【祝上場!】中国「ビリビリ動画」が本家を超えた 正規版の日本アニメを配信 山谷剛史の中国トレンド通信(日経トレンディネット)

日本アニメファンの中高生の支持を受けて急成長

 3月28日、中国の動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」を運営する上海幻電信息科技有限公司(BILIBILI INC.)が、米国のベンチャー向け株式市場NASDAQ(ナスダック)に上場した。「ビリビリ動画」は、再生中の動画上にユーザーのコメントが流れる「ニコニコ動画」に“インスパイア”された動画共有サイトだが、アクティブユーザー数は1億5000万人超と、いまや本家を超える規模になっている。

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 中国の動画共有サイトといえば「優酷(YOUKU)」や「土豆(TUDOU)」「捜狐(SOHU)」などが有名どころ。実を言うと、中国全土での「ビリビリ動画」の知名度はそれほど高くない。しかし、正規版の日本アニメを配信することなどで、上海をはじめとした大都市に住む中高生を中心に認知度を高めており、流行の最先端を行く都市である上海では、中高生の半数が「ビリビリ動画」のファンだという報道もあるほどだ。実際、同サイトのユーザーの75%は24歳以下で、平均年齢も17歳と若い。

日本アニメの正規配信で日本のサブカルファンが集う

 「ビリビリ動画」の最大の特徴と言えるのが、「アニメ(Anime)」「コミック(Comic)」「ゲーム(Game)」「ライトノベル(Novel)」の頭文字を並べた、いわゆる“ACGN”のファンが集まるサイトになっていることだ。「踊ってみた」「作ってみた」「ゲーム実況」「MMD(ミクミクダンス)」といった、「ニコニコ動画」によくあるコンテンツが「ビリビリ動画」でも目につくのには、ACGNに象徴される日本のサブカルチャーへの関心が高いことの表れだろう。

 中国の若者の間で日本アニメの人気が高いのは日本でもよく知られているが、それは“三大民工漫画”とやゆされる「ONE PIECE(ワンピース)」「NARUTO-ナルト」「BLEACH(ブリーチ)」あたりを大手動画共有サイトで視聴している人たちの話だ。「民工漫画」とは、農村部出身の期間工たちでも知っている定番中の定番アニメという意味。「ビリビリ動画」に手を伸ばすユーザーは、民工漫画では飽き足りない熱心な日本のサブカルファンなのだ。

 しかも、そんなファンたちも、社会人デビューして可処分所得が増えると趣味の範囲が広がるのか、ACGNを“卒業”してしまう。そのため「ビリビリ動画」には、お金に余裕のない学生を中心に煮詰められた“濃い”ACGNファンが残ることになる。ただし、近年は社会人になっても“卒業”しないファンが増えているようで、有料コンテンツなどに対する“金払い”がよくなっているらしい。今後はユーザーの平均年齢がもう少し上がってくるかもしれない。

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『イサック』人気漫画家の企画力 「嘘」をリアルに見せるコツとは ビジネスの極意は漫画家に学べ(日経トレンディネット)

日経トレンディネットと新宿の「TSUTAYA BOOK APARTMENT」によるコラボレーションイベント「ビジネスの極意は漫画家に学べ」。TSUTAYA三軒茶屋店の書店員でありながら数々の作品を全国的ヒットに導いてきた“仕掛け番長”栗俣力也氏が人気漫画家を毎回TSUTAYA BOOK APARTMENTに招き、ビジネスやコンテンツづくりの極意を聞き出す企画だ。第3回のゲストは、「アフタヌーン」(講談社)で連載中の歴史アクションエンターテインメント漫画『イサック』の原作者・真刈信二氏。「17世紀のヨーロッパを舞台に、火縄銃を武器に日本人傭兵が戦う」という大胆なアイデアは、どうやって生まれたのか。

【関連画像】『イサック』3巻(2018年3月発売)。原作は真刈信二氏、作画はDOUBLE-S氏が担当

●史実を下敷きに発想を膨らませる

TSUTAYA三軒茶屋店 栗俣力也氏(以下、栗俣): 真刈先生が原作を担当する『イサック』の主人公は「海外で活躍する侍」ですが、どうしてこのような題材を選んだのか、きっかけを教えてください。

