企業の新卒採用 学生の履修履歴で資質を見抜け(SankeiBiz)

  経団連の中西宏明会長が「採用選考活動の日程を采配することに違和感がある」と発言したことで、就職活動のあり方に対し学生や大学に不安が広がり、政府は混乱回避のため調整に乗り出した。しかし、問題なのは就活の日程ではない。それにより学業がおろそかになることのほうが重大だ。中西会長はこうも言っている。「欧米のみならず、中国、シンガポールなどのアジアトップレベルの大学の学生の勉強量は日本の大学生の比ではない」(産経新聞編集委員・松岡健夫)

 確かに入学することに比べ、卒業はさほど難しくない。このため学業よりサークル活動やアルバイトに精を出す学生は多い。企業側もこの実態をそのまま受け止め、大学3年生のときからインターンシップ(就業体験)を使って実質的な採用選考を始めている。選考の面接ではもっぱら学業外の考えや行動・エピソードを聞く。学業に割く時間が少ないという前提に立って担当者は面接に臨んでいるわけだ。

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 では、本当に日本の学生は勉強をしていないのだろうか。ある調査では、8割以上の授業に出席している学生が78%に達した。体育会系学生も授業の半分程度に出席しているという。最近の大学では授業に出席しないと単位が取れない状況になっているようだ。

 かつての授業にそれほど出なくても卒業できた時代を過ごした面接者が「授業に出ているのは勉強好き」「自分の意志で行う学業外での行動こそ学生の資質が分かる」と考えるのは時代錯誤といえる。大学環境の変化を知らずに面接を行っていては、ほしい人材を採用できるわけがない。今や出席せざるを得ない授業なので、学生一人一人の価値観や考え方、行動は、力を入れたり、興味を持ったりした授業や出席時の行動などから分かるといえる。

 こうした大学環境の変化を理解する企業が注目するデータがある。学生と産業界、教育界をつなぐハブの役割を目指している大学成績センター(東京都千代田区)が作成する「履修履歴データベース」だ。活用する企業は2018年春卒業時の210社から19年春卒では340社と急増している。単なる履修履歴だけでなく、学部平均からの乖離や最高評価率、厳正評価の授業での成績など客観的・相対的事実が記載されており、応募者の置かれている環境が分かる。

 このため応募者の印象に左右されることなく判断できる。例えば「力を入れた授業は」との質問に、印象や話し方から論理的なタイプとは思えない応募者が「統計学や証券投資論などの数学的授業が得意」と答えても面接者はなかなか信じられない。しかしデータで、評価の厳しい授業で上位30%以内に入っていることが分かれば納得できる。

 真偽を確認できるエピソードがないと面接者の感覚で判断せざるを得なかったが、客観的データがあることで印象と違っても事実と確認できる。学生はエピソードを話せる学業外の活動に偏りがちだが、データを見ながら面接を続けるので「こんなことに興味を持っていたんだ」と本人も気づいていない特徴や意外な側面を指摘・確認できるようになる。

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 企業にとって、これまで見逃してきた資質の持ち主を発見でき、応募者の印象に左右されることなく多様なタイプの学生を採用できる。応募者も多面的に見られた実感が持てるため選考途中での辞退者が減る。結果として内定者数が増えるだけでなく、多様な人材の確保にもつながる。

 それだけに「面接者は大学環境の変化を知ってスキルを磨く必要がある。『最近の学生はまじめだからな』の一言で片づけてしまい、なぜ授業に出席しているのか科学的に分析しないような採用担当者は務まらない」と同社の辻太一朗代表取締役は指摘する。

 企業が求めるのは優秀な学生だ。その見極めは、脚色されている可能性が高いエピソードを聞くより、客観的事実をベースに質問するほうが確かだ。今の学生が置かれている大学環境を知って学業、学業外とも学んできた学生を正しく評価してこそ多様な学生を採用できる。もっとも学生に選ばれる魅力がなければどうしようもないが。

【専欄】楽観できない米中関係 「新冷戦」時代の到来か(SankeiBiz)

