いい汗はかける? 「VR×eスポーツ」新感覚サバゲー(日経トレンディネット)

 2018年2月9日、東京・お台場にある屋内型テーマパーク「東京ジョイポリス」に、VRシューティングゲーム『TOWER TAG』がオープンした。事前情報によると、2対2のチーム戦で楽しむ、VRを活用したeスポーツ「VR eスポーツ」なのだという。

【関連画像】『TOWER TAG』の装備品。ヘッドマウントディスプレーは「HTC VIVE」で、マイク付きのヘッドセットでオペレーターやチームメイトと会話ができる

 VRもeスポーツも知っているが、それを合わせたVR eスポーツとは一体何なのか? この言葉に見事釣られ、オープンに先立って行われた体験会へ、そそくさと出向いた筆者なのだった。果たして、リアルなスポーツみたいにいい汗はかけるのだろうか。

●2対2で対戦するシューティングゲーム

 『TOWER TAG』はドイツのVR Nerds社(直訳すれば“VRオタクたち”社)によって作られたゲームだ。開発チームにはサバイバルゲームの世界チャンピオンが在籍しているとのことで、その楽しさを盛り込んだ戦略性の高いゲームになっているらしい。東京ジョイポリスを運営するCAセガジョイポリスと契約し、同社が独占的に全国へ展開する予定だそうだ。

 ゲームは前述のように、2対2のPvP形式(プレーヤー・バーサス・プレーヤー)、つまりヒト対ヒトの対戦に絞ったものだ。舞台となるVR空間のなかには10本ほどのタワーが林立していて、タワーからタワーへと移動しつつ、手にしたレーザーガンで敵と撃ち合い、相手チーム全員(2人)を倒した側の勝利となる。これを5分間繰り返すというのがプレー内容だ。

なかなか精密な射撃ができる

 VRヘッドセットはHTC VIVEで、これをマイク付きのヘッドセットとともに装着。このヘッドセットを通じてチームメイトと連絡を取りながらプレーする。そしてオペレーターから銃型のコントローラーを渡されると、銃がVR空間のなかに出現。すでにこの時点で銃の位置や向きなどがかなり精密にセンシングされていることがよくわかり、期待が膨らんだ。

 全員が機材を装着して準備が完了し、競技が始まるまではチュートリアルの時間だ。手にした銃のトリガーを引くとレーザーが発射される。一発ずつ撃つこともできるが、エネルギーゲージがゼロになるまで連射することも可能だ。

 また、タワーからタワーへと移動するワイヤーアクションが特徴だ。隣接するタワーの上にモヤモヤとした雲のようなグラフィックが現れているときに、そのモヤモヤを狙ってトリガーを引くと銃からワイヤーが発射される。ワイヤーがかかったら、トリガーを引きっぱなしの状態で銃をあおるとワイヤーがたぐり寄せられ、移動できる。

 こうしてVR空間内でタワーからタワーへと移動しながら、敵と撃ち合って勝負するわけだ。

【関連記事】

動画配信を盛り上げる!? 直播神器が続々登場中(日経トレンディネット)

動画配信人気を受けて関連ツールが続々

 中国の観光地や繁華街では、スマートフォンを片手に自分の動画を配信している人を見掛けることが増えてきた。今、中国語で「直播(ジーボ)」と呼ばれるライブ動画配信が人気なのだ。

【関連画像】「匯唱」の本体は5型のスマートフォンくらいの大きさ。価格は235元(約4000円)だった

 その人気を受けて直播アプリが続々とリリースされる一方、「直播神器(ジーボシェンチー)」と呼ばれる動画配信用のデジモノも数多く登場し始めた。当連載でも紹介したスピーカー付きマイクや、自分撮り用のLEDライトも数ある直播神器のうちの1つだ。

 悦声科技製の「匯唱(フイチャン)」なる製品もまた直播神器として利用されている。これは、拍手音や爆笑音などの効果音を発する機能や、ボイスチェンジャー機能などを搭載するポータブルデバイス。ライブ動画の要所要所に拍手音や爆笑音を入れて配信を盛り上げるわけだ。もちろん、カラオケアプリやビデオチャットアプリでも利用できる。

本体にはボタンや端子類がぎっしり

 「匯唱」の本体上部には「耳麦(イヤホン)」「音箱(スピーカー)」「伴奏」「活筒(マイク)」「直播」と書かれた音声の入出力端子が並ぶ。「伴奏」はバックグラウンドミュージック(BGM)を再生する端末を接続するための端子、「直播」は、「伴奏」および「活筒」に入力している音声をそのままスマートフォンに取り込むための端子だ。

