農業女子の漫画次々と 都会から農村へ移住 農作業や物作り奮闘(日本農業新聞)



 都会の息苦しさに疲れた女性が農村に移り住み、農作業や物作りに励む姿を描く漫画が、次々と誕生している。必要なものを自ら調達する生活に苦闘しながらも新鮮さを感じ、人々の温かさに支えられる主人公の生き生きとした姿を描く。食材や生物、建物の写実的な描写も、作品の魅力を高めている。(橋本陽平)

現場訪ね物語に深み 鳥取出身武田さん

 月刊の少女漫画雑誌『ココハナ』(集英社)の7月号で始まった連載は「Turning(ターニング)」。田舎のシェアハウスで自給自足生活を送る男女を描く作品だ。職を失い彼氏にも振られた主人公が、鳥取県の農村に移住して日々の暮らしに奮闘する。

 兄貴肌の管理人、心優しいイケメン猟師との共同生活を通じ、農業の厳しさや食の大切さを学んでいく。「アナグマは果物も食べるから、甘くておいしいんだよ」「帰ってこんけえ心配したがあ!」──。玄人はだしの野生鳥獣の肉(ジビエ)の豆知識や、時折、飛び交う鳥取弁が臨場感を高める。

 作者は同県出身の武田愛子さん(32)。鳥取大学で農村学を学び、地元の広告代理店に2年勤めたが、漫画家の夢を捨てきれず上京。27歳でデビューした。都会のおしゃれな恋愛模様を描く作品が多い少女漫画の中では異色の、独自路線が際立っている。

 「自然の恵みを大事にする人々の丁寧な暮らしを描きたい」と話す武田さんの原点は、大学時代の農村フィールドワーク。当時指導した同大地域学部の筒井一伸教授は「ある時、小川の水流を利用して栗の渋皮をむく道具を見つけ、住民にインタビューしていた。地域の何気ない生活の一こまに目が行く学生だった」と振り返る。

 今も恩師や農家仲間のつてを頼り、農村へ取材に出向く武田さん。「10聞いた話から1のエピソードを膨らませ、読ませる物語に落とし込む。実際に人と出会って同じ空気を吸うことで、話に深みが出る」と考えている。

 売れっ子漫画家への道は厳しい。東京在住時代、漫画スクールで共に漫画家を志していた50人の同期でデビューしたのは、武田さんを含めて2人だけ。武田さんはこれまで同雑誌で読み切り作品の掲載にとどまっていたが、渾身(こんしん)の“農業ネタ”で念願の3話連載のチャンスをつかんだ。タイトル「ターニング」のように、人生の転機となる作品を目指す。

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