東京都、インターンシップ受入奨励金 支給期間2倍の20日間に拡大(日刊工業新聞電子版)

 東京都は若手ものづくり人材の育成と確保を目的とした都の奨励金制度「東京都ものづくり中小企業魅力体験(インターンシップ)受入支援事業」の規模を拡大する。中小企業が長期就業訓練で実習生を受け入れやすくするため、2018年度から奨励金を支給する期間を前年度比2倍の20日間に引き上げる。4月から葛西工業高校と多摩工業高校の2校で始まるデュアルシステム科の設置を見据え、実態に合った支援制度にする。

 奨励金制度に充てる18年度予算額は、前年度比2200万円増額の約8400万円とする方針。デュアルシステムは実習と長期就業訓練などを通じ、学校と企業が協力して生徒を育てる制度。本人と企業が合意すれば実習先に就職することもでき、就職のミスマッチも防げる。

 同奨励金制度を活用すると、都内の工業高校や高等専門学校の生徒・学生受け入れ企業は、受け入れ1日で生徒1人8000円(1人当たり10日間まで)が支給される。

 ただ、長期就業訓練期間は約1カ月間あり、10日間の支給分ではカバーできていなかった。これまでデュアルシステム科があった六郷工科高校の生徒だけでなく、4月からは葛西工業高校と多摩工業高校の2校でも同科がスタートすることも踏まえ、支給期間を20日間に延ばすことで受け入れ企業側の負担軽減と若手のモノづくり人材確保につなげることにした。

 同制度は都内に事業拠点を置く企業であれば、他県の事業所で実施するインターンシップ(就業体験)も奨励金の支給対象となる。

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日本水産、ブリ養殖にAI・IoT導入 飼料補充自動化も視野(日刊工業新聞電子版)

 日本水産は魚の養殖事業で、人工知能(AI)やIoT導入を加速する。ブリを念頭に、AIを用いた養殖魚の体重測定装置を2018年度中に開発、ギンザケなど他の魚種へも順次、応用を図る。魚体の側面像が必要な現在のカメラシステムより操作性や精度が向上し、出荷魚の品質を高められる。飼料補充の自動化でもAI、IoTなどを積極活用する方針。

 養殖事業で、イケス内を泳ぐ魚の体重や健康状態をチェックすることは、歩留まりや品質につながる重要課題。ブリの場合、一つのイケスに約4000匹の魚がおり、高解像度の水中カメラで魚を連続撮影。体高と体長が分かる側面像を選んで長さを測定、演算式を用いて体重を計算していた。

 これまで膨大な画像の中から側面像を選ぶのに手間がかかる上、計算した体重がイケス内の魚の平均値かどうか、確証が持てなかった。AIを用いると魚が体をひねって泳いでいたり、カメラ正面に向かって泳いだりするケースでも学習機能で推定計算できるため「手間や時間が大幅短縮、精度も高められる」(前橋知之執行役員)。

 従来の水中カメラシステムは豪州製だったが、18年度に開発の新システムは国内の2社と共同開発する。会社名は明らかにしていない。

 飼料補充自動化でもAI、IoTの導入を急ぐ。日の出と日没時刻近辺で魚が多く餌を食べることが分かっており、自動給餌で早朝出勤などの人件費を節約する。ただ、全部の魚に餌が行き渡るには複数回に分けるなど魚種ごとや季節の問題があり、このあたりをAIに学習させて給餌精度を高める。

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三井物産と日立システムズ、ドローン検査事業で協業(日刊工業新聞電子版)

■7月から新サービス

 三井物産と日立システムズは飛行ロボット(ドローン)による検査事業で協業する。三井物産が2017年9月に出資した英スカイ・フューチャーズ・パートナーズの技術と日立システムズの技術を融合し、7月にドローンによる検査サービスの提供を始める。人手不足で構造物の検査にドローンを活用するニーズは増えており、両社は共同でドローン検査事業を拡大する。

 日立システムズはドローンの操縦や空撮、画像加工、データ管理などのサービスをワンストップで提供する「ドローン運用統合管理サービス」を展開している。主にコンクリートのひび割れなどのデータの蓄積が豊富で、ドローンによる撮影画像を高精度に分析できる。一方、スカイ・フューチャーズは、石油・ガスの生産設備や船舶など鉄の構造物におけるさびなどの検査技術に強みがある。

