特産PRへ“奔走” 交通安全看板 飛び出し坊や 米、牛、馬、酒…七変化!(日本農業新聞)



 道路脇に立つ交通安全看板「飛び出し坊や」が本来の役割とは違う世界に“飛び出し”、食や地域のPRに一役買っている。45年前に滋賀県で誕生したとされ、以来、交通安全を啓発する看板として全国各地で活躍してきた。最近では前掛け姿の米穀店の店員や日本酒を手に持つ僧侶、乳牛の着ぐるみなど、多様な姿に変身。農産物直売所や米穀店、農家レストランなどの広告塔としての役割を担っている。(前田大介)

滋賀発祥、各地で活躍 SNS通じ集客効果も

 飛び出し坊やは、1973年に旧八日市市(現東近江市)社会福祉協議会が、交通死亡事故から子どもたちを守ろうと、同市の久田工芸に看板製作を依頼したのが誕生のきっかけとされる。同社製の正式名は「とびだしとび太」。通常の姿は赤い上着に黄色いズボン、髪を横分けにした少年だ。今にも道路上へ飛び出しそうな雰囲気で、注意を喚起している。

 2016年には、県立琵琶湖博物館が県内で飛び出し坊やの“生息調査”を実施。地元企業と連携した文具などのキャラクターグッズも販売される。年間500体余りを手作りする同社の久田泰平代表は「特別注文が増えだしたのは4、5年前から」と振り返る。

 東近江市の地域おこし協力隊の比嘉彩夏さん(30)は今年、444年ぶりに復活した酒「百済寺樽(ひゃくさいじだる)」のPRのため、僧侶姿で一升瓶を持った飛び出し坊やを作り、同寺のバス停と酒造好適米を栽培する水田に設置した。「飛び出し坊やは地域で知らない人はいない。人気にあやかり、日本酒の人気も不動のものにしたい」(比嘉さん)と意気込む。

 地元産米の発信力の強化に飛び出し坊やを起用するのは、JAや農家、行政などでつくる東近江市水田農業活性化協議会だ。約30万円をかけて「東近江米」の米俵を担ぐ飛び出し坊やを同社に依頼。2月から市内の4JAや農産物直売所、道の駅などに10体が並ぶ。

 飛び出し坊やは県外の農産物イベントでもPRに活用されており、同協議会事務局は「主食用米の激しい産地間競争を勝ち抜くための力にしたい」と期待を寄せる。

 農家もこの動きを歓迎する。市内で約4ヘクタールの米を生産する藤田清一郎さん(76)は「見ていて楽しいし、農家にとって励みになる」と話す。

 3年前から乳牛の姿を模した飛び出し坊やを置くのは、同市で農家レストランなどを営む池田牧場。当初は交通安全看板として利用していたが、来店者らがインターネット交流サイト(SNS)に投稿し拡散。年間来場者約14万人を誇る同牧場にとって「頼もしいキャラクター」(池田義昭代表)と存在感は大きい。

 他県では、「上げ馬神事」で知られる三重県桑名市の多度大社近くの車久米穀店が、馬に扮(ふん)した飛び出し坊やを昨年10月に登場させた。以来、飛び出し坊やを見るために県外からも来店者が集まる。石川信介店長は「集客だけでなく、地域活性化にも役立てたい」と力を込める。

地域創生に一役

■コンテンツ産業や地域活性化政策に詳しい立命館大学映像学部の中村彰憲教授

 飛び出し坊やは、公金を投じて作られた「ゆるキャラ」とは一線を画す。自然発生的に広がり、地域で愛されてきた全国的に珍しいキャラクターだ。寛容に受け入れバリエーションを楽しんでいる点も珍しく、注目に値する。農産物のブランド力を高めるだけでなく、やり方次第では地域創生にもつながる力を秘めている。

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