被災者救うドローンの「耳」 NTT系などが音声検知研究(日刊工業新聞電子版)

■災害時救助、初動対応力アップ

 NTT―ATシステムズ(東京都武蔵野市、清野浩一社長)とアイ・ロボティクス(同新宿区、安藤嘉康社長)は、飛行ロボット(ドローン)を活用した災害救助支援システムの共同研究を始めた。助けを求める声を検知するマイクを機体に搭載。騒音下でも音声を収集し、空撮画像と合わせて情報を分析できるようにする。2018年度の実用化を目指す。

 茨城県河内町で検証する。実証現場の山肌から上空50―100メートルを飛行し、ドローン搭載型マイクからデータを収集する。あわせてドローンのプロペラ音のノイズを消去する装置や、空撮画像を分析するソフトウエアを試作する。

 騒音下で音をクリアに検知する技術については、NTTが開発した音声技術「インテリジェントマイク」を候補に検証する。ドローンでの音声収集は、マイクと騒音の発生場所との距離が近く、これまでの使い方と異なるため、技術の有効性を確かめる。

 今回の取り組みにより、これまで人が立ち入るのが困難だった被災地域の状況を把握したり、空撮画像だけでは発見が難しかった被災者について音の情報を加えて調査したりできるようにする。

 内閣府は17年3月、地方公共団体向けに災害時支援体制に関する指針を発表。その中で大規模災害発生時に救助を待つ被災者の状況把握といった初動対応の重要性を指摘している。その手段として今回のシステムを活用できるとみており、将来は自治体などに提案していく考え。

 NTT―ATシステムズはネットワークサービスの構築や開発を手がける。アイ・ロボティクスはドローンを運用するためのシステム開発のほか、ドローンによる山岳遭難者の捜索も行っている。

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検証2017/日産とスバルの完成検査問題 販売に大打撃(日刊工業新聞電子版)

 日産自動車とSUBARU(スバル)で、無資格の従業員が完成検査に携わっていた問題が相次いで発覚した。両社はリコール費用などの負担に加え、消費者からの信頼回復という大きな課題を抱える。一方で今回の問題により、日本の完成検査制度の曖昧さもあぶり出された。

 「最大の問題は、製造現場での『そこまでの厳格さは必要ないのでは』という基準と、検査員の任用の仕組みに大きなギャップがありながら放置してきたこと」。日産の西川広人社長は11月に開いた会見で完成検査問題の要因をこう指摘する。

 同社の追浜工場(神奈川県横須賀市)など国内5工場で、最初に問題が発覚したのが9月。再発防止策を講じたが、その後も無資格検査を続けていたほか、完成検査を別の検査工程で実施するなどずさんな管理体制が次々と明るみに出た。

 これを受け同社は10月中旬にすべての国内工場での生産・出荷を停止。11月7―8日に全工場で再開したものの、生産スピードは通常の4―8割に留まっている。生産・出荷の停止時期は一時的だったが、販売面で大きな打撃となっている。国内新車販売台数は10月が前年同月比4割、11月が同3割の減少となった。

 今後、日産とスバルにとってブランドイメージの悪化に伴う顧客離れが懸念される。スバルの吉永泰之社長は「当社のブランドが毀損することを心配している」と話す。

 一連の問題は、完成検査制度が抱える課題も浮き彫りとなった。自動車メーカー各社の工場では部品を据え付ける各工程で検査を実施しているが、完成検査の段階で「不具合は見つからない」(自動車メーカー社員)という。また検査員の認定基準はメーカーによって異なり、制度にあいまいな点があることも指摘されている。

 こうした点を踏まえ、国土交通省は11月、完成検査の見直しのための検討会を設置。メーカーによる確実な検査の実施と不正防止、国交省による効果的なチェックのあり方を検討し、17年度内に一定の方向性を示す方針だ。

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大手回転ずしチェーン店などへサーモンを納入していた、各種水産加工品卸の和歌山共和水産が事業停止し自己破産申請へ(帝国データバンク)

 和歌山共和水産(株)(TDB企業コード:570170799資本金2000万円、大阪府堺市美原区今井190-2、代表山田直樹氏、従業員70名)は、12月11日付で事業を停止し、事後処理を山岸久朗弁護士(大阪府大阪市北区天神橋2-3-8、山岸久朗法律事務所、電話06-6354-3334)ほか1名に一任、自己破産申請の準備に入った。

