iPhoneXRが間違いなく「買い」だと言えるワケ(東洋経済オンライン)

10/23(火) 22:00配信

東洋経済オンライン

 アップルは10月26日、2018年モデルとなるiPhoneの第3弾「iPhone XR(テンアール)」を発売する。筆者はiPhone XRのブラックの貸出を事前に受けたので、実機レビューをお届けする。

この記事の写真を見る

 2018年のテーマは、昨年のiPhone Xで示した次世代のコンセプトを全モデルに広げることだった。しかしiPhone XSは昨年と同様に999ドルから、日本では10万円を超える価格からの販売となっており、大画面モデルのiPhone XS Maxはさらに高い1099ドルからという価格が設定された。

 これでは、iPhone Xのコンセプトは限られた人々、つまりスマートフォンに11万円以上を捻出したいと思っている人にしか広まらない。そこで用意されたのがiPhone XRだ。

 iPhone XRは米国での価格は64GBモデルで749ドル。日本でのApple StoreにおけるSIMフリーモデルの価格は64GBが8万4800円、128GBが9万0800円、256GBが10万1800円に設定され、主力となるであろう128GBモデルも10万円を切る価格となった。

■優先した「体験の共通化」

 iPhone XRは、iPhone Xと同様のホームボタンがないオールスクリーンを採用し、画面の中で完結する新しい操作方法に統一した。

 また3D顔認証Face IDを実現するTrueDepthカメラを採用し、画面を見つめるだけでロック解除できる高いセキュリティ性能も実現している。

 もちろんクラシカルな操作方法を好む人には、いまだ十分高い性能を発揮するA11 Bionicチップを備えるiPhone 8が併売されているし、過去のデバイスも共存している。

 アップルとしては、iPadも含め、ホームボタンを捨てる決断を下し、画面の中のジェスチャーだけで操作を完結させるインターフェースへの移行を決定的とした。

 その一方で、コストダウンを行わなければ、その新しいインターフェースのスタンダード普及が遅れてしまうのだ。そのため、コストという制限の中での洗練に見られる工夫が随所に現れている。

 iPhone XSからiPhone XRへの最も大きなコストダウンの要素は、ディスプレーだ。需給が逼迫し価格も高止まりする有機ELディスプレーの代わりに、液晶ディスプレーを採用している。アップルはこれに「Liquid Retinaディスプレー」と名付けた。

【関連記事】

日本の里親「世に知られていない」数々の真実(東洋経済オンライン)

10/23(火) 15:00配信

東洋経済オンライン

さまざまな社会問題と向き合うNPOやNGOなど、公益事業者の現場に焦点を当てた専門メディア「GARDEN」と「東洋経済オンライン」がコラボ。日々のニュースに埋もれてしまいがちな国内外の多様な問題を掘り起こし、草の根的に支援策を実行し続ける公益事業者たちの活動から、社会を前進させるアイデアを探っていく。

この記事の写真を見る

 10月4日は「里親の日」。終戦の5年後、1950年に里親制度の運用について都道府県知事に対して通知がなされたのが、10月4日だったといいます。当時は、戦争孤児が日本全国にあふれていたために整備された制度でした。そして今、様々な理由で親と暮らすことができない子どもたちの数は全国におよそ4万5000人いるとされていますが、平成29年3月末時点でその内の2万6449人が児童養護施設に身を寄せています(※1)。里親に委託された子どもの数は平成28年度末時点で5190人に留まっています(※2)。なぜ日本では里親のもとで暮らす子どもが少ないのでしょうか? 

(※1:平成29年12月時点で、社会的養護(保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として、社会的に養護を行う)を必要としている子どもは、約4万5000人。平成29年12月厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」より。)
(※2:厚生労働省ホームページ「里親制度に関するデータ」より。)

 J-WAVE「JAM THE WORLD」内の「UP CLOSE」というコーナーにて、GARDEN代表・堀潤が「日本こども支援協会」代表理事・岩朝しのぶさんにインタビューした内容から、日本においての里親の現状や、里親制度の啓発・支援等を続ける「日本こども支援協会」の取り組みについてお伝えします。

■「里親=養子縁組」は間違い? 

