米大統領に翻弄される原油価格 上下に圧力、先行き不透明に(SankeiBiz)



 2014年後半からの原油価格低迷は、昨年から始まった石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどによる協調減産の下で潮目が変わり、本年の原油価格は米国産標準油種(WTI)で基本的に1バレル=70ドル前後の推移が続いている。

 原油価格は、需給・地政学リスク・金融要因によって変動を繰り返してきた。今後も油価の展開には予断は許されない。トランプ米大統領の政策に起因する大きな不確実性が2つ存在し、それらが正反対の方向に油価を動かすべく、せめぎ合っているからである。

 ◆イラン制裁第2弾

 その一つが米国のイラン核合意からの離脱である。5月にトランプ大統領は離脱を表明、8月には米国の対イラン経済制裁の一部が復活した。11月には、制裁の「本丸」、イラン石油部門への制裁が復活する。イランは日量約250万バレルの石油を輸出している。米国は、イラン原油主要引き取り国に対して、引き取り停止(ゼロ)を要求している。イラン原油の最大の輸入国、中国は輸入を継続する姿勢を示しているが、米国の強硬姿勢を前に中国の、そして他の主要輸入国の引き取りが実際にどうなるか、先を読むことは難しい。

 イランの石油輸出が大幅に低下する場合、それを補填(ほてん)するためサウジアラビアなど余剰生産能力を持つ産油国が増産することになる。また、米国のシェールオイルも70ドル前後の油価に刺激され、増産が続く。

 しかし、イランの石油輸出が大幅に低下すれば、そして、ベネズエラなど他の産油国の供給減少が加速すれば、需給が著しく逼迫(ひっぱく)する可能性がある。またサウジアラビアなどの増産によって、何とか需給が表面的に均衡したとしても、その時には、まさに増産によって余剰生産能力が市場から失われる状況となっている。

 しかも、イランの石油輸出が大幅に低下する場合、イランの国内経済は非常に厳しい局面を迎え、保守・強硬派の台頭を招くなど、政治状況の安定も課題となる。その結果、イラン内外をめぐる地政学リスクは大きく高まり、核開発問題や石油輸出の大動脈である地域海峡の安全通行問題をめぐり緊張感が高まる状況となる可能性がある。

 この時、市場安定の要、余剰生産能力が失われていることの意味は大きく、油価が大きく上振れする展開が生じ得る。需給逼迫化で油価は80~100ドルへ、そこに重大な地政学リスクの発生が重なれば100ドルを大きく上回る展開の可能性も否定はできない。

 ◆貿易戦争で需要減も

 逆に、原油価格を下振れさせるリスクとしては、貿易戦争の悪化が世界の注目を集めている。トランプ大統領は、中国を知的財産権の侵害で強く非難し、500億ドル相当の中国からの輸入物品に2段階に分けて追加関税25%を賦課することを決定、実施している。

 中国は、対抗措置として同額の米国からの輸入物品に25%の追加関税を賦課、一歩も引かない姿勢だ。米国は追加関税の対象を2000億ドルまで拡大する考えを示すなど、貿易戦争激化の先行きも不透明である。米国は国家安全保障を理由として、鉄鋼・アルミ製品への追加関税を欧州連合(EU)、日本、カナダ、メキシコなどに賦課し、ここでも貿易戦争が展開されている。

 貿易戦争の激化は、世界経済減速をもたらし、中でも、米国・中国経済を直撃する。米中間の報復関税が極端に悪化する場合、成長率が米国約2%、中国約3%低下、両国の石油需要が合計日量50万バレル低下する可能性もある。この場合、国際石油市場は供給過剰に転じ、原油価格が50ドル前後まで下落する可能性も考えられている。

 現在、70ドル前後で推移する原油価格だが、今年後半にかけて大荒れの展開になる可能性がある。その主要な原因となりうるのが、イラン問題と貿易戦争であり、ともにトランプ大統領の政策が今後の展開の鍵を握る。まさに“トランプ要因”に原油価格が翻弄され続ける状況が続くことになろう。(日本エネルギー経済研究所常務理事・小山堅)

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【プロフィル】小山堅

 こやま・けん 早大大学院修了。1986年日本エネルギー経済研究所入所。2011年から現職。英ダンディ大学留学、01年博士号取得。専門は国際石油・エネルギー情勢分析など。59歳。長野県出身。



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