 真刈信二氏(以下、真刈): 昔から中世の末期、宗教改革の時代に興味がありました。確か十代の頃に読んだ『東洋史と西洋史とのあいだ』(飯塚浩二著、岩波書店)という本に、銃についてかなり詳しい記述があるのですが、そのなかに「東洋起源の銃の方が、命中精度が高かった」という内容がありました。日本の銃はバネが良かったということらしいです。

 さらに、昔見たヨーロッパの地図で、ヨーロッパ各国のさまざまな兵士、竜騎兵や槍騎兵、歩兵などがずらりと描かれもののなかに、背丈よりも長い銃を持った、日本人のマスケティア、銃士というのが1人だけ出てきたんです。だぶだぶの服を着て、パッと見は日本人に見えないのですが、「マスケティアジャポン」か「ジャポネ」と書いてあった。それがずっと記憶に残っていました。あるとき本を読んでいたら、徳川時代の初期に日本人がヨーロッパに向かっていったという話が出てきて。ヨーロッパにも日本人の裁判記録などが残っていて、ちゃんと日本人と書かれているんですよ。スペイン経由で行った人間もいれば、バタヴィア経由、オランダ経由の人間もいるようでした。

 とはいえ、実際に海外で戦った日本人がいたかどうかは分かりません。文献で確認したこともありません。でも、これほどたくさんの日本人がヨーロッパに向かっていったのなら、1人や2人くらい戦った日本人がいても不思議ではないと思います。そういう史実を下敷きにして、「最高の火縄銃を持って2人の日本人がヨーロッパに行く」というのはフィクションとしては成り立つだろうと。まったくの荒唐無稽ではないだろうと考えました。

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テレビVS動画配信、将来を占うのは「著作権」? 佐々木健一「TVクリエイターのミカタ!」(日経トレンディネット)

『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第24回。

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「これからは、“コンテンツの時代”になる」

 こうした声を耳にするようになった。映像業界で言えば、一昔前は「テレビか、映画か」という二択だったが、今ではNetflix、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスも独自コンテンツを制作するようになり、まさに百花繚乱の様相を呈している。

 各媒体は今後、他とは違う良質なコンテンツをどれだけ抱えているかが勝負になるだろう。客を呼び込める魅力的な作品をどれだけそろえているかによって、視聴者数や契約者数も変動するからだ。

 コンテンツ優位の時代になれば、作り手がもっと尊重され、しかるべき対価も制作会社や現場のクリエイターにしっかりと還元されるようになるのではないか。そんな期待を抱いている。実際、世界ではそうした動きがすでに起きている。

 このコラムでも紹介し、先日の第90回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞に輝いた『イカロス』は、Netflixが500万ドル(約5億5000万円)で独占配信権を購入した。ドキュメンタリー作品としては異例の金額だ。また、同じくNetflixは人気ドラマ『glee』などを手がけた敏腕テレビプロデューサー、ライアン・マーフィーと5年で3億ドル(約330億円)という破格の契約を結んだ。

 だが、こと日本のテレビ業界においては“コンテンツの時代”が訪れても、制作会社やクリエイターは本当に報われるのだろうか、という懸念がある。というのも、日本では未だ番組の権利は制作会社ではなく、放送局が保有しているケースが大半を占めているからだ。

 番組のエンディングに流れるスタッフロールの最後には、「製作・著作 ○○」という表記が出るのをご存じだろう。この「○○」に当たる部分には大抵、放送局名が表示される。それはつまり、「番組の著作権が放送局に帰属している」ことを示している。しかし、欧米の先進国は、こうした日本の現状とは異なる。

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人気スポットやスイーツを手がける「女子大生仕掛け人」辻愛沙子が語るSNSの仕掛け方(日経トレンディネット)

 つぎつぎと新しい手土産やスイーツが生まれる東京の原宿・表参道エリア。そんな注目のエリアでじわじわと話題になっているスイーツが、2018年2月に発売された「RingoRing(リンゴリング)」だ。輪切りにしたりんごに衣をつけて揚げており、見た目はドーナツのよう。だが、口に入れるとりんごの酸味が広がり、想像よりもさっぱりとした味わいだ。

【関連画像】「RingoRing」(税込み350円)。輪切りにして紀州梅入りのフルーツビネガーとはちみつに漬けたりんごに衣をつけて揚げている

 リンゴリングを扱うカフェ「the AIRSTREAM GARDEN(エアストリームガーデン)」の小野正視氏は「売り上げは当初の想定の5倍ほど。手土産用に数個まとめて買っていく人も少なくない」と話す。だが、リンゴリングという商品そのものよりも注目を浴びているのが、商品をプロデュースした大学生・辻愛沙子氏だ。

