進まぬ日本のキャッシュレス化 現金主義脱皮に課題山積(産経新聞)



 消費者が代金の支払いに現金ではなくクレジットカードなどを使用する「キャッシュレス」決済の比率が2割程度にとどまっている。他の先進諸国に比べ伸び悩む背景には、根強い現金志向や、店側の手数料負担の敬遠などがあるようだ。来年の消費税引き上げに合わせ、政府はポイント還元する方針を打ち出すが、専門家は「環境を整えることが先決だ」と指摘している。(吉国在)

 経済産業省によると、平成27年の日本のキャッシュレス決済比率は、18.4%。同じ年の海外の比率をみると、韓国が89.1%と突出しているほか、中国60.0%、英国54.9%、米国45.0%などと各国に水をあけられている。

 公共経済政策に詳しい一橋大の北村行伸教授は、「現金への信用の高さが大きな要因だ」とし、「消費者、事業者ともキャッシュレス化に漠然とした不安があるのでは」と分析する。

 インターネット調査会社「マクロミル」が10月、20~69歳の男女千人を対象に行った調査で、最も多い支払い方法は「現金」との回答が65.1%に上り、キャッシュレス化に消極的な回答は全体の4割を占めた。使い過ぎや、情報漏洩(ろうえい)などセキュリティー面を不安視する声が目立ち、消費者の根強い現金志向がうかがえる。

 一方で、訪日外国人客(インバウンド)需要の取り込みにキャッシュレス化は欠かせない。経産省によると、現金しか使えないことに不満を抱く訪日客は4割に上る。仮に2020年に訪日客が4千万人になった場合、現状のままでは約1.2兆円の機会損失を招くとの試算もある。

 キャッシュレス化には、決済のできる環境整備が必要だが、経産省の調査では都内の飲食店約13万店のうちクレジットカードが使えるのは約3分の1にすぎないことが判明している。

 店側がカード決済を導入しない大きな理由が重い手数料負担だ。「もうけが目減りする」。大阪市内の40代飲食店経営者は導入をためらう理由を明かす。

 手数料率は、店ごとに異なり、代金の3%程度がカード会社へ支払われる仕組み。風俗店など規模や業態により5%超の手数料が取られる例もある。

 電子マネーが乱立し、店によって使えないケースも多く、消費者に負担を強いる結果、キャッシュレス普及を阻んでいるとの指摘もある。

 こうした中、政府は来年10月の消費税引き上げに合わせ、景気対策としてキャッシュレス決済を行った消費者にポイントで還元する方針で、今後、カード会社に手数料の引き下げを要請するとみられる。

 北村教授は「将来的には緩やかにキャッシュレス化に向かうだろう」と予測した上で、「安全性の確保や、費用面を含めた負担が消費者や事業者にかからない仕組みをまず構築すべきだ」と話している。



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