東京都心マンション販売、高額物件勢い衰えず(日刊工業新聞電子版)

■契約率90%、大手と中堅の差拡大

 大手不動産各社のマンション販売が堅調だ。住友不動産は4―9月のマンション契約戸数が過去最高を更新。三井不動産は4―9月期の個人顧客向け住宅分譲が売り上げ計上戸数、1戸当たり単価とも前年同期を上回った。三菱地所や東急不動産ホールディングス(HD)、野村不動産ホールディングス(HD)も2018年3月期計画に対する契約が順調に進んでいる。首都圏マンション市況全体が低迷するなか、大手の健闘ぶりが目立つ。

 住友不動産の4―9月期は、マンションと戸建て住宅を合わせた売り上げ計上戸数は前年同期比6・8%増の3763戸となり、9月末時点で18年3月期の売り上げ計上戸数に対する契約率は90%となった。「東京都心部やタワーマンション、郊外の物件も総じて売れ行きは順調」(尾台賀幸取締役)。20年3月期に引き渡し予定の物件の契約も進んでいるという。

 三井不動産レジデンシャルは横浜市で建設中の分譲マンション「ザ・タワー横浜北仲」を25日に発売する。第1期販売の最多価格帯は6600万円台で730戸を発売する予定。不動産経済研究所によると10月に販売戸数が100戸を超えた物件はなかった。佐藤雅敏三井不動産取締役は「付加価値が高く、駅前で住みやすい立地の物件は評価が高い」と足元の好調ぶりを説明する。

 野村不動産HDの4―9月期はマンションの売り上げ計上戸数が、前年同期比10・2%増の2006戸となった。「販売のスピードアップが数字に表れている」(沓掛英二社長)。粗利益率の低下から住宅部門の営業利益は減少したが、マンション市場の価格高騰に対し、戦略的に価格を抑えている面もある。

 一方、マンション市況自体は決して好調ではない。不動産経済研究所によると10月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)マンション発売戸数は2カ月連続で前年同月を下回った。1―10月累計では2万6052戸と前年並みの低水準で、年間では2年連続の4万戸割れも懸念されている。最も発売戸数が多かった00年の半分以下。

 同研究所の松田忠司主任研究員は「今は全体的に在庫処理が進んでおり、完成済み在庫数は非常に低い水準で推移している」と解説する。足元の発売戸数の減少は今後の決算に響く可能性がある。

 ただし「大手が主戦場とする東京23区内の市況は悪くない」(松田主任研究員)。大手が得意な富裕層向けの高額物件の売れ行きも好調に推移しており、今後は中堅以下のデベロッパーとの差がさらに広がる可能性がある。

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国産初、量子コンピューターがもたらすインパクト(日刊工業新聞電子版)

■NTTなど開発、27日からクラウド経由で一般利用

 これまで量子コンピューター開発で後れをとっていると言われてきた日本。ついに国産初の量子コンピューターがお目見えしました。

 NTT物性科学基礎研究所、国立情報学研究所などが内閣府の支援事業である「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT=インパクト)」の一環として開発した「量子ニューラルネットワーク(QNN)」計算装置がそれ。20日にメディアに公開するとともに、11月27日からはクラウド経由で一般ユーザーも利用できるようにすると発表しました。(リンク先はhttps://qnncloud.com)

 これまで量子コンピューターの分野でもっぱら注目されてきたのは、米国のグーグルやIBMなどが進める量子ゲート型、それにカナダのディーウェーブ・システムズが実用化した量子アニール型でした。QNNはそれらとは原理や構造が異なり、光の量子力学的な特性を利用したネットワーク型と言われるものです。他の二つのタイプに比べ、超電導素子を使っていないので極低温まで冷却する必要もありません。

 QNN計算装置の主な構成要素は、長さ1kmのリング状の光ファイバー、光増幅器、それに後からプログラムを組み込める半導体チップのFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)と、いたってシンプル。光ファイバー中に光増幅器で生成した最大2000個の光パルスを巡らせ、解きたい問題に対応する相互作用をFPGAから加えると、光ファイバー中を1000回周回したあたりで2000個のパルス群が全体として最もエネルギーの小さい、安定した位相の組み合わせを取り、それが問題の答えになるのだという。