 米副大統領、ペンスの中国政策に関する演説(10月4日)が米中関係、さらには国際社会に大きな波紋を投げかけている。米中「新冷戦」時代の始まりを告げる演説と受け取る者もいるようだが、米中関係はどこへ向かっているのだろうか。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 米中関係はかねてから協調と対立の二面性を持つと指摘されてきた。相互依存の経済関係によって極端な関係悪化は回避できるものの、台湾や南シナ海などの問題があるため非常によくもならないとの分析だった。

 ところが米中関係は現在、貿易戦争に始まり、全面対決的様相を見せ始めている。そもそも両国間には価値・体制と世界秩序をめぐって根本的な対立が潜在している。これが今やはっきりと表面化しているのである。

 価値・体制をめぐっては、米国は自らが尊重する価値や体制は普遍的なものだとみなして中国もそれを受け入れるべきだと主張するのに対し、中国はそれとは異なる価値や体制も認めるべきだと主張している。

 世界秩序については、米国は一超多強の現在の秩序を維持しようとしているのに対し、中国は多極化世界を望み、世界はそれに向かっていると考えている。これはいわゆる大国の興亡にかかわる問題であり、構造的な関係悪化要因と言えるだろう。

 なぜ今なのか。中国の台頭は今に始まったことではないが、中国の経済力が米国を上回る可能性を米国の人たちが強く意識し始めたことと関係しているのではないだろうか。

 中国に追い抜かれてナンバーツーになるかもしれないという、少なくとも一部の米国民にある「被害者意識」が、トランプ政権の強硬な対中政策の背後にあり、それを支えているのではないかと思われる。

 中国共産党機関紙「人民日報」の系列紙「環球時報」(10月8日付)はペンス演説を論じた社説で、「中国は独特であり、ソ連ではない」と主張し、冷静に対処すれば、冷戦にはならないと述べている。

 ただ、中国の指導者は長期戦を覚悟しているようだ。習近平は先月下旬、地方視察時の演説で、保護貿易主義の高まりを指摘した上で、「最終的には自己に頼らねばならない」として、「自力更生」を呼びかけている。

 11月末のG20サミットで行われるとみられるトランプ・習近平会談が、当面の両国関係の行方を占う上で重要だが、楽観はできないだろう。(敬称略)

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デジタル窓から世界の風景が広がる アトモフ・姜京日CEOに聞く(SankeiBiz)

 単純で誰でもすぐに理解できるアイデアなのに、いざ実現しようとすると、どんなに複雑なアイデアの実現よりも困難なことがある。姜京日(かん・きょうひ)氏は2014年に京都でハードウエア・スタートアップ、アトモフを創業し、現在は最高経営責任者(CEO)を務める。

 アトモフは、世界中の景勝地や街並みの映像と音声をどんな小さな部屋からでも眺められるスマートなデジタル窓「Atmoph Window」を開発する。日米のクラウドファンディングサイトにてキャンペーンを成功させた、わくわくするようなプロジェクトだ。

 外の世界とつながるデジタル窓というのは、誰にでも想像しやすいシンプルなアイデアだが、実現への道のりは決して楽なものではなかった。クラウドファンディングの大成功が逆に会社存続の危機をも生んだという。

 ◆4Kの映像と音声

 --27インチの縦型デジタル窓といえば分かりやすいアイデアですが、アトモフは単なる窓ではないのですね

 「世界中のさまざまなシーンを独自に4Kで撮影した美しい映像とリアルなサウンドが流れる窓です。例えば、自宅アパートの一室からハワイのビーチやロンドンの街角の様子を見て、聴くことができます。その日の気分や時間帯、誰と過ごすかなどに合わせて窓の外の景色を変えられます。2~3枚並べて、パノラマ風景を楽しむこともできます」

 --映像はループ再生されるだけなのか、一日を通して時間とともに変化するのか、どちらですか。

 「世界中のさまざまな地点で、さまざまな季節に、また、さまざまな時間帯に撮影した風景を用意しているので、もちろん実際の時間に合わせて朝焼けや夕焼けを楽しんでいただくことができます。10種類の無料映像が用意されており、加えて500本以上の風景から好きなものを選んで購入できます。従来のスマートフォンアプリからの操作に加えて、新たにプラットフォーム連携サービスに対応することで、外気温や天気に合わせて自動的に風景を切り替えることもできるようになりました」