 三井物産と日立システムズは協業によって、得意とする分野を補完する。両社で技術を相互に利用するほか、販売網などをスカイ・フューチャーズの事業拡大に生かす。

 両社は17年12月に船舶検査の実証実験を実施した。日立システムズがドローン飛行計画を作成し、スカイ・フューチャーズがパイロットと検査技師を派遣。スカイ・フューチャーズのソフトウエアで検査リポートを作成した。

 両社はサービス開始に向けて、顧客の保有する設備などでこうした実証実験をこれからも実施。マーケティングや技術検証を進め、サービス内容を決定する。

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ローム、ヒアラブル機器向けワイヤレス給電IC開発(日刊工業新聞電子版)

■13.56MHz帯で実装面積5割減

 ロームは子会社のラピスセミコンダクタ(横浜市港北区、岡田憲明社長)を通じ、耳に装着する「ヒアラブル機器」向けに、ワイヤレス給電制御ICを開発した。高周波数帯による給電方式を採用。実装面積を大幅に削減し、ヒアラブル機器へ搭載できるようにした。消費税抜きのサンプル価格は700円。5月から月10万個体制で量産する。

 ヒアラブル機器は耳に装着する小型のウエアラブル機器で、米アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」などがある。

 受電側IC「ML7630」と送電側IC「ML7631」をセットにして提案する。近距離無線通信(NFC)に使われる13.56メガヘルツの高周波数帯で電力を送る方式を採用し、使用するアンテナを小型化した。これにより、実装面積を従来と比べて50%削減した。スマートフォンなどとNFCによる連携も可能だ。

 スマホ向けに普及が進むワイヤレス給電の規格「Qi(チー)」は、110キロ―205キロヘルツの周波数帯を使って電力を送るため、アンテナの小型化に限界がある。部品の小型化が一層要求されるヒアラブル機器は、Qiでは対応が難しいという。

 13.56メガヘルツ帯によるワイヤレス給電は、ラピスセミコンダクタが独自に開発した方式。今後は業界団体「NFCフォーラム」を通じ、同方式の規格化を進める。

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東大・暦本研究室、IoAデバイス+宅配ロボ 都内で自律走行試験(日刊工業新聞電子版)

■「TiCA」を通して人とつながるロボ

 電通国際情報サービス(ISID)と東京大学暦本研究室(暦本研)は19日、遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」を共同で試作したと発表した。チカは表面全体に発光ダイオード(LED)が配置された球体状のコミュニケーションデバイス。遠隔にいる人の視線に応じて、光る位置や光り方が変わる技術を搭載しており、その場にいる人と遠隔にいる人が眼を合わせているように自然に意思疎通できる。人とロボットが共生する社会に向け、20、22、23日に東京都品川区の港南地域で実証実験を行う。

 実証実験では、ZMP(東京都文京区)が開発した宅配ロボットにチカを実装。複数の複合施設やビルにまたがる約350メートルのルートを自律走行し、商品を目的地まで届ける。チカを用いて遠隔から周囲とコミュニケーションをとり、トラブルを回避しながら宅配する。周囲の人の反応や行動に関するデータを収集し、その有効性を検証し、実験を進めていく考え。

 具体的には「自律走行時に想定外のトラブルが生じた際、周囲の人に働きかけてトラブルを回避できるか」と「ロボットの振る舞いを人がどう受け止めるか」の2点を中心に検証する。

 チカは暦本純一教授が提唱するIoA(インターネット・オブ・アビリティー=能力のインターネット)の概念に基づいて開発した。IoAはネットワークを介して人々やロボットがそれぞれの能力を持ち寄り、交換し、今までにない用途の領域を切り開こうという概念。

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WRS災害対応ロボトライアル、長岡技科大の総合力光る(日刊工業新聞電子版)

■狭所走行性能や器用さ評価

 国際ロボット競演会「ワールド・ロボット・サミット」(WRS)災害対応標準性能評価チャレンジのトライアル大会(開催日程8―10日)は長岡技術科学大学の優勝で幕を閉じた。3本ハンドの器用さと不整地の走破性を兼ね備えた、総合力の高い機体が頂点に立った。これは現場の課題に則した競技設計ができたためといえる。大会運営の視点でも収穫の多い競技会になった。

 「燃えさかる屋内で消火バルブを開くなど、細かな作業ができるロボットは活躍の場面が多い」とロサンゼルス消防署のトム・ハウス署長は評価する。WRSトライアル大会の視察のために来日し、ロボットたちの健闘に目を細めた。WRSは経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催し、10月に2018プレ大会を計画している。本番に向けて運営ノウハウを蓄積し、競技難易度を調整するために各分野でトライアル大会が開かれている。