 リンゴリングの味付けは食に関するプロが行ったものの、りんごを揚げたスイーツというコンセプトやロゴを考えたのも辻氏だという。昨今は“インスタ映え”する食べ物やスイーツが増えているが、「フォトジェニックであることはたしかに重要。でも、『1回写真を撮ったら2回目はもういい』というスイーツではなく、もう一度食べたくなる商品をつくりたいと考えた」と辻氏は語る。

 辻氏は大学に通う現役の大学生ながら、企業向けのブランディングや店頭プロモーションなどを企画する会社に勤務している。インターンやアルバイトではなく、正社員として採用されており、肩書は「デザイナー/アーティスト」。実は、辻氏は2017年夏に話題になった「ナイトプール」など人気スポットの空間デザインを手がけただけでなく、ハッシュタグを駆使してSNSでの拡散に成功した“女子大生仕掛け人”なのだ。

小6で留学情報を集め、中2で単身渡欧

 辻氏が“女子大生仕掛け人”となったきっかけは、幼少期にさかのぼる。小学生の頃から海外に強い興味を持ち、「小6のとき、インターネットで情報を集めて、親に留学したいと懇願した」(辻氏)。

 2010年、中学2年生で単身渡欧。英国の全寮制語学学校を経てスイスの全寮制アメリカンスクールに入学する。その後渡米し、ニューヨークで高校生活を送った。もともと絵を描いたりするのは好きだったそうだが、このころからウォールアートなどのアート制作にも積極的に取り組み始めた。2014年9月、大学に入学するために帰国。当初は学生生活を満喫していたというが、「海外留学時の友人のアグレッシブさに影響を受け、課題を発表するだけの学生生活に物足りなさを感じるようになった」と辻氏は振り返る。

 今の自分にできることはないか。そう考えた辻氏は、学業のかたわらアパレル企業でプレスとして働き始める。思い立ったら即実行する。そうした行動力は、留学を決めた幼少期から芽生えていたのだろう。ファッションだけでなく、映像制作に興味を持った時期もあったというが「積極的に見ようとしていない人にまでメッセージが届く広告という業界に次第に興味をひかれるようになった」(辻氏)。

 そんななか、現在の勤務先であるエードットに出合ったという。当初はインターンとして働いていたが、辻氏の姿勢に共感した同社が、学生でありながら正社員として採用する「学生社員」という枠を新設。2017年4月に正式に入社したという。

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「女子大生仕掛け人」辻愛沙子が語るSNSの仕掛け方(日経トレンディネット)

 つぎつぎと新しい手土産やスイーツが生まれる東京の原宿・表参道エリア。そんな注目のエリアでじわじわと話題になっているスイーツが、2018年2月に発売された「RingoRing(リンゴリング)」だ。輪切りにしたりんごに衣をつけて揚げており、見た目はドーナツのよう。だが、口に入れるとりんごの酸味が広がり、想像よりもさっぱりとした味わいだ。

【関連画像】辻愛沙子(つじ あさこ)。1995年、東京都出身の22歳。慶應義塾大学環境情報学部に籍を置く現役大学生ながら、企業向けのブランディングや店頭プロモーションなどを企画するエードット(東京都渋谷区)に勤務するデザイナー/アーティストでもある

 リンゴリングを扱うカフェ「the AIRSTREAM GARDEN(エアストリームガーデン)」の小野正視氏は「売り上げは当初の想定の5倍ほど。手土産用に数個まとめて買っていく人も少なくない」と話す。だが、リンゴリングという商品そのものよりも注目を浴びているのが、商品をプロデュースした大学生・辻愛沙子氏だ。

 リンゴリングの味付けは食に関するプロが行ったものの、りんごを揚げたスイーツというコンセプトやロゴを考えたのも辻氏だという。昨今は“インスタ映え”する食べ物やスイーツが増えているが、「フォトジェニックであることはたしかに重要。でも、『1回写真を撮ったら2回目はもういい』というスイーツではなく、もう一度食べたくなる商品をつくりたいと考えた」と辻氏は語る。

