「シェアする街」で資産価値を向上 エネルギー、土地、防災など共有でコミュニティー醸成 アキュラホームの挑戦(産経新聞)



 住み続けることで資産価値が高まっていく「経年増価」の街づくりが動き出した。木造注文住宅を手がけるアキュラホーム(東京都新宿区)が“シェアする街”として10月20日から前期分譲24戸の販売を始めた「ヒルサイドテラス若葉台」(同稲城市)だ。全棟に搭載した太陽光発電で得た売電収入を街の維持管理費として運用するエネルギーのシェアのほか、土地や防災、育児なども共有する。住民同士のコミュニティーを自然と育む仕掛けを作ることで景観や住環境の維持向上を促す。

【画像】共有スペースを囲むように戸建て住宅が並ぶ

 ■共有スペースで交流

 「シェア争いのような奪い合いではなく、分かち合うシェア。1戸では無理でも“賢い”連携することで経済的にも精神的にも資産価値を向上できる」

 宮沢俊哉社長は報道関係者に公開した6月22日、街のシンボルとなる住民専用の共有施設「センターハウス」でこう語った。資産価値が下がらない街づくりをアピールするが、近隣住民が交流を図るために3~4戸に1カ所設けられるシェア空間「コモンスペース」は住民の土地拠出が前提だけに賛同を得られるか不安があった。

 しかし杞憂(きゆう)に終わりそうだ。同月30日からの一般公開では、このコモン街区について「ご近所同士、家族ぐるみのお付き合いができそう」(30代前半の女性)、「バーベキューパーティーなどを行えば盛り上がりそうだ」(同後半の男性)など理解を示す声が多かった。

 当初は7月末の発売を予定していたが、来場客から「分譲がコモン街区(11戸)とそうでない単独住戸(13戸)に分かれる上、1戸ずつ景観や敷地条件、間取りが違うため全体像がイメージできない」といわれたからだ。そこで「前期分24戸が完成するまで一般公開時期を延ばすことにした」(まちづくり推進部の中道弘敬部長)。9~10月の3回の3連休での来場者は通常の2倍と手応えをつかみ、強気の価格設定(4900万~6600万円台)で発売。

 シェアする街の象徴となるセンターハウスではイベントを開催したり、午後のひとときにママ友同士でお茶を楽しんだりと自由に利用できる。災害時には住民同士でシェアできる防災備蓄品や貯水タンク、いざというときに炊き出し用のかまどになるベンチなどを完備。本や工具、グランピンググッズなども無料で使える。

 エネルギーのシェアも大きな魅力だ。センターハウスと全棟の屋根に太陽光発電システムを搭載。住民が自主運営する管理組合が一括して固定価格買い取り制度(FIT)を利用して東京電力に売電、「20年間にわたり安定的に収入を得られる」(同社)。これを街の維持管理費に充てるが、それでもおつりがくるという。

 ■求められるつながり

 少子高齢化や女性の社会進出などで近所付き合いの希薄化が進む一方で、内閣府が平成29年度に行った「住生活に関する世論調査」では「地域との交流・つながりを持ちたい人」は86%に達した。つながりを求めている人は多く、資産やコミュニティーを管理したり、子育てなどを助けあったりする街が選ばれる時代ともいえる。

 住民参加によるシェアする街づくりは、28年9月に発売した分譲地「浦和美園E-フォレスト」(さいたま市)で実証済みだ。住宅周辺に配置したコモンスペースは住民同士のコミュニティー形成に役立っており、1~2カ月に1回ほどのペースで軽食を囲んだ交流などを行っているという。

 コモンスペースを生かしたコミュニティーの醸成という浦和美園での成功が若葉台に生かされており、管理組合による資産価値を高める活動にアキュラホームも支援を惜しまない。

 同社にとって若葉台は用地取得から手掛ける初めての試み。「住宅は年数を経ると経年劣化は避けられないが、30年、50年後も住み続け、子や孫も住みたくなるような街を目指す」と宮沢氏は強調する。

 ヒルサイドテラス若葉台は京王電鉄「新宿」駅から「若葉台」駅まで電車で30分弱、そこから徒歩約17分。全戸の土地面積が170平方メートルというゆとりある住まいを実現した。無電柱化による美しい街並み、緩やかなカーブが連なるグリーンベルトなどで変化にとんだ景観を生み出した。

 後期分譲27戸の着工はこれからで、来春に発売する予定。注文住宅をメーンに展開してきたアキュラホームだが、「住民の交流による経年増価の街づくりで、分譲住宅も年間100棟を施工するイメージができた。32年には200棟を目指す」と中道氏は意気込む。(経済本部 松岡健夫)



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