テレビ局苦悩、高騰するW杯放映権料 「単独放送」の歴史持つテレ東は中継断念(SankeiBiz)



 監督交代のゴタゴタ劇にテストマッチの惨敗から一転し、サッカー日本代表チームはランキングでは格が上のコロンビアを撃破した2018FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会。続くセネガル戦も2度のリードに追い付く粘り強さを見せ、勝ち点4を挙げて決勝トーナメントへ王手をかけた。その戦いぶりは日本列島を熱狂させた。(帝京大学准教授・川上祐司)

 本大会の予選リーグ3試合をテレビ放映するのはNHK(コロンビア戦)、日本テレビ(セネガル戦)、そしてフジテレビ(ポーランド戦)の3局である。2戦目のセネガル戦を放送した日本テレビは深夜にもかかわらず30.9%(関東)と高い視聴率を示した。キックオフを遡(さかのぼ)ること約2時間前の24日午後10時から25日午前2時30分までの長時間番組で放送し、人気お笑いタレントやアイドルらを起用した番組内容は試合中継をメインとするものの、いささかドキュメントからバラエティー色が強かったように思うのは筆者だけだろうか。

 ◆露大会は600億円に

 決勝トーナメントまでの全64試合を生放送するテレビ局とその試合数は、NHK総合が32試合(決勝トーナメント8試合)、日本テレビ系は8試合(決勝トーナメントなし)、TBS系は8試合(同4試合)、フジテレビ系は8試合(決勝トーナメントなし)、テレビ朝日系は8試合(同4試合)である。

 確実に日本代表チームが出場する1次リーグの試合が放送される2局以外のTBSとテレビ朝日は決勝トーナメントの放送を4試合担当する。果たして各社の思惑と採算はいかがなものか。神にも祈りたい気持ちだろう。

 さて、この民放各局にテレビ東京がないのに気付いている視聴者はどれくらいいるだろうか。実は同局は1970年のメキシコW杯と74年の西ドイツW杯を単独で放送した歴史を持つ。そのときの放映権料も8000万円から2億円に高騰するものの、同社は単独でFIFAから購入して世界最高峰のスポーツイベントとはいえ、当時わが国では人気のなかったサッカーを伝えた功績は大きい。その後も放映権は大会ごとに高騰し、本大会では600億円といわれている。

 ◆テレ東は中継断念

 既に1局で購入できる金額ではなく78年からアジア太平洋放送連合(ABU)に、2002年からはジャパンコンソーシアム(JC)が電通経由で購入。前回ブラジル大会では放送権料総額2000億円のうち25%がJCだという。この高騰する放映権料に民放各社は10年南アフリカ大会から赤字を計上する。そして本大会でも赤字確定との噂が飛び交う中でテレビ東京はついに中継を断念した。今回の長時間番組の編成は、既存各社の採算に向けた戦略であろうか。「コマーシャル枠を増大させてタイムセールスを強化するが、その番組セールスは大手広告代理店の独占のようだ」(関係者)という。わが国特有のメディアスポーツビジネス構造が見て取れる。どこかで歯止めが必要ではないか。

 週末になるとわが国では多くのスポーツでにぎわっている。先週末もFIFAワールドカップはもちろんのこと、ラグビー日本代表戦に陸上日本選手権などが開催された。まさに代表戦はテレビ局にとってキラーコンテンツになりつつある。大学スポーツもその一つであろう。

 この輝かしい場所で活躍をしたいと願う若者たちが多く存在するが故に不幸な事故も発生してしまうのか。イギリスには「スポーツは子供を大人にする」ということわざがある。スポーツを通じてルールやマナー、相手へのリスペクト(敬意)を学び大人へと成長するのである。フットボール発祥のスポーツ母国イギリスでは、スポーツの機能と役割は今も昔も変わらない。メディアスポーツが台頭する昨今こそ代表選手たちの資質と責務が問われている。「日本版NCAA」がその機能を全うすることを願うばかりだ。

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【プロフィル】川上祐司

 かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭をとっている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。52歳。大阪府出身。



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