「個々人に合わせた美の価値 AIで提供」資生堂社長・魚谷雅彦氏(日刊工業新聞電子版)

―2020年度に売上高1兆円、営業利益1000億円超えを目指す中長期戦略「VISION 2020」の第二段階に入ります。
 「目標に向けてどのように3年を進めていくか策定中だ。積極的に投資を進めていく。需給ひっ迫しており供給力を高めるために、那須工場(栃木県大田原市)、大阪新工場(大阪府茨木市)が着工する。横浜みなとみらい21地区で建設中の研究所『グローバルイノベーションセンター』は18年末に稼働する」

―人工知能(AI)やIoTを用いたパーソナル化について。
 「自宅にいても肌診断や化粧のシミュレーション、電子商取引(EC)経由での商品購入など、個々人に合わせた美の価値の提供にはデジタル技術が欠かせない。店頭でのカウンセリングも個人に対応しているが、時間と場所が限定的で、若者や忙しい現代人に対応できているとはいえない。いつでも・どこでも・どんな条件においても美の価値を提供できる方法論はデジタルになる」
 「個々人のニーズに応える方法を追求し、モデルを作ろうとしている。AI技術を持つ米ベンチャー・ギアランの買収など、当社が持つ化粧品作りのノウハウとデジタル技術を合わせて何ができるかを実験中。もともとデータを通じた顧客との接点作りに強みを持つ。化粧品業界のトップランナーを目指して手探りをしている」

―訪日外国人(インバウンド)需要をどう取り込みますか。
 「インバウンドを日本国内のみでなく、ボーダーレスで捉えている。日本と中国、トラベルリテールを一つの市場に捉えたボーダーレスマーケティングに力を入れている。広告や商品展開などマーケティングの同期化が重要。得意分野なので効果を上げている」

―トラベルリテール事業も伸びています。
 「空港免税店は既存の1店舗当たりの売り上げが伸びており、収益が好転している。空港での広告やイベントなどを積極展開し、16年度比で約85%伸びている。上海や香港、シンガポール、関西国際空港でも資生堂の広告が増えたと言われる」

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温暖化交渉、日本の非国家主体は存在感示せるか(日刊工業新聞電子版)

■主導するノンステートアクター

 2018年も企業、自治体、非政府組織(NGO)が温暖化交渉を主導する。彼らはノンステートアクター(非国家主体)と呼ばれ、気候変動枠組み条約締約国会議(COP)でも、役割が認められている。12月開催のCOP24(ポーランド)でパリ協定の運用ルールが決まる。人類史に刻まれる重要な会合で、日本のノンステートアクターは存在感を示せるのか。

 17年12月、フランス・パリで気候変動サミットが開かれた。パリ協定の誕生地で、温暖化対策への決意と結束を再確認しようと仏マクロン大統領が呼びかけ、日本を含む55カ国の首脳級が集まった。

 だが、主役は“国家”ではなかった。仏保険大手アクサは石炭関連企業から24億ユーロの投資を撤退すると表明。米資産運用会社ブラックロックは120社に対し、気候変動が与える経営リスクを開示するように要求。225の機関投資家は100社に温暖化対策を迫った。投資撤退、リスク開示、温暖化対策を要請された企業に日本企業も含まれていた。

 また、仏ミシュランなど54社の企業連合は政府に対し、二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課金するカーボンプライシング(炭素の価格付け)制度の導入を求めた。日本では産業界が強く反対するが、連合にはダイキン工業やエプソン欧州子会社も加わった。

 気候変動サミットの主役は金融業界だった。自然災害が多発し、保険金の支払いが増えると保険会社は経営が圧迫される。天候不順で原材料の入手が困難になって投資先企業の事業が立ちゆかなくなると、投資家は損を被る。金融業界は気候変動を経営リスクと認識し、行動を起こした。

■脱炭素を要求

 「COP限界説」がささやかれるほど国家間交渉は難航し、議論が進まなくなっている。代わって国際交渉の主導権を非国家主体が握るようになった。パリ協定を採択したCOP21にはユニリーバ、イケアなどのCEOが集結し、次々に脱炭素支持を表明。今世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量を一致させる脱炭素目標を、パリ協定の条文に盛り込む機運を醸成した。

