「大迫半端ない」を導いた西野監督の調整力(東洋経済オンライン)

6/20(水) 15:21配信

東洋経済オンライン

 2012年からコロンビアを率いて2014年ブラジルワールドカップ8強入りしたホセ・ペケルマン監督と、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の解任によって4月から急きょ日本代表の指揮を執り始めた西野朗監督。大舞台の経験値では圧倒的に前者の方が優位で、日本の劣勢が有力視されていた。

 ところが、6月19日の2018年ロシアワールドカップ初戦ではコロンビアにとって想定外の出来事が次々と起きる。絶対的10番のハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)が負傷で控えに回らざるを得ず、立ち上がり早々の3分に期待の22歳のDFダビンソン・サンチェス(トッテナム/イングランド)が大迫勇也(ケルン/ドイツ)に置き去りにされるという信じがたいシーンが現実になった。

 この決定機はGKダビド・オスピナ(アーセナル/イングランド)がいったんは弾いたものの、香川真司(ドルトムント/ドイツ)にダイレクトで打たれたシュートをMFカルロス・サンチェス(エスパニョール/スペイン)がペナルティエリア内でハンド。ボランチの軸を担う選手が一発退場となり、10人での数的不利を強いられた挙句、日本に1点をリードされるという二重苦に直面した。

■想定外だった相手エースの不調

 前半のうちにMFファン・フェルナンド・キンテーロ(リバープレート/アルゼンチン)の直接FKで1-1に追いついたまではよかったが、後半になって貴重な同点弾を挙げた彼とハメスを交代してからリズムがおかしくなった。

 「ドイツ・ブンデスリーガで見る本調子のハメスとは程遠いかなという感じはしました」と長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)も語った通り、エースの不調がチームの足かせになってしまう。「エル・ティグレ(虎)」の異名を取る同国代表最多得点者のラメダル・ファルカオ(モナコ/フランス)は孤軍奮闘していたが、勝ち越し点を取るだけの迫力は出せず、逆に日本の大迫に「半端ない決勝弾」を叩き込まれる。

 「まったく違う結果を予想していたし、勝利を期待していた。我々はポゼッション(ボール支配率)が低く、いつもより疲労していた」と百戦錬磨の知将は1-2の黒星にチームマネージメントのミスを認めるしかなかった。

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映画「ウインド・リバー」を作った本当の狙い(東洋経済オンライン)

6/20(水) 6:00配信

東洋経済オンライン

 数ある失踪者の統計にネーティブアメリカンの女性のデータは存在しない。実際の失踪者の人数は不明である――。

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 ネーティブアメリカンの保留地が抱えるアメリカの闇を描き出したクライム(犯罪)サスペンス映画『ウインド・リバー』(7月27日全国公開予定)には、こういったショッキングなテロップが登場する。出演者はジェレミー・レナーとエリザベス・オルセン。「大ヒットシリーズ『アベンジャーズ』に登場する弓矢の使い手ホークアイと、心理操作を行う超人スカーレット・ウィッチが共演」という紹介の仕方もできそうだが、ここで描かれている社会背景はズシリと重い現実を突きつける。

 本作の舞台はアメリカ中西部にあるワイオミング州のネーティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。深い雪に閉ざされた山岳地帯で、ネーティブアメリカンの少女の死体が見つかるところから物語は始まる。

■「ネーティブアメリカンの保留地」が舞台

 第一発見者となった野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、薄着で裸足、かつ血を吐いた状態で凍りついたその少女が、娘エミリーの親友ナタリー(ケルシー・アスビル)であることを知り、愕然とする。そんな少女の無残な姿に心を痛めたコリーは、新米の女性捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)の捜査に協力するというストーリーだ。

 「ネーティブアメリカンの保留地」とは、ネーティブアメリカンが住む土地のことだが、アメリカのジャクソン大統領が1830年に制定した「インディアン強制移住法」で、先住民であるネーティブアメリカンを強制移住させたことに端を発する。