 堀:ちょうど今から15年ほど前、NHK時代の僕の初任地は岡山でした。岡山には、孤児院を初めて作った、児童福祉の父とも言われる石井十次さんがいます。一方で、施設偏重のため里親が少ないのが問題だということで、岡山県でも里親を増やそうという取り組みを一生懸命していました。一度、岡山の里親の方にインタビューさせていただいたことがあります。保護された子どもたちは虐待を受けていた場合も多く、里親の皆さんの負担は大きく、本当に七転八倒されていました。「私はね、本当の親にはなれない。でもこう思うの。子どもたちの応援団にはなれる」とお話しされていたのが印象的でした。そのレポートのタイトルは、『私はあなたの応援団』にしたことを覚えています。でも、今も里親の数が足りないということは変わらないんですよね。なぜ里親の数が少ないのか、全体状況を含めてまず教えていただけますか? 

【関連記事】

アマゾン「売れているビジネス書」ランキング(東洋経済オンライン)

10/23(火) 13:00配信

東洋経済オンライン

 アマゾンの協力のもと、毎週配信している週間(日曜日から土曜日まで)アマゾン「ビジネス・経済書」ランキング。本記事でお届けするのは、10月14日~20日のランキングだ。

 なお、「前週順位」については前週に発売されて初登場する書籍については「NEW」と記載、前週順位が1000位以下だった場合には「-」と記載している。

■1位は不動の『アウトプット大全』

今週(10月14日~20日)の1位は、先週に続き『学びを結果に変えるアウトプット大全』(樺沢紫苑著、サンクチュアリ出版)だった。いまだに人気が衰えず、とくに10月16日に多く売れたという。

2位に付けたのが、『日本が売られる』(堤未果著、幻冬舎)。東京新聞に大きな広告が掲載されたことが影響しているようだ。3位は『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』(トム・ラス、日本経済新聞出版社)で、1回のオーダーで20冊以上購入している人が複数いたことから好順位を維持している。

 次ページ以降、200位までのランキングを紹介する。「秋の夜長に読む1冊」を探すための参考にしてほしい。

東洋経済オンライン編集部

【関連記事】

ポルシェ「ディーゼル撤退」が示すVWの思惑(東洋経済オンライン)

10/23(火) 11:20配信

東洋経済オンライン

 9月23日、ポルシェがディーゼルエンジン搭載車からの撤退を発表した。今後はハイブリッドとEV(電気自動車)に力を入れるという。

■ポルシェが「EV化」へまっしぐら? 

 これに続いて10月15日にポルシェが発表したニュースリリースには、ポルシェ初となるフル電動スポーツカー「タイカン」の概要とともにポルシェが電気の時代に入ると宣言した。これはリリースのタイトル部分であり原文では、

 “Porsche definitively enters the electric era with the new Taycan”

 と書かれている。素直に読むとポルシェは全力を挙げてEVへの移行を目指しているように受け取れる。しかし本文を読んでいくと少し話が違ってくる。「2025年にはポルシェが販売するモデルの50%以上は『電動化モデル』になると予測した」。ちなみにこちらの原文は、

 “We predict that over 50 percent of Porsche models delivered from 2025 will be electrified,”

 であり、動力源としての電動モーターを装備しているEVとハイブリッドを合わせて50%と理解すべき文章になる。筆者の勘ぐりすぎと言われればそれまでだが、どうも二枚舌の印象が拭えない。言質としてはあくまでハイブリッドも含む「電動化」までしか言わないように注意深く言葉を選びつつ、全体の印象は「EV化」へまっしぐらと誤読させたいニュアンスを感じるのだ。これはポルシェの属するフォルクスワーゲン(VW)グループ全体の動きと合わせて分析してみたい。

 さて、ポルシェのディーゼル撤退のニュースを受けて、あちこちのメディアが「ディーゼル終了へのカウントダウン」という文脈で記事を掲載した。はたして本当にディーゼル終焉への一里塚なのだろうか? 

ご存じのとおり、ポルシェは現在フォルクスワーゲングループの一員である。そのフォルクスワーゲンは時折こっそりと「ディーゼルはCO2
削減にとって今後も重要な技術」と観測気球を上げているが、風向きはどうも芳しくない。世の中の人々はまだディーゼルゲート事件を忘れていないからだ。フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンをめぐって2016年に発覚した違法行為だ。

【関連記事】

「1人で食べる人」が孤独の代わりに得たもの(東洋経済オンライン)

10/23(火) 11:00配信

東洋経済オンライン

沢木耕太郎、と聞いて真っ先に思い浮かぶ言葉は「旅」という人は少なくないのではないか。1986年に発売された旅行記『深夜特急』(最終巻は1992年発売)は、1980~1990年代の若者、とりわけ、バックパッカーから絶大な支持を受け、その後の旅の仕方にも大きな影響を与えた。
その沢木氏の25年分の全エッセイを掲載した『銀河を渡る』が9月27日に刊行された。『深夜特急』や『一瞬の夏』などヒット作の創作秘話や後日談、美空ひばりや檀一雄との思い出話も収録されている。日本を、世界を移動しながら、自身も40~70代へと旅していく沢木氏の好奇心はとどまるところを知らない。今回はその中から、2006年11月の「銀座の二人」を掲載する。

