西日本豪雨、ディオ真備店の有言実行 大惨事の修羅場で企業理念を実践、復興のシンボルに(SankeiBiz)



 多数の犠牲者を出した今回の西日本豪雨。まだ避難所生活を強いられている大勢の被災者がいる。酷暑が復興作業を遅らせている。特に被害が大きかったのは岡山県倉敷市の真備町地区、同町の半数以上の世帯が泥水に浸かり、大勢の犠牲者を出した。その真備町で、自らも壊滅的な被害を負いながら、1週間で店を復活させて復興のシンボルとなっているスーパーがある。それは西日本を中心に140店の食品ディスカウントスーパーを展開するディオのことだ。(実業家・平松庚三)

 その真備店を濁流が襲ったのは7日の早朝だった。泥水は瞬く間に天井近くまで達した。当時店内にいた客は店員に誘導されて屋上に避難し自衛隊のボートに救助された。が、店は完全に水没した。

 9日には水が引いた。だが、店内は悲惨な状態になっていた。8000アイテムの商品、備品、器具、陳列棚、全てがヘドロにまみれ悪臭を放っていた。この状況を見て店員たちは絶望的になっていたが、寺田店長は直ちに店の早期再開を決意、本社に支援を要請した。寺田店長には自分の店が地域のライフラインを支えているという自負があった。直ちにディオを運営する大黒天物産の本社やグループ会社から役員も含めた応援が来た。取引先各社も大勢の社員を送り込んでくれた。

 奇跡の復活と呼ばれるドラマが始まったのはこの瞬間からだった。総勢200人の大部隊が悪臭のするごみの山と闘った。日中は35度を超える炎天下でほぼ手作業で腐敗した商品など全てを2日間で店内から除去した。

 次の日、水も電気も正常に戻り清掃と洗浄が始まった。ガラーンとした広い店内の隅々まで2日間かけて丁寧に洗浄した。特に食品を扱う立場上衛生面からも洗浄は重要だった。店内洗浄後、さらに2日かけて商品を搬入した。在庫も全て失ったため商品は3000点しかそろわなかったが、仕入れ先が優先的に緊急必要商品を回してくれた。とりあえず、おにぎりしか食べていないであろう地域の人々のために弁当、総菜、揚げ物を大量に用意した。新鮮な果物や水、トイレットペーパーも山積にした。

 14日の朝、近隣の人々はディオ真備店にアドバルーンが上がっているのを見て驚いた。赤いアドバルーンには「こおり・トイレあります」、青いアドバルーンには「がんばろう・まび」のメッセージが掲げられていた。数日間、鬼のように働いた社員は空を見上げて涙ぐんだ。

 朝9時、道路にはまだがれきとヘドロがあふれていたが、ディオ真備店は何事もなかったように開店し客を迎えた。ヘドロの撤去作業を開始以来わずか6日目の朝だった。続々と笑顔の客がピッカピカの店内に入ってきた。寺田店長も本社役員とともに入り口で客を迎えた。

 大黒天物産が唱える企業理念、日常五心では「今日、私はお客さまを大切にします」をうたっている。数多くの企業が同じように顧客第一をお題目に唱えている。だが、今回、ディオ真備店は同社を襲った未曽有の大惨事の中で同社の企業理念を有言実行して見せた。

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【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長(現職)。他にも各種企業の社外取締役など。72歳。北海道出身。



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