 今回はプラント災害の予防・保守に重心を置いたタスクがお披露目された。ダクトやパイプラインなどの狭所に進入して立体地図を作る。圧力メーターを読み取りバルブや消火栓を回すなど、小さく器用なロボットが活躍した。ロボカップの災害部門では重量級の大型機が活躍したことと対照的だ。WRSは災害対応だけでなくインフラ保守を実用化先として狙っているため、競技として狭所走行性能や器用さを求めるタスクを設計した。

 飛行機や電車の通路は最低60センチメートル。プラントのキャットウォーク(点検歩廊)やダクトなども幅60センチメートルが一つの目安になる。「現場のニーズに合わせて開発したロボットが上位に来た。つまり現場課題に近い競技設計ができた」と長岡技科大の木村哲也准教授は手応えを説明する。

■課題明らかに

 一方で課題も明らかになった。例えば構造物に絡まったパイプを引き抜くタスクは長岡技科大しか成功しなかった。このタスクはアームの器用さが求められる。もともとフィールドロボットの分野は移動ロボットに強い研究者が多い。まずセンサーやカメラを現場に運び、状況把握が最優先目標だったためだ。

 一方、ロボットアームは工場や手術支援などの整えられた環境で精密さを競ってきた。各関節に力覚センサーを備え、全周囲を触覚センサーで覆ったアームさえ実用化されている。ただ、調査用ロボットに載せられ到達範囲が広いアームはなく、ほとんどのチームが自作している。狭所走行用にコンパクトに折りたため、防塵・防水・防爆機能を備えたアームが必要になる。

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ひまわり生命、保険営業にIBM「ワトソン」 AIが“プロ”の提案誘導(日刊工業新聞電子版)

■初心者をべトランに

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は人工知能(AI)「ワトソン」を使った保険の営業を月内に開始する。優秀な営業担当者の顧客との面談データを集めて分析し、AIが適切な話題や説明方法を勧めることで、経験の浅い担当者でもベテラン同様のコンサルティングができるようにする。営業の質を高め、保険販売拡大につなげる。同様の取り組みは業界で初めて。

 ベテランの営業担当者が使用する資料や話題の順番、顧客の評価などのデータをAIで分析する。顧客の志向や性格、営業担当者の言動に対する反応や感情も分析した上で、コミュニケーションに適切な話題をAIが提案する。面談中の資料検索もAIが補助する。

 3月から直販社員で先行導入しており、月内に銀行など金融機関向けにも本格展開し代理店のコンサルティング営業を支援する。ひまわり生命は2月から保険金・給付金の支払いでもAIを活用。従来2人で行っていた確認作業の4割が1人で可能となるなど、大きな成果を上げている。

 労働人口の減少が見込まれるなか、保険業界ではAIの活用が進む。同社の親会社であるSOMPOホールディングスはコールセンターなどを通じて得た情報を分析・活用する「AIセンター」を業界で初めて構築。東京海上日動火災保険はAIを使った照会システムを導入しているほか、三井住友海上火災保険はコールセンターでAI活用を進めている。

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東芝、グラフェン電界効果トランジスタ開発 神経ガスセンサーに(日刊工業新聞電子版)

 東芝は神経ガスなどを検出する高感度ガスセンサーを開発した。炭素材料「グラフェン」でトランジスタを作成し、その表面に吸着した気体分子を、電気特性の変化として捉える。神経ガス類似物質を数十ppb(10億分の1)の感度で検出できた。テロ対策などに持ち運べるガスセンサーシステムの実現を目指す。

 1枚のグラフェンに電極を貼り付け、電界効果トランジスタとして機能させる。まず銅基板上に単層グラフェンを成膜して薬液で銅を溶かす。液中に浮いたグラフェンをシリコン基板上にすくい上げ、電極を配線してトランジスタとする。グラフェン表面にガス分子を吸着する認識分子を並べ、検出したいガスの種類を選ぶ。

 神経ガスの実験用代替物質である「DMMP」(メチルホスホン酸ジメチル)は、数十ppbのレベルで検知できた。20ppt(1兆分の1)でも電気特性変化を捉えることに成功した。

 単層グラフェンはシリコン基板上で約1センチメートル角。トランジスタの大きさは10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。トランジスタを集積すれば、検出するガスの種類や濃度計測範囲の違うセンサーを多数用意できる。

 現在は純粋なガスで検証している段階で、現実の空間を漂う多様なガスには対応していない。今後は多センサーのデータ処理などでガスの種類特定能力を高めていく。詳細は20日から開催される日本化学会春季年会で発表する。

