トランプ氏はあの「ヒトラー」の再来なのか(東洋経済オンライン)



7/30(月) 15:00配信

東洋経済オンライン

 トランプ米大統領のような現代のデマゴーグ(扇動家)をヒトラーに例えるのは褒められたことではないかもしれない。ナチスドイツの本当の恐ろしさを矮小化することにもなりかねないからだ。だが、次のような問題を考えるうえでは役に立つだろう。それは、民主主義が真に危機的な状況に陥るタイミングをどう見極めるのか、という問題である。

 トランプ氏は同盟国を侮辱する一方で独裁者を褒めたたえ、独立したメディアを「人民の敵」と呼んでいる。米国の大統領がこのような言動に出ると、数年前に誰が予想できただろう。しかし、今ではこれが現実になっている。手遅れになる前に警鐘を鳴らすとしたら、そのタイミングはいつなのか。

■現実から目を背けることの恐ろしさ

 イタリアの作家、ジョルジョ・バッサーニの『フィンツィ・コンティーニ家の庭』は、この問題を扱った名著だ。ファシズム時代のイタリアに生きる上流階級のユダヤ人を描いた作品である。作品中のユダヤ人は快適な生活を当たり前のように享受しているが、ゆっくりと、少しずつ、社会の締め付けは強まっていく。

 だが、彼らは現実から目を背け続けるのだ。語り手の父はファシスト党員にすらなる。ユダヤ人が強制収容所に送られるようになってようやく身の危険を悟るが、時すでに遅し──。

 ドイツ生まれのジャーナリスト、セバスチャン・ハフナーも、ナチスの独裁は少しずつ凶暴化していったと回想録につづっている。当時、ハフナーはドイツで法律を学んでいたが、ナチスでもなかった仲間内の学生が人種法や憲法停止といった法改正を次々に受け入れていくのを目撃する。一線を越えたとは誰も思わなかったようだ。

 現在の状況には、1930年代の欧州を思い起こさせるものがある。当時のドイツでは、資本家の多くがヒトラーに不快感を抱きつつも、経済的な恩恵をもたらしてくれる以上はうまく共存していけると考えていた。保守本流の財界人から見れば、ヒトラーは粗野な新興政治家にすぎない。財界の力をもってすれば、簡単に操れる。そう高をくくっていたのだ。

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