食べながら虫歯や歯周病を予防!?夢のようなお菓子は大学の研究室に眠っていた(産経新聞)



 お菓子を食べて虫歯や歯周病を予防できたら-。子供なら一度は夢見るお菓子が、製菓大手のUHA味覚糖(大阪市中央区)から発売されている。口の中の悪玉菌だけを退治し、虫歯や歯周病を予防する乳酸菌「L8020」を配合したタブレット菓子「UHA デンタクリア タブレット」だ。三井物産が、大学の研究室に“眠っていた”乳酸菌の特許を発掘。大学発の乳酸菌技術と、消費者目線でおいしさを追求する菓子メーカーをマッチングし、商品化を後押しした。

 「いくら治療しても、虫歯が再発してしまう」

 広島大大学院医歯薬保健学研究科の二川浩樹教授によると、乳酸菌研究のきっかけは、障害者施設での歯科医検診の現場だった。

 健康な人には日々の歯磨きが虫歯の最良の予防策だが、障害者や介護が必要な人にとってはハードルが高い。二川教授は「食べるだけで口の中のケアができないか」と、平成14年頃、虫歯や歯周病予防に役立つ乳酸菌の研究を始めた。

 最初に注目したのは天然の乳酸菌として知られているロイテリ菌。乳業メーカーのチチヤス(広島県廿日市市)などと虫歯予防効果を共同研究した。しかし研究成果を特許申請しなかったため、スウェーデン企業に特許をとられ、研究を中断せざるを得なかった。

 だが、二川教授は諦めなかった。「歯磨きをあまりしないが、虫歯にならない人」に着目し、口腔(こうくう)内に共通して存在する42菌株を特定。ゲノム解析などを活用して虫歯予防につながる3菌株を見つけた。

 L8020と命名された乳酸菌は、善玉菌はそのままで虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌だけを退治。歯周病菌の持つ毒素も押さえ込む。虫歯予防だけならロイテリ菌や甘味料「キシリトール」も効果があるが、L8020は風味も良く、食品化に最適だった。

 口腔内の歯周病菌は全身疾患の元凶。血流に乗って全身を駆けめぐり、アルツハイマー病や糖尿病、がんなどの発症リスクを高めるとされる。二川教授にとって悪玉菌だけを退治するL8020は自信作だった。ロイテリ菌の反省もあり、二川教授は同級生で中国鉄管継手(広島市)社長の高田祐司氏に頼み、21年に特許を管理する広島大発のベンチャー「キャンパスメディコ」を立ち上げた。

 しかし商品化は難航した。大学の知財部門を通じて乳業メーカーに打診したが、相手にされず。ようやく高田氏のつてで四国乳業(愛媛県東温市)からヨーグルト製品の発売が実現したが、その後は本業の研究に忙殺され、本格的な取り組みには移れなかった。

 重症の歯周病を患った三井物産関西支社の社員が、四国乳業のヨーグルトの評判を耳にしたのは、ちょうどその頃だ。この社員がヨーグルトを半年試すと、医師も驚くほどの改善効果があり、「ビジネスにできないか」と東京本社に掛け合った。三井物産では25年から休眠特許で地方活性化に貢献する知財ビジネスの取り組みが始まっていた。同社の深谷卓司ビジネス推進部長は「地域産業振興に貢献する知財ビジネス発掘の第1弾になった」と話す。

 すぐに二川教授と連絡を取り、26年6月、L8020のライセンス業務の契約をした。取引先のUHA味覚糖との連携はとんとん拍子に進み、同社の松川泰治執行役員は「お菓子を通じて口腔内を健康にするオーラルケア商品の強化を打ち出した絶好のタイミングだった」と振り返る。

 UHA味覚糖は今年6月、L8020の商品化の第1弾として品質が安定しやすいタブレット菓子の本格販売を開始。今後、キャンディーや市場が拡大しているグミにも広げたいと意気込んでいる。(上原すみ子)

 L8020乳酸菌 歯周病菌の持つ毒素を押さえ込み、口の中の粘膜のガード力を高める効果があるほか、胃酸でも死なずに腸まで届く。80歳で自前の20本以上の歯を残そうという官民の健康運動「8020運動」にちなみ「L8020」と命名された。全国のドラッグストア向けに、ヨーグルト風味(21粒入り、希望小売価格550円)を販売している。



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