石炭火力の撤退加速 強まる「訴訟リスク」(産経新聞)



 二酸化炭素(CO2)の排出量の多さから逆風にさらされている石炭火力発電所に、新たなリスクが浮上している。CO2排出で生活が脅かされるなどとして、運転差し止めなどを求める訴訟が続いているためだ。東日本大震災後に石炭火力の新設計画が相次いだが、近年は環境への影響や採算性などを理由に撤回の動きも加速。原発の再稼働も進まず、国のエネルギー政策への影響を懸念する声も出ている。(林佳代子)

 「石炭火力の稼働による大気汚染と地球温暖化で、被害を受ける恐れがある」。9月、神戸製鋼所が神戸市灘区で建設中の石炭火力2基(出力計130万キロワット)に関し、周辺住民らが建設と稼働の中止を求める訴えを神戸地裁に起こした。同種の訴訟は昨年9月、関西電力の子会社などが出資する仙台市の石炭火力で運転の差し止め訴訟が起こされたのに続き、2例目だ。

 環境省によると、国内では今年9月末時点で31基の石炭火力の建設計画がある。背景には福島第1原発事故後に停止した原発の代替電源としてのニーズや、発電コストの安さを武器に電力市場で競争力を高めようとする狙いがある。

 国が今年7月、約4年ぶりに改定したエネルギー基本計画では、2030年度の電源構成で石炭火力の比率を26%、原発を20~22%-などとし、両者を「ベースロード電源」とした。

 ところが、CO2の排出規制を強める国際的な流れを受け、金融機関が石炭火力への投融資を厳格化するなど「投資に見合う利益が得られるのかが見通せなくなってきた」(大手電力幹部)。計画の見直しも相次ぎ、今年4月に四国電力が仙台市での新設計画を断念したほか、昨年3月には関電と東燃ゼネラル石油(現・JXTGホールディングス)が千葉県市原市での新設計画を取りやめた。

 環境省はCO2排出に対し、炭素税など事業者に応分の負担を求める制度の導入を目指しており、石炭火力が安価な電力とはいえなくなる可能性もある。

 一方の原発も20~22%には30基程度の稼働が必要とされるが、現時点での再稼働は9基。新増設の議論も棚上げされたままだ。

 近畿大理工学部の渥美寿雄教授(エネルギー工学)は「原発が思った以上に再稼働できていないなか、石炭火力が果たしている役割は大きい。石炭火力についての訴訟が続くようであれば、将来のエネルギー供給に影響が及ぶ可能性もある」としている。

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