 --ユーザーについて教えてください。アトモフを購入して設置しているのはどんな人ですか

 「ユーザーの多くは景色の悪い部屋に住んでいる人や、そんな部屋で仕事をしている人たちです。高速道路の近くで窓が開けられないとか、建物が密集している地域で隣のビルしか見えないといった環境に変化をつけるために購入されています。売り上げのおよそ7割が消費者向けの販売です」

 --レストランやホテル、店舗といった法人の需要が高いのかと思っていましたので驚きました。イタリアンのレストランなら、フィレンツェのピアッツァ(広場)の風景をデジタル窓に映したいと思うのではないでしょうか

 「もちろんそうした法人顧客も多いですよ。オフィスのロビーやサロンに導入する事例もあります。アトモフにとって今後の成長の鍵になるのは、いかに法人顧客を開拓していけるかというところだと考えています」

 --少し時間を遡(さかのぼ)り、クラウドファンディングについて聞きます。2015年に最初はアメリカのKickstarter(キックスターター)でキャンペーンを行ったんですよね。当時はキックスターターの日本版サービスがありませんでしたし、日本から資金を調達するのはさぞ大変だったでしょう

 「はい。大変な挑戦でした。しかし、量産に必要な資金はありませんでしたし、投資家はデジタル窓の将来性を買ってくれませんでしたから、クラウドファンディングを成功させなければなりませんでした。クラウドファンディング自体が日本ではそれほど流行っていないと思い、まずアメリカのプラットフォームを使うことにしました。約16万ドル(当時のレートで約2000万円)を集め、最初の注文に対応するには十分な額だと思いました」

 --思いましたとは、どういう意味ですか

 「デジタル窓の製造には予想をはるかに上回るコストがかかったということです。最終的にはプロジェクトを支援してくれたバッカーの皆さんにデジタル窓を届けることができましたが、それを可能にするためにはもっと資金が必要でした。キックスターターに続いて、日本のクラウドファンディングサイトのMakuake(マクアケ)で約680万円を集め、さらに日本政策金融公庫からの資本性ローン、VCからの1億円の資金調達も行いました。これでやっと注文分を出荷し、その後の操業を続けるのに十分な資金が調いました」

 ◆予想以上のコスト

 --何があったんですか? なぜ当初の試算よりもそれほどコストがかさんだのでしょうか

 「私と共同創業者の中野は、もともと任天堂で働いていました。私たちにとってハードウエアを造る、そして量産するというのは全く初めての経験でした。メーカーと話していくうちに、必要不可欠なパーツの多くを使うのに、私たちの予測を上回るコストがかかることが分かってきたんです。一つ一つは非常に小さな要件ですが、積み重なると大きくなります。コストがかさんでも、既に設定した小売価格を途中で変えることはできませんでした」

 --メーカーは日本の会社ですか? それとも中国の工場ですか

 「日本国内です。メーカーの皆さんは非常に優秀でした。最初は中国での量産も検討していたのですが、京都と中国を行き来することを考えると、交通費が膨らむと考えたのです。日本メーカーのものづくりの質の高さはいうまでもありません。私たちと密に連絡を取って、さまざまな提案をし、ベストの製品を完成させるために最善を尽くしてくれます。コストを下げるためにも、あらゆる手を尽くしてくれました」

 --日米でクラウドファンディングに違いはありますか

 「例えば、アトモフは量産の過程で問題を解決するのに時間がかかり、出荷が1年近く遅れました。米国では、バッカーの全てがクラウドファンディングはショッピングサイトではないということを理解し、想定外の遅れは普通のことだと分かって支援してくれていたようです。日本でも大半の顧客は理解して辛抱強く待ってくださいましたが、なかには期待を裏切られたと感じた方もいらっしゃいました」