 地球環境戦略研究機関(IGES)の田中聡志プリンシパルフェローは17年12月のシンポジウムで「マーケットを考えている人の協力がないと温暖化対策のルールは動かない。非国家主体の参加は当然なこと」と語った。

 非国家主体は動きも速い。トランプ大統領が17年6月、パリ協定離脱を表明した直後、米企業、大学、州、都市が「WE ARE STILL IN(我々はパリ協定に留まる)」とメッセージが掲げられたウェブサイトに名を連ねた。1カ月後には1600社・団体に急拡大し、現在は2500社・団体を超えた。

 日系では東芝テック子会社の名前もある。CO2排出削減はエネルギー使用の制約となるため、企業は高い削減目標を設定しないように政府にロビー活動をするのが普通だった。今は逆となり、厳しい規制を求める企業が増えた。高い目標であるほど、低炭素機器の市場が広がるからだ。欧米企業は気候変動をビジネス機会と捉え、経営戦略として脱炭素を要求する。

 日本でもCO2排出ゼロのような高い目標を掲げる企業が増えてきた。ただ、経団連などの業界団体は厳しい目標設定に慎重だ。

 「急激な変化に対応できない企業が業界内にいるから」と仲間をかばう意見が聞かれる。一方で、高い目標を掲げた企業幹部は「業界団体の代表として発言する場には出席しない」ときっぱりと言いきった。会社を背負う以上、“二枚舌”と思われるリスクを避けるためだ。

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東大、人体の骨格関節・筋肉配置を模したヒューマノイド開発(日刊工業新聞電子版)

■モーターで筋肉収縮 全身に「筋モジュール」

 東京大学大学院情報理工学系研究科の浅野悠紀助教らは、人体の骨格関節構造や筋配置を模したヒューマノイド「腱志郎」と「腱悟郎」を開発し、人体との類似性を証明した。平均的な日本人男性と同等の間接間距離(リンク長)と質量となる様に骨格を設計した。体を動かす際の学習原理の理解につながると期待される。

 モーターでワイヤを巻き取ることで筋肉の収縮を再現した「筋モジュール」を開発し、全身に配置した。腱志郎は87個のモジュールで64カ所の関節、腱悟郎116個のモジュールで114カ所の関節を駆動する。

 人体の解剖学的な知見と比較すると腱悟郎は平均リンク長は99.3%、平均リンク重量は116%と類似度が高かった。従来のヒューマノイドは二脚二腕の身体構造をもつものの、関節をモーターなどで動かし関節間は硬いフレームで構成していた。「腱志郎」と「腱悟郎」は人間らしい姿勢や運動ができる柔軟な身体構造を構築できた。

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展望2018/東京都知事・小池百合子氏「ロボ技術で中小に商機」(日刊工業新聞電子版)

 2020年東京五輪・パラリンピック開催まであと2年。東京大改革を掲げて「新しい東京」づくりを進める東京都の小池百合子知事に産業施策について聞いた。

―官民調達案件やビジネスマッチングを促進する電子入札システム「ビジネスチャンス・ナビ2020」の利用状況は。
 「2020大会組織委員会、都外郭団体を合わせ7団体も活用中で、『勝負に勝つ』『商いの機会』の両方の意味がある。ユーザー登録は2万4000社超に増えている。今後、具体的な調達案件が出てくる。サイトを改良したり発注案件そのものの掘り起こしやBツーB(企業間)の受発注取引も活性化し、より多くの商談につなげたい」

―中小企業の商機アップにつながる次の一手、支援については。
 「例えばロボットは日本の十八番(おはこ)。労働力不足を補うためにニーズはさらに高まる産業だ。東京都立産業技術研究センターは、ロボット技術の実用化や事業化の支援を強化していく。都庁では2月下旬まで5体のロボットを実証実験中だ。サイバーセキュリティー分野では、ガイドブックやコールセンターも設けているほか、都のアクセラレータプログラムに参加する仏企業と連携しサイバーセキュリティーを普及させる。海外企業が活躍することが国内企業への刺激になってくると思う」