 荒れ果てた大地に移住させられた彼らは、アメリカ人との同化政策により、彼ら特有の文化を破壊されるなど、多大なる苦しみの歴史を余儀なくされることとなる。1924年には市民権を手に入れたものの、彼らの貧しい暮らしは改善されず。この地域では、現代でも貧困やドラッグ、アルコール中毒、暴力など慢性的な問題を抱えたままとなっている。 

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世界中で急激に進む少子化にどう向き合うか(東洋経済オンライン)

6/20(水) 6:00配信

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 合計特殊出生率(total fertility rate)とは、女性が生涯に産む子の平均数を表す。以下、出生率と略記する。これが2であれば、1人の女性が平均2人の子を産むことを意味する。若年死亡も考慮すると、人口を維持するためには、これが2を若干上回ることが必要である。

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 さて世界銀行の統計によれば、2016年度の全世界合計の出生率は2.44である。2をかなり上回っているから、死亡を考慮しても世界の人口は増加傾向にあると言える。なお、1968年度の出生率は4.92であったから、半世紀で半減したことになる。

 少子化が叫ばれるわが国ではどうか。2016年度は出生率1.44、2017年度1.43と2を大きく下回るので、このままだと人口は減少していく。

■発展途上国でも出生率は低下している

 さて、出生率は生活水準が向上すると減少する傾向を持つ。世界の先進国は軒並み2を下回っている。相対的に高いことで知られるフランスも1.96である。いくつかの主要国を拾ってみると、アメリカは1.82、福祉国家として知られるスウェーデンでも1.85、イタリアは1.35と日本よりも低い。

 わが国では、少子化の原因を、新婚層の安定雇用や育児環境整備の不足に求める声も多い。これらの問題の対策は極めて重要で、国の経済の面からも、個人の幸福の面からも、優先的な対応が必要である。これが進めば、先進国の中での上位の水準、出生率でいえば1.8程度までの改善は夢ではない。しかし、こうした政策で先進国各国で並進する人口減少自体を止めることは難しい。

 では、発展途上国、例えばバングラデシュはどうか。2016年度バングラデシュの出生率は2.10である。幼児死亡率の高さなどを考慮すると、これはほぼ人口維持水準といえる。

 アジアの新興国を見ると、まず人口13億の大国である中国は1.62。経済発展して久しいシンガポールは日本を大きく下回る1.20。マレーシアは2.03、タイは1.48。理想的な人口ピラミッドをもつインドネシアで2.36、インドはそれより若干低い2.32である。いずれの国でも出生率はこの50年間にほぼ半減しているのである。

 では、2065年に100億人を超すといわれる「地球の人口爆発」は、どこで起きるのか。いわゆるサブサハラ、外務省の『開発協力白書』では「根強い貧困や経済格差、インフラ整備の遅れや低い農業生産性、産業人材の不足の問題を抱えて」いるとされる、アフリカ南部の諸国である。サブサハラ地域の出生率は、以前より低下しているとはいえなお4.8という高い値である。

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不登校児をゼロにした元中学校長の「非常識」(東洋経済オンライン)

公立学校でもここまでできる。子どもを育てる“学校マネジメント”とは。『クリエイティブな校長になろう』を書いた広島県の平川理恵教育長に聞いた。

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 ──広島県に赴任し、1カ月半ですね。

 今までに40を超える公立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に足を運んだ。夏休みまでの約3カ月で県内23の全市町にあるすべての公立学校を回ろうと、むちゃな要望を事務局に出した。県議会開催などもあるので、7月17日を最終日として訪問する予定にしている。

 ──幼稚園を除いても県内の公立学校数は800校を超える? 

 市町立学校を合わせると、小中が714校。高校が94校、特別支援学校が18校。児童・生徒数は27万人を数える。

 ──前任の横浜市立中川西中学校のような、生徒数が1000人を超えるところは? 

