地銀に求められる「目利き力」 “育てる金融”が生き残りの鍵に(SankeiBiz)



 「目利き力」という言葉が、地方銀行の経営改善のキーワードとしてよく耳にする。いまスルガ銀行のシェアハウス向けの不正融資が発覚して、地銀の厳しい経営事情が改めてクローズアップされている。地銀が生き残るには、地域密着型金融をより効果的に行わなければならない。その成否を決める重要な鍵が、企業の有形無形の実力を適切に評価できる目利き力というわけである。(ジャーナリスト・森一夫)

 例えば元金融庁長官の佐藤隆文氏は「地域金融の基本は地域に密着した金融機関かどうかだ。目利き力を発揮し、助言とセットで良いサービスを借り手に提供できていれば、本来はそれほど収益が落ちないはずだ」と述べている。(7月19日付日本経済新聞)

 新潟県の地銀、大光銀行の古出哲彦頭取は7月31日の日本経済新聞電子版で、今後の業務改革についてこう語っている。「中小企業を重点顧客とし、法人営業担当者を中心に目利き力・提案力を高める」と。地銀に限らず信用金庫や信用組合も含めた地域金融機関はもとより、メガバンクにしても「目利き力」が融資業務を行う上で不可欠であることはいうまでもない。しかし金融機関は長い間、目利き力をさび付かせてきた歴史がある。

 バブル経済のころ、今はメガバンクになっている都銀のある東京都心の支店長が、首をひねっていた。「私は昔、相手の経営者の顔を見て融資しろと教わったものですが、いまの支店の行員は不動産登記簿と地図を持ってきて『ここに融資しましょう』と、土地だけを見て貸そうというんですよ」。

 その土地に上物を建てていくら稼げるかを評価してというのではない。ほとんどは地価上昇を当て込んで貸し付けるというのが実態だった。だからバブルが弾けて金融機関は巨額の不良債権を抱えたのである。

 以来、銀行は不良債権の後始末に苦しみ、日本経済は長期停滞に陥った。財務改善を迫られ、いわばあつものに懲りてなますを吹くで、銀行は貸し渋りの姿勢を強め、目利きどころではなくなった。

 高度成長期も、銀行は土地担保融資が基本で、中小企業には個人保証も求めた。しかも新興企業には容易に貸さない。

 資金不足の環境が長く続き、借り手の立場は弱く、銀行は資産のある安全性の高い企業を選んで融資できた。極端に言えば、事業性評価は二の次だった。

 だが例外もあった。例えば外食チェーンのロイヤル(現ロイヤルホールディングス)は1967年、日本興業銀行(現みずほ銀行)から当時の売上高の半分強に当たる6億6000万円を借りてセントラル・キッチンを建設して急成長を可能にした。

 当時融資した興銀取締役福岡支店長の村瀬泰敏氏は後に「不安はなかった」と語っている。創業者江頭匡一社長の真剣な姿勢を、正当に評価した村瀬氏の目利きに狂いはなかった。

 いま金融機関に必要なのは、このような企業の将来性を客観的に評価する能力である。

 スルガ銀行はシェアハウス向け融資で審査資料の改竄(かいざん)などさまざまな不正を犯した。マイナス金利などの逆風下で、地銀トップの経営効率を誇っていたが、不正な方法による虚構だったわけだ。

 金融機関が生き残るためには、目利き力強化という基本に返るしかすべはないだろう。

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【プロフィル】森一夫

 もり・かずお ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。68歳。



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