―人材不足問題にどう取り組みますか。
 「時差Bizなど働き方改革を進めている。東京商工会議所と、企業における採用や離職者の防止など人材確保につながる働き方改革推進協定も結んだ。テレワークの推進や家庭と仕事の両立支援に取り組む。モノづくり企業の魅力に気付いてもらうため、若者のインターンシップ(就業体験)受け入れも促進中だ。奨励金の拡充や専門コンサルティング支援をして企業側の負担軽減と採用力強化を支援する」

―女性ベンチャーに期待することとは。
 「素晴らしい切り口、情熱を持った女性がたくさんいることに、私自身が励まされた気がする。世界を舞台に成功のお手伝いをすることは、日本の女性も都も元気になり、世界への発信になる」

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展望2018/日本貿易振興機構理事長・石毛博行氏「FTA、中小の国際化推進」(日刊工業新聞電子版)

 2018年の署名、19年の発効を目指す日欧経済連携協定(EPA)と米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)。世界的に依然として保護主義の動きはあるものの、日本は自由貿易を推進する方針だ。大型の自由貿易協定(FTA)の意義や今後の展望について、日本貿易振興機構(ジェトロ)の石毛博行理事長に聞いた。

―日欧EPAとTPP11をどう評価しますか。
 「関税が下がることも大切だが、電子商取引や知的財産の保護など新しいビジネス上のルールが共通化される意義は大きい。21世紀に入り、世界貿易機関(WTO)で新しいルールをつくることは難しくなった。日本が主導し、交渉国間で新時代に即したルールができることは喜ばしい」

―ビジネスルールが共通化される利点は何ですか。
 「大企業は自社で外国のルールを調べたり規制に備えたりできるが、人手に余裕のない中小企業では難しい。日本と同じルールが適用された国へなら、中小企業にとっても進出のハードルは下がる。これまで以上に、中小の国際化が進むだろう」
 「日欧EPAでは、双方とも高度技術を持ち、競合製品も多い。こうした中、知財や投資ルールが明確であれば安心して合弁事業が行える。双方向の投資が活発になるだろう」

―TPP11と日欧EPAの次に期待できる通商交渉は何ですか。
 「米国がTPPに復帰することが望ましいが、時間がかかるかもしれない。18年は、中国やインドを含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の進展に期待したい。RCEPを含む三つのメガFTAすべてに参加しているのは日本だけだ。これを売り物に日本が企業を惹きつける“ビジネスハブ”になれる。私が接しているRCEPの参加国の中には早期の交渉妥結に意欲的な国が多い。18年中の妥結は可能と見る」

―RCEPで安い中国製の農産品が日本に大量に流入する懸念はないですか。
 「農薬の管理を含め中国製の農産品が日本でブランド力があるとは思えない。むしろ訪日中国人が日本土産を大量買いするように、巨大市場の中国向けに日本の農産品を売り込むチャンスになる」

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むらの宝 販路開拓支援 「葉っぱ」のノウハウ活用 人材を現地派遣 徳島県上勝町「いろどり」(日本農業新聞)

 和食に添える葉や花などのつまものを高齢者が商品化する「葉っぱビジネス」で知られる徳島県上勝町が出資する「いろどり」が、IT企業などとタッグを組み、各地の地域活性化を後押しする新事業に乗り出した。現場に人材を送り込み、過疎地でも稼げる産業を生み出すノウハウを伝える他、消費地と結ぶ農水産物の受発注システムを開発し、地域を支援する。こうした連携による地域振興の取り組みは、全国的にも珍しいという。

 新事業は「生涯現役ネットワーク」と銘打って展開。いろどりと、東京都中央区にあるIT企業のサイボウズ、沖縄県うるま市でシステム開発を手掛けるレキサスが連携して実現した。

 背景には、山間地や離島などの条件不利地が農産物を販売する場合、取扱量がまとまらず商談が成立しないことが多い実態がある。一方で、取引先となる料理店などの実需者は、他店と区別化を図った食材を求める傾向があることから事業に着手した。