 また、本体正面には9つのボタンと入出力の音量を示すインジケーターがあり、ボタンのうち3つには「男性声」「女性声」「エコー」のボイスチェンジャーモードが割り振られている。また、残りの6つのボタンでは「爆笑音」「拍手音」など12の効果音を通常の押下と長押しで使い分けることが可能だ。

 さらに、本体左側面には入出力の音量調整ボタンがあり、右側面には電源ボタンと音声のストップするボタンがある。実は「曖昧」と書かれたボタンもあるのだが、これについては説明書に記載がなく、何に使うのか分からない。

日本のユーチューバーにもお勧め!?

 「匯唱」を動画配信に使うには、まずマイクとスピーカーを接続し、ボイスチェンジャーの設定や音量の調整などを済ませておく。BGMを流したいなら、外部プレーヤーも接続しよう。「爆笑音」「拍手音」などの効果音は、実況中にそれぞれのボタンを押して再生すればOK。もちろん映像はスマートフォンで撮影する。

 ところがだ。動画配信では本体の「直播」端子とスマートフォンのイヤホンジャックをミニプラグケーブルでつなぐとなっているのだが、その理由が分からない。と言うのも、実況音声や効果音、BGMなどは「匯唱」に接続したスピーカーから出る音をスマートフォンの内蔵マイクで収録する仕組みだからだ。つまり、スマートフォンを接続しなくても動画配信はできるのである。「直播」は、何のための端子なのだろう。

 いろいろ分からないことはあるものの、「匯唱」はなかなか面白いツールだと思う。ボタンの数が多いので複雑そうに見えるが、実際に利用してみると操作は意外と簡単だった。表記が漢字なので、中国語が読めなくても何となく操作していけば扱えるようになるはずだ。「匯唱」はお勧めしにくいが、中国の通販サイトにはさらに高性能、多機能な類似品が数多くある。動画配信をしている人は、こういった機器を使うと表現の幅が広がるかもしれない。

【関連記事】

元SDN48の女優・奈津子が話題の電気調理鍋で料理に挑戦! ホットクックとCook4meで時短勝負(日経トレンディネット)

 女優の奈津子です。さまざまなヒット商品が生まれたことで、世間に少しずつ「電気調理鍋の素晴らしさ」が浸透してきたように思いますが、知らない人はまだ知らないですよね。

【関連画像】シャープの『ヘルシオ ホットクック』。食材を投入したら放っておくだけで、手間をかけたような味を再現

 「自動翻訳」の登場で言語の壁が低くなり、「人工知能(AI)」でさまざまな業務が自動化されてきている流れと同じように、“調理する”という行為も驚くほどハードルが低くなってきているんです。

 今回はその中でも特に話題となっているシャープの「ヘルシオ ホットクック」と、ティファールの「Cook4me Express(クックフォーミー エクスプレス)」を徹底レビュー。2台を使い倒して見えてきたことをお伝えします!

“放っておける”、ヘルシオ ホットクック

 まず、ホットクックは「まぜ技ユニット」を搭載することにより、食材を混ぜる動作を自動化しているのが特徴です。調理時間がほぼ余暇時間へと変わる点が、私には革命的だと感じています。

 ホットクックの初代モデルは2015年発売ですが、2017年9月に発売された最新モデルの「KN-HW24C」では、「Wi-Fi」と「音声発話」による「AIoT(人工知能+IoT)」が追加されました。

 ディスプレー上で直接レシピの検索ができるようになり、ほかのユーザーから人気の「調理ランキング」や「60分以内でつくれるメニュー」、「ご当地メニューの提案」、さらには質問に答えると好みを分析してくれる「メニュー占い」などバラエティーに富んだ機能を搭載しています。

 専用アプリの「COCORO KITCHEN」ではメニューが随時アップデートされ、スマホから本体へレシピを送信することも可能です。

 本体へ材料を投入しておけば、15時間先の時刻まで自動調理を設定できるタイマー機能も備えています。

 ホットクックは水を全く使わずに食材と調味料の水分だけで調理する「無水調理」ができるのも大きな特徴。野菜の水分を利用して、ヘルシーかつ栄養素をムダにせずに仕上げることができます。

