“仮想ユーチューバー”密かなブーム 素人っぽさがウケる…2018年ブレイクか(産経新聞)



 グーグルの動画配信プラットフォーム「YouTube(ユーチューブ)」に自分で制作した動画を投稿する「ユーチューバー」が好調だ。歌などの特技やゲームの実況プレイを披露するだけでなく、スポンサー企業の商品を紹介して収入を得たり、再生回数に応じて広告収入を得たりと活躍の場をタレント並に広げている。そんな中、様々な架空の3DCGキャラクター「バーチャルユーチューバー」が人間のように出演する動画が注目を集めている。動画配信サービスを開発するエビリーが発表した「2018年にブレイクするユーチューバー」トップ10の半数をバーチャルユーチューバーが占めるなど、密かなブームが起きつつあるようだ。

 「メキシコの方からもコメントをいただくことになるとは」。人気急上昇中のバーチャルユーチューバー「電脳少女YouTuber シロ Siro」の動画を制作するアップランドのディレクター、窪木誠さんは驚きを隠せない様子で話す。

 同社はスマートフォンアプリなどを開発するIT企業。リリース予定のゲームアプリのプロモーションとして、そのゲームに登場するキャラをイメージした美少女CGキャラクター「シロ」の動画を昨年8月から公開している。

 ファン数の目安となるユーチューブチャンネル登録者は今月30万人を突破した。海外人気も徐々に高まり、英語、韓国語、ポルトガル語などの字幕をボランティアで作るファンも現れている。

 動画の作り方はこうだ。スタジオで全身にセンサーを装着した演者(えんじゃ)が、ゲーム実況や外国語講座をテーマに、身振り手振りを交えてセリフを話す。その動きを3次元のデータとして扱う「モーションキャプチャ」技術を使い、3Dモデルで再現。さらに「リップシンク」という技術で音声データとCGの口の動きを連動させる。つまり実在する演者の動作がほとんどそのまま仮想キャラクターであるシロのものになるというわけだ。

 5分~30分の長さの動画にかける制作時間は1本あたり8~10時間。撮影は約1時間で、編集に5時間近くかけるという。CGの動きにはぎこちなさもあるが、実際のユーチューバーにおいても、養成所などでトレーニングを積んだタレントにはない素人っぽさが、かえって視聴者を惹きつける要素になる。「ほとんどCGを修正せずに、ありのままの演者の動きを動画にする」(窪木さん)のも人気の秘けつのようだ。

 窪木さんはビジネスモデルについて「広告収入、(視聴者がユーチューバーを金銭的に支援する)スーパーチャット、企業様のゲーム等を紹介する案件収入の三本柱でユーチューバー事業として十分成り立ちます。それ以外ではグッズ販売や、今後リリースするゲームなど版権を使った展開も考えています」と語る。今月19日に配信されたライブ動画では、30分間で視聴者から約200万円も集まった。「シロちゃんに対する視聴者の方々の期待の大きさだと感じました。今後の活動により一層励んでいきたいと思います」(窪木さん)

 さらに動画制作のノウハウを生かし、協業という形で他社のIP(キャラクターなどの知的財産権)を生かしたバーチャルユーチューバーを作るビジネスなど、様々な広がり方があり得るそうだ。

 こうした制作に手間のかかる動画は企業や団体にしか作れないと思われそうだが、個人制作の動画でチャンスをつかんだ人もいる。「ねこみみマスター」という名で活動する男性は、自作した女の子の3DCGに自分の声をあてる「バーチャルのじゃロリ狐娘(きつねむすめ)YouTuberおじさん」で支持を集めている。“彼女”の決めゼリフは「世知辛いのじゃ」だ。

 2014年まで鉄工の会社に勤めた後、ウェブ制作会社やコンビニエンスストアで働き、その傍らで関心を持ったCGの技術を独学で学んだ。バーチャルユーチューバー動画に取り組んだのには、就職活動のときに制作物として企業に見せる狙いもあったという。

 その努力が実り、昨年11月から投稿しているバーチャルユーチューバー動画のシリーズが異例のヒット。チャンネル登録者は22万人を超え、ゲーム大手セガとのコラボ企画が誕生した。さらにデジタル技術とアートの両方に関わるテクニカルアーティストとして就職まで決まった。絵に描いたような“シンデレラ”ストーリーだ。

 就職という目標は達成したが「やってみたら学ぶ事が多い事に気付きましたので、動画制作は継続します」(ねこみみマスターさん)。

 一方、VR(仮想現実)技術を開発するエクシヴィが、DeNA系の動画プラットフォーム「SHOWROOM(ショウルーム)」向けに、少ない機材でアニメキャラクターになりきった動画を作れるシステム「アニキャスト」を発表している。挑戦したい人のハードルを下げる取り組みだ。

 またアップルがアイフォーンでユーザーの表情を解析して、犬やロボットの動く絵文字に反映させる「アニ文字」に力を入れるなど、仮想キャラクターに人間の動きを真似させる技術が身近になりつつある。バーチャルユーチューバーを見て楽しむだけでなく、誰もが自分の分身・アバターを持つ時代が来るのかもしれない。



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