医療機器ビジネスに知財戦略は不可欠(SankeiBiz)



 医療機器ビジネスを競争力のあるものにするには、研究開発が進み概念検証が済んだ段階で、発明の権利化を目指すことが重要だ。産学連携プロジェクトにおける知的財産、特に特許の重要性とそのマネジメント戦略を説明したい。(Kompath代表取締役CEO・高橋遼平)

 特許権は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義される“発明”を独占的に利用する権利で、特許庁から特許査定されると出願日から20年間独占権が保護される。ビジネス的な観点では、独占権によって他者の事業参入を防ぎ、競争力を維持することが重要といわれる。

 この認識は、ビジネスパーソンにとって共通のものだろう。一方、企業からは「特許の出願や維持に要したコストに対し、そのリターンが不明確」という声を聞くことが多い。現代のビジネス環境では、市場を独占し他者の参入を妨げる積極的な意味合いよりも、競争ポジションを維持するために必要な権利という受け身的な意味合いが強いことが背景にあると考えられる。

 基本特許という概念を用いて具体例を提示したい。基本特許とは「製品の生産、またはサービスの提供において回避することのできない特許」といえる。基本特許取得で他者の参入を防ぐことができるように思われるが、基本特許は製品によって数百件から数千件存在するケースも珍しくなく、1社ですべて独占することは極めて困難だ。

 それでは、市場のプレーヤーが基本特許を保有しあった場合、企業はどのような戦略をとるか。スマートフォンでは、グーグルとアップルが最終的に和解した。互いに特許侵害をする可能性を承知のうえで、不要な特許紛争を実施しないことを約束し、相互的な関係を構築した。しかし、基本特許を保有しない企業には、積極的に訴訟に乗り出して排除の方向に向かい、また高額なライセンス料を要求する可能性がある。つまり、複雑化する現代の技術体系において、基本特許は市場を独占することより、競合に対する特許訴訟の抑止力という意味合いが強い。

 医療機器業界における新規ビジネス開発でも同様であり、基本特許の獲得を中心とした知財戦略の立案は避けて通れない。

 まずは、研究開発を目指す製品に関する先行技術調査、特許明細や学術論文の読み込みから始めるのがいいだろう。技術の調査結果はそれ自体が社内の資産となり得るため、組織的に調査、管理、共有する体制を整えることも重要だ。

 特許明細の読み込みは、知財部や外部の弁理士事務所などの専門家に任せず、技術者自身が積極的に触れ合うことを勧めたい。権利化されていないスペースを発見できることもあれば、新たなアイデアを得ることもある。

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【プロフィル】高橋遼平

 たかはし・りょうへい 京大経卒。東工大環境・社会理工学院修了。工学博士。2012年三菱商事入社。15年10月医療系ITスタートアップのKompathを設立し、共同創業者兼代表取締役CEO。大学付属病院と共同で医用画像処理アプリケーション開発に取り組む。30歳。東京都出身。



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