 例えば、27日からQNNのクラウドで提供する「最大カット問題」。それぞれがつながりを持った複数の要素(ノード)をグループ分けするのに、違うグループに分割した時の要素のつながりの数(カット数)が最大になるようにする、代表的な組み合わせ最適化問題です。

 QNNでは、2000人の人がいてそのうち誰かを嫌いだと思う人間関係が2万組ある場合、それをグループ分けする最大カット数が1万3313だと、わずか5ミリ秒以内に計算。20日に会見したNTT物性科学基礎研究所の武居(たけすえ)弘樹上席特別研究員によれば、「通常のコンピューターが長い時間かけて計算した答えより、良い回答が得られた」そうです。

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日本のベンチャー投資 17%増も米国の50分の1(日刊工業新聞電子版)

■圧倒的な海外勢との差

 ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)がまとめた年次報告「ベンチャー白書2017」では、2016年度の日本のベンチャーキャピタル(VC)による国内外の総投資額は1529億円と前年度比17.4%増となった。国内向けでは同24.9%増と着実に増加。だが、圧倒的な伸びを示す米国や中国などの海外勢と比べるとその差は歴然で「日本の大きな課題」(市川隆治理事長)だ。人材や技術、資金面などの環境整備を進めたオープンイノベーションの加速が日本経済に求められている。

 VECは日本に法人格があるVCなどに対して「2016年度に行ったベンチャー企業への投資」をテーマにアンケートを実施し、114社から回答を得た。それによると、2016年度の総投資額は前年度比17・4%増の1529億円、投資先件数は同19・4%増の1387件だった。投資金額はリーマン・ショックの翌年度(09年度)で底を打ったのを機に、現在は回復傾向にある。政府や関係機関がスタートアップ企業に対する支援に乗り出したり、事業会社がベンチャー投資を積極的に実施したりしていることなどが背景だ。

 国内向け投資額は前年度比24・9%増の1092億円となり、13年度以降は堅調な伸びを示す。投資件数は1108件と同16・1%増えた。

■伸び際立つ「バイオ・医療」

 業種別でみると金額ベースで「IT関連(パソコン・モバイル・通信など)」が約半数を占め47・0%。次いで「バイオ、医療、ヘルスケア」が23・5%。「IT関連」は、金融とITを融合したフィンテックやIoT、人工知能(AI)といった成長分野の投資がけん引したが、前年度から4・9ポイント下落し「アプリを含めスマホへの投資はほぼ一巡した」と見る向きも多い。

 一方、1件当たりの平均投資金額が大きい「バイオ、医療、ヘルスケア」は4・8ポイント増加と伸びが目立つ。17年度の国内ベンチャー投資額について、市川隆治理事長は「今後も着実に増えると見ている」と分析する。

 日本のVCによる海外向けの投資は2・4%増の429億円だった。北米、欧州への投資が増加したが、中国への投資は減少した。米国向けはコンピューター、バイオ関連が増えた。欧州向けは、15年度は「IT関連」のみだったのに対して16年度は「バイオ、製薬」「金融・不動産、法人向けサービス」が加わり、業種の広がりが見られた。

 米国、欧州、中国、日本の4地域におけるベンチャー投資を国際比較すると、日本(1529億円)は海外を大きく下回る。米国は7兆5192億円。中国は2兆1526億円、欧州は5353億円と続く。米国は前年をピークに金額・件数ともに減少したが、全米で急成長を遂げつつあるスタートアップ企業の新製品開発に向けた投資が旺盛。他の地域は横ばいだった。

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誕生から10年「ヒトiPS細胞」 近づいた再生治療(日刊工業新聞電子版)

■再生医療、進む他家移植ストック

 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)所長の山中伸弥教授が、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)作製に成功したと発表し今月で10年になる。人体の組織を再現できる細胞として期待され、再生医療や創薬・薬剤試験、疾患の仕組み解明などの応用が進む。iPS細胞の研究の今を追った。