 --日本の消費者は注文が多く、厳しい要求をすることでよく知られて今そのことで、日本でクラウドファンディングを成功させるのは米国よりも難しくなっていると思いますか

 「日本の顧客とは、より緊密にコミュニケーションを取らなければなりません。どんなに取るに足らないと思われるような仕様変更についても、その決断に至った経緯や理由を報告する必要があります。しかし、逆に顧客も私たちとコミュニケーションを取ってくれるのが日本です。米国の消費者に比べると、格段にフィードバックが多いです。肯定的な意見も否定的、というか建設的な意見もいただきます。それが製品の改善に非常に役立ってくれました。ですから、日本でのクラウドファンディングは困難な点もありますが、やってみる価値があると言いたいですね」

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 消費者に関する姜氏の観察は鋭い。これはクラウドファンディングの話にとどまらず、日本で営業するスタートアップが、海外のスタートアップに比べて有利な点と不利な点をうまく説明していると思われる。消費者の要求が高いことにより、日本のスタートアップの多くは最初の製品・サービスをリリースするまでに時間がかかる傾向にある。人に見せる前にこっそり磨き上げ、試行錯誤を繰り返し、完璧なものを造り上げようとするから、リリースが遅い。これによって全体としての製品・サービスの質は高くなるが、一方で大きなリスクもある。競合他社が、完璧とはいえないまでもそこそこの製品を引っさげて先に市場に打って出て、すぐに市場シェアを奪い去ってしまう可能性があるからだ。今後、この傾向にどんな変化が見られるかに注目しておくと、興味深い結果を目撃できるかもしれない。

 文:ティム・ロメロ

 訳:堀まどか

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【プロフィール】ティム・ロメロ

 米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/

消費税率引き上げは安倍政権の使命 国難突破へ今こそやりきる覚悟を(SankeiBiz)

 ちょうど1年前の昨年10月は衆議院が解散され、総選挙となった。安倍晋三総理は「国難突破解散」と命名し、投開票日は10月22日だった。それに勝利した安倍総理は、その後、森友・加計問題に関わる野党の追及をかわしながら、トランプ米政権による米朝会談の実現、朝鮮半島の非核化という世界が注目する北東アジア情勢変化の流れに乗り、日本にとって最大の懸案である拉致問題にも解決の糸口をつかみつつある。(ダイバーシティ研究所参与・井上洋)

 それも追い風として9月の総裁選を予定通り勝ちきり、世界を飛び回っている。今週は訪中し、習近平国家主席との会談も予定されている。米中関係が最悪のこの時期に訪中ができるのは、ある意味、幸運なことだ。「世界の調整役、安倍晋三」というイメージを植えつけられるからだが、残り任期3年の優先課題は何か、冷静に考える必要がある。

 先日、証券会社のとある方と話をした。日米ともに株価が上昇に転じ、相場が過熱していた時期のことだが、「これからは日本株でも、もちろん日本国債でもなく、経営がしっかりしている日本のグローバル企業の外貨建て社債に投資すべきだ」「満期を迎えたら円には換えず、そのまま外貨で持ち続け、適当な外貨建て社債が出てきたら、再投資するのがよい」と彼はいう。すなわち、「円で資産を持つな」ということだ。

 日本はいつまでもインフレ期待が起きず低金利のまま。経済の好循環が続き金融引き締めに転じた米国の状況を踏まえれば、当面、対米ドルで円高になることはあり得ないという見立てである。いつからか、世界経済や国際情勢に危機がくると、「比較的安全な資産の円に買いが入り…」などといわれてきたが、例えば朝鮮有事がこのまま起こらず、半島の非核化も実現、また双方とも得にならない米中貿易戦争が落ち着くところに落ち着けば、これまで幾度となくいわれてきた危機など起こらず、円高に大きく振れることもなくなる。

 日本の人口減少、高齢化への対応の遅れは、公的債務の累増につながり、それも円の信用低下を助長する。むしろ円は、安全でない資産になっていくのだろう。

 先日、安倍総理は、2019年10月の消費税率の10%への引き上げについて、「まさに万全を期す」と述べた。万全を期して消費税率を引き上げるということだと信じたいが、それに躊躇(ちゅうちょ)すれば、財政状況の悪化と円の信用低下を招き、輸入材の高騰に日々の生活が脅かされるという、国民にとって想定外の過酷な事態を招きかねない