 いくつかはあるが、小学校でも多いところで800人ぐらい。

 ──この本は横浜の中学校での話が中心ですね。

 3月末に刊行して、校長としての8年に区切りをつけた。

■教育界も理念が大事

 ──はっきりした理念を打ち出していますね。

 10年前までビジネス界にいたが、そことの違いはおカネや利益のことぐらいであり、教育界も理念が大事だと判断した。校長としてもマネジメントのやり方は同じでよかった。

 ──「自立貢献」をモットーに。

 広島県でも、自立貢献を教育の個人的な理念の柱としている。

 皆さんも、たぶん今の日本の沈滞ムードを何とかしなければと思っていることだろう。だがその一方で、自分が頑張らなくても誰かがやってくれるとも思っているかもしれない。そういうメンタリティが大いにあると、校長就任時から、厳密に言えば10年前からずっと思っていた。覚えられないような教育目標を掲げるのではなく、一言でまとめた教育理念として、自立貢献を「上位目標」に掲げてきた。

 ──上位目標? 

 集会時のあいさつでも、中川西中の教育理念は自立貢献ですね、との言葉から必ず始めた。生徒の皆さんが教育を受けているのは、大人になったときに自立するため。貢献も大それたものでなくて、自分がいるから家族が幸せとか、あるいは友だちに迷惑をかけないとかいったことも貢献に値し、貢献にはいろいろな形があると子どもたちに言ってきた。

■不登校生徒をゼロに

 ──不登校生徒をゼロにしたそうですね。

 ドイツ発祥のイエナプランの考え方を多様に取り入れた。ただ、イエナプランは中でも初等教育との親和性が高い。中学校全体で採用するものではないととらえ、異年齢学級や自分で時間割を決めるなどの形で取り入れた。

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31歳でプロ野球を去った夫を変えた妻の覚悟(東洋経済オンライン)

6/19(火) 14:00配信

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プロ野球シーズン真っ盛り。連日連夜にわたって熱戦が繰り広げられている。そこで戦う選手の夫を支える妻を描く「プロ野球選手の妻たち」(TBSテレビ、次回は6月20日〈水〉よる7時から放送、地域によって放送時間は一部異なる)。「バース・デイ」「プロ野球戦力外通告」など、TBSのスポーツドキュメンタリーのスタッフが手掛けるドキュメンタリー番組だ。過去の放送分から、過酷なプロ野球の世界に人生を翻弄されながらも、力強く生きていく夫婦の実像を紹介しよう。

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 「キダゴ」という愛称で呼ばれ、ファンに愛されていた元プロ野球選手・喜田剛(きだ・ごう)をご存じだろうか。1979年生まれ、福岡出身。福岡大学を経て2001年のドラフト会議で阪神タイガースに入団後、広島東洋カープ→オリックス・バファローズ→横浜ベイスターズ(現:横浜DeNAベイスターズ)と、4球団を渡り歩いた。

 喜田選手は2002年に行われた第14回アジア競技大会では、日本代表チームに参加。チームの主軸として活躍し、チームの銅メダル獲得に貢献した。

■お嬢様大学の現役女子大生がプロ野球選手の妻へ

 今から約13年前、神戸のお嬢様大学に通う女子大生だった彩子さんは、人気球団・阪神タイガースのイケメン選手である喜田剛さんと出会った。共通の知人の紹介で知り合った2人。その当時、剛さんはプロ4年目で期待されていたが、結果を出せずにいた。

 そんな剛さんと彩子さんが交際を始めて8カ月後に思いもしない事態が起きる。シーズン途中に、剛さんが広島にトレードされたのだ。このとき、彩子さんは大学4年生。突然のことに驚いたものの、彼の真面目な人柄に惹かれ、なんと在学中に結婚し、夫とともに広島についていった。

 妻・彩子さんはそのときを振り返る。

 「主人がまた新しい場所で頑張れたらいいなと。一花咲かせてほしいなっていう気持ちで広島に行きました」(彩子さん)

 夫は奮起し、妻のためにも、結果を出すと誓った。すると、プロ初ホームランを打ち、さらには、重要な試合でサヨナラヒットを放つ大活躍を見せた。

 年俸は1000万円にアップ。そして、結婚2年目には、長女が誕生。彩子さんは、プロ野球選手の妻として、家庭を守り幸せを噛みしめていた。

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梨田監督「電撃辞任」で揺れる楽天が目指す先(東洋経済オンライン)

