口座開設は10代から90代も ローソン銀行・山下雅史社長 独占インタビュー(前編)(東京商工リサーチ)

 2018年10月15日、大手コンビニエンスストア、ローソンの子会社の(株)ローソン銀行(TSR企業コード:022428933、品川区)が営業を開始した。まずは、ATM(現金自動預け払い機)事業のサービス強化や、インターネットバンキングサービスの提供などを開始。キャッシュレス決済の導入など、ローソンの店舗を中心に、新しい金融コミュニティを構築するプラットフォーム・ビジネスの展開を目指している。
 超低金利が続くなか、銀行業への新規参入は実に7年ぶりとなる。東京商工リサーチ(TSR)は、金融業務に風穴を開けるローソン銀行・山下雅史社長に事業展開や今後の展望を聞いた。

-営業開始から2ヵ月が経過したが、世間の反応は?
 10月15日の営業開始から2ヵ月余りが経過した。思っていたより多くのお客様から反応があった。今さら銀行を作って、しかも、シンプルな商品構成。金利を高くした訳でもなく、新しいお客様に来ていただくのは難しいと思っていた。営業開始後、予想を上回るような数字で、2週間で6,000口座。12月に入ってからも口座開設は合計で2万を超えた。銀行口座を作ってくださる方がこんなにいるということにまず驚いた。コンビニの銀行なので「都市圏で若い人」が中心という想定をしていたが、実際の年齢層は10代から最高は90代まで非常に幅広い。エリアは首都圏を含め大都市圏が中心かと思っていたら、意外と地方のお客様も万遍なくいる。年齢層のボリュームゾーンは40代、50代。しかも男性。これは非常に驚きだった。こういうお客様のニーズはあまり想定していなかったので、何を望まれているのか冷静に分析をしたうえで、新しいビジネス展開をしていかなくてはならない。
 高齢の方の新規口座の開設が多いことも想定外だった。住所や地域をみると、たぶん今まで利用していた金融機関や郵便局より近いところにローソンが存在し、それが「ローソンが銀行になるなら年金の受け取りはここでもいいよね」となっているかと想像している。

-想定を超える反響の理由は?
 銀行に対する期待が世の中ではまだあるということ、コンビニならではのお客様のニーズが拾われていることがある。ATMが当面の主業になるので、10月15日から認知をあげていくキャンペーンを実施した。ATMを利用したら「からあげクン」が半額になるクーポンを出したが、話題になった。ATMの利用件数も、前年対比での減少を下支えする効果があった。
 銀行を開業後、皆さんが一生懸命盛り上げてくれたこともあり、認知度は上がってきていると感じる。開業と同時に新千歳空港で店外ATMを開始し、12月14日には新御茶ノ水駅構内にも開設した。会社が入居する大崎の「Think Park Tower」の中にも1台出した。ATMは今までローソンの店の中だけというのが基本だったが、少しずつ外に出していくことで、皆さんにも接点を増やしてもらえる機会を作っていく。

-ATMをどんどん増やしていく方針?
 お客様が使いやすい、いい場所であれば、しっかり吟味してATMを出していきたい。出しやすいところは、逆に使いにくかったり、人が来なかったりするので、そこは、お客様の利用にしっかり結びつくところを選んでいく。

-代表的な取り組みは?
 ATMに関しては意外に知られていないので、引き続き認知を上げていく。テレビ、Web、店頭でクーポンを活用したキャンペーンの告知を行った。広告キャラクターを務めるサンドウィッチマンさん(お笑いタレント)は、当初金融のイメージがないという見方もあったようだが、好感度も高く、親和性のある人柄が好まれた。ローソンとの親和性では、商品クーポンの取り組みも効果絶大だった。今は全国で同じクーポンを出しているが、提携金融機関とも相談しながら、クーポンの「出し分け」も検討していきたい。

