自動車新潮流、官民で戦略 経産省が有識者会議(日刊工業新聞電子版)

■中国勢の台頭、CASE対応

 経済産業省が自動車産業の構造変化に対応し、4月にも世耕弘成経済産業相主宰の有識者会議を立ち上げることが分かった。中国勢の台頭やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新たな潮流を踏まえ、日本の自動車・自動車部品メーカーが競争力を維持・強化し、世界をリードし続けるための戦略を官民で議論。日本が進むべき次世代自動車産業の方向性を世界に発信する。

 会議には自動車メーカーや自動車部品メーカーの経営層、アナリスト、学術関係者など産学官の有識者が参加する見通し。詳細は未定だが、日本の自動車業界が培ってきた環境技術やサプライチェーンなどの強みを整理した上で、イノベーション創出に向けた官民の役割を再定義する。4月以降に複数回会議を実施し、今夏にも中間取りまとめを行う方向だ。

 自動車業界では、世界最大市場である中国勢の存在感が大きくなっている。2018年2月には民族系の浙江吉利控股集団が独ダイムラーの株式を取得した。中国メーカーは欧州勢との提携による技術開発の強化に意欲を見せている。

 加えて、電気自動車(EV)をはじめとする新エネルギー車(NEV)の一定割合の製造販売を義務付ける中国のNEV規制の導入や、英仏のガソリン車の販売禁止の目標などにより電動化の流れが加速する見込み。シェアリングなどの新しいモビリティサービスも始まっており、自動車産業を取り巻く環境は激変する。日本勢の競争力維持に向けた取り組みは急務だ。

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理研、「プロの研究集団」設置 新領域切り開く(日刊工業新聞電子版)

 理化学研究所は、従来にない新しい研究領域を開拓するため、2018年度から体制を強化する。4月1日付で「開拓研究本部」を新設し、理研の各研究センターに所属する任期付きの有期雇用研究者が世界の動向から重要なテーマを集め、国と協議しながら研究案を設計。採用されれば、同本部に無期雇用研究員として所属できる。優秀な人材による新領域の研究の活発化を促しつつ、定年まで働ける無期雇用人材の拡大を目指す。

 各機関の優れた研究者が、社会的な課題解決や技術革新に必要な研究開発テーマを学会や世界の動向から設定。研究センターで研究をしながら、新しい計画を作り上げる。資格審査を受け、現職の任期が切れた後、同本部に所属し、新領域の研究に取り組む。

 理研は、若手向けの「基礎科学特別研究員」制度や、年俸制で定年までいられる仕組みなどで雇用制度の改革を進めている。在籍する研究員約3000人のうち、無期雇用の研究員は約1割で、これを4割に引き上げる目標を打ち出していた。

 同本部の設置は、無期雇用枠拡大にも期待される。7―8年かけて、4割の達成を目指す見込みだ。松本紘理事長は、「開拓研究本部に所属するのはプロの研究集団。新しい研究テーマを切り開くのが使命だ」と意欲を示している。

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ゆうちょ限度額、緩和議論大詰め カギ握る金融庁(日刊工業新聞電子版)

■銀行、資金シフト懸念

 ゆうちょ銀行の貯金預入限度額の緩和をめぐる議論が不透明感を増している。政府の郵政民営化委員会が行った関係団体からの一連の意見聴取が26日までに事実上終えた。銀行業界は従前通り、ゆうちょ銀の通常貯金について預入限度額の対象から外す案に反対し、全国郵便局長会や消費者団体は妥当との意向を示した。ただ、金融庁は反対姿勢を示しつつも容認とも受け取れる発言をしている。

 近く民営化委の委員同士で議論し提言をまとめる。撤廃に傾けば銀行業界からの反発は必至だ。郵政民営化委員会は26日までに日本郵政、金融庁、銀行業界、生保業界、消費者団体などから意見聴取した。

 日本郵政の長門正貢社長は利用者の利便性の向上や事務負担軽減を理由に、定額・定期貯金の限度額1300万円は維持し、通常貯金を預入限度額の対象から外す案を要望。消費者団体「全国地域婦人団体連絡協議会」は「限度額が設定されていると、身近な金融機関が郵便局しかない(地域の)利用者に大きな不便を強いている」などとして対象から外すことを妥当とした。全国郵便局長会も「除外案」を希望するとともに定額・定期貯金の限度額の一定額引き上げを要望した。

 これに対して銀行業界の各団体からは、地方を中心に民間金融機関からゆうちょ銀に預金を預け替える資金シフトを将来的に招きかねないという懸念から反対の声が上がった。

 全国銀行協会は「公正な競争条件が確保されるに至っていない中、地方金融機関への潜在的影響を十分に考慮すべきだ」とした。全国地方銀行協会と第二地方銀行協会は「ゆうちょ銀に資金シフトした場合、厳しい経営環境にある地域金融機関の経営が悪化し、ゆうちょ銀と民間金融機関の協業の枠組みが崩れ、地域経済に影響を与える恐れがある」と反対を表明した。

■金融庁、反対姿勢も容認?