 具体的には、上勝町の他、小ロットで付加価値を生み出せる産地が集まり実需者への提案力を強化し農産物などの高値販売を目指す。ノウハウ伝授の実現へ、いろどりの社員が現地に出向き、長年培ってきた手法を伝達。課題や販売ができる品目の発掘や農産物の販路開拓をサポートする他、同町での研修を通じた人材育成メニューも用意する。

 生産者と実需者が直接やりとりできる農水産物の受発注システムも共同開発した。会員登録した産地が、出荷予定の農産物の価格や数量、品質などを専用ウェブサイトに掲示。登録した仲卸や料理店などの実需者が最新情報を確認し注文できる。仮に、JAなどの売り手と、卸や仲卸といった買い手の勤務時間が異なる場合でもサイトに情報を集約できるため、時間や場所を選ばずに商品情報を受発信できる。物流や決済機能は既存のJAや卸売市場の機能を活用する。

 ノウハウなどを伝えるいろどりは、既存の取引先との情報交換や注文を同システムに切り替えて対応。情報交換を密にし、実需者ニーズに合った新商品の開発につなげる。

 事業の対象は市町村や農産物の生産者グループを想定しており、価格は100万円以上になる見込み。3年間で全国10地域での展開を目指す。

 取り組みについて、いろどりの横石知二社長は「産地側が価値をどうやって発信するかが大切になってきた。情報を拡散できる技術を条件不利地にこそ活用してほしい」と強調する。

日本農業新聞

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頭脳を持ったIoT・AI住宅、ハウスメーカーの本格投入始まる(日刊工業新聞電子版)

■大和ハウス “人ができないことをサポート”

 IoT技術の活用がさまざまな分野で進む中、住宅分野でもIoT化によって快適で安全・安心な住まいを実現しようとする動きが目立つ。クラウドコンピューティングや人工知能(AI)の発達により、膨大なデータの収集と高度な解析が可能になった。家電や建材、太陽光発電システムなどを単にネットワーク化するだけでなく、複数の機器を連動させることもできるようになってきた。

 米アマゾンの「エコー」やグーグルの「グーグルホーム」など、AIスピーカーの相次ぐ登場で、一般消費者もIoT化の利点がイメージしやすくなり、IoTを活用したサービスを商用化する動きも加速している。各社の取り組みを追った。

 大和ハウス工業は主力の一戸建て住宅「ジーヴォΣ(シグマ)」にIoTサービスを搭載し、2018年上期に発売する予定。グーグルホームと家電コントローラー、ドアなどに取り付けるセンサー、見守り用のカメラなどをパッケージ化。さらにユーザーの希望に応じて電動カーテンや照明、テレビなどを音声認識で操作できるようセッティングして提供する。同社が機器同士の安全な連携を担保し、アフターサービスも含めて提供する。

 サービスの特徴は生活者視点で暮らしのシーンをとらえ、利便性を向上することに主眼を置いた点。起床時の天候に応じて自動的にカーテンが開いたり照明が付いたり、グーグルホームに「おやすみ」と話しかけると自動でテレビが消えて消灯する、といった具合だ。

 とはいえ、「やみくもに利便性向上を優先させるわけではない」(有吉善則取締役常務執行役員)。人ができることを機械にさせるだけでは意味がなく、「(高齢化などにより)住む人ができないこと、できなくなっていくことをサポートする」考えを示す。

 現在は大阪府吹田市などの住宅展示場で、グーグルホームを活用したIoT住宅の実証実験を進めている。来場者にサービスを体感してもらい、使いやすさなどを検証し、サービス拡充に生かす。大友浩嗣取締役常務執行役員は「家電の制御だけでなく、住まいのエネルギー消費の最適化を含めた『IoT住宅』を考えている」と将来像を示す。

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セブン-イレブンを自動化せよ! WRSトライアル大会でロボ働く(日刊工業新聞電子版)

■得意分野で世界に先陣、コンビニは理想的

 見えたか、未来のコンビニ―。ロボットがコンビニエンスストアの作業を行い有用性などを評価する初めての競技会「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ トライアル大会」(ワールドロボットサミット〈WRS〉サービス競技委員会主催)が2017年末、仙台国際センター(仙台市青葉区)で開かれた。