 私は先月、内閣府の事業でオーストリア共和国を訪れたが、同国の付加価値税(日本の消費税相当)は20%、複数税率で食料品、日用品などは軽減税率が適用されている。人口ピラミッドは、もちろん日本が先行しているが、日本とほぼ同じ形であり、オーストリアでも少子・高齢化は着実に進んでいる。

 難民も受け入れる移民国家のオーストリアでさえ、その備えに万全を期しているのだが、日本より付加価値税率が高いからといって、オーストリア経済は決して停滞していない。IMFのEconomic Outlook(18年4月)における成長率予測は、日本が1.2%に対してオーストリアは2.6%、1人当たりのGDP(国内総生産)は日本の1.3倍、5万3760ドルである。

 短期的な景気対策も重要だが、消費税率の引き上げが、国民の将来不安を払拭し、経済力の低下に歯止めをかけるものになると私は確信している。

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【プロフィール】井上洋

 いのうえ・ひろし ダイバーシティ研究所参与。早大卒。1980年経団連事務局入局。産業政策、都市・地域政策などを専門とし、2002年の「奥田ビジョン」の取りまとめを担当。産業第一本部長、社会広報本部長、教育・スポーツ推進本部長などを歴任。17年に退職。同年より現職。東京都出身。

【木下隆之の試乗スケッチ】メルセデスベンツ CLS 3代目は一層オシャレに(SankeiBiz)

 新型メルセデスベンツ CLSが、ますますスタイリッシュになって誕生した。初代CLSが発表されたのが2003年のフランクフルト国際自動車ショーだったから、今年で15年になる。その間に2度のモデルチェンジが行われた。新型モデルは3代目となる。(レーシングドライバー/自動車評論家 木下隆之)

 CLSの最大の特徴は、デザインコンシャスであるという点だ。平たい言葉で言えば、「かっこいい」である。

 ボディの骨格となるシャシーやエンジンや、そこで得られたパワーを伝達するトランスミッションやサスペンションといった機械的な基本構成はメルセデスEクラスと共通なのにもかかわらず、クーペ風のスタイリッシュなフォルムとしていることだ。「スポーティなルックスの4ドアセダン」であることがCLSの存在意義。

◆ブランド巧者らしい潔さ

 そのための割り切りは大胆で、新型になってようやく5人乗りになったものの、それまでは後席の定員は4名に限定していたほどだ。ルーフラインをアーチ型に曲線化させたことで、後席の乗員が快適に過ごすための空間が犠牲になってしまったからだ。

 3リッターものエンジンを搭載し、4枚のドアを備えるミドルセダンは、言ってみれば高級セダンの部類に属するだろう。だというのに、乗員を4名に限定してまでもスタイリングにこだわった。市場規模を狭めてまでも「かっこいいセダン」でありたかったことがCLSの個性の源なのである。 

 そのあたりの意気込みはさすがにブランド巧者らしく潔い。

 「室内が狭くてイヤですか。ならばEクラスを買ってください」

 開発担当者の言葉は明快だ。Eクラスという大ヒット作をラインナップしているからできる挑戦だったともいえるが、その潔さが成功に導いたのだと思う。

 2003年のCLSデビューは、世界を驚かせた。同時にあらたな市場を切り開くことになった。その後、アウディは4ドアクーペたるA7を送り出し、BMWは4シリーズと6シリーズに、やはりスタイルを優先したグランクーペを加えた。

◆4ドアクーペのトレンドセッターに

 性能だけでなくオシャレでありたいという流れはSUVにまで波及し、BMWはX系の偶数車に、つまり、X4やX6といった、クーペスタイルのSUVを送り込むまでに市場を開拓したのである。まさに、CLSは、4ドアクーペのセグメントを創出したトレンドセッターといっていい。

 そんな成功を収めたCLSは、新型になってもスタイルに対しての妥協がない。デザインの基本思想を「Sensual Purity(官能的純粋)」としている。フロントエンジンは、人が顎を引き、前方に鋭い視線を送るかのような攻撃的なフォルムとした。サイドビューがCLSのアイデンティティーでもあるアーチ形状のラインを描くのは当然のことだ。

