成果を政策に移せる実践的なものにする方針だ。

 厚労省は、17年4月に医療系ベンチャーの支援業務を行う「ベンチャー等支援戦略室」を設置。同年10月には、医療系ベンチャーを振興するためのイベントを神奈川県内で開催した。今回の研究を通じてアカデミアとベンチャーそれぞれの現状や課題の把握につなげる。

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焼き判定はIBMワトソン譲りのAI コネクテッドロボティクスが自動たこ焼きロボ(日刊工業新聞電子版)

■HISが導入を検討

 コネクテッドロボティクス(東京都小金井市、沢登哲也社長)は多軸ロボットを使った自動たこ焼きシステム「オクトシェフ」を開発した。飲食店や食品工場での活用を見込む。エイチ・アイ・エス(HIS)が導入を検討しているという。HISグループはホテルやテーマパークで積極的にロボット活用している。都心の施設でオクトシェフを活用するとみられる。

 オクトシェフは多軸ロボット1台と振動による自動返し機能が付いたたこ焼き器、生地サーバーなどで構成。タッチ画面で指示を出すと、生地をカップで受け取り、たこ焼き1個分の具の入った皿に生地を入れる。その皿がたこ焼き器の上に移動して生地と具を落とす。ロボットが焼き器のスイッチを入れて、ある程度焼けてくるとロボットがピックを持ち、生地の縁をピックでなぞって回転しやすくする。焼けたらトングに持ち替え、器に入れる。

 焼き具合は人工知能(AI)の画像認識技術で確認する。ロボットの制御と画像認識は独自に開発した。AIはIBMの「ワトソン」の機械学習システムを活用している。多軸ロボットは現在、デンマークのユニバーサルロボット製を利用しているがメーカーは問わない。

 HISはロボットがコーヒーを給仕する「変なカフェ」を東京・渋谷に出店した。オクトシェフもロボットによる自動化システムでサービスする形態の店舗で活用する見込み。コネクテッドロボティクスはロボットによる調理の自動化システム開発が主な業務で、2014年2月に設立した。今後は牛丼や焼き鳥、デザート調理の自動化を目指す。

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過去に「カーコンビニ倶楽部」や中古車情報マガジン「カッチャオ首都圏版」などの事業を展開、翼システムが破産開始(帝国データバンク)

 翼システム(株)(資本金8000万円、東京都江東区亀戸6-21-8、代表道川研一氏)は、2017年10月25日に債権者より東京地裁へ破産を申し立てられ、2月6日に破産手続き開始決定を受けた。

 破産管財人は斎藤淳一弁護士(東京都港区西新橋1-21-8、さいとう法律事務所、電話03-3504-3651)。

 当社は、1973年(昭和48年)2月設立。独立系のソフトウェア開発、販売業者で、自動車整備業や同電装業、板金塗装業向けの業務用アプリケーションである「スーパーフロントマン」の全国販売を展開。99年には新ロードサービス「カーレスキュー70」のサービスを開始するほか、2000年には関係会社を通じて短時間で車の板金塗装や車検を行う「カーコンビニ倶楽部」の管理運営を展開、さらに2001年には中古車情報マガジン「カッチャオ首都圏版」を創刊するなど積極的に事業を拡大し、2001年3月期の年収入高は約317億円を計上していた。

 この間、99年2月には法人税法違反容疑で当社および代表でオーナーの道川氏が起訴され、同年3月には同氏が代表を辞任する事態となったが、一方では以降もカーコンビニ倶楽部の加盟店を順調に伸ばした結果、当社ソフトシステムの販売も伸び、2002年同期の年収入高は約393億円に、2003年同期にはカーコンビニ倶楽部の追加メニューとして、整備業者を対象に車検の検査・見積りシステム「ヤマト車検」を開始し、約565億円の年収入高を計上していた。