-今後のATM事業の展開は?
 金融業界全体でみると、地域金融機関はATMを自前で持ちきれなくなってきている。地域金融機関とこれからお互いに補完しながらやっていくなかで、目玉の一つはATMの事業を我々が代わりに請け負うこと。顧客の利便性は落とさず、地域金融機関のコスト削減につなげる提案をし、いくつか話を進めている。今までなかなか踏み切れなかった問題だが、いよいよ2019年以降、具体的な形がでてきそうだ。

-同業のセブン銀行とのすみ分けは?
 (セブン銀行も)今、どんどん地域金融機関との連携を強めており、その意味ではぶつかってしまう。セブン銀行さんとの間では、互いに2001年からATMビジネスを推進しており、ともに社会インフラとしての機能を果たすためには、互いを尊重しながらやっていくことだと思う。コンビニ銀行が2行あることはお客様にとって選択肢もあり、良いことだと思っている。

-ローソングループの銀行であることの強みは?
 「ブランド」の強みがある。ローソンとして確立したブランドを使えるのは強い。フィンテックなど新しい異業種が参入してきても、日本国内で1万4,000カ所以上の店舗を張り巡らすことは物理的に簡単にできることではない。それをローソングループとして活用できるのは非常にありがたい。それと2001年から積み重ねてきたATM事業。これが地域金融機関と10数年にわたりつながってきている。そして、コンビニには必ず人が来る。例えば極端な話、年収300万円の人も来るし、年収10億円の人も来る。その人たちがみんな同じおにぎりを買って食べる。それらの人に同等の満足度を提供する場所。コンビニは「(来てくれと)言わなくても、人が来てくれる場所」。そこでの出店が強みだ。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年1月17日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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首都圏で「サブウェイ」等のFC店を運営する(株)エージー・コーポレーションが破産(東京商工リサーチ)

 (株)エージー・コーポレーション(TSR企業コード:295215330、法人番号:3010701017446、品川区大井7-4-24、設立平成13年4月17日、森岡篤史社長)は1月16日、東京地裁から破産開始決定を受けた。破産管財人には相羽利昭弁護士(三宅・今井・池田法律事務所、新宿区新宿1-8-5、電話03-3356-5251)が選任された。
 負債総額は約11億6400万円(平成30年3月期決算時点)。
 サンドウィッチチェーン店「サブウェイ」のフランチャイズ(FC)店舗を首都圏を中心に約20店舗を展開していたほか、ステーキ店のFC店も手掛けていた。
 近年はサブウェイ事業の不調に伴い、チーズケーキチェーン、牛タン専門店、猫カフェ等の新業態に相次いで参入。平成30年3月期には売上高約17億4900万円をあげたものの、新規出店や人件費等の増加による経費負担が重荷となるなど、厳しい経営が続いていた。

ケフィア被害弁護団が2回目の説明会、元代表の刑事事件化を目指す意向(東京商工リサーチ)

 (株)ケフィア事業振興会(TSR企業コード:298080745、東京都千代田区、代表:鏑木秀彌氏)とグループ27社は、2018年12月14日までに破産開始決定を受けた。
 ケフィアの「オーナー制度」は、3万人を超える会員から多額の資金を集めたが、2017年11月頃から利払いの一部が滞り2018年7月、ケフィアグループ被害対策弁護団が組織されている。
 同弁護団は1月15日、2回目の委任者向け説明会を都内で開催した。弁護団長の紀藤正樹弁護士(リンク総合法律事務所)、被害者約150名が参加した。
 紀藤弁護士は、「(ケフィアグループの)破産手続きを監視し、幹部の責任追及と警察へ(刑事事件化の)働きかけをしていく」と説明した。

◇詐欺罪での立件を目指す
 弁護団の事務局長を務める荻上守生弁護士は、弁護団の活動を被害者へ報告した上で、「ケフィアグループは資産隠しが疑われ、破産管財人と連携し、資産をあぶりだすよう協力している。弁護団独自でも調査していく」と方針を述べた。
 ケフィア事業振興会の破産財団については、「10億円以上の財団が形成されていると聞いている」(荻上弁護士)と説明した。さらに、「社会的に大きな金額、多数の被害を受けており、詐欺罪を問えると考えている」と述べた。また、捜査機関と協議していることも明らかにした。

