一部の私大に欠けた公共性意識…文科省は助成金の大幅カットで改革迫れ(SankeiBiz)



 昨今、私立学校問題ばかりが国会を独占してきた印象を受ける。そこへ、日本大学アメリカンフットボール部の反則プレーが、メディアを賑々しくしたばかりか、大学の経営陣の問題へと突き進みつつある。そこで、私立大学について認識を共有しておく必要にかられる。かくも長きにわたって、なぜ、報道が続くのか、その根幹に迫りたい。(日体大理事長・松浪健四郎)

 私が日体大理事長に就任して丸7年がたつ。就任に際して、最初に復習したのは私立学校法であった。私立大は、いかなる存在なのか、その基本的知識なくしては経営ができないであろうし、自主性を発揮させることができないと考えた。加えて、私立大の「建学の精神」や「独自の校風」を私立学校法は「私立学校の特性」として捉え、国公立の学校とは異なると書く。

 2012年、日体大は北朝鮮へ遠征することとなった。国交もなければ、国が国民に渡航自粛を呼びかける国への遠征には、もちろん外務省は反対した。スポーツに国境はないばかりか、日体大の建学の精神に基づくミッションには、「スポーツを基軸に国際平和に寄与する」とある。ミッションの実践が私立学校法に触れるのか、政府・外務省の通達や公示、告示が大学の自主性と特性を阻むのか、政治判断を仰ぐべきスポーツ交流であったと述懐する。

 かつて、名古屋工業大は、国交のない中国へ卓球選手を派遣した。「ピンポン外交」と評価され、国交樹立の突破口を切り開いた。当時、政府は名工大にペナルティーを与えず、黙視した。スポーツは平和のためのツールになると政府が理解していたのだと、私は判断した。

 そこで、外務省に大学を代表する理事長である私が赴き、つまびらかに説明させていただいた。文部科学省高等教育局、日本オリンピック委員会(JOC)にも連絡を怠らなかった。で、日体大も黙視された。

 私立大は、大学を設置する法人の理事長が代表者である。学校法人の業務執行の諮問機関として評議員会の設置が義務付けられていて、そこでの意見を反映させねばならず、理事会の承認も得なければ運営することができない。

 私立大といえども公教育の一翼を担っている点は、国公立の大学と同様であって「公の性質」を持つ。公共性が求められているのは当然であり、公共性を高めるために常に意識して努力せねばならない宿命を背負っている。

 そこで政府は、憲法違反といわれながらも私立学校に対して助成金を支出する。毎年、約3000億円の血税が私立大に投入されていて、公共性を評価している。私立学校の教職員は、補助金を受けているかぎり、半ば公人としての認識を持たねばならない。だから、問題が生じた場合、国民に報告・説明する責任があることを忘れてはなるまい。

 とりわけ、日大はトップである理事長の記者会見を行わず問題の本質を詳細に語らないため、国民は腑に落ちないとして報道が続いた。トップが国民の前へすぐに出てこないとなると、あれやこれやと詮索されてしまう。このデメリットは大きいばかりか、大学のイメージを悪化させてしまう。何か都合の悪いことがあったのか、国民は容易に納得しない。

 理事会、評議員会が機能していない証左であった。文科省は、学生と教職員の生活や研究に支障を生じさせない範囲で、助成金を大幅にカットすべきである。私大経営者にとって、助成金カットのペナルティーは、「改革せよ」という最大の指導である。文科省の覚悟に期待するしかないかに映る。

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【プロフィル】松浪健四郎

 まつなみ・けんしろう 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。博士。71歳。大阪府出身。



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