大阪万博・韓国館の仏像レプリカ、在日韓国人学校に(産経新聞)



 昭和45(1970)年に大阪で開かれた国際博覧会(万博)で、韓国館に展示された世界文化遺産、石窟庵(ソックラム=韓国・慶州)の仏像3体のレプリカが、大阪の在日韓国人学校に受け継がれている。韓国館建立には在日韓国人による万博後援会が資金を援助した経緯があるため、寄贈された。保存に尽力してきた元美術教師で在日韓国人2世の呉景萬(オ・ギョンマン)さん(76)は「仏教美術が朝鮮半島から伝来し日本で昇華したように、互いの文化を理解する日韓であってほしい」と話し、2025年の大阪万博でも注目されるよう願っている。

 レプリカはいずれも幅113センチ、高さ264センチの石膏(せっこう)レリーフ3体。万博閉幕直後に大阪市住吉区の在日韓国人学校、白頭学院に寄贈された。約50年にわたり補修されつつ保存され、現在はグラウンドに面した外壁に設置されている。

 実物から型を取って製作したものとみられ、十一面観音菩薩像などの精緻な仏像彫刻が再現されている。石窟庵は1995年にユネスコの世界文化遺産に登録されたため、遺産保護の観点から、同様のレプリカを再び作るのは困難とみられている。

 呉さんがレプリカの保存に奔走したのは、実際に石窟庵を訪ねたときの感動があったからだ。

 日韓が国交正常化した65年、京都教育大の学生だった呉さんは、韓国政府と在日本大韓民国民団(民団)による学生訪韓団で初めて祖国を訪問。古都・慶州の山中にある石窟庵に早朝案内され、日の出とともに、石窟内にある本尊の釈迦如来像やそれを取り囲む仏像が照らし出される光景に心打たれた。「朝鮮戦争後の焼け跡がまだ残る貧しい国に、洗練された美しい彫刻が残っていたことに感動した」と振り返る。

 その5年後の大阪万博で、韓国館は太陽の塔のすぐ近くにモダンな建築で出展した。国威をかけて先進国並みに造られた巨大パビリオンは、呉さんの目には「過分なもの」に映ったが、閉幕後に展示品の仏像レプリカが寄贈されることになると、解体作業中のパビリオンから同僚ら十数人がかりで運び出した。

 呉さんを含め、当時の経緯を知る教職員はほとんど退職した。2025年の大阪万博に向けて、呉さんは由来を記した銘板を作って、児童生徒や来校者に祖国との縁を伝えたいと考えている。

 呉さんは言う。「国のプロパガンダやナショナリズムを押し出すのではなく、市民の文化を表現する万博であってほしい」(石川有紀)

【用語解説】「石窟庵(ソックラム)」

 774年建立。白色の花崗(かこう)岩の石窟内部の中央に本尊の釈迦如来像が安置され、壁面に菩薩像や金剛力士像など39体の仏像が彫刻されている。十一面観音菩薩像は本尊の後面にある。

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