 当社は、1986年(昭和61年)3月創業、2000年(平成12年)10月に法人改組した活魚・鮮魚など各種水産加工品卸売業者。鮮魚を和歌山県や各地の漁協および魚市場や商社筋から仕入れ、自社工場で活け締めから神経抜きを行い、除鱗処理した後、フィレマシンで寿司ネタや刺身用の切り身にスライスカットし、大手回転すしチェーン店やスーパーマーケットに卸売していた。取り扱う鮮魚はサーモンなどの輸入のほか、ハマチ・ブリ・鯛など国内の養殖魚などを主体とし、2013年には東京工場がHACCP(ハサップ)の認定を受けるとともに、近年ではインターネットで「海鮮活活本舗」のサイトでの販売強化にも努めていた。人手不足に苦慮する外食産業やスーパー向けの受注が大きく伸びた2017年5月期は年売上高約75億7800万円を計上していた。

 しかし、収益面では魚価の仕入れ値の上昇とともに、十分な価格転嫁もできず薄い利益での取引を強いられていたほか、資金繰り面でも、輸入決済など短期間の支払いも多かったことで、売り上げの伸長とともに必要な運転資金が膨らむなど、厳しい資金繰りを強いられていた。このようななか、近時は利益率の高いサーモンを重点商材として取り扱いの強化に努めていたが10月末頃から代表と連絡が取りづらい状態になるとともに、一部取引先に支払いの遅れが発生。業界内で信用不安が高まったことから商材の仕入れも困難な状況となり、ネット販売店を閉鎖するなどその動向が注目されるなか、今回の事態となった。

 負債は2017年5月期末時点で約24億3100万円。

東証2部上場のロイヤルホテル連結子会社、RRHH(旧:リーガロイヤルホテル広島)が特別清算開始(帝国データバンク)

 (株)RRHH(TDB企業コード:600472803、旧商号:(株)リーガロイヤルホテル広島、資本金1億円、広島県広島市中区基町6-78、代表清算人五弓博文氏)は、12月5日に広島地裁より特別清算開始決定を受けた。

 当社は、1991年(平成3年)9月に設立されたホテル運営業者。東証2部上場の(株)ロイヤルホテル(大阪市北区)の連結子会社として、広島市内中心部で「リーガロイヤルホテル広島」を経営するほか、食堂や駐車場、浴場、遊技場などの施設運営も手がけてきた。94年4月に営業開始した地上35階の超高層ホテル(客室数488室)で、ウエディングやパーティー、会議、研修のほか、国際的なコンベンションなどにも対応できるなど、ハイクラスで立地条件の良さを生かした事業展開により、2001年3月期には年収入高約107億900万円を計上していた。

 しかし、長引く景気の低迷や低価格路線のホテルなどとの競合で宿泊部門に加え、ウエディングや宴会部門の需要も伸び悩み、近年の年収入高は70億円前後が続き、収益性も低調に推移していた。この間、不採算だった子会社のホテル事業から撤退した際に約79億円の損金処理を行ったため、財務内容がさらに悪化して債務超過に陥っていた。近時は増加する観光客の影響もあり、宿泊やレストラン部門の業績が好転していたものの、抜本的な収益改善には至らなかった。

 このため、経営基盤の安定、収益体質の強化を図るべく、今年7月10日に親会社の(株)ロイヤルホテルが当社の事業を9月1日に分割して設立された新会社の(株)リーガロイヤルホテル広島(資本金600万円、同所、代表五弓博文氏)へ譲渡し、特別清算することを取締役会で決議していた。当社は現商号に変更した後に、9月30日に開催された株主総会の決議で解散していた。

 負債は現在調査中だが、(株)ロイヤルホテルは当社の特別清算に伴い貸付債権約89億円を放棄すると7月10日に公表している。

 なお、「リーガロイヤルホテル広島」は新会社で通常通り営業を継続している。

レストランと商取引サイト設置 生産者と消費者 接点強化 ヤンマー(日本農業新聞)

 ヤンマー(大阪市)は11日、生産者と消費者をつなぐ「プレミアムマルシェ」事業を拡充すると発表した。従来取り組んできた同社の社員食堂の一般開放や青空市場などに加え、市内にレストランを設け、グループ会社が栽培した農産物で作った加工品などを販売するための電子商取引(EC)サイトを新設する。一層の農業振興につなげたい考えだ。