■ひとりで酒を飲んだり、食事するのは

 夏の終わりから秋の初めにかけての季節、東銀座の試写室で3時半から始まる映画を見て出てきた私は、地下鉄の日比谷線の駅に続く階段を下りずにそのまま晴海通りを銀座四丁目の交差点に向かって歩きはじめる。まだ日は暮れ切っておらず、柔らかい陽光がビルの高い階の窓ガラスに反射している。

 そこを歩きながら、ふと、ビールが飲みたいなと思う。どこかに寄って1杯飲んでいこうか……。

 しかし、銀座四丁目の交差点に着いた私は、地下鉄銀座線の駅に続く階段を下り、まっすぐ家に帰ることにしてしまう。

 銀座や新橋になじみの店がないわけではない。しかし、私は、ひとりで酒を飲んだり食事をしたりするということにあまり慣れていないのだ。外で飲んだり食べたりする機会は少なくないが、そういうときは誰かと一緒のことが多い。少なくとも、夜はそうだ。

 旅に出るのはいつもひとりだから、旅先では夕食もひとりで食べる。しかし、東京にいるときは、なんとなくひとりで食べたり飲んだりするのが億劫になってしまう。ひとりだと、入った店の人によけいな神経を使わせそうな気がする。そしてまた、こちらもそれ以上に神経を使わなくてはならない。

【関連記事】

食品スーパー「オーケー」の有報が面白すぎる(東洋経済オンライン)

10/23(火) 10:00配信

東洋経済オンライン

 「勝つために何をするか、道は解かっています」「売上予算の達成を重視し、英知を集めて対応します」「競争には絶対に勝つ」――

この記事の写真を見る

 神奈川県や東京都など首都圏に113店(2018年9月末時点)の食品スーパーを運営するオーケー。「毎日が低価格(エブリデー・ロー・プライス)」を掲げ、チラシはまかない、値上げの理由などの商品情報を店内に「オネスト(正直)カード」として掲示するなど、独自の運営方法で知られる。低価格がウリながらも利益率は業界平均以上で、業界でも一目置かれる存在だ。

 そのオーケーの発行する有価証券報告書(有報)の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」が、また独自なのだ。冒頭に引用した一節のように、株主に直接呼びかけるような表現で埋め尽くされている。

■紋切り型の説明はしない

 オーケーは未上場会社だが、株主数が多いため、有報の提出義務がある。同社の有報は金融庁が所管する電子情報開示システム「EDINET」で閲覧できる。

 普通、有報における「対処すべき課題」は紋切り型で、通り一辺倒の内容になりがちだ。「当連結会計年度における国内経済は~」から始まって、フォーマットが決まっているかのような表現が続くことが多い。

 しかし、オーケーは違う。終わった期の振り返りに加え、次期予想も数字を明示して説明。青果、精肉、水産、総菜の各部門の状況と、認識している課題と対応策などが書かれている。

 「お友達宅配(という施策)はご利用が少なく見直しています。宅配手数料10%に抵抗があるようで、思慮が足りなかったと反省しております」「ネット販売でも『エブリデー・ロー・プライス』を実現するのが大きな課題ですが、やりがいもあります」といった調子。

 売り場を知り尽くした経営者でなければ語れない内容が、平易な言葉で、既存店実績など必要な数字も折り込んで説明されており、個人投資家はもちろん、プロの機関投資家も歓迎するであろう内容だ。

 それもそのはず。同欄を書いているのは、創業オーナーである飯田勤代表取締役会長本人である。飯田会長が草稿を書き、二宮涼太郎社長などとやりとりをしてまとめる。

 オーケーは毎年4月に取引先を集めた「オーケー会」と呼ばれる会合を開いている。実は有報の「対処すべき課題」は、その際のスピーチ原稿を活用したものだ。新年度にあたりその年の会社方針を取引先に説明したもので、平易な表現で具体的な施策が並ぶのは、そうした理由もある。

【関連記事】

ANA「羽田-ウィーン」直行便開設のインパクト(東洋経済オンライン)

10/23(火) 9:20配信

東洋経済オンライン

 ANA(全日空)は10月15日、羽田―ウィーン間の直行便を2019年2月17日から開設すると発表した。ANAにとっては欧州で7つ目の就航都市となり、日系航空会社便の中東欧地域への乗り入れとなるとこれが唯一のルートとなる。日本とオーストリアが直行便で結ばれることになるインパクトとは何か。その特徴や優位性を検討してみることにしたい。