◇配当は「1%から5%」の可能性
 弁護団の報告後、質疑応答が行われた。
 女性被害者から「配当がどのぐらいになるのか」と問われ、弁護団は「返金や配当がどうなるかまったくわらない段階」と述べ、「刑事事件も考えられるのでそれなりの時間がかかる。全容解明を求めていくと大規模破産は3年が目処となる。再来年の5月に配当が決まるのが一番早いスケジュール」と見通しを示した。
 配当については、「1%から5%」(同弁護団)になる可能性があるという。

 東京商工リサーチの取材に応じた70歳代の女性被害者は、「警察の捜査に協力したい。悪いことをしたのであれば捕まえてほしい」と声を震わせながらコメントした。
 破産についての債権者集会は、5月21日午後2時から都内で開催される。破産管財人による調査経過が公表されるとみられ、元代表の刑事事件の動きとあわせ、資金の流れの解明が期待される。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年1月17日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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2018年「マッサージ業、接骨院等」の倒産状況は過去10年で最多93件に急増、5年連続で前年を上回る(東京商工リサーチ)

 街中でよく目にする「指圧、マッサージ」や「接骨院、整体」の看板。業界の生き残り競争は熾烈で2018年の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は93件に達し、過去10年で最多を記録した。
 倒産した「マッサージ業、接骨院等」の半数は個人企業で、従業員5人未満が全体の9割を占め、小・零細規模が多いのが特徴。さらに、業者間の過当競争から不正広告の横行、不正請求の増加も目立っている。
※ 本調査の「マッサージ業、接骨院等」は、TSR業種コードの「療術業」から抽出した。具体的には、マッサージ業、整骨院、鍼灸院、整体などを含む。

◇2018年の倒産93件、過去10年で最多
 2018年(1-12月)の「マッサージ業、接骨院等」の倒産は93件(前年比36.7%増、前年68件)と前年より大幅に増加した。2009年以降の10年間では最多となり、5年連続で前年を上回った。
 負債総額は20億2700万円(同106.8%増、同9億8000万円)に達し、前年より2倍増に膨らみ、10年間で最大になった。ただ、負債10億円以上の大型倒産はなく、同5千万円未満が83件(前年比22.0%増、構成比89.2%)と、小・零細規模が8割を占めた。平均負債額は2100万円(前年比50.0%増、前年1400万円)にとどまった。

◇個人企業が過半数を占める
 資本金別では、「個人企業」が52件(前年比18.1%増、前年44件)で、全体の過半数(構成比55.9%)を占めた。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が25件(前年比56.2%増、前年16件)、「5百万円以上1千万円未満」が8件(同166.6%増、同3件)と続く。「5千万円以上」は発生がなかった(前年ゼロ)。
 従業員別では5人未満が85件(前年比30.7%増、構成比91.3%)と9割にのぼり、小規模・零細企業の倒産が多いことを裏付けた。

◇原因別、販売不振(業績不振)が最多
 原因別では、「販売不振」(業績不振)が73件(前年比37.7%増、前年53件)と最も多かった。全体に占める構成比は78.4%で、同業者間での競争の厳しさを映し出している。
 形態別では、事業消滅型の破産が78件(前年比25.8%増、前年62件)と全体の8割(構成比83.8%)を占めた。次いで、主に個人再生手続きによる民事再生法が15件(前年比200.0%増、前年5件)と3倍増と急増した。

◇地区別 9地区のうち北陸と四国を除く7地区で倒産発生
 地区別では、全国9地区のうち、北陸と四国を除く7地区で倒産が発生した。最多は近畿の42件(前年41件)。次いで、関東22件(同12件)、中部17件(同6件)、九州6件(同6件)、中国4件(同3件)、北海道1件(同ゼロ)、東北1件(同ゼロ)の順。
 前年比では、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国の6地区で前年を上回った。