 2013年に始めた事業を拡充することで、生産者と消費者との接点を強化し、1次産業の価値を高め、地域の活性化にも貢献する狙い。

 具体的には、焼き物料理中心のレストラン「リストランテ コン・フォーコ」を来年1月5日にオープン。有名ホテルなどで腕を振るったシェフを招き、イチゴや米ゲルなどのグループ会社や農家が生産した食材と組み合わせた肉や魚介類などの料理を提供する。

 さらに、11日開設したECサイトの「プレマル.com」で、自社農場で収穫したタマネギやトマトなどを使った7種類のドレッシングや生ハチミツ、国内外で受賞歴があるワインなどを販売。月決めのテーマで提案する全国各地の農畜産物の情報発信もする。

 三木依子・事業推進マネジャーは、「消費者が求めている情報を集めて生産者につなげ、1次産業を元気にしたい。いずれはこの事業を軌道にのせたい」と話している。

日本農業新聞

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文科省、海外留学にAIなど新規枠50人 2年で最大450万円給付(日刊工業新聞電子版)

■国際人材の育成強化

 文部科学省は、人工知能(AI)やデータサイエンスなど科学技術分野を支えて国際的に活躍できる人材の育成を強化する。返済不要の奨学金などで海外留学する学生の支援プログラムにおいて、2018年8月―19年3月の期間に海外留学を始める大学生などを対象に、こうした科学技術6分野で新規50人の募集を7日から始める。優秀な人材を海外に派遣し、産業界で活躍する国際人材育成の成功モデルの構築を目指す。

 文科省の留学生派遣プログラム「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の一環。従来募集していた理系枠での採用数220人の中に、AIやデータサイエンスのほか、ビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティー、ロボティクスの6分野での優先枠を新たに準備する。

 30歳以下の大学生、大学院生、高等専門学校生ら50人を募集する。締め切りは18年3月2日まで。

 奨学金や授業料などを含め、2年間であれば最大450万円を支給する。期間は1カ月―2年間。留学計画は学生自身が設計できる。また学校の留学プログラムや交換留学制度を利用することも可能だ。

 同プログラムは世界で戦える若者を育てることを目標に、官民協働による海外留学支援制度として14年から始まった。資金は企業からの寄付で賄われ、20年までに高校生や大学生らのべ1万人を海外の大学や研究所などに派遣する。

 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、社会人を含む日本の留学生は04年の8万3000人をピークに減少し、11年には3割減の5万8000人となっている。一方、15年度時点での大学生と大学院生の留学者は10年に比べ8万4000人と倍増したが、1カ月以下の短期留学の割合が増加し、6割以上となっている。文科省はプログラムをテコに海外留学する大学生を20年までに12万人へ伸ばしたい考えだ。

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来年、実用放送スタート 「8K」カメラ相次ぎ登場(日刊工業新聞電子版)

■「4K」「8K」映像新時代

 フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」、16倍の解像度を持つ「8K」の実用放送が、2018年にいよいよ始まる。業務用カメラなどの撮影機器各社は4K用機器の拡販と同時に、4Kを上回る画質の「8K」向け製品の市場投入が加速している。世界的には8K放送の予定はまだ少ないが、各社は放送だけに留まらない高解像度映像の利用拡大に期待をかけている。

 8K撮影向け業務用カメラの発売が相次いでいる。シャープは約30年ぶりに業務用カメラの新製品として8K対応の「8C―B60A」を12月に発売する。ソニーは、8K3板式カメラ「UHC―8300」を10月に受注開始。池上通信機やキヤノンも、11月に開催された展示会「2017国際放送機器展」で8Kカメラシステムを展示し、今後に期待を寄せる。市場関係者は「4K用カメラは、4K放送前に売れ始めた。8Kも同じではないか」と見る。4K放送ではハイビジョンと4Kを両方撮影できる機材を選ぶ放送局が多い。

 NHKと民放がこぞって始める4K放送に対し、8Kの普及はまだ未知数だ。8Kの本放送を予定しているのは今のところNHKのみ。放送予定が少ない上、家庭での視聴には4Kでも十分に美しい。一般消費者が8Kに付加価値を見いだし、より高価なテレビなどを購入するには、映像美以外の価値提案が必要かもしれない。