 フロントウインドーの付け根からフロントタイヤまでの距離が長いのも特徴だ。これによって、いわゆるスポーツーカーの基本形であるロングノーズ感覚を強調させているのだ。ウエストラインが高いのも伝統的なデザインである。一方ルーフは低いから、重心が低く見える。まさにスポーティーカーらしさを盛り込んでいるのである。

◆フットワークも軽快だ

 さて、そんなCLSの走りは、スタイルだけが生命線ではないことを感じさせる。着座点が低く、フットワークも軽快だ。路面に吸い付く感覚が強い。スポーツカーフィールが備わっているのである。

 CLSは、「4ドアセダンでもオシャレでいたい」ではなく、「4ドアでもスポーティな走りが欲しい」とするユーザーに受け入れられそうな気がする。

 エンジンバリエーションは2種類。ディーゼルエンジンの直列4気筒の1.9リッターターボと、ガソリンを燃料とする直列6気筒3リッターターボである。

 ディーゼルを搭載する「220dスポーツ」は、さすがにガラガラとしたディーゼル特有の異音と振動が強い。だが、ガソリン仕様の「450 4マチックスポーツ」は、しっとりと上質なフィーリングに終始する。やはりスタイリッシュなCLSには、上質な走り味のガソリンが似合う。

前日銀総裁、量的緩和「長続きしない」 白川氏、会見で根本的課題の取り組み求める(SankeiBiz)

 白川方明(まさあき)・前日本銀行総裁は22日、日本記者クラブでの会見で「日本経済が直面する問題の答えは金融政策にはない」と述べ、日銀が取り組む大規模な金融緩和は経済再生の直接的な“処方箋”にはならないとの見方を示した。

 世の中に大量のお金を供給する量的緩和策は需要を一次的に喚起する時間稼ぎに過ぎないとの分析から、人口減少と財政悪化という根本的な課題に取り組むよう求めた。

 総裁在任中、小出しの金融緩和がデフレを悪化させたと批判を浴びた白川氏。だが、その反省で大規模緩和を導入した後任の黒田東彦総裁も2%の物価上昇目標を達成できずにいる。

 白川氏は、量的緩和は需要の先食いで年々効果が低下するため「長続きはしない」と説明。日本経済の根本的な問題は物価下落にはなく「人口減少に経済社会が十分適合できていないこと」であり、「時間を買っている」間に少子高齢化に伴う社会保障の赤字削減など財政の持続可能性確保を急ぐべきだと強調した。

 また、日銀が取り組んでいる“非伝統的な金融政策”は経済活動の下押しを防ぐために効果があったとしながらも、その副作用として日本人が根本的課題を直視せず「(金融緩和で)問題が解決する」と誤解してしまったと指摘する。

 白川氏は現在、青山学院大特別招聘(しょうへい)教授。2013年3月に日銀総裁を退任した後は公の場で積極的に発言してこなかったが、総裁時代を振り返る著書を今月出版したのを機に会見した。

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人材派遣のPEO、契約満了者の再就職支援 正社員化を推進、5年後に4倍(SankeiBiz)

 自動車メーカーなど製造業への人材派遣を手掛けるPEOは、正社員を5年後に4倍に増やす計画だ。2015年9月末に施行された改正労働者派遣法によって、派遣労働者が同一派遣先で働ける上限が原則3年となり、今年9月末以降、使用者が契約を満了した労働者を辞めさせる“雇い止め”が大量に発生する可能性がある。このため対象となる派遣労働者を正社員にして、新たに自動車工場に派遣し直すことで、労働者の雇用確保と業務拡大の一石二鳥を狙う。

 業務に習熟した人材を有効活用することで、製造業の人手不足解消にもつなげる。

 具体的には自動車メーカーの契約期間満了者を、PEOが正社員として雇用し、再就職を支援する。同社社員は製造業での経験を積み、技能の習熟度が高いとみられていることから、各メーカーは積極的に受け入れている。