 6日に京都市内で開かれたCiRA主催のシンポジウムで、山中教授は「多くの科学者の熱意と努力のおかげで急速にiPS細胞の活用研究が進んだ」と手応えを強調した。

 中でも研究が大きく進んだのは、再生医療分野。最近は他人のiPS細胞を使用する他家移植の研究が主流。CiRAは良質なiPS細胞のストック作製を進めている。患者本人の細胞を使う自家移植に比べ、事前に良質な細胞を貯蔵できるため、迅速な治療が可能だ。

 理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによる眼疾患の加齢黄斑変性治療は、臨床研究まで到達している。今年2月に網膜色素上皮細胞懸濁液の他家移植の臨床研究が始まり、5件の手術を完了した。

■ヒトへの影響確認、臨床リスク低減へ

 心臓病の治療の研究も進む。大阪大学大学院医学系研究科の澤芳樹教授らは、他家iPS細胞から作製した心筋細胞シートの臨床研究を2018年前半に始める。澤教授はマイクロファイバーを培養の足場とし、人工的に細胞配列の方向性をそろえた成熟度の高い心筋細胞組織片の作製成功にも携わっている。次世代の再生医療製品として期待される。

 山中教授も今後の発展を期待するのが、iPS細胞から分化した細胞や組織で医薬品の有効性や毒性を評価する創薬研究。動物実験で確認しきれなかったヒト独自の生体構造への影響を確認できる。臨床試験のリスク低減につながる。

 治験が実現した創薬研究が、CiRAの戸口田淳也教授と池谷真准教授らの進行性骨化性線維異形成症(FOP)治療研究。患者由来のiPS細胞を使い、約7000種類の化合物の反応から免疫抑制剤「ラパマイシン」の症状抑制効果を発見した。既存薬の新たな効果の発見としても注目度は高い。

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国内ワインメーカー、自社畑の充実急ぐ メルシャンは倍増(日刊工業新聞電子版)

■過当競争で収益上がらないチリワイン

 日本のワインメーカーが、自社畑の充実を急いでいる。メルシャンは合計約40ヘクタールある自社畑を、2027年までに同76ヘクタールへ増やす計画。背景にあるのが品質管理とともに、ブドウの安定調達。サッポロビールやアサヒビールなど同業各社も、自社畑の取得や拡大に動く。国内ワイン農家の高齢化進展もあって、自社畑の拡大が急務になっている。

 「ワイン市場を活性化するため、新たな起爆剤が必要だ」―。メルシャンの代野照幸社長は力を込める。ビール市場縮小が続く中、ワイン市場は伸びてきたが、16年の出荷数量は前年比ほぼ横ばい。17年も同傾向が続く公算が大きい。

 15年までワイン市場の伸びをけん引したのは、チリワインだった。チリはEPA(経済連携協定)の関係で他国より関税が安く、各社が競って1本500円前後の低価格ワインの輸入を拡大。大手スーパーもプライベートブランド(PB)で輸入を増やした結果、店頭にはチリワインがあふれている。店頭競争のため利益が出にくくなっているうえ、円安と現地不作で調達コストが上昇している。

 メルシャンは過当競争で収益が上がらないチリワインに代わり、国産ブドウの日本ワインに期待を寄せる。日本ワインは単価も1本数千円台で、収益性が高い。国際コンクールの相次ぐ入賞と和食人気で、関心が高まっている追い風もある。

 日本ワインの構成シェアは約5%。その中でメルシャンは販売量を16年の3万5000ケース(1ケースは720ミリリットルの12本換算)から、27年に6万7000ケースへ増やす青写真を描く。

 サッポロビールは安曇野池田ヴィンヤード(長野県池田町)の新たな畑に、18年にブドウ苗木を植栽する。「畑面積を広げることで原料確保と最大化を図りたい」と同社。アサヒビールは北海道余市町の自社畑で、サポーター募集を始めた。ブドウの芽かきや剪定(せんてい)、収穫作業などを一緒にやることで日本ワインの認知を広げる意向だ。初ワインは23年の出荷を計画している。

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三菱電、走行しながらインフラ劣化点検 8Kカメラで高精度化(日刊工業新聞電子版)