 辻氏は大学に通う現役の大学生ながら、企業向けのブランディングや店頭プロモーションなどを企画する会社に勤務している。インターンやアルバイトではなく、正社員として採用されており、肩書は「デザイナー/アーティスト」。実は、辻氏は2017年夏に話題になった「ナイトプール」など人気スポットの空間デザインを手がけただけでなく、ハッシュタグを駆使してSNSでの拡散に成功した“女子大生仕掛け人”なのだ。

小6で留学情報を集め、中2で単身渡欧

 辻氏が“女子大生仕掛け人”となったきっかけは、幼少期にさかのぼる。小学生の頃から海外に強い興味を持ち、「小6のとき、インターネットで情報を集めて、親に留学したいと懇願した」(辻氏)。

 2010年、中学2年生で単身渡欧。英国の全寮制語学学校を経てスイスの全寮制アメリカンスクールに入学する。その後渡米し、ニューヨークで高校生活を送った。もともと絵を描いたりするのは好きだったそうだが、このころからウォールアートなどのアート制作にも積極的に取り組み始めた。2014年9月、大学に入学するために帰国。当初は学生生活を満喫していたというが、「海外留学時の友人のアグレッシブさに影響を受け、課題を発表するだけの学生生活に物足りなさを感じるようになった」と辻氏は振り返る。

 今の自分にできることはないか。そう考えた辻氏は、学業のかたわらアパレル企業でプレスとして働き始める。思い立ったら即実行する。そうした行動力は、留学を決めた幼少期から芽生えていたのだろう。ファッションだけでなく、映像制作に興味を持った時期もあったというが「積極的に見ようとしていない人にまでメッセージが届く広告という業界に次第に興味をひかれるようになった」(辻氏)。

 そんななか、現在の勤務先であるエードットに出合ったという。当初はインターンとして働いていたが、辻氏の姿勢に共感した同社が、学生でありながら正社員として採用する「学生社員」という枠を新設。2017年4月に正式に入社したという。

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元IT記者の漫画家が考える「AIとビジネスの共存」 ビジネスの極意は漫画家に学べ(日経トレンディネット)

 日経トレンディネットと新宿の「TSUTAYA BOOK APARTMENT」によるコラボレーションイベント「ビジネスの極意は漫画家に学べ」。TSUTAYA三軒茶屋店の書店員でありながら数々の作品を全国的ヒットに導いてきた“仕掛け番長”栗俣力也氏が人気漫画家を毎回TSUTAYA BOOK APARTMENTに招き、ビジネスやコンテンツづくりの極意を聞き出す企画だ。第2回のゲストは、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で2015年11月から2017年8月まで連載され、話題を読んだSF漫画『AIの遺電子(アイのいでんし)』の作者・山田胡瓜氏が考える、AIとビジネスの共存とは?

【関連画像】『AIの遺電子』の舞台は人間、ヒューマノイド、ロボットが存在する近未来。ヒューマノイドを治療する人間の医者を主人公に、人間とヒューマノイドの考え方の違いによって起きる問題をヒューマンタッチで描いたオムニバス漫画。全8巻

TSUTAYA三軒茶屋店 栗俣力也氏(以下、栗俣): 今回、改めてコミックの装丁を見ましたが、素敵ですね。個人的には特に1巻と8巻が好きです。

山田胡瓜氏(以下、山田): 女性がもう少し手に取りやすい表紙でもよかったかもしれないとも思いました。SFは女性は手に取りづらいという印象があると思いますが、SFであることを意識せずに楽しく読める内容を意識していたので。この表紙、個人的には好きなんですけどね。

栗俣: 読む人によって読み方が変わる漫画ですよね。深く読み取ろうとするとすごく深くなるし、SFに詳しくない人でもヒューマンドラマとして感動できるという点が面白いと思います。

山田: ありがとうございます。

栗俣: なぜこのテーマで漫画を描こうと思ったのでしょうか。

山田氏: 率直に言ってしまうと、ネームが通ったから(笑)。別にAI(人工知能)が描きたくて漫画家になったわけではなく、描いている漫画の1つにこのテーマがあって、編集長のオーケーが出たというわけです。だから、もしかすると全然違う漫画を描いていた可能性もあります。