 AIによって使えば使うほどユーザーの好みを覚えていくので、もはや有能な秘書のような存在とも言えます。しかも同じテイストのメニューが続いたある日、電源をいれると不意打ちで「最近、洋食が続いたから今日は和食でいかがですか?」と話しかけてきました……! そのときには思わず頭(というか、本体上部ですね)をなでてしまいましたよ(笑)。

 味の傾向としては調味料を最低限に抑え、食材そのものの味を引き出すためか、健康的でアッサリした味わいに仕上がることが多いです。

 ちなみにホットクックは本体から声が出てくるだけで対話はできません。製品としては魅力的なのですが、実勢価格は7万8000円前後とまだまだ高いですね。

【関連記事】

平昌五輪日本代表選手は「ドーピング違反」なのか?(日経トレンディネット)

いよいよ盛り上がってきた2018年平昌オリンピック。だが、日本選手に対する検査により禁止物質の陽性反応が出たという報道があり、ドーピング検査への注目度が高まっている。ドーピング検査とはいったいどのように行われるのか。今回のケースも含めたドーピング検査の最新事情を公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)専務理事の浅川伸事務局長に解説してもらった。

【関連画像】ドーピング検査の最新事情

●ショートトラックの選手は「まだ違反と確定したわけではない」

 今回の平昌オリンピックにおいて、スケートショートトラックの日本代表選手に対して行われたドーピング検査で陽性反応を示したと報じられました。

 本件は、JADAが検査主催機関として実施したものではありません。また日本選手団および日本オリンピック委員会(JOC)から当機構に情報を提示・共有することも規則上定められているものではないので、こちらで把握している情報はメディアで報道された範囲にとどまります。その上で、今回の経緯について解説します。

 日本選手団およびJOCの会見によると、2018年2月4日にIOCによる競技会外検査が行われ、スケートショートトラックの日本代表選手から世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が定める禁止表国際基準の「利尿薬および隠蔽薬」に該当する「アセタゾラミド」という物質が検出されたということです。IOCは独自に検査実施を立案して執行する権限を持っているので、JADAは具体的な事情を把握できていません。しかし、一般論から考えると、過去の検査履歴が少ない選手が対象となった可能性があります。

 ただ、現時点では「検体の分析の結果、陽性反応が生じた」という状態であり、ドーピング違反が確定しているわけではありません。報道によれば、大会終了後に審理されるようです。規則の上では、検体から陽性反応が出ている時点では「違反が疑われる分析報告」として扱われます。その後に聴聞会を経て事情の説明や斟酌(しんしゃく)がおこなわれ、最終的に違反の有無、さらに違反があった場合は量刑を決定することになります。

 こうした前提を踏まえた上でこのケースが仮に違反となれば、冬季五輪大会において日本人が違反になるのは初めてのケースとなります。

【関連記事】

若き女性作曲家に聞く 「2.5次元」劇中歌のつくり方 日米名門音大卒・端山奏子さんインタビュー(日経トレンディネット)

 人気役者を見に行くというスターシステムが主流だった日本の演劇業界に、作品のファンを劇場に向かわせる=コンテンツ重視の流れをつくった2.5次元ミュージカル。2次元で描かれたマンガやアニメの世界を、3次元の俳優たちが歌やダンスを交え舞台化したものだ。

【関連画像】「2.5次元」劇中歌のつくり方 端山奏子さんインタビュー

 ブームの火付け役である“テニミュ”ことミュージカル『テニスの王子様』の公演タイトルはいまや120作を超え、現在、3rdシーズンが公演中。ほかにも、『刀剣乱舞』『文豪ストレイドッグス』『黒執事』『おおきく振りかぶって』…と、人気マンガ原作の舞台は百花繚乱で、昨年は日本テレビがドラマと連動させるなど、演劇業界だけでなく、テレビ・音楽業界の2.5次元ミュージカルへの期待も大きい。

 また、東京・渋谷に登場した専用劇場「アイア 2.5 シアタートーキョー」は、訪日外国人といった海外のファンに向けて英語、中国語など多言語に対応しているのが大きな特徴だ。