 皆さんこんにちは。プロ野球解説者の礒部公一です。

 セ・パ交流戦もほぼ日程を消化し、東京ヤクルトスワローズが球団史上初の勝率1位を決めました。

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 交流戦の順位は、楽天を除くパ・リーグ球団が予想通り上位を占める結果になり、やはり今年もパ・リーグが勝ち数でセ・リーグを上回るという例年通りの展開で終わろうとしています。

 そんな中、やはりこの話題に触れないわけにはいかないでしょう。

 6月16日(土)阪神タイガースとの試合後、楽天で3年目の指揮を執っていた監督・梨田昌孝氏が成績の低迷を理由に辞任されるという、異例の事態が起こりました。

 これは63試合目での出来事でしたが、今はなき近鉄バファローズの現役時代から指導していただいて、昨年まで同じユニフォームを着て戦い、公私共々お世話になってきた野球界での偉大な先輩です。驚きと寂しさを痛感し、動揺を今もまだ隠しきれません。

 今日はいつものコラムのスタイルではなく、梨田元監督スペシャルでお送りしたいと思います(これ以降、「梨田さん」とお呼びします)。

■出会いは20年以上前

 梨田さんとは、私がプロ野球に足を踏み入れた1年目からのお付き合いになりますから、出会ってからはかれこれ21年です。

 とはいえ、私の入団当時は、近鉄バファローズの2軍監督として指揮を執られており、対して1年目からほぼ一軍登録をされていた私ですから、当初はあまり顔を合わせることはありませんでした。しかし、2000年から一軍監督に就任され、選手と監督という直接的な師弟関係に。

 監督になられたときの印象は、「男前でダンディな方だなあ」と率直に思ったのをよく覚えています。

 指導スタイルは選手との「コミュニケーション」をしっかりと取られ、怒ることはほとんどなく、選手のやりやすい環境を作ってくれる、というもの。

 選手の自主性を尊重してくれるので、野球がとても楽しかった。

 そのスタイルは、楽天の監督になられてからも、なにも変わっていらっしゃらなかったのです。とにかく「和」を大事にする姿勢は、ずっと不動のものでした。

 当時は捕手と外野手の二足のワラジを履いていた私でしたが、梨田さんから「もう一度、捕手一本でやろう」と提案があり、捕手としての“いろは”を教えていただきました。

 捕手として大活躍された梨田さんから教わったことは、リードやキャッチングなどテクニック面だけではなく、捕手とはどういうものかという心構えまで含めて多岐に渡り、とても沢山のことを学ばせていただきました。

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先進国で唯一「がん死」が増加する日本の悲劇(東洋経済オンライン)

6/19(火) 10:16配信

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世の中には、実に多種多様な「健康書」が氾濫している。しかし医者によって言っていることも大きく違い、何を信じたらいいのかわからない。「人生100年」時代、本当に信頼できて、誰でもお金を掛けずに毎日できる簡単な健康習慣とは、いったいどのようなものなのか。
4月26日、東洋経済オンラインのメルマガでもおなじみのムーギー・キム氏の渾身の著作『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)が、『ベスト・パフォーマンス編』と『病気にならない最先端科学編』の2冊セットで刊行された。本書は日本を代表する50名に上る名医・健康専門家による直接解説を、東大医学部で教鞭をとる中川恵一氏、順天堂大で教鞭をとる堀江重郎氏が二重三重にその正確性をチェックしたうえで制作されている。

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東洋経済オンラインでは同書を元に、多くの名医たちが実践しているおカネの掛からない確かな健康法を紹介していく。最終回は、最善のがん治療法を解説する。
 病気は予防するに越したことはない。それはがんも同様である。がんとは、遺伝子が傷つき、突然変異を起こした細胞が、とめどなく増殖し、臓器を侵食し、毒素を血中や全身にばらまく病気である。

■発がんリスクを高める要因とは? 