 AIをテーマにした漫画を思い付いたきっかけは、デジタル系の媒体で記者をやっていた経験から。モバイル系の記事を長い間担当していましたが、次第にAIとかディープラーニングといった言葉を聞くようになりました。取材を通してバーチャルリアリティーやAR(拡張現実)のようなものが世の中を変えることもあるのではと思うようになりました。かけているだけで何かの詳しい情報が見えてしまうメガネや、街を歩いているだけでもいろいろな情報がオーバーレイされて見ることができるのかもしれない。SiriやAlexaのようなものは、当時まだそんなに出ていなかったですが、いつかそういう世界が来るだろうと考えていました。そう思うと、SFの世界って日常だと思ったんです。

 公安の人がサイバーな世界を駆け回るというのはフィクションだけれど、Alexaに向かってしゃべりかけるのはフィクションではない。だから、日常にSFというかAIや未来のテクノロジーがあるということを漫画で描くと、いつかは時代とシンクロするだろうし、いろいろな人の共感を得られるのではないかと思いました。

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「99.9」で描かれない えん罪弁護士の過酷な現実 佐々木健一「TVクリエイターのミカタ!」(日経トレンディネット)

『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第23回。

【関連画像】「99.9」で描かれない えん罪弁護士の過酷な現実

 前シリーズに続いて高視聴率をたたき出したドラマ、日曜劇場『99.9 -刑事専門弁護士- SEASON II』(TBS系)は、“有罪率99.9%”という日本の刑事司法で、逆転不可能と思われる刑事事件に挑む弁護士たちの奮闘を描いている。

 だが、これはあくまで架空のドラマの話。現実に“有罪率99.9%”に挑み続けたら、その弁護士は果たしてどうなるのか。その過酷さは、あまり知られていない。

 私は以前、企画・制作しているNHKのドキュメンタリー特番『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズの第2弾「えん罪弁護士」で、20年以上刑事弁護に取り組み、これまでに無罪判決を14件も獲得してきた今村核(いまむら・かく)弁護士を取材した。

 大きな反響を受けてこのたび、未放送部分も含めた100分特別版として、『BS1スペシャル』枠で「えん罪弁護士・完全版」が放送されることとなった(4月15日22:00~23:49(NHK・BS1)にて放送予定)。

偉業を成し遂げても「変わり者」「異端者」扱い

 「無罪14件」というのは、法曹界の人間が聞けば誰もが驚嘆するような実績だ。約1000件に1件しか無罪判決が出ない日本の刑事裁判。まだ50代半ばの今村が、すでに14件もの無罪判決を得ている事実は紛れもない偉業である。しかし、それほどの実績を挙げながら、当の今村は浮かない表情でこんな本音を吐露した。

 「僕、若い頃は“変人”みたいにいわれたこともありますからね。『あいつは、えん罪弁護が生きがいで、好きでやってるんだ』と。そういう道楽にふけっている。そんなふうに見られている節もあるんですよね……」

 有罪率99.9%に挑む“えん罪弁護士”は、世間が抱くイメージのように、無実の罪を着せられた人を救う“正義のヒーロー”としてたたえられているわけではない。むしろ、法曹界では「変わり者」「異端者」と見られていた。

 罪を認め、情状酌量を求める事件と違い、本格的に無罪を争う「否認事件」の弁護は、勝てる可能性が限りなく低く、もし無罪を勝ち得ても十分な報酬が得られるわけでもない。ドラマ『99.9』で描かれるようなえん罪事件の弁護は、たとえ“人権派弁護士”であっても、容易には手が出せない領域なのだ。

 例えば、消費者金融に関する事件や労働事件などの民事事件は、しっかりと弁護報酬を得ることができる。あるいは、有名タレントや政治家などのプライバシー保護に関する弁護なら、依頼人に財力があるため、十分な報酬を得ることも可能だ。しかし、刑事弁護の場合、ほとんどの被告人は多額の弁護費用を払えるほどの資財を持っていない。

 そうした経済的な問題に加え、私が取材を通して驚かされたのは、無罪を得るためのあまりに膨大な“手間”だ。

 法廷ドラマの場合、最大の見せ場は「弁護士がいかに被告人の無実を立証するか」だろう。だが、そもそも刑事裁判の原則は、「疑わしきは罰せず」である。立証責任があるのはあくまで検察側で、検察が“有罪の立証”に失敗すれば、本来は無罪になるはずなのだ。弁護側は検察の立証の綻びを突けばいい。しかし、現実にはそれだけで無罪になることはまずない。今村が語った言葉が今も耳に残っている。