■産業用途―カメラ・放送以外にも商機

 高解像度映像には、放送以外の利用価値がある。キヤノンのイメージコミュニケーション事業本部の枝窪弘雄副事業本部長は、「8Kは、医療やパブリックビューイング、保存用コンテンツなど高解像度と臨場感が求められる用途が期待できる。産業用が増えるのではないか」と指摘する。例えば、文化財や建造物、自然などの映像遺産は大きな注目を集めている。

 このためカメラ各社は、8Kによる“最高の映像”追求に余念がない。ソニープロフェッショナル・ソリューション&サービス本部の桐山宏志メディア事業担当VPは「8K3板式カメラで映像を超える表現を追求した」と自信たっぷりに語る。

 3板カメラは、光を電気信号に変換するイメージセンサーが3枚ある。光を赤と緑と青に分光し、3色の光を別のセンサーで受け取る。通常の1枚のイメージセンサーは、赤の光を受け取る画素では緑や青を受け取れないため、色は間引きされる。3板は3色全ての情報を受け取れるため、より忠実に色を再現できる。ソニービジネスソリューション(東京都港区)の宮島和雄社長は、「少しでもユーザーの期待を超えるのがソニーのDNAだ」と話す。放送用カメラの高いシェアを生かし、8Kでもリードを狙う。

 キヤノンの枝窪副事業本部長は「国内で相次ぐ国際スポーツイベントを視野に、センサーから手を入れて、8Kソリューションをブラッシュアップする」と意気込む。8K機材は実証実験段階だが、15年から展示会などでレンズからカメラ、映像編集用のディスプレーまでの一連の製品を紹介し、コンテンツを作成しながら研究を続けてきた。

 御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO)は、一連の8K機材で撮影した映像を最初に見た時に、「全員に見せろ」と指示を出したという。8Kは現時点で最高の映像であると同時に、現時点の限界でもある。これを研究すれば進化の方向がわかる。

 例えばフォーカスの改善のために、カメラとディスプレーのどちらからアプローチするか。「8Kの研究から、8K以外の改善策も出てきた」(同事業本部の大川原裕人ICBソリューション開発センター所長)とし、8K研究で映像技術全体を底上げする。

 シャープは、アストロデザイン(東京都大田区)と共同開発した8K対応カメラ「8C―B60A」を、880万円(消費税抜き)で売り出す。1台で撮影と記録、再生、ライン出力を行う。

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「99%は論文にならない」-現場で使えるロボ、大学で開発が進まないワケ(日刊工業新聞電子版)

■大学と利用現場、課題共有

 大学のロボット研究に実用志向が広がっている。大学の研究者が実用化の直前まで技術を開発し、一昔前なら研究と見なされない細かな現場特有の問題にも挑戦。現場で本当に使えるロボットが生まれてきた。課題はユーザーの注文が体系立てられていない点。大学の実用研究を育てるためにはレベルの高いユーザーが不可欠だ。

 介護や農業などロボットから縁遠い分野などでは、ロボットの開発者と現場のユーザーの間の溝は深い。ユーザーからは「大学の研究は現場では使えない」、開発者からは「現場も本当のニーズが見えていない」との声が挙がる。研究者が現場に通って実機を作って試しても、開発の参考になるような答えや反応が返ってこないこともある。うまくいった例は何が違うのか。

 豊橋技術科学大学の三枝亮特任准教授は病院や介護施設のコンシェルジュロボット「ルチア」を新東工業などと共同開発する。まず1年をかけて現場の課題を徹底的に洗い出した。三枝准教授は「現場の方もロボットを使った日常作業を想像できない。試作機を現場に持ち込み、試して改良する。これを繰り返して真のニーズを発掘していった」と振り返る。

■現場実証、実用の姿追う

 ルチアは患者や車いすに追従して施設を案内する。さらに通行人の脚を計測して高齢者のすり足歩行や、片まひ患者のぶん回し歩行、パーキンソン病患者などの小刻み歩行を識別できる。消灯した夜の施設を巡回し、徘徊(はいかい)患者をステーションに知らせたり、倒れている人を見つけたりと、昼夜問わずに働く。
 「企業と大学、医療施設が連携して、開発と現場検証を高速に何度も試せたことが大きい」(三枝准教授)という。

 イチゴ摘みロボットを開発する宇都宮大学の尾崎功一教授は「開発当初から農家に持ち込んだことが良かった」と振り返る。収穫ロボの4輪を2輪に減らし、プランター配置に合わせて小型に設計した。軟らかい土の上を確実に走れるため、移動モジュールだけでも重量物搬送用に製品化してほしいと注文が集まった。