 しかし、自動車業界での地位確立を急ピッチで進めてきたことによる新規事業展開や子会社支援、企業買収などの投資から社債を含めた有利子負債が多く負担が増大していたうえ、当社と「カーコンビニ倶楽部」におけるリース取引を巡る問題が指摘されたことで、業績は急速に悪化。2004年同期の年収入高は約440億円に落ち込み経常損失を計上、2005年同期の年収入高も約345億6200万円にとどまり2期連続の経常損失となっていた。

 このため、2004年2月には情報企画事業部を、2005年12月にはパッケージソフトウエア事業を、さらに2007年1月にはロードサービス事業「カーレスキュー70」を売却。業容は縮小を続け、2006年3月期は年収入高約244億3400万円にとどまり、約28億6000万円の欠損計上を余儀なくされていた。その後も、事業売却を行うなど債務の圧縮に努めてきたが、近年、実質的な活動は停止していた。破産を申し立てた債権者との間で係争中であったが、ここに来て結論が出たことに伴い今回の措置となった。

 負債は数十億円にのぼる見込みだが、今後の債権調査により確定する予定。

明治16年創業、グルメ漫画「美味しんぼ」でも話題になった高級醤油メーカー、きぢ醤油(広島県呉市)が事業停止、破産申請へ(帝国データバンク)

 きぢ醤油(株)(TDB企業コード600416081、資本金130万円、広島県呉市仁方本町1-2-51、代表今井明正氏、従業員2名)は、2月8日までに事業を停止し、事後処理を朝本孝一弁護士(広島県広島市中区上八丁堀3-6、朝本法律事務所、電話082-502-7280)に一任、自己破産申請の準備に入った。

 当社は、1883年(明治16年)創業、1952年(昭和27年)9月に法人改組された老舗の醤油メーカー。木桶を使った昔ながらの設備と独自製法の「弐段仕込醸法」で製造された「純正醤油」など高級醤油を主力に、広島産のカキ殻を使用した「かき三昧」、ポン酢、めんつゆなど幅広い商品を製造していた。広島県の「ものづくり オンリーワン・ナンバーワン企業」に選出されたほか、グルメ漫画「美味しんぼ」でも当社の醤油が紹介されるなど高級品としての知名度は高く、百貨店や食品専門商社、地元スーパーストアなどに販路を構築し、2000年8月期には年売上高約1億4200万円を計上していた。

 しかし、近年は長引く消費の低迷や醤油の需要縮小などで主力商品をはじめ販売が振るわず、2017年8期の年売上高は約5800万円にまでダウン、連続で赤字を計上して財務内容は債務超過に陥っていた。この間、広島レモンを使用した醤油など新商品を投入する一方で、原料である大豆の仕入れルートを変更したり、役員報酬などの人件費を削減したりして収益改善に努める一方で、事業譲渡も検討していたが奏功せず、ここにきて事業の継続を断念した。

 負債は、2017年8月期末時点で約1億4200万円。

 ※商号の「醤」は、正しくは異体字です。

過去にはJUNON女子オープンの開催コースとしても知られた「上毛森林カントリー倶楽部」を経営、上毛森林都市が破産開始(帝国データバンク)

 上毛森林都市(株)(TDB企業コード:982851884、資本金1億円、東京都中央区八重洲1-8-12、代表伊藤恭道氏)は、2月14日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。

 申請代理人は吉田和雅弁護士(東京都港区六本木6-10-1、TMI総合法律事務所、電話03-6438-5511)。破産管財人には曽我幸男弁護士(東京都港区虎ノ門4-3-1、河野・川村・曽我法律事務所、電話03-6438-5390)が選任されている。

 当社は、1972年(昭和47年)12月に設立されたゴルフ場「上毛森林カントリー倶楽部」の運営会社。コースは、関越自動車道渋川伊香保インターから20km(約25分)、月夜野インターから25km(約30分)、6,793ヤード・パー72の山間コースで、年間来場者数は約3万人。78年~93年まで「JUNON女子オープン」が開催されていた。会員数は法人・個人を含め1,550名(うち法人会員300名)で、93年3月期には年収入高約8億3100万円を計上していた。