 「立証の方針は、できるだけ客観的、かつ科学的な方法を考えるわけです。『それなら、さすがに文句は言えない』というところまで持っていくのが理想なんですが……、弁護人にそこまでやる義務なんて本来ないんですよ。だから、過重な負担なんです。でも、それが現実ですから、仕方なくやっているんです」

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日野晃博氏「レベルファイブ 20周年の今年はアニメと新作を連続投入」(日経トレンディネット)

 福岡に拠点を置きながら、日本を代表するゲームメーカーの1社として飛躍したレベルファイブ。ゲームやアニメなどが大ヒットした「妖怪ウォッチ」シリーズの展開が始まってから5年近くが経過し、同社が得意とするクロスメディア展開の次の一手に期待が集まっている。

【関連画像】日野晃博(ひの・あきひろ): レベルファイブ代表取締役社長/CEO。世界累計出荷1700万本以上を記録した「レイトン」シリーズなど、幅広いユーザーに向けた温かみのある作品づくりが特徴

 創立20周年を迎える2018年は、4月から『イナズマイレブン アレスの天秤』と『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』の2つの新作テレビアニメの放送を開始。「妖怪ウォッチ」も『妖怪ウォッチ シャドウサイド』としてリニューアルするなど、同社原作の番組が計4本放送される。

 ゲームでは、3月に『二ノ国II レヴァナントキングダム』が、同社初となるPlayStation4(PS4)版とPC版の同時リリースという形で発売され、4月には同じく同社初となるNintendo Switch向けソフト『スナックワールド トレジャラーズ ゴールド』も登場する。矢継ぎ早に新作を発表する同社の今後の戦略を、レベルファイブの代表取締役社長/CEOの日野晃博氏に聞いた。

(聞き手/上原太郎、写真/佐賀章広)

2017年は自社の課題が浮き彫りになった年

――2017年はレベルファイブにとって、どのような1年でしたか。

日野晃博社長(以下、日野氏): 2017年中にリリースしようとしたものが、軒並み今年にずれ込んでしまうなど、会社の課題が浮き彫りになった1年でしたね。IP(ゲームやキャラクターなどの知的財産)を扱う会社としては、ものすごく大きくなっているのですが、成長に社内の体制がついていけない面が出てきました。

 加えて、IPビジネスで手いっぱいになってしまい、ゲーム開発における管理が甘くなるという、レベルファイブの弱点とも言える部分も浮かび上がってきました。

 クロスメディアタイトルは、ゲームだけでなくアニメや玩具も同時展開するため、絶対に外してはいけない商戦の時期があるんです。ゲームだけなら、開発が2カ月遅れたとしても、自社だけの問題で済むのですが、他の業界と連携を取っている中での2カ月の遅れは、自社だけでなく全体の収益率に影響するし、機会損失も出てくる。

 それを頭で分かっていても体で分かっていないというか。自分たちの置かれた立場がいかに重要か、まだ理解しきれていなかったんだと思います。それを再認識したというか、失敗して勉強させていただいたのが2017年でした。

 例えば、今年3月に『二ノ国II レヴァナントキングダム』で、初めてPS4版とPC版を世界同時リリースしたのですが、良い作品に仕上がったものの、作業は大変でした。IPを使ったクロスメディアのプロジェクトを整理して実行するに当たり、人数が不足していたのです。会社としてキャパオーバーに陥ってしまい、発売日が今年にずれ込む結果となりました。

 僕自身は、一気に人を増やして会社を大きくすることはあまり好ましくないと考えているのですが、まともな仕事をするためには、今年はさすがに人を増やさないときついかなと考えています。

――成長に伴う会社の課題が見えてくるなか、どのような対策を練っていますか。

日野氏: 現在、会社の意識改革を促すような施策を、次々と打っているところです。新人教育にもかなり力を入れていますし、プロジェクト管理にしても、いろいろな新部門をつくって、スケジュール管理の精度が高くなるような組織に変えようとしています。

 レベルファイブって、テレビアニメや映画をつくるにしても、美術なども含めた設定などを、全部社内でやっているんですよ。すごく制作に食い込んで映像作品をつくっているんです。もう既に、純粋なゲーム会社ではなくなっていて、IPホルダーとして、全体を統括する要素がかなり強まっているんですね。

