MOX燃料の再処理報道めぐり、世耕弘成経産相vs共同通信 バトルの着地点は?(産経新聞)



 世耕弘成経済産業相と共同通信が、原子力発電所のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の再処理に関する報道をめぐって対立している。世耕氏は記者会見で「事実と異なる報道」と抗議する一方、共同は配信記事の中で「記事の内容は十分な取材に基づく」と主張し、両者の意見は平行線をたどっている。

 9月18日午前、経産省の会見室で開かれた閣議後の記者会見。使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)が、原子力規制委員会の審査に合格する見通しとなったことについて、共同の記者が質問すると、世耕氏は「共同通信さんの質問にお答えする前に一言申し上げたい」と語り始めた。その上で、「MOX燃料の再処理を政府がやめたという誤報はぜひ、訂正していただきたい」と語気を強めた。

 原発で使い終わった燃料には、まだ再利用できるプルトニウムとウランが残っている。MOX燃料とは、この使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作った燃料だ。資源を有効活用できるため、政府や大手電力会社はMOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル発電を進めている。

 政府は7月に閣議決定した中長期の指針を示す「エネルギー基本計画」でも、使用済み燃料の再処理やプルサーマルの推進を改めて明記している。

 世耕氏が会見の場でメディアを名指しして批判するのは珍しい。しかし、共同に訂正を求めたのは9月18日が初めてではない。

 さかのぼること2週間ほど前の同4日の記者会見。共同の配信記事の真偽を、他社の記者から質問された世耕氏は「まったく事実と異なる報道がなされたことは大変遺憾だと思っている」と強調した。10月2日の記者会見でも同様に訂正を求めた。

 事の発端は9月2日に共同が配信した記事。「原発を持つ電力会社10社が、MOX燃料を再処理して再び燃料として利用するための費用の計上を、2016(平成28)年度以降中止していたことが2日、分かった」などとした上で、電力各社が費用計上をやめたため、事実上、MOX再処理を断念したと報じた。

 共同の影響力は大きい。この配信記事を加盟社である多数の地方紙が「MOX燃料 再処理断念」「揺らぐ核燃料サイクル(MOX燃料を再利用する国の政策)」などと大きな見出しを立て、1面で報じた。中には「公の場で議論せず政策転換」という仮見出しを付けた共同の解説記事とともに報じた地方紙もあり、記事を読んだ人も多いのではないだろうか。

 ところが、経産省側の見解は異なる。使用済み燃料の再処理費用は、これまでは電力各社が資金を積み立てるなどしていた。

 だが、電力各社の業績が悪化した場合、核燃料サイクルが滞る恐れがあるため、使用済み燃料の量に応じて費用計上し、平成28年に設立した認可法人「使用済燃料再処理機構」に資金を拠出する方式に改めた。世耕氏は「各事業者の会計面での処理が変わっただけだ」と説明する。

 実際、既に原発を再稼働している関西電力、九州電力、四国電力の3社が、MOX燃料を含めた使用済み燃料の再処理費用として、29年度に計約470億円を計上したことが分かっている。電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は同14日の記者会見で、「使用済みMOX燃料の再処理を断念したという事実はない」と、共同の記事を否定した。

 共同は、同4日の世耕氏の会見を受けた記事で、世耕氏が「核燃料サイクルをしっかり推進する」などと発言し、同社の報道に反論したことを伝えた。また、電事連がホームページで「MOX燃料の再処理を断念した事実はない」とする見解を公表したことも報じた。

 その上で、「記事の内容は十分な取材に基づいており、この問題に関しては今後も取材を継続し、報道していく」とコメント。世耕氏と共同の見解にはなお開きがあり、両者のバトルは続きそうだ。(経済本部 大柳聡庸)

 ■MOX燃料 原子力発電所で使い終わった燃料には、まだ再利用できるプルトニウムとウランが残っている。この使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作った混合酸化物燃料をMOX燃料と呼ぶ。政府や大手電力会社は資源の効率化が図れるため、MOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル発電を進めている。



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