◇施術所数、10年で26.1%増
 厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、マッサージ業他の施術所(あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを行う施術所と柔道整復の施術所などを含む)は、2006年に10万8139か所だったが、2016年は13万6460か所に増加。この10年間で2万8321か所(26.1%増)増えた。
 就業状況では、就業あん摩マッサージ指圧師が2006年の10万1038人から、2016年は11万6280人(15.0%増)に増加。このほか、就業はり師が42.5%増(8万1361→11万6007人)、就業きゅう師が42.6%増(7万9932→11万4048人)、就業柔道整復師が76.0%増(3万8693→6万8120人)と、いずれも大幅に増えている。柔道整復師は、国家資格を取得できる養成校の増加も背景にあるとみられる。
 
 最近、マッサージ業や接骨院等の不正広告が全国的に横行している。不正広告には、「○○療院」、「○○治療所」といった、病院または診療所と紛らわしい名称や適応症、効果・効能等の明示、料金表示などを店頭やチラシなどに掲示することも該当する。こうした不正広告が増えた背景には、同業者の増加による過当競争が挙げられる。あん摩マッサージ指圧師等は、国家資格だが、最近は無資格のマッサージ店なども林立し、競争激化に拍車をかけている。

 さらに医師の診療報酬に当たる「療養費」で、接骨院など骨折や捻挫などの施術にあたる柔道整復師による不正請求が後を絶たない。一例として、白紙の療養費支給申請書に先にサインをさせ、架空・付増請求するケースのほか、無資格者による施術請求も行われているという。
 関係者からは、柔道整復師はかつては養成校卒業後、5~10年ほど実務勤務した後、独立開業することが一般的だったが、最近は卒業生の約2割が資格を取得直後、すぐに開業し、「十分な知識や経験がないまま、不正行為に手を染めるケースもある」との指摘もあり、業者間の過当競争が沈静化する気配はうかがえない。
 また、創業者支援の制度融資も「マッサージ業、接骨院等」の起業を促す要因になっているとの見方もある。
 今後も、しばらくは業界内で新規開業と廃業の出入りの激しい動きが続くことが想定される。このため小・零細業者を中心にした淘汰の流れは注視することが必要だろう。

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2018年「チャイナリスク」関連倒産は48件発生、初めて2年連続の減少(東京商工リサーチ)

 2018年(1-12月)の「チャイナリスク」関連倒産は、件数が48件(前年比11.1%減)、負債が231億9,300万円(同40.4%減)と、件数・負債ともに前年から減少した。
 12月単月の倒産は3件(前年同月3件)、負債総額は3億8600万円(前年同月比84.9%減)だった。 
 「チャイナリスク」関連倒産は2016年をピークに沈静化をたどり、倒産件数は2016年12月から25カ月連続で2ケタ割れが続いている。
 なお、倒産に集計されない事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は、12月は発生がなかった(前年同月ゼロ)。

「チャイナリスク」関連の集計基準
「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の8項目のどれかに該当するものを集計している。
1.コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
2.品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
3.労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
4.売掛金等回収難(サイト延長含む)
5.中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
6.反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)
7.価格競争(中国の在庫調整に伴う相場下落、安価製品との競合など)
8.その他

 2018年の「チャイナリスク」関連倒産は48件で、2014年1月の調査開始以来、初めて2年連続で減少した。要因別では、中国製の安価製品との競合などによる「価格競争」が18件(前年比63.6%増)で大幅に増加した。「価格競争」が倒産要因のトップになるのは初めて。
 一方、調査開始時から要因別のトップだった「コスト高」は11件(同38.8%減)と大幅に減少した。ここ数年、急激に進んだ中国国内の人件費や製造・仕入コストの高騰を織り込んだ経営が浸透してきたとみられる。
 ただ、混迷の度合いを深める米中貿易摩擦が、最終製品の販売に影響を及ぼす可能性もある。製品販売がさらに落ち込むと、日系サプライヤーやこれらの企業と取引をする中小企業の経営への影響も避けられない。このため、2019年のチャイナリスク関連倒産は不透明な米中関係を背景にして3年ぶりに増加に転じることが危惧される。

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倒産件数が過去30年で3番目に低水準の8235件、10年連続で前年を下回る【2018年の全国企業倒産】(東京商工リサーチ)

