トイレの「汚れ」と「水アカ」同時に付着防止 LIXIL「アクアセラミック」(産経新聞)



 「キレイが100年続く」がキャッチフレーズのLIXILの衛生陶器「アクアセラミック」。トイレの最大の悩みである「汚物」と「水アカ」の付着を同時に防ぐことができるのが売りだ。平成28年4月に主要トイレシリーズ「SATIS(サティス)」に採用し、海外展開も開始。発売以来、同社のトイレの売上高を約10%かさ上げする立役者になっている。

 「おー、すごい」-。便器内の色を付けた油がみるみる洗い流される様子にどよめきが起きた。

 製品化前の完成品を他部署の社員にお披露目する社内展示会。アクアセラミックを開発したマテリアルサイエンス研究所の奥村承士研究員は、便器に対して“目が肥えた”社員らの反応に「これまでの苦労が一気に報われた瞬間だった」と振り返る。

 トイレの汚れの解決に向けたプロジェクトチームの発足はINAX時代の9年。翌年には汚れの原因が、過剰な掃除による陶器の「キズ」、ヌメリのもととなる「細菌の繁殖」、そして陶器表面に付着する「汚物」と「水アカ」の4つに大別できることを突き止めた。特に根本原因の水アカについては地道な研究を積み重ねた。

 そもそもトイレに衛生陶器が使われているのは表面が水になじみやすく、付着した汚物の下に洗浄水が入り込み、汚れを洗い流せるためだ。しかし水になじみやすい性質は、逆に水アカを生み出す原因にもなっていた。

 水アカ発生は、親水性をもたらす陶器表面の水酸基(OH基)と、水道水中のシリカ(ケイ酸)と呼ばれる成分が化学結合することで始まる。当初は表面がザラザラになるだけだが、次第に汚れがこびりついて黒ずんでしまう。いったん付いた水アカはブラシでこすっても落ちない。

 同社は解決策の一つとして11年に「プロガード」と呼ばれる技術を開発。陶器表面の水酸基を撥水(はっすい)性の素材でコーティングし、シリカとの化学結合を防止する技術だ。ただ、水アカの固着は防げても、汚れが付きにくいという陶器本来の持ち味を犠牲にしている難点もあった。

 25年8月にプロジェクトチームに着任した奥村さんが取り組んだのは親水性素材で「水アカ」の固着を防ぐ研究だ。

 奥村さんは入社以来、浴槽や洗面器向けの繊維強化プラスチック(FRP)の配合・成形技術の研究に携わってきた。樹脂にガラス繊維や添加剤などを混ぜて一体成形するFRPの技術を陶器に応用すれば、表面に水酸基が露出せず、しかも親水性を高めた陶器ができるかもしれない。

 その狙いは的中。添加剤の選定など長年培った先人たちの財産を生かしながら試行錯誤を続け、超親水性の表面構造を持ち、水アカの固着を防ぐ陶器の開発に成功。「アクアセラミック」が誕生した。

 何千回にも上るテストも大変だったが、奥村さんが最も難儀したのが社内のトイレで行った試作便器のモニターテスト。「用を足した後の便器を自動でカメラ撮影し、そのモニターをチェックするんですが、当初は食事ができませんでした」と屈託なく笑う。奥村さんの次の開発目標は掃除を全くしなくても清潔性、快適性が保てる陶器の開発だ。(小熊敦郎)

 アクアセラミック LIXILが開発した新しい衛生陶器。表面の親水性を保って汚れを付きにくくしながら、水アカの固着も防ぐ技術を実用化した。トイレ「SATIS(サティス)」シリーズに加え、洗面化粧台やトイレの手洗い場などへ用途を広げている。



Related Post



コメントを残す