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神鋼、不祥事から信頼回復へ。トップ交代の次にやるべきこと(日刊工業新聞電子版)

 神戸製鋼所の品質データ偽装問題が、川崎博也会長兼社長の辞任に発展した。同社は再発防止に向け、企業統治の仕組みや品質管理体制を再構築する。トップ交代を機に組織や経営のあり方を徹底的に見直し、信頼回復を急ぐ必要がある。

 神鋼が先ごろまとめた最終調査報告では不正の原因について収益評価に偏った経営姿勢の下で各事業部門が「生産至上主義」に陥ったなどとした。さらに不正が長年にわたって続いた背景として、縦割りの「閉鎖的な組織運営」を挙げた。

 ただ縦割りの問題は現場の組織運営だけにとどまらない。調査ではアルミニウム・銅事業部門の歴代担当役員3人が不正を認識していたほか、2人が役員就任前に不正に関わっていたことが判明した。今まで発覚しなかったのは経営陣の間にも縦割り意識がはびこり、担当以外の業務に干渉しないことが慣習化していたためと考えられる。

 調査結果を踏まえた再発防止策では独立社外取締役の数を取締役全体の3分の1以上とし、この中から取締役会議長を選ぶ仕組みに改める。チェック機能を強化して、企業統治を立て直す狙いだろう。

 外部人材の活用などによる監督体制の強化は、投資家の信任を得る上でも避けて通れない課題と言える。それは不祥事を防ぐだけでなく、的確な意思決定によって企業価値を高めるためでもある。この点を認識し、より緊張感を持って経営に当たる必要がある。

 一方、品質面では工程能力の向上が課題となる。日本のモノづくり産業は「カイゼン活動」などで現場力を鍛え、工程能力を高めて顧客の厳しい要求に応えてきた。だが、ここにきて熟練工の一斉退職や非正規雇用者の採用が進み、歩留まり向上の難易度が高まっている。

 経営陣はこうした課題にしっかりと目を向け、人材確保・育成や業務改革、生産性の向上に必要な投資を実行しなければならない。このためにも縦割りを排除し、投資の優先順位や、めりはりを全社規模で議論できる土壌をつくることが重要だ。

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消費電力を64%も削減、LED照明植物工場ユニットはなぜ実現できた?(日刊工業新聞電子版)

面パネルの採用、植物全体が照射できるように

 大成建設とスタンレー電気は共同で、面パネル型の発光ダイオード(LED)照明を活用した植物工場ユニットを開発した。独自のLEDを照明器具の筐体で反射させ、下面全体で発光させることで植物への均一な照射を実現。消費電力は従来の蛍光灯と比べ、約64%削減を達成した。省エネ性能を武器に今後の普及に力を入れる。

 両社が開発に着手したのは2009年頃。大成建設はそれまでに温室栽培や農業ビジネスの実施などで、植物工場に関するノウハウを蓄積。スタンレー電気は得意とする照明を軸に植物工場への展開を考えていた。

 互いの強みを生かして開発に臨んだが、建物の請負事業者と部品の量産メーカーでは、コスト観が異なった。大成建設の山中宏夫エンジニアリング本部産業施設ソリューション室シニアコンサルタントは「当初は企業文化が違いすり合わせに苦労した」と振り返る。

 開発したLED照明植物工場ユニットは、三つの特長がある。一つが1チップによるLED発光だ。従来の植物工場では、青や赤、緑の2―3チップの単色LEDを組み合わせて照射する場合があるが「消費電力が下がらない」(山中氏)。

 また、波長を幅広く出す白色LEDは植物の生育があまり良くなかった。そこで、植物の光合成に必要な光の全ての波長を1チップで発光するLEDを開発。「消費電力が下がり生育も良い」(同)と植物栽培に最適なLEDを生み出した。

 二つ目が面パネルの採用だ。LED光源は直進性が高く、葉が成長すると光が当たる部分と当たらない部分で成長に差が出る。このため、側面から照射したLEDを筐体内で乱反射させ、照明下部の拡散板を用いた面パネルで、植物全体に照射できるようにした。

 三つ目がLED照明の面パネルと栽培棚を一体化した構造だ。LED照明の面パネルに梁(はり)の機能を持たせることで空間を確保できる。棚の多段化が可能になり容積効率が1・5倍向上した。

 植物工場ユニットはこれまで、東京・銀座の文房具店、伊東屋と茨城県稲敷市で廃校を利用して植物工場事業を展開している企業が採用した。山中氏は「植物工場を検討中の事業者に提案したい」と意欲をみせている。

日刊工業新聞第二産業部・村山茂樹

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