「国家千年の大計」中国の都市計画 そして日本に求められる政策は(SankeiBiz)



  中国雄安新区を11月末に初めて訪問した。ご存じない方のために紹介すると、雄安新区は深セン経済特区、上海浦東地区に続く、巨大な新区として2017年4月に公表された。場所は、北京の南西105~150キロメートルに位置し、総面積1770平方キロメートルの特区である。日本の都道府県で最小は香川県で面積1876平方キロメートルであり、雄安新区はそれに匹敵する巨大な新区である。

 最大の特徴は、北京の首都機能を補完する都市である点、および世界最先端のテクノロジーを結集したスマートシティーである点にある。訪問の機会を得ることができたので、雄安新区から考える都市計画・都市交通のあり方について考えてみたい。(日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎)

 ◆国家千年の大計

 雄安新区を紹介する雄安新区市民サービスセンターを訪問して、驚かされたのがこの言葉である。「国家千年の大計」として習近平国家主席が自ら構想・提起したといわれている。レイアウトは1770平方キロメートルを、オフィス・住居エリア3割、森林や湖エリア7割とし、自然豊かなように配分されている。オフィス・住居エリアは、耐震規定を強化し、ビルの高さは45メートル以下に制限されている。

 なお、この新区の最大の目玉は、自動運転車しか街中を走行できないことにある。われわれが訪問した際も、新区近くの駐車場で止められ、EVシャトルバスに乗り換えて、新区の中に入ることができた。雄安新区市民サービスセンターの周囲では、自動運転車のアポロプロジェクトや、自動荷物運搬車の「NEOLIX」などが数台実証試験を行っていた。ただ、雄安新区市民サービスセンターや、それ以外の複数の建物しかできていないため、筆者が見たところ、構想の1%も出来ていないのではないだろうか。

 都市計画・都市交通に関して気になった点がある。雄安新区までは、新幹線が北京、天津から直結し、高速道路も特区を通る計画である。また近くには第2北京空港が建設中である。しかし、オフィスビル、住宅地、碁盤目状の道路というように、都市計画は従来通りの考え方にあるように見受けた。交通機関に関しても、自動運転車や自動運転バスをメインに考えており、特段目新しいものはない。

 人口は初期で100万人、35年頃には200万人を超えると想定しているとのこと。そうであれば、たちまち北京以上の交通渋滞が発生するのではないだろうか。新都市が出来ると、次第に都市部に人口が集中するため、大量に人員を移動できる大型高速トラムやモノレール、新たな移動体など、都市交通形態をどうするかが課題となるであろう。

 ◆スマートシティーの条件

 日本のみならず、各国でスマートシティー構想が広がっている。多くの要素の中で筆者が重要だと思うのは、都市部に集中する人々の輸送方法である。都市のレイアウトをどのように計画し、どのように移動してもらうのかは重要な視点である。それで思い出すのが、大ロンドン計画である。戦時中、チャーチルは都市計画者を呼び、終戦後に実施する大ロンドン計画をまとめたといわれている。

 その骨子は、中心部に対して、同心円状に各都市を復興させ、都市中心部への圧力を減らし、和らげる効果を狙ったようだ。さらに、各都市とロンドンを結ぶ道路、鉄道などを適宜配置し連携を図ったとのこと。なお、雄安新区は現時点で北京のように一極集中であり、そのような計画は見られない。まだ着手した段階でありこれからなのであろうか。

 翻って、日本はどうであろう。戦後ではないので大胆なスクラップアンドビルドはできない。中国のように全く新しい場所に広大な土地を確保することもできない。日本の人口は50年に9515万人となり、ピークの05年に対し3300万人減少すると予測されているが、当面、東京への一極集中は避けられないであろう。

 そうであれば、都市計画・都市交通として、中心部と周辺部への集中と分散を行うことは必須である。また自動運転車が普及したとしても、移動人数は限られていることから、鉄道・モノレールなど車両の二重線化、多人数を運べる超大型バスや新型トラムの導入など、今後かなり大胆な政策が求められるように思われる。

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【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。62歳。福井県出身。



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