 資金シフトの懸念に対し、日本郵政の長門社長は28日に開いた定例会見で「2年前に限度額を引き上げて以降、各銀行の貯金の集まり具合をみると、ゆうちょ銀は最も低い方の伸び率と認識している。融資のできない(ゆうちょ)銀行に資金シフトが本当に起きるのか」と反論した。

 こうした中、カギを握るのがゆうちょ銀の監督官庁となる金融庁だ。「限度額の緩和は、ミクロでは地域金融機関の流動性預金がゆうちょ銀に流れる恐れがある」とし、「マクロで資金シフトが起きていないから限度額を緩和してよいわけではない」と反対の姿勢を示した。その一方で「限度額の緩やかな緩和は既存の限度額の枠組みの中でどう考えるのかがよいかという問題だ」とも述べた。

 民営化委の岩田一政委員長は「本来は限度額は動かさない方がよい。ただ、総合的に考えれば緩やかに限度額を拡大することは考えられるとのニュアンスだったと思う」とした。民営化委の次回開催は4月になる見込み。そのため提言のとりまとめは4月に持ち込まれそうだ。

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地銀30社、みずほ系フィンテックベンチャーに出資(日刊工業新聞電子版)

 みずほ銀行などが出資するIoTベンチャー、ブルーラボ(東京都港区)に、地方銀行や証券など約30社が資本参加したことが分かった。ブルーラボは出資した地銀などからの研修員の受け入れも増やしている。人的交流に加え新たに資本関係を結ぶことで、新規ビジネスの基盤を拡大する。すでに地銀などが出資金の払い込みを終えた。増資規模や出資企業は明らかにしていない。

 ブルーラボは、IoTやフィンテック(金融とITの融合)分野での新規ビジネス創出を目的に、みずほ銀と米ベンチャーキャピタルのWiLが中心に2017年6月に設立した。増資前の資本金は1000万円で、出資構成はWiLが55・1%、みずほ銀が14・9%。

 伊藤忠商事、損保ジャパン日本興亜、第一生命保険、農林中央金庫、丸紅、三井住友信託銀行も出資している。増資後もWiLとみずほ銀の出資比率順位は変わらない。

 ブルーラボはブロックチェーンや人工知能(AI)など最新技術を活用したオープンイノベーションやサービス基盤の構築を志向している。例えばスマートフォンと2次元コードを活用することによって簡単に支払いができる決済インフラ構築を目指しており、みずほ銀は同じ基盤を使うよう他行に呼びかけている。

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三菱電、FA事業で売上高1兆円分の生産体制整備へ(日刊工業新聞電子版)

■生産増強投資400億円

 三菱電機は27日、FAシステム事業の戦略説明会を都内で開き、2018―21年度の4年間で、生産増強に400億円を投じる計画を公表した。愛知県で新工場を2棟建設するほか、中国の生産拠点も拡大する。生産能力を4割高め、国内外で拡大する工場の自動化ニーズを取り込む。特に中国市場を積極開拓する。同事業の17年度の売上高は7000億円弱になる見通し。これを20年度に7400億円、25年度に9000億円まで引き上げる。

 同日の会見で、三菱電機の宮田芳和常務執行役FAシステム事業本部長は「需要の波は終わりが見通せないくらい強い状況」と話し長期的に市場拡大が続くとの見方を示した。25年度までに「売上高1兆円分の生産体制を整える」とした。

 18年度から4年間の生産能力増強では計400億円のうち300億円を国内に充てる。主力の名古屋製作所(名古屋市東区)内の既存工場を建て直すほか、愛知県内で土地を取得し新工場を建設する。生産品目は今後詰める。

