里山まるごとホテル 農村流 お・も・て・な・し 石川県輪島市の三井地区(日本農業新聞)



 フロントはかやぶき屋根の古民家、廊下はあぜ道──。石川県輪島市に今年、地域一帯を一つのホテルと見立てて客を迎え入れる「里山まるごとホテル」が誕生した。食事の提供や農家民宿の運営など、地域住民ができることを補完し合いながら客をもてなす。農業と観光を組み合わせて農村の付加価値を高め、能登の豊かな自然を次世代につなげていく構想を描く。政府が推進する滞在型観光「農泊」のモデルとしても注目を集めそうだ。(斯波希)

地域住民が協力 「農泊」モデルに

 世界農業遺産に登録された能登半島の小さな町、輪島市三井(みい)地区。町の入り口には、築150年のかやぶき屋根の古民家が、訪問客を迎え入れるようにたたずむ。今年4月にオープンした「里山まるごとホテル」の“フロント兼食堂”だ。

 客は田舎に帰ってきたような感覚で、畳の間や縁側で食事をしたり昼寝をしたりと思い思いに過ごす。縁側の先には田んぼが広がり、夏の青々とした稲や秋には黄金色に実る稲穂など、季節ごとの農村風景を楽しめる。

 予約をすれば、ガイド付きで集落を巡るサイクリング(4000円~)や和紙すき(500円~)、農家民宿での宿泊も体験できる。拠点となる古民家「茅葺庵(かやぶきあん)三井の里」には、月に700~800人が訪れる。

 運営は、同市の元地域おこし協力隊が今年2月に設立した「百笑の暮らし」。代表を務める東京都出身の山本亮さん(31)は「三井の暮らしの形を伝え、自分と同じようにファンになってくれる人を増やす。人と里山の関係が生まれる場所にしたい」と力を込める。

 食堂で使う食材の提供や調理などには、山本さんの思いに賛同する地域住民が積極的に関わり、ホテルを盛り上げる。農家民宿など一つの施設で完結するのではなく、住民が協力し合うことで、無理なく客を受け入れる仕組みができつつある。

 かやぶき屋根に使うカヤの生産や農産物加工などに取り組む農家ら約50人でつくる「みい里山百笑の会」の西山茂男会長は「今、まさに滞在型の観光に注目が集まっている。ありのままの暮らしを見てもらい、収入につなげることが、過疎が進む地域の生き残り方になってくる」と展望する。

 里山まるごとホテルでは今後、宿泊場所となる古民家や農家民宿の整備、ホームページの多言語対応などを進め、訪日外国人(インバウンド)を含めた国内外に里山の魅力を発信する考えだ。

日本農業新聞



【関連記事】

Related Post



コメントを残す