九州北部豪雨1年 果樹産地 新たな一歩 柿からイチゴ農家支え合い 福岡県朝倉市(日本農業新聞)



 昨年7月5日に発生した九州北部豪雨からもうすぐ1年。園地が根こそぎ流失するなど農業にも大きな被害が出た福岡県朝倉市で、果樹農家が新たな品目の栽培に活路を見いだしている。柿農家は、復旧工事が遅れている上、新たに植えても収穫までに数年かかる。その間の収入をイチゴなど別の品目で確保する。地域の農家やJAが連携し、後押し。地域一丸となり復興へ歩みを進める。(松本大輔)

 「100点満点。うらやましいくらいだ」。同市杷木地区。柿農家の塚本悟さん(52)が今年から栽培する、イチゴの苗が順調に育つ。太鼓判を押すのは、指南役となるイチゴ農家の林浩義さん(57)。熱心な指導に、塚本さんは「心強い」とうれしそうだ。

 同地区では1年前、山が崩れ、川の形が変わるなど、農村風景が一変。塚本さんも当時、手掛けていた山手の柿の園地3ヘクタールの半分が流失したり、土砂で埋まったりした。園地に続く農道も多くが寸断された。直接の被害を免れた場所も含め収穫量は激減。収入減は1000万円近くに上った。

 山間部の園地は今も手つかずのまま。塚本さんの例に限らず「被害が広範囲にわたり件数も膨大で、工事は未着手」(市農林商工部)なのが現状だ。離農するケースもあり、農業収入の確保が課題となっていた。

 塚本さんは、地元のJA筑前あさくらが新たな品目を提案する資料などを基に、園芸品目に挑戦すると決めた。安定した収入が見込め、作業負担が比較的軽い高設栽培のイチゴに着目。地区の平場に農地を確保した。

 栽培経験のない品目だが、林さんが塚本さんの背中を押した。林さん自身も1年前、津波のような土砂と流木でイチゴが壊滅。その後、一足早くハウス再建のめどが立ったが、「他の人が大変なままなのに、自分だけいいのか」と、負い目のような気持ちが募った。地域として復興を進めたいと考え、「イチゴを教えることならできる」と、塚本さんに協力を惜しまない考えを伝えた。

 2人はともに9月の定植を目指す。新たなハウス10アールの着工を間近に控える塚本さんは「残った柿とともに、イチゴを早く軌道に乗せたい。ゼロからの挑戦だが、待ち遠しい」と意気込む。他の被災農家にも品目転換を模索する動きが広がる。「イチゴ団地なんて、できたらいいね」。農家同士の協力で、産地は新たな一歩を踏み出す。

 復旧が遅れ、経営再開を見通せない農家もいる中、いち早く再起するのに後ろめたさを感じるとの声もある。それでもJAは「塚本さんや林さんの前向きな動きは、他の人に勇気を与える」(災害復興対策室)と受け止める。復旧に時間がかかる場合などは別の品目の栽培も提案、代替農地の確保や技術指導で支え、他の地域や業種への人材流出を防ぎたい考えだ。

 JAの深町琴一組合長は「復旧をただ待つのではなく、被害を免れた農地を活用して農家の収入を確保する。一日も早く農業ができる体制を整える」と力を込める。



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