将棋・羽生善治竜王が「弟子」をとらない理由(東洋経済オンライン)



9/15(土) 11:00配信

東洋経済オンライン

棋士たちの素顔は、知れば知るほど面白い。ウィットに富んだトーク、厳しさを知るがゆえの優しさ。そして日常の出来事をすべて将棋に照らす独特の思考。これまで将棋を指したことがない人でも、将棋の人生観にはひかれるものがあると思う。
本稿では、1人の棋士が育つ過程を「師弟」という視点で描いたノンフィクション『師弟 棋士たち 魂の伝承』から抜粋し、自らの師と本書に登場する棋士たちについて語った羽生善治氏のインタビューをお届けする。

■師匠の記憶

 ――師匠の二上達也九段との“師弟対決”の思い出から伺えますでしょうか。

 公式戦での対局は、私が五段で18歳のときでした。当時の私の段位だと、かなり勝ち上がらないと師匠と対戦することはできません。盤を挟んで向き合ったときにはやはり感慨深いものがありました。結果的に私のカウンター攻撃がうまく決まって勝つことができたのですが、対局は気がついたら苦しい展開になっていて、経験値の差を感じました。

 その後、感想戦をとても長くやってくださいました。普段は30分から1時間なのですが、2時間くらい教えていただきました。あくまで推測ですが、師匠にも特別な思いがあったのかもしれません。

 ――その対局で二上先生は引退を決意したとも伺っています。

 私との対局が1989年3月にあって、翌年3月に引退をされています。私と当たる前に、すでに引退の時期を考えられていたのだと思います。ただ、きっかけになったというのは、あるかもしれません。

 師匠が引退したのは、まだ50代でしたし、順位戦もB級1組に在籍していました。あと10年は現役を続けられたと思うのですが、潔い引き際でした。木村(義雄)十四世名人が48歳で引退されているのですが、その影響もあったと聞いたことがあります。

 ――二上先生からの言葉や特に印象に残っているエピソードは。

 入門した頃は、お正月に師匠の自宅にあいさつに行くというのが恒例行事でした。5~6人の弟子たちとおせちを食べながらテレビを観たり、将棋を指したりしました。若いときは将棋が一本調子になりやすいので、「バランスよく指すことが大事だ」と教わりました。

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