 フューチャーコンビニエンスストアチャレンジは、ロボット技術により従業員の負担を軽減し、顧客に新たなサービスを提供する未来のコンビニを実現することを目指した世界初の競技会。トライアル大会の位置付けだが2020年までの毎年開催を予定している。

 17年は10企業・大学が参加。(1)陳列・廃棄タスク=日常商品(おにぎり、お弁当、サンドイッチ、カップ飲料)の自動補充と消費期限切れ商品の廃棄(2)接客タスク=ロボット技術を利用した近未来の洗練された顧客サービスの提案と実演(3)トイレ清掃タスク=個室トイレの便器、床、壁の清掃―の3タスクを実施。各チームのロボットシステムが持つ提案性、有用性、実現可能性を競った。

 第1回でロボットも“緊張”したのか再試行を繰り返すチームが多かったが、将来的なロボットによるコンビニ作業の自動化の姿は見せた。

 競技会は単にロボットの性能や安定性を競う大会ではなく、各チームのロボットシステムが次世代コンビニとなり得るかという点を考慮する。競技はセブン―イレブン・ジャパンの店舗を模した会場で行われるが、店舗をロボットが動きやすいようにアレンジしても良い点がユニークだ。例えば、競技中に陳列・廃棄タスクはリフォーム(準備)タイムがあり、商品棚を改造、交換したり商品へのタグ付けをしたりできる。

 WRSサービス競技委員会FCSC部門部門長を務める首都大学東京システムデザイン学科の和田一義准教授は「ロボットシステムの研究開発で日本が世界より先に取り組み、得意にできる分野という意味でコンビニはうってつけ」と説く。

 コンビニの仕組みは日本で培われたと言える。また、どの店舗も同じ仕組みを導入しており、ロボットシステムができれば一気に1万店以上に同じシステムの導入が可能で、市場性も見込める。さらに、培った技術は家庭で活躍するロボットにも応用できる。「コンビニで買った商品を持ち帰るということは、家でも同じように活躍できる余地がある」(和田准教授)という。

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世界航空機産業 変化の兆し 進む小型機シフトと中国メーカーの影(日刊工業新聞電子版)

■ボーイングとエアバス、小型機市場で競争激化

 世界の航空機産業に地殻変動が起ころうとしている。足元では格安航空会社(LCC)の台頭により、需要は中・大型機から小型機へシフト。小型機で欧エアバスに後れをとる米ボーイングは2017年12月、小型機を得意とするブラジル・エンブラエルとの提携交渉を認めた。ボーイングとエアバスの受注競争が激しさを増す傍ら、中国メーカーも小型機の初飛行に成功。業界の勢力図に変化の兆しが見える。ボーイング向け主要構造部位の供給(ティア1=1次取引先)が中心の日本勢は、飛躍への針路をどう取るべきか。

 2017年12月22日(現地時間)。米紙にエンブラエルとの買収検討を報じられると、ボーイングは提携交渉に入った事実を公表した。これに先立つこと約2カ月、エアバスはカナダ・ボンバルディアの最新鋭小型機「Cシリーズ」(100―150人乗り)を手がける事業会社に50%以上出資することを決めた。

 短距離路線で需要が拡大する100―150人乗りの小型機をエアバスが手中に収めようとするなか、ボーイングの動きは速かった。ただ、現段階でブラジル政府は買収に否定的な見方を示しており、エンブラエルの最新鋭小型機「E2」シリーズでの提携に留める可能性もある。

 いずれにせよ、2社が小型機の獲得に狙いを定めたのは確かだ。E2は三菱重工業グループが開発している小型旅客機「MRJ」の最大のライバルとなる。三菱重工はボーイングと大型機向け機体部品の供給で、長らく良好な関係築いてきた。小型機で競合することになれば、両社の関係に何らかの影響を及ぼすかもしれない。