 しかし、ゴルフ人口の減少により業界環境が悪化するなかで、当社も業績が悪化。2017年3月期の年収入高は約1億6800万円に減少していた。

 負債は債権者約1077名(うち預託金債権者が約1020名)に対し約26億9415万円。

塩原温泉郷の温泉旅館「秀山閣 佐か茂登」を経営していたホテルさかもと、事業を停止し破産申請へ(帝国データバンク)

 (有)ホテルさかもと(TDB企業コード:240478275、資本金300万円、栃木県那須塩原市塩原684、代表手塚秀男氏、従業員2名)は、2月13日に事業を停止し、事後処理を塚越敏夫弁護士(東京都千代田区麹町1-6-2、大原法律事務所、電話03-3239-1311)に一任、破産手続きの準備に入った。

 当社は、1951年(昭和26年)2月設立の温泉旅館経営業者。栃木県内屈指の温泉観光地として知られる塩原温泉郷の中心街に位置し、「秀山閣 佐か茂登」の屋号で温泉旅館を経営していた。客室21室、収容客数90名と当地では中堅規模であり、源泉を有していたことを強みに、ゴルフ客やスキー客などを中心とした集客があった。

 しかし、50年代に新築した建物を使用していたこともあって設備全体が古く、大手旅館と比較して劣勢となるなか、東日本大震災が発生。以降は風評被害の影響もあって、集客は低迷していた。一方、78年に増築工事を行うなど、数回にわたる建物の増改築や設備投資を金融負債で賄ったことが、収益面に大きく影響していた。この間、赤字決算が続いたことで財務内容は大幅な債務超過状態に陥り、資金繰りが多忙を極めていたなか、2月13日には事業を停止、今回の事態となった。

 負債は約1億1000万円。

奇跡の乗り物スーパーカブ 実用の美磨き続けて60年(日経トレンディネット)

 「ロングセラーはデザインの良さだけでなく、作り手側の商品に対する愛、ストーリーこそが大切」と語るのはロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイ氏。第1回のカルピスに続き1958年の発売以来60年の歴史を持つホンダのスーパーカブを取り上げる。

【関連画像】1958 年に発売した初代スーパーカブ

●ナガオカケンメイの目

 創業者の想いを受け継ぐ。簡単なことではありませんが、ホンダには創業者の本田宗一郎さんと藤沢武夫さんの傑作が今も改良を重ね、唯一の商品として存在しています。それが「スーパーカブ」です。この商品を作り、売るということは、2人の想いに触れることと一緒。その想いがホンダの社内から販売店、そして海外へ広がり、多くのファンの心を1つにしていると言えます。ロングライフデザイン商品の共通点は開発者の熱い想い。ホンダというブランド全体を見ても、やはりスーパーカブから伝わってくる創業者の想いで形作られていると感じます。

 老舗の多い京都の商売の原則は「あつらえ」。つまり、架空のターゲット設定で商品開発するのではない「あの人のため」に作る。スーパーカブにも「おそばやさん」という具体的なターゲットがあり、当時のカタログにも出てきます。業務用としての性能を意識していった結果、郵便局員の販売車として採用。その過酷な使用にしっかり付き合っていくことでますます性能を高め、最初は市販品と郵便局仕様を分けていたそうですが、今はほとんど市販品と差はないとのこと。業務用の強さと用の美とも言えるデザインは、民芸の思想に似た美さえ感じられます。すごいことです。

 大ヒットの裏にはユニークな販売網作りもありました。材木商や乾物屋などバイク販売の経験のない店の軒先を借りたのです。要するに、専門的なメンテナンスや設備にあまり頼らなくてもいいように作られた完成度のずば抜けて高いバイクと言えます。通常のバイクの発想をとことん超えて発想していったのでしょう。その頃ではおおよそ考えられないくらいの斬新な発想だったでしょう。