 日本発の新しい演劇ジャンルとして、内外から熱い視線を集める2.5次元ミュージカル(注)。その1つ『2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ』(『ツキステ。』)で劇中歌を担当するのが、ロス在住の作曲家・端山奏子さんだ。名門桐朋学園大学作曲専攻を経て、バークリー音楽大学映画音楽専攻卒業後、ロスに拠点を移し作曲家として活動している。いわばクラシックの王道を歩んできた端山さんが、なぜ日本で独自の進化を遂げてきた2.5次元ミュージカルの音楽を手がけるようになったのか。そもそも2.5次元ミュージカルの音楽はどのようにしてつくられるのか、話を聞いた。

注…2014年3月には日本2.5次元ミュージカル協会が設立。2.5次元ミュージカルの先駆者でもある舞台制作会社・ネルケプランニング代表、松田誠氏が代表理事を務める。

作曲のスタート地点はキャラクターへの理解

――端山さんが作曲を担当された2.5次元ダンスライブ『ツキステ。』は、1~12月までの各月をイメージしたキャラクターのドラマや楽曲を収録するCD『ツキウタ。』を舞台化したものです。その第4幕(2017年10月公演)、第5幕(2017年11月公演)をご担当されましたが、そのきっかけは?

端山奏子さん(以下、端山): 以前、『ツキステ。』を演出されている方の映画の上映会がLAで開催されたことがあり、私はそこに足を運んでいたんです。自分の経歴やロスを拠点に音楽活動をしていることを伝え、実際に私の作品を聴いていただいたところ、「やってみないか」と声をかけていただきました。

 2.5次元ミュージカルについては“テニミュ”くらいは知っていましたが、観劇したことはなく、1から勉強するような感じでした。

 私が作曲しているのはキャストが歌う曲ではなく、いわゆる「劇伴(映画やドラマ、演劇、アニメなどの劇中音楽のこと)」です。『ツキステ。』は2部構成になっていて、キャストによるお芝居とダンスライブからなるのですが、お芝居のバックミュージックを作曲しています。

 登場するキャラクターも多いですし、最初はそれぞれのキャラクターを理解するところから始めました。原作『ツキウタ。』ファンの皆さんがそれぞれのキャラクターに求めているものは何か、例えば、「この2人が話しているときはかわいらしい音楽が必要だろう」というふうに考えながら、時には自分でセリフを言ったりして、進めました。

――“2.5次元”の劇中歌は、具体的にはどのようなプロセスで曲づくりが進められるのですか?

端山: 脚本が上がってから実際の舞台が始まるまでに、30曲前後をつくります。もちろん手直しがありますので、完成次第、提出する感じでしょうか。だいたい1日3、4曲のペースでつくっていました。

 脚本をもとに、ディレクターの方がこの辺りに音楽を入れたいという指示と、「幻想的な雰囲気で……」「悲愴感漂うピアノ曲……」といった楽曲のイメージ、さらに曲の長さ、だいたいの分数をリストにしてくださいます。とはいえ、「悲愴感漂うピアノ曲」と「シリアスなピアノ曲」の違いを表現するのは難しいので、台本を読み込んでイメージを膨らませていく感じです。サンプル音源を一緒にいただくこともあります。

 曲づくりは、演奏からアレンジまで全部パソコン一つでやっています。歌がある場合は譜面に起こしますが、それ以外は演奏しながら作曲していきます。楽器を選んで、打ち込んで…いまはいい音源がたくさんあるので、時にはそれを使ってつくっていきます。

 第5幕では、キャストが歌うオリジナル曲を1曲つくりました。あとはテーマソングの編曲を2曲、この2曲は既存曲をオペラバージョンなどにアレンジしました。

【関連記事】

アイドル新潮流 活気づく中間層がアイドル界をけん引(日経トレンディネット)

「見て楽しむ」イベントから「アイドルを発見する」イベントへ。アイドルの祭典といえる大型夏フェスの目的が変わる様子を関連記事「アイドル新潮流 本格的楽曲派台頭で変わるイベント」 で紹介した。背景にあるのは、長らく続くトップアイドルの固定化と、下層に位置するライブアイドル(いわゆる地下アイドル)の上昇志向の鈍化という現状だ。これを打破する試みの一環として、前編では楽曲派の台頭とイベントの変化の例を挙げた。そうした層のアイドルたちがいま、新たな勢力としてアイドル界を活気づけている状況を俯瞰(ふかん)してみたい。

【関連画像】2011年に結成された楽器もできる6人組アイドル「バンドじゃないもん!」。2016年にはポニーキャニオンから2度目のメジャーデビューを果たし、WEGOとのコラボなどファッションアイコンともなっている(NewYear Premium Party 2018にて撮影)