■3次元レーザー併用、検出精度は0.3mm

 三菱電機は、専用車両を使って、トンネルなどの交通インフラ設備を計測・解析し劣化を検出するサービスを始めた。車両に搭載したレーザーとカメラにより、道路や鉄道を計測・解析し、幅0・3ミリメートル単位のひびまで自動検出できる。道路管理事業者や鉄道会社に提案する。

 三菱電機が始めたサービスは「三菱インフラモニタリングシステム(MMSD)II」で、料金は個別見積もり。

 小型トラックに自動焦点機能を備えた「8K」の高解像度ラインカメラと高密度3次元(3D)レーザーを搭載し、走行しながらトンネル全周や道路を計測して解析。ひび、ボルトの取り付け状態、漏水状況などを点検できる。車両は鉄道車輪を備えており、レール上も走れる。

 三菱電機は今回のサービスの前身となる「MMSDI」を2015年10月に始めた。乗用車を使ったMMSDIはカメラを標準搭載しておらず、レーザーによる3D計測データの作成が主な用途だった。MMSDIIでは新たに高解像度ラインカメラを搭載し、より細かく劣化状態を点検できるようにした。

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伸びる中古車輸出 障害は関税と右ハンドル(日刊工業新聞電子版)

■世界で認知、日本の代表輸出製品

 中古自動車の輸出が増えている。車検制度による高い品質が海外で支持される要因で、今後も成長が見込まれる。地球規模でリユース(再利用)を進める観点からも、中古車輸出を促進する政策が求められる。

 全国の税関が集計した2017年1―8月の中古車輸出実績は、前年同期比10%増の84万5283台。金額ベースでは同4・7%増の4838億2164万円に上った。

 近年は大気汚染の抑制を狙いに、エコカーへの優遇税制を適用する国も増えている。このため、ハイブリッド車(HV)の中古車輸出が17年1―8月は台数で7万7694台、金額で730億8163万円に増えた。

 中古車輸出が増えている背景は、東南アジアやアフリカなどの新興国で、良質な中古車を求める需要が高いからだという。日本の中古車は定期点検や車検制度の導入により、メンテナンスがしっかり行われている点が強みだ。

 企業努力も欠かせない。例えば中古車輸出を手がけるエスビーティー(SBT、横浜市西区)は、オークションで仕入れた一定の品質を持つ中古車だけにステッカーを貼り、品質を保証する。中古車はすでに日本の輸出製品の一つとして、世界各国に認知されている。

 ただ、中古車輸出は相手国の輸入規制や輸入税の変更に、ビジネスが左右される。05年から08年にかけて輸出が大きく伸びたロシア向けは、関税が大幅に引き上げられた影響で09年に台数、金額とも大幅に減少した。12年から輸出が急増したミャンマー向けも、16年に同国が右ハンドル車の輸入規制を打ち出し、減少に転じた。

 とはいえ、伸び悩む国内新車販売の一方で、中古車輸出は数少ない成長分野だ。規制対象の除外など当局間で交渉を進めるなど、国による輸出促進の取り組みも必要だろう。

 電気自動車(EV)や自動運転技術など次世代車への関心が集まる中、環境負荷を低減するリユースの観点から中古車を見直し、海外で販売を拡大させる視点も求められよう。

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動き出すか「インド太平洋戦略」(日刊工業新聞電子版)

■日米印豪が合意

 米国のトランプ大統領は初のアジア歴訪で、「米国第一」を掲げて中国、日本、韓国に貿易不均衡是正を求めた。さらに、日本には武器購入の増加を要請し、中国とは2500億ドル(約28兆円)にものぼる商談が成立したなどとした。

 その間に開かれた、ベトナム・ダナンでのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議、フィリピン・マニラでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との会議でも「公正で互恵の貿易関係」を強調し、APEC首脳会議では「米国は世界貿易機関(WTO)に公正に扱われていない」とWTO批判を繰り返した。

 トランプ大統領の貿易面でのこうした姿勢は大統領就任来といえるが、従来の米国大統領のようなグローバルな枠組みの中での米国の戦略・具体策提示とは異なる。国内向けのショービジネス的な色彩が強い。