 スーパーカブは商品が常に少しでも良くなるよう、改良を繰り返しています。コクヨのキャンパスノートの開発と同じで、モデルチェンジの時期が決まっていない。新型を売りに「何代目」的に打ち出すことはせず、とにかく時代が求めればすぐに改良をしていく。そして荷物の積み下ろしがしやすい高さを守る。そうして作られていました。

 ロングライフデザインを持つ企業には共通して「会社の創業の想い」を、関わるすべての人たちと共有する工夫があります。カップヌードルの日清にある発明記念館のようにです。創業者の発案した未来を見据えた素晴らしい製品に改良を続ける様子は、ホンダという企業作りそのものだと思いました。

 以下では「つくる」「売る」「流行」「つづく」の4つの観点からスーパーカブのロングセラーの秘密を解き明かす。

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カルソニックカンセイ、ロシア現調率拡大へ 現地企業も興味津々(日刊工業新聞電子版)

■関税減免措置も

 カルソニックカンセイがロシアで現地調達率を引き上げる動きを加速させている。1月29日から2月2日にかけて同社の群馬工場(群馬県邑楽町)などにロシア企業を招き、生産管理などについて研修を実施した。同研修は2016年5月の安倍晋三首相とプーチン露大統領による日露首脳会談で合意した経済協力プランの一環。ロシア産業の生産技術レベルを底上げし、現地企業との取引拡大につなげる狙いがある。

 「(日本に比べ)ロシア企業は生産技術の点で遅れている。日本の求める品質を満たし取引できる現地企業は少ない」。カルソニックカンセイ・ロシア社(サンクトペテルブルク市)の山崎義明共同社長は、ロシアのモノづくり企業の現状をこう話し、品質や生産性の向上が喫緊の課題と説明する。

 カルソニックカンセイがロシアで現調率の向上を図る背景には、輸入部品に伴う為替変動リスクを回避するためのほか、現調率を一定程度に高めることを条件に関税の減免措置を受けられることがある。「日系完成車メーカーからも促進の要望がある」(山崎共同社長)という。ロシア社の現調率は現在、金額ベースで十数%にとどまる。山崎共同社長は「目標は定めていないが、現状以上に引き上げていく必要がある」と強調する。

 研修を実施した群馬工場はラジエーターなどの熱交換器を主に製造し、国内売上高の30%を占める主力工場。ロシアからマネジメントクラス以上の役職者を対象に6社11人が参加した。小池恵一群馬工場長は「調達から物流、生産までの総コスト『トータルデリバリーコスト(TDC)』を意識した体制づくりを感じてもらいたい」と呼びかけた。

 工場視察ではカルソカンの若手従業員による技能研修に加え、ラジエーターやオイルクーラーの各生産工程を見学。参加者はオイルクーラーの全品を自動で画像検査する工程や、IoT技術で生産管理する方法に興味津々の様子で見入っていた。射出成形を手がけるユーロ・モルディングのニキタ・ノヴォショーロフ品質企画部長は「規模が大きくても生産効率が高い仕事の仕組みに驚いた」と目を丸くした。

 欧州ビジネス協会(AEB)によると、2017年のロシア国内新車販売台数(小型商用車を含む)は、前年比11.9%増の159万5737台。16年の約142万台を底に回復基調となっている。カルソカンのロシア工場もフル稼働状態という。参加したロシア企業からは、カルソカンに対してサプライヤーの選定基準などの質問が多く出た。

 カルソカン・ロシア社の山崎共同社長は「参加企業のうち、取引の可能性がある企業が数社ある」と明かす。ロシア企業は日本のモノづくり技術を持ち帰って生産技術を高め、ビジネスチャンスの拡大を狙う。カルソカンにとっても現調率を高められる好機となる。相互に利益を享受する関係を構築して業容拡大を狙う。

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