 被雇用者としては正社員で身分が安定するメリットがある。同社が独自に年収を調査したところによると、一般的な製造派遣が260万~280万円であるのに対し、PEOでは400万~490万円と大幅な収入増となるという。購買意欲も高まり、経済活性化にも寄与するとみられる。

 同社独自の研修によるキャリアアップ教育の機会も設けている。製造系出身のキャリアコンサルタントを配置し、明確なキャリアパスを明示する。希望や能力に応じて製造業以外の業種に就労したり、教育や採用の担当者へと活躍の場を広げられるほか、役員からの推薦で経営層として昇格することも可能となっている。

 西村洋平社長は「自動車メーカーを中心とした日本の製造業の競争力を高めるため、将来は外国人を含めて当社正社員の雇用を増やしていく」と話している。

 PEOは東証1部上場の人材派遣会社、アウトソーシングの100%出資子会社として14年に設立された。「PEO」は「習熟作業者派遣組織」の意味で米国など海外では普及している。さまざまな企業の従業員をPEO会社と共同雇用して、各企業の生産状況に応じて派遣する仕組みだ。

 しかし、日本では法的に共同雇用が認められていないため、会員企業に対して同社が雇用した従業員を派遣する形態で事業を展開している。

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日本企業のベトナム投資相次ぐ 小売り、教育産業も…背景には文化的な近さや人的交流(SankeiBiz)

 日本企業が進出を加速させるベトナムは生産拠点としてだけでなく市場としての魅力も高まっている。日本のベトナム投資は昨年、金額、件数ともに過去最高。進出企業の業種は製造業に加え、小売業やフィットネスクラブ、ダンス教室など多様なサービス業に広がる。背景には文化的な近さや人的交流もあるとされ、両国はさらなる関係強化に向かっている。

 三井物産がベトナムで再生可能エネルギーの普及やスマートシティー(環境配慮型都市)の開発に乗り出す。既に都市開発を手掛ける現地複合企業のT&Tグループと覚書を結んでおり、12億ドル(約1300億円)規模を投資する見通し。6%台の経済成長が続くベトナムは都市開発の需要が高まっており、インフラ開発と連携した「街ごと輸出」が加速している。

 「わが国に最も投資してくれている国は日本です」

 ベトナムのフック首相は10日、日本貿易振興機構(ジェトロ)が都内で開いたイベントで謝意を示した。今年1~8月の日本からの直接投資額(認可ベース)は70億ドル(約7900億円)超で、国別首位。フック氏は「インフラや環境、農業IT化」への投資を呼び掛けた。

 日本は昨年、投資額を前年の3.4倍(約87億ドル)に急増させ、件数も601件に達した。従来は人件費高騰の中国からベトナムに生産拠点を移すスタイルが主流だったが、最近は消費市場を狙う小売業や教育産業の進出も目立ってきた。

 ファーストリテイリングと三菱商事は8月、カジュアルウエア「ユニクロ」のベトナム1号店を来秋に開くと発表。既に4カ所にショッピングモールを持つイオングループはさらに2カ所で建設計画を推進中だ。健康志向の高まりでルネサンスが展開する日本式フィットネスクラブも人気。「水難事故から子供を守ろうとジュニア向け水泳教室も好調」と、ルネサンスは3カ所目の開設も見据える。北海道の学習塾大手、練成会グループ(札幌市)もベトナムに進出。理科実験などカリキュラムの差別化で業績を伸ばす。子供にヒップホップなどを教える日系ダンス教室ADSJも人気だ。

 ジェトロによると、中小企業の進出相談件数でもベトナムは圧倒的首位。市場の魅力に加え、「治安の良さや儒教に近い高齢者を敬う文化が、経営者が投資を決断する最後の決め手になっている」という。

 技術を途上国に伝える国際貢献として始まった技能実習制度でベトナム人実習生が急増していることも要因だ。ジェトロの北川浩伸ハノイ事務所長は「信頼関係が生まれ、帰国した実習生らと協業でベトナム市場を開拓する例が増えている」と話す。(上原すみ子)

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カルソニック、フィアット部品部門を買収 8000億円、次世代車へ相乗効果(SankeiBiz)