この記事の写真を見る

■日本とオーストリアは国交樹立から150周年

 2019年は日本・オーストリアの国交樹立から150周年の節目。それよりも近現代史的にさらに注目すべきは、2019年はあの「ベルリンの壁」の崩壊、つまり冷戦終結から記念すべき30年目に当たる。

 「オーストリアとベルリンの壁とがどういう関係にあるの?」と思う方も多いかもしれない。現在の東欧諸国は、第2次大戦後、旧ソ連を盟主とする共産主義・社会主義陣営(いわゆる「東側」)に取り込まれていたが、ウィーンという街はギリギリ資本主義・自由主義陣営である「西側」に属する国で最も「東側」に近い首都だったわけだ。

 当時の冷戦体制下においても、日本から「怖いもの見たさ」とも言えるような中東欧諸国周遊ツアーがあったのだが、旧東ドイツやチェコスロバキアを巡ってからウィーンに立ち寄ると、ネオンのまぶしさやあふれんばかりのモノ、そして優雅なコンサートや舞台を鑑賞して「西側の良さ」を改めて感じたものである。

 時代が変わり、あの冷戦が終わってから30年余りが経過。厄介な東西陣営を隔てる「壁」も消滅し、いまではウィーンがその地政学的な優位性から、いわゆる旧東欧圏諸国のモノ・ヒトを結ぶ要衝へと変化している。

ANAのプレスリリースを読むと「ウィーンは中・東欧へのゲートウェイ」「欧州域内68都市へのスムーズなアクセスが可能」とある。日本から見るとウィーンは、ロンドンやパリ、フランクフルトなど日本人の渡航需要が多い都市よりも東側にあるので、乗り継ぎ地として使うにも遠回りにならず好適だ。

【関連記事】

死亡事故が起こりにくい保育園の「見極め方」(東洋経済オンライン)

10/23(火) 8:10配信

東洋経済オンライン

10月初め、東京都練馬区の認可外保育施設「若草ベビールーム」で、 預けられていた生後6カ月の男児が死亡していたことがわかった。 こうした問題の背景には、共通に「保育の質」の低さが挙げられる。保育の質を向上させるためには何が必要なのか。厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」で構成員を務める大豆生田啓友・玉川大学教育学部教授が解説する。
 保育施設で死亡事故がまた起こってしまった。とても、悲しいことだ。問題の背景には「保育の質」の低さがあると考えられる。これを教訓に保育園には改めて安全管理を徹底してもらう必要があるだろう。だが、根本的な解決策を見出すには、保育の質を根本から問い直さなければならない。

 そもそも、現在の保育現場では、保育士が一人ひとりの子どもに手厚くかかわれる体制が確立されていない。埼玉県上尾市の保育所での死亡事故の取材をまとめたルポ『死を招いた保育』(猪熊弘子著、2011年)の中でも、その問題が指摘されている。

 保育の質が低ければ、本質的な問題は解決されない。では、保育の質とは何か。OECD(経済協力開発機構)は、保育の質について、「プロセスの質」「構造の質」「実施運営の質」「成果の質」「志向性の質」「教育の概念と実践」という6つの視点でとらえられるとしている。

 それは多元的で、一元的に説明できないものの、ここでは筆者が園での保育において重要と考える「プロセスの質」「構造の質」「実施運営の質」に絞って解説したい。

■大切なのは手厚い保育を保障すること

 まずは、「プロセスの質」を取り上げたい。これは、日々の保育士と子どもたち、子どもたち同士、保育士同士の関係性を指す。関係性の良好さこそ、保育には重要なのである。

 質の高い保育を実践する園は、朝泣いて登園してきた子どもに対しても、手厚い対応をしている。その子どもが泣きたい気持ちに寄り添い、ずっと抱っこすることもある。こうして保育士が手厚くかかわることで、子どもは安心して遊び始められる。

【関連記事】

南インドの「美しい本」が人々を魅了する理由(東洋経済オンライン)

10/23(火) 8:00配信

東洋経済オンライン

 南インド・チェンナイにあるちいさな独立系出版社「タラブックス」が、注目を集めている。当初は一部のアート・デザイン関係者や児童書出版界隈で知る人ぞ知る存在だったタラブックス。昨今では日本の大手出版社や大手商社などの企業までもが共同プロジェクトのラブコールを送るという。日々何百冊という本が世に出る現代で、彼らを抜きんでた存在にしているのはなんだろうか。