 海外では中国の常熟、大連地区の拠点を拡大する計画。インドでの工場新設も検討する。中国では政府主導で製造業高度化計画「中国製造2025」を進めており、工場の自動化ニーズがより一層活発化する見通し。同社は中国を「最重要市場」(宮田常務執行役)と位置付け、開発や販売、サービス体制も強化していく。

 日本国内では製品・ソリューション展示などを行う施設を東京・秋葉原に設置する。同様の施設を東日本地区に設けるのは初となる。

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車保険、整備のビッグデータから料金差 三井住友海上がインドで開始(日刊工業新聞電子版)

 三井住友海上火災保険は、インドの自動車整備のビッグデータ(大量データ)を活用した自動車保険事業に乗り出す。三井物産が出資するインドの自動車整備工場向け支援システム事業会社のスマート・オート(ハイデラバード市)のシステムと自社の保険システムを連携させ、自動車の整備履歴を保険料に反映し収益性を高める。近く両社の現地法人が協業に関する覚書(MOU)を締結。4月にも実証実験を始める。

 三井住友海上は2003年にインドのムルガッパグループと合弁会社のチョラマンダラムMSゼネラル・インシュアランスを設立。自動車保険や火災保険、医療保険などの事業を展開する。

 インド国内に107の店舗があり、17年3月期の元受収入保険料は約530億円と民間部門7位。増収増益を続けるが、インドは保険会社間の競争激化などで、保険料の水準が低いのが課題だ。

 スマート・オートの基幹システム「オートロックス」は、自動車の部品の価格や工賃などのデータを蓄積し、即時に整備の見積などを出せるシステム。顧客の整備履歴を管理できる。約200の整備工場が導入している。

 三井住友海上はオートロックスから得られる自動車の事故や修理のデータを分析。事故の多い地域や車種、運転者の年齢などを割り出して保険料に差をつけるなど、より収益性の高い保険料体系の構築を目指す。

 一方、スマート・オートも三井住友海上のシステムを活用すれば、オートロックスに保険のデータを取り込み、整備工場と保険会社間の手続きを簡略化できるなどの利点がある。

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高エネ研、新型加速器「スーパーKEKB」本格稼働(日刊工業新聞電子版)

■ビーム電流2倍、衝突性能40倍

 高エネルギー加速器研究機構が建設中の新型加速器「スーパーKEKB」が本格稼働した。前身のKEKB加速器を増強し、衝突点におけるビームサイズを20分の1に絞り、蓄積ビーム電流を2倍に向上。同加速器が持つ世界最高の衝突性能(ルミノシティ)を最終的に40倍に高める。秋ごろに実験をはじめ、素粒子物理学の「標準理論」を超える物理現象の発見を目指す。

 スーパーKEKBは、電子ビームと陽電子ビームの衝突型加速器。各リングの周長は約3キロメートルで、ビームラインの深さは地下約11メートル。2016年に電子ビームと陽電子ビームを衝突させずに周回させる運転を開始。その後、最終的な形態に改造し、これらのビームを衝突させる段階に入った。

 19日に電子ビームをメーンリングに入射し、21日には継続してビームを周回させる「蓄積」に成功した。今後は、陽電子ビームをメーンリングに入射し、蓄積して両ビームを衝突するための最終調整に着手する。

 電子と陽電子を衝突させると、B中間子と反B中間子のペアなどが発生する。KEKBではこれまでに約10億個のB中間子対を生成した。スーパーKEKBでは、50倍となる約500億個のB中間子対などのデータを解析できる。

 ルミノシティを高めるため、細く長いバンチ(電子や陽電子の集団)を大きな交差角で衝突させる「ナノ・ビーム方式」を採用。これはイタリアの研究者P・ライモンディ氏が発案した衝突方式で、これを本格導入する衝突実験は世界初。

 そのほか、ビーム光学設計の変更や新型ビームパイプへの交換、新しい最終収束用超電導電磁石の導入、ダンピングリングの新設や入射器の改造などさまざまな装置を改良して搭載した。

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成長速度10倍、ウエハー級品質の太陽電池用シリコン薄膜 東工大と早大が作製(日刊工業新聞電子版)

■原料収率はほぼ100%

 東京工業大学物質理工学院の伊原学教授と早稲田大学理工学術院の野田優教授らは、シリコンウエハー級の高品質な太陽電池用シリコン薄膜を、従来の10倍以上の速度で作製することに成功した。新技術で単結晶シリコン薄膜を製造すると、原料収率をほぼ100%にできた。高い発電効率を維持したまま、製造コストを低減できる。