 2018年の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は8235件、負債総額が1兆4854億6900万円だった。
 倒産件数は、前年比2.0%減(170件減)。2009年から10年連続で前年を下回り、過去30年では1990年(6468件)、1989年(7234件)に次いで3番目に少ない水準だった。
 こうしたなか、都道府県別では前年を上回ったのが26府県(前年18都道府県)、減少が19都道府県(同28県)になり、10年ぶりに「増加」が「減少」を上回った。

 また、地区別では全国9地区のうち、6地区(東北、中部、北陸、中国、四国、九州)で前年を上回るなど、地域によって「まだら模様」をみせた。
 産業別では10産業のうち、7産業で前年を下回ったが、サービス業他(前年比3.2%増)は3年連続で増加し、小売業(同1.3%増)が10年ぶりに増加に転じるなど、個人消費関連業種の今後の推移が注目される。
 負債総額は、前年比53.1%減(1兆6821億6800万円減)で、過去30年では1989年(負債1兆2322億9600万円)に次いで2番目に少ない金額だった。この大幅減は、前年の製造業で戦後最大倒産となったタカタ(株)(負債1兆5024億円)の反動減に加えて、負債10億円以上の大型倒産が198件にとどまり、1989年(166件)以来29年ぶりに200件を割り込んだことが影響した。過去最悪だった2000年(23兆8850億3500万円)と比べて、93.7%減に縮小した。

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2018年「通信販売・訪問販売小売業」の倒産は66件、過去2番目の高水準に増加(東京商工リサーチ)

 拡大するネット通販市場だが、2018年(1-12月)の通信販売・訪問販売小売業の倒産は66件にのぼり、2009年の調査開始以来、2番目に多い件数になった。
 内訳は、衣食住の各種商品を扱う企業の倒産が最多だった。「多品種」の商品展開も曲がり角を迎えていることを窺わせた。負債額別では、負債5千万円未満の小規模業者の倒産が全体の7割を占め、業界内での規模格差の拡大を映し出した。

◇2018年の倒産、過去2番目の高水準に増加
 2018年(1-12月)の通信販売・訪問販売小売業の倒産は66件(前年比24.5%増、前年53件)だった。調査を開始した2009年以降では、年次ベースで2015年(77件)に次ぐ、過去2番目に多い件数になった。
 また、負債総額は1037億円(前年30億6300万円)と大きく膨らんだ。これは食品通信販売の(株)ケフィア事業振興会(東京、負債1001億9400万円)の大型倒産が押し上げた。 
 全体では、負債5千万円未満が52件(前年比36.8%増、前年38件)で、全体の7割(構成比78.7%)を占め、メイン商品を持たない小規模企業の脱落が進んでいるとみられる。

◇業種別倒産、「各種商品小売」が最多
 2018年(1-12月)の通信販売・訪問販売小売業の倒産の内訳では、衣食住にわたる各種商品を扱う「各種商品小売」が最多の23件(前年比43.7%増、前年16件)だった。次いで、インテリア用品や美術工芸品などの「その他」が16件(同15.7%減、同19件)、アパレル関連などの「衣服・身の回り品小売」が14件(同75.0%増、同8件)、「飲食料品小売」が11件(同37.5%増、同8件)、家電などの「機械器具小売」が前年同数の2件だった。

◇形態別、破産が9割で業績不振から回復は至難
 形態別では、企業の解体・消滅である破産が64件(前年比23.0%増、前年52件)で、全体の9割(構成比96.9%)を占めた。これに対し、再建型の民事再生法は1件だけで、業績不振に陥った企業の事業再建が難しいことを反映した。
 原因別では、販売不振が46件(前年比31.4%増、構成比69.6%)。次いで、事業上の失敗8件(前年比33.3%増)、他社倒産の余波6件(同20.0%増)、運転資金の欠乏3件の順。

◇設立5年以内が3割を占める
 従業員数別では、5人未満が61件(前年比32.6%増、前年46件)になり、小規模事業者の倒産が全体の9割(構成比92.4%)を占めた。また、2013年以降に設立された事業者は20件(構成比30.3%)で、設立から日が浅い5年以内の新規事業者が3割を占めた。 