この記事の写真を見る

■すべての工程がハンドメイドの本づくり

 2017年11月、東京都の板橋区立美術館でひっそりとある展覧会が始まった。「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」は、美術館としては異例の、特定の出版社にスポットを当て彼らのこれまでの仕事を紹介するものだった。巡回展は韓国でも開かれ、多くの人が訪れている(11月からは静岡県ベルナール・ビュフェ美術館で巡回展が行われる)。

筆者自身がタラブックスに関する本を執筆したこともあり、この展覧会でも微力ながらお手伝いをしたが、口コミや皇后美智子さまご来場のニュースなどの効果もあったのだろう。来場者は日に日に増え、SNSではあちこちで話題になり、大きなうねりのようなものを感じたのを覚えている。

 多くの人を惹きつけたタラブックスのいちばんの特徴は、やはりその本の美しさだろう。タラブックスで最も有名な絵本『The Night Life of Trees』(日本語版『夜の木』・タムラ堂刊)は、100%ハンドメイド。紙を漉くところから、シルクスクリーンによる1ページずつ手刷りの印刷、そして製本まで、すべての工程が人の手で作られている。

 現在では、出版物はオフセット印刷と呼ばれる機械刷り、機械製本が日本をはじめ世界ではスタンダードだ。たとえ百冊単位であっても、オンデマンド印刷と呼ばれる少部数印刷システムがある。

 シルクスクリーン印刷というのは、色の数だけ版を分けて、それを1枚の紙に重ねていく手法。こう書いてしまうとなんということもないようだが、それを1枚ずつ人の手で刷ることを想像してみてほしい。

 たとえば、木の葉の緑で1回、幹の色で1回、木に留まる鳥の色で1回、文章の文字色で1回……こうして1枚の紙に色をのせて、たった1ページをつくる。1色刷るごとに乾かす時間がいる。色数が多くなれば手間もそのぶん倍増していき、色の重なりやインク汚れなど難易度も上がっていく。それが十数ページの本ともなると、もう気が遠くなるような作業でしかない。

【関連記事】

意見と事実が区別できない人の残念な思考(東洋経済オンライン)

10/23(火) 7:40配信

東洋経済オンライン

 世の中は多くのウソとわずかの真実で成っている。未来からのシグナルはかすかで、容易につかめない。明確な根拠と確信を持って判断できることはほとんどない。

 人生は霧の中を行軍するように曖昧模糊としている。それでも、できるかぎり判断の誤りを避け、最善解に至る方法を見つけなければならない。たとえ右往左往を余儀なくされても、秩序だった右往左往をすることが必要である。

われわれは、感覚的に判断し、オプション(選択肢)を考えずに行動している。それが多くの誤りと失敗の根本である。そこから脱するには、いくつかの視点が必要である。拙著『プロ弁護士の「勝つ技法」』でも触れている「情報の真偽を吟味する」やり方を紹介しよう。

■「権威ある鑑定」も一意見にすぎない

 私が工場用建物の買収交渉で買い主の代理で交渉したときのことだ。値段で折り合いがつかず交渉は難航していた。

 すると、売り主の弁護士(30代半ば)が、80ページもの鑑定書を出してきた。不動産業界では著名な某研究所の作成で、主文は「本件借地権付き建物の価格は60億円」とある。

 40億円なら買うつもりだったが、様子を見るため30億円を提示した。

 すると、こう反論してきた。

 「価格は鑑定書のとおり客観的に60億円なんです。30億円は間違っています」

 「間違いということはないでしょう。この鑑定は収益還元法(不動産から得る収益に着目した算出法)を取っているが、ほかの評価方式もあり、評価は人によりさまざまだから」

 しかし、「3名の鑑定人が作成した」「某研究所だから信用できる」と、鑑定の正しさを強硬に主張する。交渉のテクニックではなく、どうやら本当に60億円が正しいと信じている様子である。

 彼は留学経験があり、ニューヨーク州弁護士の資格も持っている。ロースクールで事実と意見の違いを叩き込まれたはずだが、身に付いていない。

 鑑定書は、売り主の立場からの1つの意見にすぎない。意見なのだから「正しい」などとはいえない。

 さすがに「買い主がいなければ60億円も無意味。大幅に値を下げないなら、これまで」と交渉決裂を示唆した。すると「矢部さんは鑑定結果をごまかそうとするんですか?」という。代理人同士の話し合いで「ごまかし」とは乱暴きわまる。怒るより、むしろあきれた。

【関連記事】