 研究グループは線状に加熱しながら走査して表面のみを構造変化させる、独自の「ゾーンヒーティング再結晶化法」(ZHR法)を使い表面の粗さを抑えた下地基板表面で、シリコンを成長させた。条件を変えながら基板の表面粗さを制御したところ、結晶欠陥密度を従来の10分の1程度に低減できた。

 基板でのシリコン成長には、シリコンを通電加熱で蒸発させる物理蒸着で、シリコンの蒸気圧を高めた急速蒸着法(RVD)法を適用。毎分10マイクロメートルのシリコン堆積を達成した。

 下地のシリコン基板は再利用でき、薄膜成長用の蒸発源にも使える。一般的な化学蒸着法の製膜速度は、毎時数マイクロメートル、原料収率は10%程度だった。

 今後、新手法による薄膜を使い、実際に太陽電池を製作する。また、30%を超える変換効率が期待されるタンデム型太陽電池で、低コストなボトムセルとしての利用を目指す。

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米中“貿易戦争”、日本はTPP11で自由貿易の堅持を(日刊工業新聞電子版)

 米中の二大大国が“貿易戦争”に陥る可能性を懸念し、為替相場はリスク回避の円高基調にある。日本は先行き不透明な相場を過度に警戒せず、米国を除く環太平洋連携協定(TPP11)の早期発効を主導するなど、自由貿易の枠組みを堅持する役割を担いたい。

 トランプ米政権が強硬に保護主義を推し進めている。鉄鋼・アルミニウムに新たな関税を課す輸入制限を講じたのに続き、中国の知的財産権侵害をめぐり通商法301条に基づく大統領令に署名した。11月の米中間選挙を控えて貿易赤字削減策を表明することで、脱工業化が遅れた“ラストベルト”での支持固めとの思惑が覗く。

 一連の保護貿易は世界貿易機関(WTO)ルールの枠組みでは対中貿易赤字を改善できないとの米側の判断がある。中国製鋼材の多くが他国を迂回(うかい)して米国に流入しているとされ、知的財産権をめぐる中国の商慣習も一向に是正されない。

 問題は、中国をはじめ主要国が報復措置を講じれば世界経済の成長が鈍化する懸念があること。さらに鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を解除する見返りに新たな市場開放を求められるなど、日本にも少なからぬ影響が及ぶ可能性が残る点だ。

 日本の対米輸出は高級鋼材が多く、代替が難しいため影響は軽微との指摘がある。だが米国が輸入制限解除の条件として2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を迫る可能性がある。トランプ政権は自動車や農畜産物の市場開放をかねて訴えている。

 日本としてはTPP11の承認案を今国会で早期に成立させ、11カ国中で最も早く国内批准を済ませたい。トランプ大統領は一方で条件付きながらTPP復帰の可能性に言及しており、日本はTPP11の早期発効を主導することで米国の保護貿易路線を牽制してもらいたい。

 足元の円高基調も、米中が通商面で歩み寄り、堅調な米国経済を市場が見直せばドル高基調に戻る可能性がある。日本は為替動向に一喜一憂せず、自由貿易が米国の国益に資することを粘り強く訴え続けたい。

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オリジナル動作の5本指ロボハンド スキューズが開発キット(日刊工業新聞電子版)

■制御ソフトウエアをバンドル

 スキューズ(京都市南区、川田成範社長)は、柔らかいものもつかむことができる「5指ロボットハンド」の開発キットを、4月1日に発売する。制御ソフトウエアをセットにして、ユーザー自身が独自にロボットの開発を進められるようにした。ロボットハンド技術関連の研究機関などを中心に展開する。消費税抜きの価格は198万円。初年度に20台の販売を目指す。

 スキューズは開発キットの普及を通じ、人手に頼る作業を代替するロボットの市場拡大を狙う。同社がデファクトスタンダード(事実上の標準)となる製品を提供することにより、関連する制御ソフトを受託開発する需要も見込む。

 ロボットハンドの全長は450ミリメートル。直径が100ミリメートルの球内に収まり、重さが500グラム以下のものをつかむことができる。食品産業向けに弁当の食材を盛り付ける作業や、医療現場の危険物取り扱いなど、さまざまな用途が期待できる。

 同社は2003年に、5指ロボットハンドの開発に着手。ただ、これまでは、展示会出展や研究機関などへの個別納入にとどまっていた。開発キットを販売して顧客開拓を進め、市場を深耕する。

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