稲葉酒造 女性蔵元、伝統守りながら新しい酒提案(SankeiBiz)



 筑波山が見下ろす町、茨城県つくば市沼田。筑波山の麓で江戸時代から酒造りを続ける「稲葉酒造」は、全国では数少ない女性が蔵元を務める。6代目の蔵元、稲葉伸子さんの繊細な手の下、蔵の裏から湧き出る筑波山の天然水で仕込まれた手造りの酒は、全国新酒鑑評会で「金賞」に輝くなど高い評価を得ている。創業は1867年。当時から筑波山神社の御神酒(おみき)「男女川(みなのがわ)」を造り続けてきた。築き上げた伝統を守るとともに、新しい取り組みにも乗り出している。

 ◆品質管理に自信

 「マーケットに合わせるのではなく、自分から新しい物を提案していく」。稲葉酒造の代表で、夫の芳貴(よしたか)さんはこう語る。30年以上前に盛んに造られ、近所の人たちに愛されていた「神仙(しんせん)」の復刻販売など、伝統の味はそのままに、「新しさ」を提案することも忘れない。その思いで造られたのが、微発泡の日本酒「男女川つくば浪漫純米吟醸あわい恋」だ。瓶内で2次発酵させることで、きめ細かくやさしい発泡を楽しめる。まだ発泡性の日本酒が珍しかった10年以上前に発売された日本酒だが、高く評価され、現在でも販売を続けている。

 「伝統は守らなければならないが、新しい挑戦をしなければ人々がどんどん日本酒から離れてしまう」と芳貴さんは指摘する。

 稲葉酒造の日本酒は、香り高くフレッシュで、透明感のある味わいが特徴だ。絞りたての味を楽しんでもらうために品質管理は怠らない。日本酒は問屋へ卸さず、直売か信頼のある数店舗での販売にとどめている。管理方法や輸送時の温度などで日本酒の味が変わってしまうことを危惧しているからだ。芳貴さんは「造ったときの味そのままで味わってほしい」と話す。

 芳貴さんは、伸子さんとともに都内の大手百貨店に勤めていた。販売だけでなくバイヤーも務め、「販売から流通まで幅広い視野を持つことができた」という。異なる環境で得た視点は新たな日本酒のあり方をプロデュースするのにも役立つ。

 こだわりの日本酒の舞台は日本にとどまらない。初出場した2017年酒造年度全国新酒鑑評会で金賞を受賞しただけでなく、世界最大級のワイン品評会インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2018では、銀メダルを獲得するなど、世界レベルで高い評価を受けている。

 新酒鑑評会では、受賞するのがほとんど大吟醸酒の中、純米大吟醸酒での受賞を果たした。大吟醸酒と違い、アルコール添加をしない純米大吟醸酒は品質管理が難しい。その純米大吟醸酒での受賞は「自信につながった」と芳貴さんは語る。

 稲葉酒造の日本酒は、米国など海外のレストランでも取り扱われており、海外進出にも積極的だ。ここでも適切な管理ができ、信頼できるオーナーのみに卸している。芳貴さんは「少数だが、きちんと高品質なものをつくっていれば海外でも評価される」と自信を見せる。

 ◆地元産米にこだわり

 日本酒造りに必要なコメ。稲葉酒造では、全て純米酒にするよう動いている。芳貴さんは「5年くらいを目標にほとんどの日本酒を茨城県産米で造りたい」と語る。米作りをする人がいなければ日本酒はできない。「良い酒は良いコメから。地元の米農家が元気になってもらうためにも、地元のコメを使った酒造りを試みたい」と芳貴さんは力を込める。

 そこには日本酒の将来を考える熱い思いがあった。(永井大輔)



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