 2018年の通信販売・訪問販売小売業の倒産が増えた要因には、相次ぐ中小企業のネット通販への参入で過当競争の拍車が挙げられる。通販事業は参入障壁が低く、個人でも事業の立ち上げが可能だ。スマートフォンやパソコンを経由した取引の拡大で、地方や小規模企業でも十分に成長できる市場でもある。ただ、その一方で、競争相手が多く、同業他社に対する差別化の「強み」がなければ、消費者や市場から淘汰されるスピードは速まっている。
 2018年に大手カタログ販売の千趣会が希望退職者を募集したように、急速なネット取引の拡大は、大手といえども経営に大きな影響を受ける。競争激化による通信販売事業の利益率低下で、「多品種」を扱う「総合通販」の効率は悪化している。だが、「専門店」化へのシフトもなかなか進まない通販業者が多い。今年10月には消費税率の引き上げが予定され、個人消費の節約志向が一層強まることが予想される。成長を続ける通販市場だが、業績を伸ばす企業と業績低迷から抜け出せない企業のふるい分けは、よりシビアに進むとみられる。

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倒産件数622件 12月度としては過去30年で2番目に少ない水準【2018年12月度の全国企業倒産】(東京商工リサーチ)

 2018年12月度の全国企業倒産(負債額1000万円以上)は件数が622件、負債総額は817億9200万円だった。
 倒産件数は、前年同月比10.6%減(74件減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。また12月度では、1989年(493件)に次いで、過去30年で2番目に少ない件数にとどまった。
 産業別では、10産業のうち、6産業で前年同月を下回ったが、こうしたなかで、マッサージ業などの療術業や労働者派遣業などを含むサービス業他が3カ月連続で増加した。また、不動産業が4カ月ぶり、情報通信業が3カ月ぶりで前年同月を上回った。
 また、12月度の「人手不足」関連倒産は25件(前年同月23件)になり、2カ月連続で前年同月を上回った。内訳では、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が6件(同3件)発生するなど、今後の推移が注目される。

 一方、負債総額は前年同月比79.4%減(3158億300万円減)で2カ月連続で前年同月を下回り、2018年としては最少金額にとどまった。負債10億円以上の大型倒産が15件(前年同月22件)にとどまり、全体では、1億円未満が461件(構成比74.1%)と全体の7割を占め、小規模模企業の倒産が大半であることに変わりがなかった。
 形態別では、法的倒産が587件(前年同月比9.9%減)になり、構成比が高率の94.3%を占めた。

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2018年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査、募集実施企業は2000年の調査開始以来、最少の12社(東京商工リサーチ)

 緩やかな景気拡大を背景に、希望・早期退職者を募った上場企業は、2000年に調査を開始以来、最少の12社にとどまった。リーマン・ショック翌年の2009年の191社に比べ、9年間で93.7%減と大幅に減少した。 
 ただ、薬価引き下げと大衆薬の低迷などが影響した医薬品メーカーや、ネット通販サイトの台頭に押された大手カタログ販売、アパレル大手など、業種により人員削減策への取り組みの違いが目立った。「人手不足」は深刻化しているが、厳しい経営環境に置かれている上場企業が少なくないことがわかった。
※ 本調査は、2018年に希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出した。 希望・早期退職者の募集予定を発表したが、まだ実施に至っていない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2019年1月11日公表分まで)に基づく。

◇希望・早期退職者募集の実施は12社、2000年以降で最少
 2018年(1‐12月)に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は12社を数えた。これは前年の25社から半減し、人員リストラ策は落ち着きをみせている。これまで希望・早期退職者募集を実施した上場企業は、リーマン・ショック直後の2009年に191社に達したが、円安進行で輸出産業を中心に大手企業の業績が好転した2013年から減少をたどり、2018年は調査開始の2000年以降で最少だった2016年(18社)を下回り、最少社数を更新した。

