ウーバーが狙う「空飛ぶタクシー」構想 “第2の革命”へ準備、23年にも事業化(SankeiBiz)



 新宿から横浜に、10分で到着-。ライドシェア(相乗り)サービスで世界の移動の在り方を大きく変えた米配車大手ウーバー・テクノロジーズは、2023年にも“第2の革命”を起こそうと準備をしている。スマートフォンで手続きをして、気軽に主要都市間を飛行する「空飛ぶタクシー」構想だ。課題は多いが、そのインパクトは大きく、実現に向けた取り組みが注目される。

 ◆現状の交通に限界

 「2次元のトランスポーテーション(交通)には限界がある。3次元に踏み出し革命的に変えたい。空に、迅速で安全な交通網が構築できる」

 8月末、ウーバーは同社が計画する空飛ぶタクシー「ウーバーエア」について説明するシンポジウムを東京都内で開催。バーニー・ハーフォード最高執行責任者(COO)は、その将来性の大きさを強調した。

 構想では、乗客は同社のライドシェアと同じようにスマホで“乗車”予約し、ビルの屋上などに設置する離着陸地点「スカイポート」に移動。複数の電動プロペラで飛ぶ「eVTOL(電動垂直離着陸車両)」で他の都市のスカイポートまで飛ぶ-というものだ。ここで例えに出したのが、新宿駅(東京都新宿区)上空から横浜スタジアム(横浜市)を結ぶルートだった。

 ハーフォード氏は、世界的に都市部の人口増が加速するとの予測について「経済的なチャンスである一方、交通渋滞という大きな損失も懸念される」と指摘。渋滞を解消できる新しいモビリティー(乗り物)の必要性を訴えた。また、「インドのムンバイやニューデリーでは、何万人もの人が2時間以上かけて通勤している。これを短縮できれば家族と過ごしたり、仕事をしたりすることに時間を使える」と、具体的な事例を出して必要性を説明した。

 同社が標準モデルとしているeVTOLは時速150~200マイル(240~320キロ)。旅客機が高度約1万メートルの上空を飛ぶのに対し、高度300~600メートルを想定している。1回の充電で96キロ飛べるという。

 東京を中心に考えると神奈川、千葉、埼玉3県のほぼ全域をカバー。北関東の主要都市である宇都宮、水戸、高崎(群馬県)などとの間も結べる可能性があり、時速から単純計算すると、これらの各市と東京との間を20分程度で移動できることになる。

 eVTOLは4人乗りで、荷物を載せる広さもある。4つの電動プロペラで飛行し、垂直に離着陸できる。初期はパイロットが操縦するが、将来的には自動運転とする考えだ。

 試験飛行開始は20年の予定。「23年までに3つの都市で飛ばす」(ウーバー関係者)という。米国のロサンゼルスとテキサス州での実施は決まっており、3番目の都市として日本、フランス、オーストラリア、インド、ブラジルの5カ国の中から選ぶ方向で検討している。

 ◆道路整備より割安

 インフラの整備が課題だが、道路を張りめぐらせるよりは割安だというのがウーバーの主張。シンポジウムでは高速道路が建設される過程の動画まで流し、空飛ぶタクシーの方が割安と強調した。ビルの屋上に設置するスカイポートについて同社は、「必要なものだけを少ない面積に配置する」としており、既に最適なデザインや、コストを抑えられる設置手法を研究している。

 eVTOLはドローン(小型無人機)を、人が乗れるように大型化するイメージ。ウーバーは社外から調達する方針だが、ここ数年のドローンの進化をみると、実現可能性は十分ありそうだ。ただ、複数のeVTOLが同時に空を飛べば、ヘリコプターのように騒音の問題が起きる懸念もある。

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 ■日本出遅れ…課題は規制改革

 さらに、規制の問題も簡単ではない。旅客機よりは高度が低いとはいえ、空を飛ぶ以上、事故が起きれば重大な結果につながりやすいからだ。

 日本は規制改革が進まないケースも多く、現にウーバーの本業であるライドシェアも解禁されていない。ウーバーに出資するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が講演で、「こんなばかな国はない」と批判したほどだ。

 シンポジウムでは「(空飛ぶタクシーにより)車に乗ることが経済的ではない、という状況にしたい」と、“過激”な発言も飛び出した。ハーフォード氏は「(空飛ぶタクシーは)既存の交通手段を補完するものだ」としており、スカイポートまでの移動でタクシーなどとの「接続」を重視しているようだが、既存勢力に“脅威”と受け取られ、反対論が強まる可能性もある。

 最大の焦点は「価格」と空域管理だろう。ウーバー関係者は「パートナー企業が機体を大量生産すれば、1時間当たり数十万トリップも可能だ」と鼻息が荒い。運行数が増えればスケールメリットで料金を抑えることができるが、一方で空域の管理は難しくなる。規制の問題とも関連するが、災害救助や救急のヘリコプターなどの飛行の安全にも万全を期す必要がある。ウーバーは米航空宇宙局(NASA)と都市部の航空交通などについての技術研究で連携しているが、この問題を解決できるかは不透明だ。

 日本でも政府が「空飛ぶクルマ」の官民協議会を立ち上げ、20年の実用化を目指すとしたが、出遅れ感は否めない。協力するにしても対抗するにしても、先に具体的な構想という“旗”を掲げたウーバーを強く意識しながら取り組まざるを得ない状況だ。(高橋寛次)



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