新興国に通貨危機懸念 米利上げで資金逆流 G20でも議論(産経新聞)



 今回のG20会議は、今春以降に一部の新興国で見られる急激な通貨の下落についても議論した。米国などで金融緩和政策を手じまいする利上げが進んだ結果、新興国に流れていた緩和マネーが米国などに戻る“逆流”が起き始めているためだ。市場が過剰反応すれば新興国の通貨が軒並み暴落する通貨危機にもつながりかねず、世界経済に警戒感が広がっている。

 新興国通貨の下落については、麻生太郎財務相もG20会議の中で「世界金融市場のリスクとなり得る」との認識を示した。

 通貨の下落はG20が開かれているアルゼンチンでも起きている。ブエノスアイレスで小売店を営む男性(26)は「通貨は下がり続けていて、景気は最悪だよ。(国民的飲み物の)マテ茶の値段も去年の30~40%くらい上がっている」と頭を抱える。

 アルゼンチンの通貨ペソは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに伴いアルゼンチンから資金を引き揚げて米国に移す動きが加速し、5月ごろから急落。昨年7月には1ドル=17ペソ程度だったが足元では27ペソ台で推移し、1年で6割近く値下がりしている。

 「先進各国の中央銀行が極端な金融緩和政策を行ってきた反動が、政治リスクの高い国や財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)な国を中心に顕在化し始めている」。帝京大の宿輪(しゅくわ)純一教授はそう語る。

 2008年のリーマン・ショック以降、世界の中央銀行は経済を支えるために政策金利を押し下げる大胆な金融政策を実施。その結果、各国の投資マネーは金利の高い新興国の通貨や株などに流れ込んでいた。だが、米国の景気が回復基調に乗ると、FRBは15年から段階的に利上げを開始。新興国に流れていたマネーが米国に戻り始めている。

 通貨安は輸入品の値段を引き上げてインフレにつながるほか、通貨安を食い止めようと政策金利が引き上げられることで、経済を冷やすきっかけにもなりかねない。通貨の下落が連鎖することで影響が世界経済へと波及することもあり、1994年のメキシコ通貨危機や、97年のアジア通貨危機も米国の利上げが、世界的な混乱につながった。

 明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「今のところ深刻化している状況ではない」と話す。過去の通貨危機の反省で、新興国も外貨準備を増やすなど対策を講じているからだ。ただ、「市場が過剰反応し売りが売りを呼び、深刻な問題を抱えていない国まで売られ始めると状況は変わってくる」(小玉氏)という。

 今後は米国だけでなく欧州中央銀行(ECB)も利上げを始める。世界経済を混乱させないよう、どうかじ取りするか、G20の指導力が問われている。(ブエノスアイレス 蕎麦谷里志)



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