■中国メーカーの台頭、小型機の初飛行に成功

 ボーイングは宿敵に対し、さらなる腹案を用意している。現段階で詳細を明らかにしていないが、小型機「737」と中型機「767」の中間に位置する機体「ミドルオブマーケット(MOM)」の開発だ。17年にボーイングは、川崎重工業、三菱重工と民間航空機事業の協力強化で合意。MOMの開発もここに含まれている。

 「ボーイングはエアバスと価格で真っ向勝負するようだ」―。業界関係者がこう指摘するように、ボーイングはLCC市場での覇権争いを見据え、MOMの低価格化を重点戦略に掲げているもよう。内部の通路を二つ持つワイドボディー機を、通路が一つのナローボディー機と同等の価格で実現するといった臆測も出ている。

 次世代機への参画をもくろむ三菱重工や川重、SUBARU(スバル)などのティア1企業は、今まで以上にコストダウンを求められる可能性もある。

 MOMには中国企業の参画も、にわかにささやかれる。中国商用飛機が小型機「C919」の初飛行に成功するなど、「中国の航空機メーカーは着実に力を付けている」(小牧博一日本航空機開発協会〈JADC〉専務理事)という。ボーイングが航空機の最大需要地である中国に配慮し、「中国企業がティア1として参加する可能性は十分にある」(関係者)との見方もある。

 それでも小牧専務理事は「40年の歳月をかけて培ってきた日本メーカーの生産技術は、一朝一夕で身につけられるものではない」と強調。三菱重工の宮永俊一社長も「ティア1事業は20年程度の長期間、安定して(機体部品を)供給できるかが重要。さらにこれをコミット(確約)する能力が求められる」と指摘する。

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「つみたてNISA」始動 資産形成層の取り込み本格化(日刊工業新聞電子版)

■日本、現預金が過半

 1月から積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」が始まる。個人投資家の裾野を広げようと金融庁が肝いりで導入する制度で、銀行や証券などが取り扱う。また、保険やノンバンク業界でも特有の商品やサービスで個人の資産形成を促す動きが広がっている。

 16年末の家計が保有する金融資産における現預金の比率は米国が14%、英国が24%に対し日本は50%超。株式や投資信託などリスク資産にも配分されている米英に対し日本は現預金が過半の状態が続く。「資産が付加価値を生み出せておらず非常にもったいない。個人の生活設計の上でもマイナスだ」と金融庁幹部は話す。

 こうした問題意識から金融庁は14年に少額投資非課税制度「NISA」を導入。制度開始から3年で1000万超の口座が開設されたが、積み立てによる利用はその1割以下にとどまる。金融庁としては家計の安定的な資産形成を実現するには、長期・積み立て・分散型の投資を促進するのが有効だと考えており、NISAだけでは「少額からの積み立て投資が十分に浸透していない」と見ていた。

 そこで1月からは、長期の積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」を始める。つみたてNISAは購入した投資信託の分配金や運用益が非課税になる制度。既存NISAの年間非課税枠が120万円(最長5年)なのに対し、つみたてNISAは同40万円と少額だが、非課税期間は最長で20年間にも及ぶ。

 金融庁のアンケートによれば、投資は資産形成に必要だと思うが投資を行わない理由として「まとまった資金がないから」と答える投資未経験者が多数を占める。投資には相当の初期資金が必要になるとのイメージを持つ人が多い実態を表している。つみたてNISAの導入で金融庁は「ためてから投資ではなく投資しながらためるという発想を広げたい」(幹部)といい、30―40代を主なターゲット層と見る。

 金融庁は既に対象商品として約130本を選定。運用にかかる信託報酬(運用管理費用)の平均値は告知要件より大幅に下がっており、例えばインデックス投信でみると国内型の投信は0・28%(12月18日時点)に、国内外型の投信も0・35%(同)だった。

 つみたてNISAは、特に証券業界にとって長期の資産形成を促し「貯蓄から資産形成」を推進する役割が期待されている。証券業界にとって資産形成層の取り込みは長年の課題。現状、株式投資を手がける大半が中高年齢層で、将来の投資の担い手となる若年層に投資をしてもらい、新たな顧客層として取り込めなければ、業界の持続的な発展は厳しくなる。

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