◇電気機器、医薬品、小売業での大手や有名企業の実施が目立つ
 2018年の募集または応募人数では、最多は日本電気(グループ会社を含む)の応募2170人だった。日本電気は中期経営計画に沿って、固定費削減を含む抜本的な収益構造改革の一環として実施した。次いで、今後の持続的な成長に向け生産性の高い組織構築を進める大正製薬ホールディングス(グループ会社を含む)の応募948人。通信販売事業の収益悪化に歯止めをかけるため、抜本的な事業構造改革に向け更なる合理化の必要が生じたカタログ通販大手の千趣会(グループ会社を含む)の募集280人。2015年に英国の高級ブランド「バーバリー」のライセンス販売契約が終了後、販売低迷が続くアパレル大手、三陽商会の募集250人と続く。
 募集人数が100人以上は6社(前年8社)で前年を2社下回った。業種別では、大正製薬ホールディングス、エーザイなどの医薬品と情報・通信が各3社で最も多かった。 

 2018年の上場企業の希望・早期退職者募集は、調査開始以来で最少にとどまった。「人手不足」が深刻化するなかで当然の結果ともいえる。ただし、この一方で希望・早期退職者募集に至ってないものの、「事業の選択と集中」の加速から、不採算事業の撤退や縮小に踏み出す企業や、業績が比較的に好調な企業でも、転籍や配置転換などで人員構成の見直しの動きも出ている。このため、現状は希望・早期退職者募集企業は低水準でも、競争力を高めるための人員適正化と、成長分野への事業展開を視野に入れた人員再配置などに踏み切る企業は今後も変わらず増えていくとみられる。

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2018年「老人福祉・介護事業」倒産状況、2018年「老人福祉・介護事業」倒産状況(東京商工リサーチ)

 2018年(1‐12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は106件(前年比4.5%減)だった。介護保険法が施行された2000年度以降では、7年ぶりに前年を下回った。ただ、倒産件数は過去3番目に多く、高止まり状況が続いている。
 業種別では「訪問介護事業」が42.4%を占めた。「有料老人ホーム」は14件になり、先行投資に見合う入所者が集められない計画性に問題のある事業者を中心に、前年比2.3倍増と突出したのが目立った。 
 倒産した事業者は、従業員5人未満が全体の62.2%、設立5年以内が32.0%を占め、小規模で設立から日が浅い事業者が倒産を押し上げている。競合に加えて、人手不足の深刻化で介護職員の離職を防ぐために人件費も上昇し、「老人福祉・介護事業」は淘汰の動きが加速している。

※ 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

◇倒産件数は7年ぶり減少も過去3番目の高止まり 
 2018年(1‐12月)の「老人福祉・介護事業」の倒産は106件(前年比4.5%減)で、2011年以来、7年ぶりに前年を下回った。ただ、介護保険法が施行された2000年以降、過去3番目の件数で依然として高止まりが続いている。
 負債総額は81億9,400万円(前年比45.4%減、前年150億1,100万円)、前年より4割減少した。これは前年5件だった負債10億円以上の発生がなかったのが大きな要因。全体では負債1億円未満が82件(前年比10.8%減、構成比77.3%)と7割を占め、小規模事業者の倒産が大半だった。

◇年後半にかけて倒産が減少、介護報酬プラス改定の影響も
 2018年(1‐12月)の「老人福祉・介護事業」倒産を四半期別でみると、2018年1-3月が前年比28.5%増(14→18件)、4-6月が同3.8%増(26→27件)と、前半は過去最多ペースの高水準で推移していた。しかし、後半に入ると状況が一変した。7-9月が同6.4%減(31→29件)、10-12月が同20.0%減(40→32件)と年後半にかけて減少幅が広がった。
 介護報酬改定と倒産との関連性は明言できないが、9年ぶりのマイナス改定となった2015年度改定(2.27%引き下げ)以降に倒産増加に拍車がかかり、2018年度改定(0.54%引き上げ)以降は7年ぶりの倒産減少につながった。このことから、少なくとも介護報酬改定の寄与と倒産発生ペースとの関連は否めない状況だ。

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