●下層からトップに昇る道が見えない

 伸び続けるアイドル市場。2017年12月初頭に矢野経済研究所が発表した「『オタク』市場に関する調査」によれば、「2017年のアイドル市場規模は前年比12.3%増の2100億円」。日本のGDPが前年比1.8%増(みずほ総合研究所)であることを考えると、この市場の活況がよく分かる。一方で、トップアイドルが長らく固定化し、また、過度な競争の結果、上昇志向を失うライブアイドルたちが増加。新たなトップアイドルが育ちにくい土壌が作られている状況も見えている。

 従来、ライブアイドルからトップアイドルへの道筋はシームレスにつながっていて、アイドルはその実力や運営の手腕次第で集客を増しながらトップに上り詰めて行くシナリオが描けていた。ところが現在のアイドル界では、個々のアイドルの集客力が低下してトップアイドルへのチャレンジが困難になっている。

 そこで、このトップアイドルへのチャレンジをマスメディアやイベンターの力を使って加速させようとしたのが、アイドルの選抜企画である(関連記事「アイドル新潮流 本格的楽曲派台頭で変わるイベント」 を参照)。地上波テレビや夏フェスなどの大舞台にライブアイドルを立たせることで、より多くのアイドルファンに周知させ、将来的には一般認知までリーチを伸ばしていこうとする狙いだ。このトップアイドル予備軍のことを本稿では「中間層アイドル」と呼ぶ。ライブアイドルからは一歩抜け出したものの、いまだ一般の目には留まっていないアイドルたちのことである。

●安定が停滞を生むライブアイドル

 もう少し詳細にそれぞれのアイドルについてその状況を見てみたい。まずは、ライブアイドルについて。

 従来のアイドルは、より大きなステージを目指す――すなわち、集客数を増やしていくことがそのまま収益の拡大と存続につながっていた。このため、アイドルを抱える事務所などは、多少無理してでもプロモーションにコストをかけて集客することに専念していた。

 現在のライブアイドルでは、従来当たり前だったこの論理が成り立ちにくくなっている。アイドルピラミッドの下層に位置し、数としてはアイドル界の大半を占めており、一見活発に活動しているように見えるライブアイドルだが、その実、ほとんどのアイドルがこの層から抜け出せない状況に陥っている。その理由は主に、過剰なアイドル数による熾烈な競争と、パイ(ファン)の取り合いでそれぞれが集客数を増やせないことにある。加えて、低コストでの運営が可能になったことにより、あえてリスク(集客増への投資)を取らない運営やアイドルが増えていることも無視できない。

“30秒で泣ける漫画”作者が語るコンテンツ作りの極意(日経トレンディネット)

 日経トレンディネットと新宿の「TSUTAYA BOOK APARTMENT」によるコラボレーションイベント「ビジネスの極意は漫画家に学べ」。TSUTAYA三軒茶屋店の書店員でありながら数々の作品を全国的ヒットに導いてきた“仕掛け番長”栗俣力也氏が人気漫画家を毎回TSUTAYA BOOK APARTMENTに招き、ビジネスやコンテンツ作りの極意を聞き出す企画だ。第1回(2月7日)のゲストは“30秒で泣ける漫画”として大ブレークした『男ってやつは』や、ビジネスパーソンを中心に人気を集めている『今どきの若いモンは』など、ツイッター上で短編漫画を次々にヒットさせている吉谷光平氏。イベントを前に、吉谷氏にコンテンツ作りの極意を聞いた。

【関連画像】『男ってやつは』(画像提供:吉谷光平氏)

栗俣: 吉谷さんは『女ってやつは』『男ってやつは』『今どきの若いモンは』など、ツイッター上に漫画をアップしては次々にヒットさせていますが、『女ってやつは』『男ってやつは』はどういう発想で生まれたんでしょうか。

吉谷: 「自分がこうなれればいいなあ」と思ったのがきっかけですかね。結婚して、子供ができて、幸せな家庭を築いて、奥さんより先に死ぬ、という。

栗俣: たしかに! でも私としては『女ってやつは』のほうが響いたんですよ。本当に男の理想って感じですよね。

吉谷: いえ、『男ってやつは』は私の理想ですが、『女ってやつは』は私の実体験ではありませんし、こうなりたいわけでもないです。女の子の幼なじみもいませんし(笑)。

栗俣: 意外ですね。しかし、ツイッターという狭い空間で、しかもわずか2ページでここまで心がつかまれるのってすごい。

 吉谷さんの漫画で最初に読んだのが『ナナメにナナミちゃん』だったんですが、これも短いなかにテーマが詰まっていて、心をつかまれました。私は書店で長年漫画を担当していますが、そういう漫画はこれまでそんなになかったんです。今、漫画界では“日常モノ”がはやっていますが、読んだあとに何も得るものがないまま終わるものが多くて。