 大型農園では合計100キログラムの薬液を散布する。「厳しいクレームをたくさん浴びることで実用の姿が見えてくる」という。

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障がい者、車の運転で社会復帰-ホンダの40年超挑戦(日刊工業新聞電子版)

全国7カ所施設で安全教育

 ホンダの障がい者向け安全運転支援の活動が広がりを見せている。1976年に障がい者向け運転補助装置を開発・提供開始したのを皮切りに、今では疾病や事故で障がいを負った人の運転再開に向けた運転評価や安全運転指導にまで領域を拡大。障がい者自身の安全・安心な移動につなげることで、自立を後押しする取り組みとしても注目される。

 「少し右に寄ってきたので気をつけて」「車線を意識して走りましょう」。
 12月初旬の平日の昼下がり。東京都内で自営業を営む関根義寛さん(57)は、ホンダが運営する交通教育施設「レインボー埼玉」(埼玉県川島町)の運転コースで、施設の指導員の助言を聞きながら慎重にハンドルを握っていた。

 関根さんは2月に脳梗塞で倒れた。懸命のリハビリを経て日常生活を送れる状態まで回復したものの、今も注意障がいと左半身麻痺(まひ)の症状が残る。社会復帰を目指してリハビリに励む中、「復帰したらハンドルを握ることが必ず出てくるので、もう一度運転に挑戦しよう」(関根さん)との思いが強まり、実車を使ったホンダの運転訓練などの受講を決めた。

 ホンダは安全運転の普及を目指し、1970年に専門組織「安全運転普及本部」を設立。現在、全国7カ所に設けた交通教育施設で企業や一般者向けの安全運転教育を実施している。また障がい者向けには、運転操作の反応や認知・判断の適応性を測る運転シミュレーション装置を12年から病院向けに販売しているほか、13年には交通教育施設で車両を使った現状の運転能力把握と課題確認のための実車訓練を始めた。

 疾病などで体に障がいを負った場合に運転復帰するには、病院側が発行する診断書を提出した上で、運転免許試験場で臨時適性検査を受ける必要がある。しかし診断書は日常生活の基本動作を評価するものであって、病院側では運転能力の評価ノウハウを持っていないのが実情だ。

 ホンダはシミュレーション装置や実車訓練を、障がい者の運転への適応性や能力の把握につながる評価支援手段と位置づける。安全運転普及本部開発普及課の塚本末幸チーフは「運転の課題を見つける機会を提供していきたい」と狙いを語る。また実車訓練の受講後にホンダの車両購入につながったケースもあるなど、同社のブランドイメージや販売にも貢献している。

 関根さんのように脳機能障がいを抱える人々は全国で50万人に上り、過去3年間、障がい者全体の訓練希望者数の約7割を占めているという。塚本チーフは「疾病やスポーツなどの事故により、母数(希望者数)は今後も増える」と予想する。

 ただ訓練場所はホンダの教育施設7カ所だけでは足りず、受け皿の整備・拡充は課題の一つだ。そのためホンダでは、運転コースや指導員などのリソースを持つ教習所に訓練実施の提案や訓練ノウハウの提供に取り組んでおり、既に青森県と長野県では実施し始めた教習所も出ている。また、運転能力評価方法の確立を目的とした病院との協力関係作りも進めている。

 専門機関を含めた地域での連携体制を今後どう広げていけるかが、安全・安心な自動車社会の実現に向けたカギとなりそうだ。

水害時の太陽光発電、感電するか? NEDOが水没実験(日刊工業新聞電子版)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と太陽光発電協会、奥地建産(大阪府松原市、奥地昭統社長)は、水害時の太陽光発電システムの感電リスクを把握するため、太陽光発電システムの水没実験を実施したと発表した。実験による知見をもとに、2017年度末までに水害時の点検のほか、撤去における安全性の確保や対策の指針策定を目指す。

 実験は、11月28日から4日間、山梨県北杜市の太陽光発電所横の調整池で実施した。22枚の太陽光発電パネルを実使用に近い状態に組み、水没させた。屋外自然環境での大規模な水没実験は初めて。

 水没時に発電が継続した場合を想定し、発電設備から水中への漏電状況を測定した。実験結果を解析し、水中での感電リスク、水没後の設備の状態を定量的に調べる。大雨などで太陽光発電システムが水没、浸水すると絶縁性能が低下し、システムに近づいたり接触したりした場合、感電する危険がある。

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