「ベーシックインカム」なんて幻想でしかない(東洋経済オンライン)



10/13(土) 15:00配信

東洋経済オンライン

 生活に必要な最低限の現金を全国民に無条件で支給する「ベーシックインカム」(BI)が注目されている。しかし、BIは巨額の財源を必要とするだけでなく、制度設計によっては低所得者に不利な逆進的政策ともなりかねない。またアメリカでは「連邦政府が全国民の雇用を保障する」という政策案が左派の間で支持を集めているが、連邦政府の財政は逼迫しており、これも現実的でない。

 雇用にとっての本当の問題とは実は量ではなく、質だ。まともに生活できる収入が得られるかどうかが問題になっているのである。OECD(経済協力開発機構)によると、2007~17年にすべての先進国で低賃金の仕事が増加し、実質賃金は停滞、会社員の福利厚生も減少した。

■このままでは所得格差は拡大するばかり

 リーマンショック以降、アメリカの雇用は(両端が大きい)ダンベル状に拡大してきた。片方ではSTEM(科学、技術、工学、数学)分野を軸に高スキル・高収入の求人が増加し、240万人もの人材不足を抱える。しかし、その対極では「ギグエコノミー」と呼ばれる非正規雇用が経済全体の3倍のスピードで拡大し、まともに暮らしていけない人が増えている。

 生産性の伸びは以前ほど賃金の上昇にはつながらなくなっており、政策を転換しなければ、所得格差は一段と悪化する。まっとうな生活を最低限可能にするためには「生活賃金」を保障する政策が不可欠だ。アメリカは今すぐにでも次の3つの対策を講じることができる。

 まず最低賃金を大幅に引き上げ、次に勤労所得税額控除(EITC)を拡充し、生活費と物価上昇率に対応させる。そして給付申請を簡素化し受給漏れを減らすのだ。

 当然、これらはパートや非正規もカバーするものとしなければならない。こうした対策を組み合わせれば、仕事を掛け持ちしている人も含め、実質的にフルタイムで働いている人が貧困にさらされ続けるといった事態は防げるだろう。

 現在、カリフォルニア州の最低賃金はサンフランシスコで時給15ドルだが、マサチューセッツ工科大学が開発したサイト「MIT生活賃金計算機」によれば、子ども1人の共働き世帯が最低限必要な収入を得るには最低でも21ドルが必要だ(一人親世帯は39ドル)。

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