 B型・C型肝炎ウイルスなどへの感染も、発がんリスクを高めるという。東京大学医学部附属病院放射線科准教授・中川恵一氏はこう解説する。

 「B型・C型肝炎ウイルスが肝臓がん、ヒトパピローマウイルスが子宮頸がん、ヘリコバクターピロリ菌が胃がん、というようにウイルスや細菌などの持続的な感染によって、慢性的な炎症が起こり、細胞の遺伝子が損傷しやすい臓器環境が生じることでも、がんは発生します」

 ワクチンなどによる感染予防や、治療による感染体の駆除が行われる。持続感染は症状がないことも多いため、感染の有無を知っておくことも非常に重要である。

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「もう1つのW杯」に挑む、諸江剣語31歳の挑戦(東洋経済オンライン)

6/19(火) 9:00配信

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 「よしっ、今日も自信をつけていこう!」

 小柄だがガッチリした体躯の男は、大きな声を発すると、さすがに無理があるだろうと思われる重さ160kgのバーベルを、苦悶の表情を浮かべながら、一気に持ち上げた。その声の主は、日本フットサルリーグ(Fリーグ)所属フウガドールすみだのキャプテン、諸江剣語(31)だ。サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会が開幕したこの日、諸江は薄暗いトレーニングジムの中で、パーソナルトレーナーの指導のもと、一心不乱に肉体改造に取り組んでいた。

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 「1人ではここまで自分を追い込むことはできませんし、身体の使い方も意識させてくれるので、プレーにも良い影響が出ています。調子はいいです」

 2018-2019シーズンのFリーグ開幕を目前に控えたこの日の諸江は、2年間続けてきた肉体改造の手応えを明るい表情で語る。

■フットサルとの出会いで抱いた希望

 幼い頃から、スピードとテクニックに秀でていた諸江は、サッカーの名門、静岡学園高校でもレギュラーとして活躍したが、描き続けてきたプロサッカー選手になるという夢をかなえることはできず、卒業後に帰省した。失意を紛らわそうと、地元の友人に誘われてフットサルを始めた。

 地元の石川県にある強豪チームに加入して全国大会に出場すると、当時国内最強と言われたプレデター浦安(千葉県)を相手に、何度もドリブルで突破していく衝撃のプレーを見せる。その試合を観戦していた当時のフットサル日本代表監督セルジオ・サッポ氏は、諸江やチーム関係者に、早く上京してもっと高いレベルでプレーすることを強く勧めた。日本代表の指揮官に適性を見いだされた18歳の諸江は、こうして、フットサルの世界に引き込まれていった。

 諸江が入団した当時のプレデター浦安には、日本フットサル界を代表する選手たちが数多く在籍していた。若手だった諸江は、チームから、攻撃の起爆剤になるような思い切ったプレーを求められたが、気が優しく周囲へ遠慮がちだった若者は、名だたる先輩たちに囲まれ、自分の特徴を出すことができずにいた。

 ゴールに向かってドリブルできるのにパスを出してしまったり、前を向けるのに後ろを向いてしまう。消極的なプレーが目立つようになっていき、フットサル日本代表監督に認められた才能は、いつしか輝きを失っていた。

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日本の人口減少を招いている残念すぎる真実(東洋経済オンライン)

6/19(火) 9:00配信

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■「人口減少」や「少子高齢化」を考える

日本社会が直面している大きな課題である「人口減少」や「少子高齢化」をどう考えたらいいでしょうか。拙著『教養が身につく最強の読書』でも触れていますが、さまざまな識者の意見をただ「ああそうか」と読むだけではなく、自分の頭で考えるための本を紹介します。

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 まず、1冊目はこちらです。定番といいますか、必読の古典、『人口論』(マルサス/永井義雄<訳>中公文庫/1973年)です。

 この本は、18世紀の終わり、フランス革命後の時代に英国で著された古典で、読者のみなさんも名前ぐらいはご存じだと思いますが、実際に読んだ人は少ないのではないでしょうか。

 古典は、結論は簡単なのです。マルサスの場合も、食糧は算術級数的にしか増えないけれども、人口は幾何級数的、すなわちネズミ算的に増える、ということを言っているわけです。

 たとえば、ほぼ同じ時代に生きたアダム・スミスの『国富論』に書かれた「見えざる手」「市場主義」というコンセプトは誰でも知っていますが、果たしてみなさんはそのコンセプトを生み出すに至るまでのプロセスをどこまで理解しているでしょうか? 

