イスラエルが湾岸アラブ諸国に接近 外交関係樹立に進むか注目(SankeiBiz)



 イスラエルの湾岸アラブ産油国への接近が顕著となっている。ネタニヤフ首相は10月26日、極秘に外交関係のないオマーンを訪問しスルタン・カブース国王と首脳会談を行ったが、その後も中東関係者に衝撃的な動きが相次いで起きている。

 まず10月28日、アラブ首長国連邦(UAE)で開催された「柔道グランドスラム・アブダビ大会」で、男子81キロ級に出場したイスラエルのサギ・ムキ選手が優勝し、表彰式でイスラエル国旗が掲揚されて国歌が流されている。次第に形骸化しつつあるとはいえ、アラブ諸国で形成するアラブ連盟が設立から実施してきた「イスラエル・ボイコット」の現存する中でのことだけに驚きをもって迎えられた。

 印象的であったのは、会場で自国選手を見守っていたイスラエルの女性閣僚ミリ・レゲブ文化スポーツ相が「今日は間違いなく歴史的な日だ」「アラブ諸国の指導者たちの間では、中東の安定に向けた新たな動きが広がっている」と喜びもあらわに語っていたことである。同文化スポーツ相は、翌10月29日にはシェイク・ザーイド・グランド・モスクを観光で訪れ、ヘブライ語で来訪者記入帳に自らの名前を記している。同相はフェイスブックで「イスラエル初の政府高官として記入帳に名前を記す幸運を与えられてとても幸せだ」とつづっていた。

 実は10月28日には、翌29日からドバイで開かれる「国際電気通信組合全権会議」に出席するイスラエルのアユーブ・カラ通信相に同行してドバイ入りした代表団もやはりUAEの観光名所を回っている。

 これらに加えて、オマーンのユースフ・ビン・アラウィ・ビン・アブドゥラ外務担当国務相は10月29日、バーレーンで開かれた安全保障セミナーで「イスラエルは地域に存在する国家で、われわれは皆、そのことを理解している」「恐らく、イスラエルがその他諸国と同じように扱われる時期であろう」と演説し、イスラエルを地域の一国として認める時期が来たとの考えを、表明している。

 他方、ネタニヤフ首相はそれからほぼ1カ月後の11月25日、1972年の断交以来外交関係のないチャドのイドリス・デビ大統領を迎えた共同記者会見で「近々、アラブ諸国へのさらなる訪問が行われよう」と語り、アラブ諸国との一層の関係改善の可能性に言及している。なお同日には、イスラエル国内のメディアが、同国とバーレーンが公式外交関係の樹立に向けて協議していることを確認したほか、イスラエルが北アフリカのアラブ国家スーダンとの外交関係樹立も模索していると報じている。

 さらに、イスラエルのエリ・コーヘン経済相は同日のラジオのインタビューで「私自身がバーレーンへの個人的招待を受けている」と語り、来年4月15日にバーレーンで開催される「スタートアップ諸国閣僚会合」への招待状を既に受け取っていることを明らかにしている。

 このほかイスラエルのハーレツ紙は11月25日、GCCの盟主サウジアラビアが昨年夏の時点で、スパイ用の最先端装置「ペガサス3ソフトウエア」などの購入についてイスラエルのサイバー・インテリジェンス企業NSOグループ・テクノロジーズと交渉していたとも報じている。

 果たして、イスラエルとオマーンやバーレーンなど湾岸アラブ産油国との外交関係の樹立まで一気に進むことになるのか否か。今後のイスラエルの外交の行方に注目したい。

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【プロフィル】畑中美樹

 はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。



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