吉谷: それが日常モノの良さだとも思いますよ。

栗俣: 私は1983年生まれなんですが、われわれの世代が経験した漫画黄金期の漫画はいくら短いものでも得るものがあったんです。しっかりしたメッセージがあって、それが感じられる楽しさが。吉谷さんの漫画はそのころの漫画にハマった世代がすごく引かれる漫画だと思うんですよ。だから、ツイッター上で『女ってやつは』が出てきたときに、「これは来るぞ!」と思いました。だって、この2ページの中に男の理想が詰まってるんですよ! そう思っていたら、今度は『男ってやつは』という、人生を2ページで表す漫画が出てきて。

 今は短い漫画をツイッター上でポンポン発信してバズらせようという動きが目立つのですが、これが出た2016年はそういう動きはそれほどなかったんですよね。

吉谷: 実は当時、『悪魔のメムメムちゃん』を描いている四谷さんや『八十亀ちゃんかんさつにっき』を描いている安藤くんと「ツイッターに漫画を描こう!」とゲーム感覚で競っていた時期がありました。一人だけで続けるのはなかなか難しかったかもしれません。ツイッターにアップしたのは読者の反応が早くて漫画ファン以外にも拡散できることが大きいですね。お金がもらえるわけではないですが(笑)。

栗俣: そうだったんですね! ツイッターだと面白ければすぐにリツイートされますからね。『女ってやつは』『男ってやつは』もアップした瞬間にすごい勢いでリツイートされていたのを覚えています。

吉谷: 予想以上で怖いくらいでしたね。

“ラーメン狂”映画が問う 「日本人とは何者か?」(日経トレンディネット)

『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第19回。

【関連画像】ドキュメンタリー作品『ラーメンヘッズ』(C)ネツゲン

 「アメリカよ、これが“日本人”だ。ラーメンだ!」

 そう快哉を叫びたくなる映画だった。2018年1月27日からシネマート新宿などで上映されているドキュメンタリー作品『ラーメンヘッズ』(監督:重乃康紀、製作:ネツゲン)。2013年から「TRY(東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー)大賞」を4連覇した「中華蕎麦 とみ田」の店主・富田治への密着取材を中心に、ラーメン通なら知らぬ者はいないという名だたる名店を取材し、日本が世界に誇るラーメン文化の奥深さに迫った快作である。

 この映画のプロデューサー・大島新は、企画のきっかけが『二郎は鮨の夢を見る』(2011年制作)だったことを明かしている。米国人監督デヴィッド・ゲルブが東京・銀座のすし店「すきやばし次郎」の店主・小野二郎の姿を追ったドキュメンタリー作品だ。

『二郎は鮨の夢を見る』は、海外のさまざまな映画祭で上映され、大きな反響を呼んだ。外国人が日本の食文化に迫り、その映画が評判になる。そのことを誇らしく思う半面、日本の映像作家としてはどこか悔しさも覚える。日本人自ら、日本の食文化に迫る作品が生み出せないか。そこで白羽の矢が立ったのが、ラーメンだった。

 もちろん、ラーメンは日本起源のものではない。だが、大陸から伝わってきたその食は、日本という島国で独自の多様な進化を遂げた。その味に日本を訪れた外国人観光客も魅了されている。彼らが日本で最も印象に残った食べ物は、ラーメンがダントツ1位だという米国・ニューヨークなど、海外でもラーメン店は行列ができるほどの人気ぶりだ。世界で最も愛される日本の食は、すしでも天ぷらでもなく、いまやラーメンなのだ。

 映画『ラーメンヘッズ』は、冒頭から“キング・オブ・ラーメン”富田治の“クレイジーぶり”を余すところなく描いていく。20時間かけて煮込んだ特濃スープは毎朝、富田自ら、前日、前々日のスープとブレンドしながら微調整して完成する。麺・具材にも一切の妥協がない。富田は開店から閉店まで一度もトイレに行かず、昼食もとらずに黙々とラーメンを作り続ける。健康を害さないかと心配になるほどだ。

