将来の利益獲得は経営者の決断次第 企業は「ビジネスの原点」、能力増強投資を(SankeiBiz)



 人手不足で企業の省力化投資が進んでいるが、能力増強投資に消極的な経営者も多く、そのことが部品供給の不足を招き、省力化投資の進展も阻むという「落とし穴」にはまり込むリスクがありそうだ。受注残が増えるだけで出荷が進まないことに「安住」する企業が増えれば、日本の潜在成長率は、0%後半で停滞したままになるだろう。(ロイターニュースエディター・田巻一彦)

【こちらも販売休止に】「白州12年」

 最近、よくある話として耳にするのは、人手不足の状況から脱するため、自動化投資を進めようと機械メーカーに連絡すると、すぐには納品できないといわれ、自動化が進まないケース。機械メーカーに納入している部品メーカーの生産が間に合わず、完成品を出荷できないということが起きているらしい。

 リーマン・ショック前や、さらに遡(さかのぼ)って石油危機の前後なら、受注残が積み上がる状況が長期化しそうなら、生産能力を増強する設備投資が行われ、「欠品」が常態化するようなことはなかったという。

 だが、少子高齢化に警鐘を鳴らす記事が数多く流れ、日本国内の市場規模が「必ず縮小すると多くの経営者に刷り込まれた」とある大企業の幹部は話す。今は需要が多くても、設備増強が終わったころには、市場は縮小し、せっかくの新設備が無駄になるとの警戒感だ。

 マクロ経済の専門家などは、こうした状況は長続きせず、いずれ能力増強投資が動き出すだろうとの楽観論も出ている。しかし、現実に部品不足で設備投資の進展が遅れるようなら、さまざまな分野で「機会損失」が発生し、潜在成長率がジャンプアップするせっかくの機会を失いかねないというリスクにも注目すべきではないか。

 実際、2018年1~3月の民間設備投資は、前期比マイナス0.1%と小幅ながら落ち込んだ。事前の予測は同プラス0.4%だっただけに、一時的な振れですますことができるのか4~6月期のデータを慎重に見極める必要性が出てきたと指摘したい。

 こうした中で注目される動きも出てきた。原酒不足で「白州12年」と「響17年」の国産ウイスキーの販売休止に踏み切るサントリースピリッツが、20年までに180億円を投じ、原酒の貯蔵能力を約2割拡大する設備投資に乗り出す。

 確かに「ハイボール」人気で日本国内のウイスキー市場は、ひところの低迷期を脱し、17年の国産・輸入の販売量は08年の1.9倍まで拡大している。しかし、一方では若年層のアルコール離れはかなり進行しているとのデータもあり、「酒好き」の高齢者が次第に減少していけば、市場の先行きは楽観を許されないかもしれない。

 だが、サントリーは能力増強投資に踏み切った。この「決断力」を他の有力企業も参考にしてはどうだろうか。投資しなければ、将来の利益獲得は望めないという「ビジネスの原点」に多くの日本企業は立ち戻ってほしい。

 受注残の積み上がりを「ニヤニヤ」しながら見守る経営者が増えるようなら、日本経済の「黄昏(たそがれ)」は決定的になってしまうだろう。

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【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターニュースエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。59歳。東京都出身。



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