「忘れられた国際条約」が果たした大きな役割(東洋経済オンライン)



10/12(金) 10:00配信

東洋経済オンライン

「忘れられたある国際条約を起点に世界史を見ると、これまで見えなかった道筋が目の前に開ける」ーー。
こんな新しい視点で近代史を読み解くのが、イェール大学の気鋭の法学者2人が著した『逆転の大戦争史』(オーナ・ハサウェイ、スコット・シャピーロ著)だ。2人は、戦争を初めて違法とした1928年のパリ不戦条約に注目。パリ不戦条約以前を「旧世界秩序」、以降を「新世界秩序」とする本書を書き上げた。同書はイギリス、アメリカで2017年9月に出版され、日本でも10月12日に発売となる。

自らもイギリス、アメリカの専門家と現代国際社会を統べる秩序について討論を重ねるアジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一氏が英米で議論を呼んでいる本書を読み解く(本記事は同書の解説からの転載です)。

■いまも地球上のどこかで戦争が起きている

 「なぜ、人を1人殺した場合、殺人罪の罪に問われるのに、何万人、何十万人、何百万人を殺す戦争では罪にならないのか」

 「ある人間集団が別の人間集団を組織的に殺害しても許されるときというのはどういうときなのか」

 人間社会の業とも言うべき戦争を考えるとき、誰しも、このような疑問を抱く。

 アフガニスタン、イラク、イエメン、シリアでは戦争が続いている。そして世界の各地域で日々、民族と人種と宗教をめぐる殺し合いが収まらない……どの社会も、いつの時代も、人間は戦争から自由でいられなかったし、いまも日々、地球上のどこかで戦争が起きている。

 人間社会において戦争以上の悪はない。しかし、人間はそれを克服できない。

 本質的にアナーキーである国々の関係を律する世界秩序の成否は、戦争をいかに制御するか、さらには戦争をどのように法的に定義するか、そして法的拘束力をいかに担保するか、にかかっている。

 そもそも、近代西欧は、戦争を合法的なものと位置づけてきた。その理論的枠組みを確立したのは、17世紀前半に活躍したオランダの法学者、フーゴー・グロティウスである。

 グロティウス国際法においては、

・戦争は、合法である。

・国家は戦争に訴える権利と自由を持つ。
 と定められた。

 その後、欧米列強が、世界を制覇するにつれ、それは世界秩序を律する法的骨格となった。

 しかし、第1次世界大戦とその悲劇的結末は、戦争が合法であるとするグロティウス的秩序に対する深刻な疑問を人々に抱かせることになった。

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