 安倍晋三首相は一連の会議で、核開発を強行している北朝鮮に対する国連安全保障理事会の決議に基づいた一層の圧力強化、多角的な自由貿易の推進などとともに、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の推進を提唱した。

 この戦略は当然、中国が進める「一帯一路」を意識している。この戦略については、6日の東京での日米首脳会談でも話し合われ、(ア)法の支配、航行の自由等の基本的価値の普及・定着、(イ)連結性の向上等による経済的繁栄の追求、(ウ)海上法執行能力構築支援等の平和と安定のための取り組み―に向け、具体的な協力を検討するよう閣僚・機関にそれぞれ指示することで合意している。

 安倍首相は、インドのモディ首相とは、9月の訪印時に、「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの東進政策といえる「アクト・イースト政策」間での開発の相乗効果発揮で合意している。マニラでは、日米印豪の首脳が安全保障面を含めたインド太平洋戦略に関し、協力することで合意した。豪州は、同国の北に位置するアジアを向いてきたことで成長しており、アジアの動向への関心は強い。それに対し、トランプ大統領は、APECでの演説でも「アジア太平洋」に少々言及した程度だ。

 中国の「一帯一路」は、南シナ海での人工島建設・軍事基地化といった動きと連動している。中国はマラッカ海峡、ベンガル湾、インド洋でも「真珠の首飾り」と呼称される戦略を展開。マレーシア、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンで港湾建設支援、それに伴う経済開発支援などを行い、中国海軍の寄港地を増やしている。

 トランプ大統領は、今回のアジア訪問で、中国を名指しした非難は手控えた。しかし、中国の「汎中華主義」ともいえる膨張策は、すでにマレーシア、スリランカなどで軋轢(あつれき)を生んでいる。米国第一主義をとるとはいえ、トランプ政権が中国のそうした膨張策を座視し続けるとは思われない。

 トランプ大統領は、モディ首相の招きを受け、2018年初めに訪印することになっている。インドは、北部のジャンム・カシミール州で、中国の友好国であるパキスタンとの国境紛争が続き、今夏にはシッキム州近くのブータン内で印中軍が対峙(たいじ)した。トランプ大統領が訪印の際、対印武器輸出規制の大幅緩和、安全保障、「インド太平洋戦略」の具体化といった面で、モディ首相とどのような合意に至るか注目される。

事業承継問題、GDP22兆円・雇用650万人損失の危機(日刊工業新聞電子版)

■経営の自由度損なわれる税制

 事業承継問題をこのまま放置すると2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある―。経済産業省・中小企業庁が衝撃的な試算をはじき出した。

 今後10年で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人。うち約半分の127万人が後継者未定だという。大量廃業の危機が目の前に迫り「大事業承継時代」を迎えた日本。中小企業経営者からは税制改正を含め、政府支援を求める声が相次いでいる。

 鋼構造物の製造・販売を手がける旭イノベックス(札幌市清田区)の星野恭亮社長は「業績を順調に伸ばしてきた場合など、市場価格が成り立たないような高い株価が算定されてしまう場合がある。同族経営に対する税法上の扱いが大きな負担となり、中小企業の事業承継を難しくしている面もある」とし「相続に伴う税制などを抜本的に改めないと、日本全体に悪影響を及ぼす」と危惧する。

 創嘉瓦工業(愛知県高浜市)の石原順二社長も「次世代への事業承継をそろそろ意識する中で、まず頭をよぎるのは税制面だ」と断じ「優秀な人材や将来の幹部候補生などをきちんと確保できれば、いずれは事業承継につながる可能性もある」と人手不足支援も重ねて要望する。

 中小企業庁によると年間5000―7000社が事業承継税制を活用可能だが、実際の利用は年間500社程度。超硬金型製作の菅原精機(京都市山科区)の菅原尚也社長は「経営の自由度が損なわれる可能性もあり、優良企業では活用しないことも多い」と指摘。政府・与党関係者は「制度の意味をなしていない」と断じる。

