株主総会「再集中化」への懸念 増える株主提案、分散化にブレーキか(SankeiBiz)



 株主総会が佳境だ。東京証券取引所に上場する3月期決算企業2342社が6月に総会を開く。今年の「最集中日」は28日の木曜日で、全体の31.0%に当たる725社が一斉に開催する。次いで前日27日の437社(18.7%)、26日の361社(15.4%)、先週末22日の359社(15.3%)となっており、この4日間に80%が集中している。(ジャーナリスト・磯山友幸)

 東証などは長年、総会開催日を分散するよう上場企業に要請してきた。同じ日に開催されると個人投資家などが出席できる株主総会の数が限られてしまい、経営者の株主の「対話」が阻害される、という考えからだ。

 かつて、総会屋と呼ばれた人たちが、株主総会に出席して議事を妨害するのを避けるため、企業は総会開催日を集中させることで、総会屋を排除しようとした歴史があった。東証の資料を遡(さかのぼ)ると、2000年には最集中日に84.1%の会社が総会を開いていた。

 その後、厳罰化などで総会屋がほぼ姿を消す中で、企業は総会の分散化を進めてきた。最集中日への集中は08年に50%を下回り、17年には29.6%と3割を切った。

 ところがである。今年は31.0%と再び最集中日の開催割合が増えた。上位4日間の開催も昨年は78.0%だったので、今年は2.0ポイント上昇している。明らかに分散傾向にブレーキがかかっているのだ。

 なぜか。ここ数年来、相次いでいる企業の不祥事と無関係ではあるまい。株主総会では主として社長が議長を務めるが、不祥事を起こせば、一般株主から罵声を浴びせられることになる。日頃は文句など言われたことのない社長にとっては、いたたまれない時間である。できることなら総会集中日に開催して出席株主が減ってほしい、そう考える経営者がいても不思議ではない。

 株主総会をあまり注目されたくない、と考える経営者も増えているのかもしれない。というのも、ここ数年、海外の投資家など大株主から「株主提案」が出される例が増えている。経営者が提案する「会社側提案」とは別に出される議案で、配当の増額など株主還元の積み増しを求めるものや、不祥事を起こしたことを理由に、社長など取締役の再任に反対する議案が多い。

 こうした株主提案は、かつては可決される可能性はまずなかったが、ここ数年の制度改正で、あながちそうとも言えなくなった。機関投資家のあるべき行動指針を示した「スチュワードシップ・コード」の施行で、機関投資家はアセットオーナーの利益を第一に考えて行動することが求められるようになった。年金基金の資金を運用する信託銀行ならば、年金受給者の利益に沿った議決権行使をしなければならない、というわけだ。

 これによって、経営者に白紙委任し、会社側提案に無条件に賛成する動きは激減した。大手の機関投資家が株主提案に賛成する例が増えているのだ。

 株主総会はますます、問題を起こした企業の経営者にとっては「針のむしろ」になっているわけだが、だからといって総会を横並びで開催するというのは姑息(こそく)だろう。株主総会の再集中化が、今年だけの特殊なケースで終わることを期待したい。

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【プロフィル】磯山友幸

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。56歳。



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