 少子化とはとどのつまりは人口問題です。そこでマルサスの『人口論』では、マルサスが200年前、どのような事実とデータに基づき、どういう思考プロセスでこうした結論に至ったのかを体得する必要があるでしょう。

 国富論も同様です。経済と人口は相関関係がとても強いので、この機会に『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』〈上・下〉(アダム・スミス/山岡洋一<訳> 日本経済新聞社出版局/2007年)にもぜひ手を伸ばしてください。

 『人口論』の初めには、こうあります。「人口の原理について、将来の社会の改善に役立つように、ゴドウィン氏、コンドルセ氏、およびその他の方々の論考にふれつつ、論じる」。

 序文によればマルサスの人口論は、ゴドウィン氏の著作に収められた論文の主題「貪欲および消費」について、マルサスが友人(父ダニエルを指す)と語ったことから生まれた本だそうです。

 さて、マルサスが200年前に導き出した結論はどうでもいいのです。マルサスの思考のパターンをよすがとして、現代の人口問題を考えるツールにすればいいのです。

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専業主婦「驚異のネットワーク」の構造的不安(東洋経済オンライン)

6/19(火) 6:00配信

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新聞記者を辞めた後、会社員と女性活躍に関する発信活動、さらに大学院生と3足のわらじを履きながらバリバリ働いてきた中野円佳さん。ところが2017年、夫の海外転勤により、思いがけず縁遠かった専業主婦生活にどっぷり浸かることに。そこから見えてきた「専業主婦」という存在、そして「専業主婦前提社会」の実態とそれへの疑問を問い掛けます。
前回、専業主婦の家事・育児が高度化していることについて書いたが、その原因の1つに同調圧力や横並び意識、対抗意識などにより際限なくレベルが上がってしまうことがあげられる。今回はその「専業主婦コミュニティ」について考える。

■ママ友と2人、道路で泣きそうになった日

 シンガポールでのある朝、自分の子どもたちを幼稚園に送っていった後のこと。大通り沿いの横断歩道の向こうに、ママ友が立ち往生しているのが見えた。脇にはベビーカーと、ベビーカーに乗っておらずそれぞれ別の方向に動こうとする2歳と4歳。

 いつもニコニコしている彼女が苦戦している気配を感じ、「あれ、ベビーカー乗ってくれないのかな。幼稚園行きたがらないのかな」と思った。空のベビーカーを押しながら二人と手をつなぐのは物理的に手の数がたりないので、大通りを渡るのは怖い。急いで横断歩道を渡り、しかし呑気に「おはよ~」と声をかけた。

 ママ友は、私を見るなり、「あっまどかさん」とこわばっていた顔をゆるめ、泣きそうな顔になった。私の肩に手をおき、一瞬だけよりかかるようにしてうつむくと「なんか、ホッとしちゃって…ごめん」と言った。本当に涙が出かかっていたのかもしれない。

 一息ついて、彼女はもう大丈夫、というように顔を上げ、「医者にいかないといけないんだけど、車に断られちゃって」といつものように微笑んだ。

 「だめだね、余裕なくしちゃって」。

 シンガポールは配車タクシーシステムが便利だが、子連れだとチャイルドシートがないからと断られるケースがある。彼女が流しのタクシーを拾い、ベビーカーを乗せる間、子どもたちと歩道で待った。3人が窓から笑顔で手を振るのを見送ってから、彼女の手のあたたかさがまだ肩に残っているように感じて、なぜか今度はこちらが泣きそうになった。

 シンガポールではタクシーやGrab(配車システム)が安価で気軽に使え、日本のママたちに比べればめちゃくちゃ恵まれている。だが、私たちは日中、しばしば、母子だけで、世界に放り出されている。昼間のふとした苦戦の瞬間、一人ぼっちで幼い子どもたちを守らないといけない重責。そこに父親はいない。

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