■免除ではなく猶予

 事業承継税制の問題点は何か。一つは納税免除ではなく、猶予制度であることだ。要件を満たせない場合、猶予打ち切りになり、経営者は後継者の自主廃業や売却という選択肢が奪われることを懸念して「利用を躊躇(ちゅうちょ)する」(企業庁幹部)。

 雇用の8割以上を5年平均で維持し、さらに後継者が会社の代表者かつ筆頭株主であることが必要。「親族などに分散した株式の承継や共同経営者による承継が対象にならないなど、現実的な会社経営に対応できていない」(日本商工会議所)。議決権株式総数の3分の2が上限であることも課題で、株式が後継者に集約されず分散する恐れがある。

 ドイツや英国、フランスなどでは自社株の承継にかかる贈与税・相続税の8―10割を軽減する制度を導入済み。時代遅れともいえる日本の事業承継税制について「諸外国並みにしなければならない」と与党関係者は声を上げる。

 現状、わが国の開業率は4・6%と極めて低く、地方に行くほど開業率が廃業率を下回る。承継負担を大胆に減免する措置を取らねば地方経済はますます疲弊する。企業庁は事業承継税制にかかる要件の全面撤廃を視野に入れる。同時に税逃れなど制度の悪用を防ぐ仕組みや、承継計画認定スキームを新たに導入する方向だ。

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基幹システムも機械装置も持たない、安川電機が狙う“産業自動化革命”(日刊工業新聞電子版)

■稼働後データ活用、個別の進化からラインの進化へ

 安川電機はIoTやAIを駆使して、工場の生産性や品質を向上させる新たな自動化コンセプト「アイキューブメカトロニクス」を提唱した。1970年代にメカトロニクス、人と機械が共生する自動化工場「アンマンドファクトリ」を相次いで唱えた同社の狙いは“産業自動化革命”の推進だ。小笠原浩社長に取り組みを聞いた。

―従来の自動化とアイキューブメカトロニクスとの差は。
 「産業用ロボットやサーボモーターなど既存のコンポーネントは個別に進化してきた。今後はこれら製品販売に加えてIoTやビッグデータなどソフト面のデジタルソリューションを加える。データを解析して生産状況を可視化し、生産性向上や故障解析につなげる。簡単に言うと今以上に顧客の利益を増やす取り組みだ」

―IoTやAIの活用は製造業で導入が進み、競合他社も同様の取り組みを加速させています。
 「当社の主力製品はロボット、サーボモーター、インバーターで、基幹システムも機械装置も持たない当社が工場全てを囲い込むことはできない。多くのメーカーの装置からデータを集め、IoTやAIを活用したディープラーニング(深層学習)を駆使して精度を上げるのだ。装置間連携やタクトタイムの短縮、他社製品との連結などで製造現場の付加価値を高める」

―多くの装置が混在する製造ラインで可能でしょうか。
 「生産の多様化が進み、顧客からの効率化ニーズは高まるばかりだ。アイキューブは2003年から検討を始めたが、IoTの進化でようやく実現可能になった」

―工場の自動化と捉えてよいのでしょうか。
 「誤解しないでほしいのだが、工場全体の生産支援はできない。あくまでもセル生産までにとどまる。ロボットやモーターがつながり、それ一つがセンサーとして稼働しているイメージだ」

―ロボットなどの需要がグローバルで好調です。18年度を最終年度とする中期経営計画も 1年前倒しで目標を実現しそうです。
「3年での数値目標が2年で実現できそうだ。18年度は成果を検証して次の中期経営計画に反映させる。このため次の中期経営計画を前倒しで策定することはしない。数年先の計画をこの数カ月で急いで練り直す必要はない。営業利益1000億円以上など長期の『2025年ビジョン』の数値目標も変えない」

 アイキューブは統合・知能・革新を融合した造語。オープン化は自らの首を絞めかねないが、製品が広く普及してシェアや利益拡大に直結する利点もある。AIベンチャーとの資本提携など、良いモノをどんどん取り入れる柔軟さが同社の魅力でもある。IoT時代におけるモノづくりのベース(土台)を目指して、インフラ構築を着々と進めている。

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