「いつの間にか、こういう体になっちゃったんです(笑)。ウチの従業員もそうですよ」

 そう富田はこともなげに語る。その様子を見ながら、私の脳裏には「勤勉」の二文字が浮かんだ。怠け者にはとてもじゃないが務まらない世界。それが“ラーメン道”なのだ。

 次に一転してカメラは、早朝の店の外の様子を映し出す。午前10時の開店の4時間以上も前からすでに客が列を作っている。店主もクレイジーなら、客もクレイジーだ。日本以外で、ラーメン一杯を食べるためにこんなに朝早くから並ぶ国民などいるのだろうか。

過熱する相撲報道 なぜ国民の関心が途切れないのか(日経トレンディネット)

『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第18回。

 年末から年始にかけて、日本のテレビで最も長い時間を割いて報じられたのは北朝鮮問題でも国内政治の問題でもなく、元横綱日馬富士の暴行問題をきっかけに噴出した大相撲および相撲協会に関する話題だった。もうかれこれ2カ月以上も続く異常事態が続いている。

 大相撲を巡る報道の是非や好悪は別として、この件がこれほど長く取り上げられる理由はいったい、何なのか。

 表面的な理由は単純だ。「相撲の話題は、視聴率が取れるから」である。同時間帯に複数の局のワイドショーで同じ内容を報じていることも少なくない。それらの番組の視聴率を合計すると、とてつもない数の視聴者が日々、大相撲問題に釘付けになっていることになる。

 こうした報道に嫌気がさしている人も多い。「もっと他に重要な事件があるのに……」「相撲の話題は大して新しい情報がない」などと批判する声も多い。だが、視聴率という総体を民意と捉えれば、現実として国民の関心事であることは否定できない。

 なぜ、特に目新しい情報があるわけでもないのに、多くの人が相撲報道から目が離せないのか。冷静に見れば、実に不可解な現象だ。その理由は、端的にいえばこういうことではないだろうか。

 「分かりそうで分からない」

 おそらく誰もがこうしたモヤモヤを抱えながら、一連の相撲報道を見続けているように思う。なにせ、いくらパネル解説や相撲記者ら専門家の話を聞いても、次々と疑問が湧いてくるのだ。それほど角界の常識や組織のあり方を理解するのは難しい。貴乃花親方の不可解なダンマリが謎を深め、その処分を巡る議論や判断がさらに波紋を広げている。

 今回の相撲報道の特徴は、謎や疑問が一向に解消されない点にある。無数に伏線が張り巡らされて、いつまでも回収されない連続ドラマのようだ(実際、そういった海外ドラマにハマってしまうことも多い)。それ故、2カ月以上もこの話題への興味が持続しているのだろう。

 そもそも100万人単位という圧倒的多数へ情報を届けるテレビメディアは、基本的に「分かりやすいこと」が求められる。大衆メディアにおいて、ただ単に「分からない」ものは「面白くない」と見なされ、チャンネルを変えられてしまうのだ。

 だから、一見「分かりそう」な対象は、テレビと相性がいい。老若男女あらゆる世代に親しまれてきた大相撲、そして登場人物の貴乃花親方は“平成の大横綱”と呼ばれた誰もが知る存在だ。これら「分かりそう」な要素が、「いつまで経っても分からない」という角界の闇と合わさり、ここまで尾を引いているのだろう。

アイドル新潮流 「楽曲派」台頭でイベントが変わる(日経トレンディネット)

2017年12月初旬、それまで一般には無名だった女性アイドルグループがミュージックステーション(以下、Mステ。テレビ朝日系列)に出演して話題となった。アイドルグループの名前は「BiSH(ビッシュ)」。その名の由来は「Brand-new idol SHiT(新生クソアイドル)」である。つい先日までは、いわゆる「地下アイドル(ライブアイドル)」と呼ばれていたアイドルだ。なぜ、そのように無名なアイドルが、一般の視聴者が観る地上波のゴールデンタイムの音楽番組に大抜擢されたのか? その背景には、停滞するアイドル界をブレークスルーしようとする本質的な流れがあった。