 大手自動車部品メーカー、カルソニックカンセイ(さいたま市)は22日、欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門を買収すると発表した。買収額は62億ユーロ(約8000億円)。事業の統合により売上高は約2兆円となり、部品業界トップ10に迫る規模に躍り出る。運転の自動化が進む次世代車市場をめぐる国際競争で生き残りを目指す。

 カルソニックの親会社CKホールディングス(HD)が、イタリアのミラノに本社を構えるFCAの部品部門マニエッティ・マレリを買収。来年6月までに手続きを完了する予定だ。CKHDは買収後に、社名を「マニエッティ・マレリCKホールディングス」に変更するという。

 FCAが売却に動いた背景には、次世代車をめぐる開発費が単独では賄いきれないほどに膨れ上がっている現状がある。同様の課題を抱えるカルソニックも、「電動車や自動運転車の普及を見据えた部品の開発や供給で統合先との相乗効果を発揮したい」と強調する。

 カルソニックは、複数の部品や機能を組み合わせる「モジュール」の生産が強み。マニエッティ・マレリは電子部品やサスペンションなどで実績を積み上げており、両社の強みを融合して次世代車向けモジュールの競争力を高める狙いだ。

 販売面でも、カルソニックが得意なアジア・北米とマニエッティ・マレリが強い欧州などの地域を補完し合い、自動車産業との取引拡大につなげたい考え。カルソニックのベダ・ボルゼニウス最高経営責任者(CEO)は「革新的な新製品の開発に一層投資するための意義のある統合だ」とコメントを発表した。

 カルソニックは日産自動車の子会社だったが、2017年に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下に入った。18年3月期の連結売上高は9986億円。一方のFCAは中国での販売の苦戦が響き、厳しい経営のかじ取りを余儀なくされている。18年3月期の売上高は82億ユーロだった。

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政府、消費税対策で住宅ポイント検討 支出拡大なら財政負担で批判も(SankeiBiz)

 政府が2019年10月の消費税率10%への引き上げにあわせた景気下支え策として、住宅の新築や増改築にポイントを付与する制度の導入を検討していることが22日、分かった。また額面以上の金額で買い物ができる「プレミアム付き商品券」の発行も検討。同じく対策の柱と位置付けるキャッシュレス決済へのポイント還元策で恩恵を受けない高齢者などをカバーしたい考えだ。

 対策は基本的に19年度予算案に盛り込むが、支出対象を広げすぎれば財政負担が増し“バラマキ批判”も強まりかねない。

 住宅ポイントは、一定の要件を満たした住宅を新築したり増改築したりした際、商品券などと交換できるポイントを付与する制度だ。

 参考にするのは15年に実施した「省エネ住宅ポイント制度」で、太陽光パネルを備えるなど省エネ性能の高い新築に1戸30万円分を付与するなどした。今回は省エネ性能だけでなく、耐震性やバリアフリー機能なども対象とし「社会的なニーズに広く応える制度」(幹部)にしたい考えだ。

 一方、同じ耐久財でも、省エネ家電の購入を促進するため09~11年に実施した「家電エコポイント制度」は、需要の先食いに過ぎないとの批判があったことも踏まえ導入しない方向だ。

 プレミアム付き商品券は、例えば5000円で買った商品券を使って5000円を超える買い物ができる仕組み。自治体などが発行し上積み分の経費を国が補助する。

 政府は、キャッシュレス決済で商品を購入した消費者に対し増税した2%分のポイントを返還する制度を検討しているが、カードを持たない高齢者や子供は対象外となる。プレミアム付き商品券は、こうした対象から外れる層にも恩恵を及ぼす狙いがある。

 公明党の山口那津男代表が「(過去の同じ政策で)効果は実証済みだ」と述べるなど与党からも導入を求める声が強まっていた。

 こうした対策は19年度予算に盛り込む。今年8月末に締め切きった概算要求で、要求額が102兆円超に達した一般会計予算とは別枠をあてる。

 政府・与党は必要な支出を精査するが、来年夏に参院選を控えており政治サイドから歳出圧力が強まる可能性がある。財源確保のため国債増発を迫られ、財政健全化の取り組みが遅れることになりかねない。