 そういう中で、僕個人としてもかなり無理をしている面があるのですが、面白い提案をいただいたら、自分の許容範囲以上でも引き受けてしまう。ちょっといかんなとは思いつつ、やっぱり自分でやりたいと思ってしまうので。僕をサポートしてくれるような人間を今、社内でつくり始めていますが、自分の分身のような、ビジネスとクリエーティブの両面で立ち回れる二刀流の人材を育てるのは、なかなか難しいんですよね。

KONAMIはeスポーツに注力 早川英樹社長に聞く「鍵はコミュニティーの活性化」 キーパーソン激白! 進化するゲーム・ビジネス2018(日経トレンディネット)

 日本の主要ゲーム企業の一翼を担うコナミデジタルエンタテインメントの業績が好調だ。持ち株会社コナミホールディングスが発表したデジタルエンタテインメント事業(=コナミデジタルエンタテインメント)の2018年3月期予想は、売り上げ、利益ともに前年比プラスを見込む。

【関連画像】早川英樹(はやかわ・ひでき): コナミデジタルエンタテインメント 代表取締役社長

 家庭用ゲームでは、『ウイニングイレブン 2018』『スーパーボンバーマン R』が堅調に推移。モバイルゲームでは、『実況パワフルプロ野球』『プロ野球スピリッツA(エース)』が安定した人気を得ているほか、『ウイニングイレブン 2018』は大型アップデート効果もあって世界累計で9000万ダウンロードを突破した。

 同社を引っ張っているのは早川英樹社長だ。代表取締役社長に就任してから2018年4月1日で丸3年を迎える。2015年の就任直後のインタビューで、「『モノ』から『コト』へを意識したゲーム開発を進める」と語っていた早川社長。この3年間の成果、今注目しているゲームトレンドと、そこへの取り組みを聞いた。

(聞き手/吉岡広統 写真/中村嘉昭)

2017年の成果はこの3年の取り組みの賜物

――2017年(2018年3月期)の業績が好調です。昨年のトピックスと好調の背景を教えてください。

早川英樹社長(以下、早川氏): 1つは、昨年9月に開催された「東京ゲームショウ2017」で、『ラブプラス EVERY』や『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS』、『METAL GEAR SURVIVE』(2018年2月発売)といった新規タイトルの試遊でファンの方々に楽しんでいただけたことです。既存IP(ゲームやキャラクターなどの知的財産)の活用や、VR(仮想現実)をはじめとする技術導入など、新しい体験を届けるチャレンジを重視してやってきましたが、それをファンの皆様に広く見てもらえる良い機会となりました。

 2017年の成果は、この1年ですべてが実ったわけではなく、3年間かけて計画的にやってきたことが形になったということが大きいです。もともとKONAMIには、多くのお客様に、あらゆるデバイスでゲームを遊んでいただきたいというマルチデバイス戦略が、変わらぬDNAとしてあります。育ててきたIPをさまざまな場所に展開して、より多くお客様に遊んでいただこうとやってきたことが、2017年に成果として表れています。

 また、こうしたマルチデバイス展開を進める際、ハイエンド家庭用ゲームで技術力を磨くことは重要です。例えば、モバイルゲーム『ウイニングイレブン 2018』(2017年5月配信開始)は、家庭用ゲーム『ウイニングイレブン』シリーズのゲームエンジンで制作しています。今後、モバイルデバイスのハードウエアスペックが向上していくことを考えると、こうしたハイエンド家庭用ゲームへの投資を継続し、世界最高レベルのゲームをお客様に提供し続けることは必要不可欠です。PlayStation4(PS4)やNintendo Switch(以下、Switch)などのハードがグローバルで好調なことをみても、家庭用ゲームビジネスは引き続き重要だと考えています。

――その中で、うまくいった例を具体的に挙げるとすると?