【関連画像】楽曲派アイドルのBiSH。写真は@JAM×ナタリーEXPO2016のステージ

●本格的な制作陣の参入

 BiSHのような無名なライブアイドルが、ゴールデンタイムの地上波音楽番組に出るようになったのは、時代の最先端を行く女性アイドルが、その魅力にルックスだけではなく音楽性を加えるようになってきたことが理由といえる。ここ2~3年でアイドル界にはこうした本格的な「楽曲派」アイドルが台頭しており、今年に入ってその傾向がますます顕著になってきた。もはや、そうしたアイドルが主流になっているのが、現在のアイドルシーンといえる。

 これまでのアイドル曲の制作については、言ってしまえば、先進のアーティストの“模倣”に近いような曲作りが多かった。しかしここに来て、過去にヒットを飛ばしたり、音楽界で話題になったりした実力派の制作陣が続々とアイドルの楽曲作りに関与し始めている。また、コアなファンもステレオタイプないわゆる「アイドル曲」に飽き始めており、ステージ上のダンスなどのアクトも含めて、よりアーティスティックなパフォーマンスを求めるようになってきた。

 冒頭のBiSHは、その楽曲派アイドルの1グループといえる。その楽曲ジャンルは、いわゆる「アイドルらしい曲」ではなく、パンクロックと呼ばれるロックカテゴリーの中でもかなり過激な種類の楽曲である。しかし一方で、メンバーの見た目やトークにはアイドルらしい所作が目立つ。それがいまや、ロックファンのみならず一般人をも巻き込んで、大きなうねりを作ろうとしている。

●幅広い楽曲を取り込み始めた

 こうした流れの先鞭をつけたのは、かわいらしいルックス・声質と対照的に過激な楽曲をアイドル界に持ち込んだ2010年結成のBABYMETALと言っていいだろう。ヘヴィメタルと呼ばれる英国で発展した激しい曲調のロックと、アイドルを融合させた異端さで、海外を含め、今もなお絶大な人気を誇っている。このBABYMETAL以降、さまざまな分野の楽曲を積極的に取り込むアイドルが現れてきた。それも安易なマネゴトではなく、本格的な制作陣の下で。

 ロック分野では、過去に日経トレンディネットに登場してもらった大阪☆春夏秋冬(大阪☆春夏秋冬 実力派アイドル「大阪」へのこだわり)も楽曲派グループの1つとして挙げられる。ダンススクールを母体に持つ所属事務所が育てた、ボーカル&ダンスユニットとして攻撃的なロックを展開してアーティストばりの活躍を見せている。2015年にTOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)で「見つかったアイドル」として注目を浴び、今年に入ってからメジャーデビュー(エイベックス)や相次ぐシングル曲のリリースと活躍が目覚ましい。

 また、去年から今年にかけて、楽曲派の代表として異色の活躍を見せたのはsora tob sakana。聴いた誰もがアイドル曲とは信じられない技巧派の曲を引っ提げて現れ、今年に入ってますますその人気が上昇している。音楽プロデューサーにオルタナティブロックバンド「ハイスイノナサ」のメンバーである照井順政を迎え、特に音楽性を重視したパフォーマンスを特徴としている。そのかわいらしい容姿や歌い方、ダンスとは対照的に、最先端の曲を展開することで新たなファン層を開拓中である。

 一方、ファンクなどのブラックミュージックを持ち歌として活動しているフィロソフィーのダンスは、ステージパフォーマンスやグラビアへの展開など活動自体はアイドルそのものだが、80~90年代のソウルミュージックを愛した世代から若者まで広いファン層を取り込み、ノリの良い楽曲で人気を博している。氣志團や相対性理論などをプロデュースする加茂啓太郎が初めて手掛けたアイドルグループである。

 先の大阪☆春夏秋冬に続き、今年のTIF2017で「見つかった」と言われたのがTask have Funである。2016年に結成されたばかりの3人の新生ユニットだが、5月に発表した新曲「3WD」で、それまでとは大きく異なる激しいビートの曲と斬新なミュージックビデオで一気に人気を集め、この夏の大型フェスで注目を浴びたアイドルグループだ。夏フェスの1つ@JAM EXPO 2017では、アイドル注目度ランキングで総合トップを獲得している。

 そのほか、冒頭のBiSHの派生元グループのメンバーを起用したMaison book girlや、オルタナティブロックをベースに展開するヤなことそっとミュート、ヲルタナティヴ、@JAM×ナタリー EXPO 2016で歌唱力の高さをうたい文句に選抜された「NATASHA」など、楽曲派の系譜はここに来て増殖する一方である。