早川氏: Switchのローンチタイトルとして出した『スーパーボンバーマン R』(2017年3月発売)です。Switchが2つのジョイコン(Joy-Con)を備えた家庭用ゲーム機ということで、その特性に合わせてクリエーターが企画を考え、それがお客様に受け入れられたということが成果として非常に大きかったと考えています。まさに我々が目指してきたことです。

――『ボンバーマン』は、キャラクターを動かしながら爆弾を設置して、爆風で敵を倒していくゲームですね。家庭用ゲーム機向けとしては久しぶりの新作です。

早川氏: サードパーティーのローンチタイトルとして唯一の完全新作だったということもあり、おかげさまで100万本出荷も視野に入っています。日本だけではなく、欧米をはじめとする幅広い地域で楽しんでいただいていますね。また、6月14日にPS4、Xbox One、Steam向けにも提供することが決まりました。

――『ウイニングイレブン』シリーズでは、モバイルゲーム『ウイニングイレブン 2018』や『ウイニングイレブン クラブマネージャー』のほか、有名サッカー選手のカードを集めて遊ぶシミュレーションゲーム『ウイニングイレブン カードコレクション』(2017年10月配信開始)がヒットしています。

早川氏: 『ウイニングイレブン クラブマネージャー』は、家庭用ゲーム『ウイニングイレブン』シリーズで磨いた技術を使い、監督シミュレーションゲームとして、戦略性をより高めていこうと生まれたゲームです。

 また、『ウイニングイレブン カードコレクション』は、有名サッカー選手のカードを集めて遊ぶコレクションと、育成にフォーカスしたゲームとなります。サッカーゲームの場合、人によって好きな遊び方や趣向が違うんですよね。アクションゲームをやりたい方もいれば、オンラインで対戦したい方、監督の目線でプレーしたい方、カードゲームのように遊びたい方などさまざまです。もともと弊社は家庭用ゲームでハイエンド向けアクションサッカーを中心に提供してきましたが、サッカーゲームを20年以上やっているなかでノウハウがたまってきたので、これをベースに異なるゲームジャンルが作れるようになりました。この3年間でその出口を広げられたのが1つの大きな成果だと思います。

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福岡から世界へ!アマチュアゲームクリエーターを表彰 シブサワ・コウ氏や日野晃博氏らがエール(日経トレンディネット)

 福岡ゲーム産業振興機構は2018年3月18日、第11回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2018」を福岡のエルガーラ大ホールで開催し、優秀賞と大賞の発表と表彰式を行った。

【関連画像】コーエーテクモゲームスのシブサワ・コウ氏とレベルファイブの日野晃博社長によるトークショーも行われた

 ゲームソフト部門の大賞を受賞したのは、アミューズメントメディア総合学院に在学中の5人で結成したTeam.SC制作の『SACRED FOUR』。鎖のような武器を振り回してモンスターを倒していくVR(仮想現実)アクションゲームで、メンバーは「面白いものを作ろうという勢いだけでやってきたが、それを評価されてうれしい」と喜びを語った。

 ゲスト審査員のコーエーテクモゲームスのシブサワ・コウ氏は、応募作全体を通じて「アイデアが光っているタイトルが多かった」と評価。福岡ゲーム産業振興機構の委員長で審査員も務めたレベルファイブの日野晃博社長は「ものづくりにちゃんと取り組んでいる方々が参加してくれていると感じた。これから良いものを作って、ぜひ僕たちの業界の仲間になってください」と参加者全員にエールを送った。

 主催の福岡ゲーム産業振興機構は、九州・福岡のゲームソフト制作関連会社による任意団体GAME FACTORY’S FRIENDSHIP(GFF)と九州大学、福岡市の3者が、福岡を世界的ゲーム産業拠点にすることを目的に2006年に設立。全国的にも珍しい産・学・官が連携したゲーム関連団体だ。2008年に始まった本アワードも年々成長しており、今年は3部門合わせた応募数が1492作品と、過去最大規模になった。

 その中でも、ゲームソフト部門へのエントリー数は前年比115%の292作品で、日本最大規模のアマチュアゲームコンテスト「日本ゲーム大賞アマチュア部門」の409作品(2017年)に迫る規模になっている。加えて今年は、ゲーム制作の根幹を担う「プランニング」の重要性に注目し「ゲーム企画部門」を創設するなど、新たな取り組みも行った。

 「地元・福岡で優れたゲームを生み出し続けるための人材を育成・確保することと同様、国内全体のゲーム制作能力の底上げも意識している」とある関係者。実際、国内のほぼすべてのゲーム関連の教育機関に毎年案内書を送付し、全国からの参加を促している。こうした姿勢が参加者などにも評価され、徐々に規模が拡大してきたと言える。GFF AWARDが アマチュアゲームクリエーターの大きな登竜門として、位置づけられる日も近いかもしれない。

(文/上原太郎)

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