三菱スタリオンGSR-VR 「ブランド」にはなれず あの時代を駆け抜けたクルマたち(日経トレンディネット)



日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2007年11月15日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

【関連画像】シリウス・ダッシュ」と名付けられた直列4気筒+ターボ・チャージャのエンジン。バルブ機構に特徴があった

●ブランド力を得るためのモデル

 いまではスタイルはおろか、その名前さえ思い起こされることの少ないクルマ。ポルシェ911などと比較する気はないけれど、それにしてもつくられては消えていくクルマ、それも一時はそのブランドを代表するフラッグシップのような役割を与えられたクルマが、記憶にすら残っていないという事実は、やはり少し考えさせられる。

 いつだったか、「パワー・ブランドの本質」(ダイヤモンド社)を著わした東京大学の片平秀貴教授に「ブランド力」というレクチャーを受けたことがある。ブランドには大きな力があり、そのパワー・ブランドの法則のひとつは一貫性、まさしく継続の力が要るというところが印象に残っている。

 クルマの魅力のひとつはブランドだと主張する小生にすれば、クルマがこののちどの方向に向かうのか、ということとも関連してくるものではないか、と思ったりするのだ。

 閑話休題、三菱スタリオン、1982年に登場して当時の三菱のフラッグシップのようなポジションにあったモデルである。ちょっとスポーティなスタイリングで、ちょっとパワーのあるエンジンを搭載し、横文字のズラズラ並んだネイミングを与えれば看板になる、という当時の傾向をよく反映したモデルだ。

 それも、先陣を切ったのではなく、ようやく三菱もその種のモデルを出したか、とそんな印象を抱かせたものだ。

 採り上げるのはスタリオンGSR-VRという1987年のモデル。ブリスター・フェンダなどで、いかにもと雰囲気を盛り上げた懐かしい1台である。

いくつかのわざが込められたエンジン「シリウス・ダッシュ」

 エンジンは「シリウス・ダッシュ」という謳い文句のついた、これまた当時の高性能でありながら、燃費や排出ガスのクリーン対策などにも配慮していることを主張したものとなっていた。基本的には2.0L級の直列4気筒SOHC+ターボ・チャージャだが、そこにはいくつかの「わざ」は込められていた。

 最大の特徴はバルブギア・システムに3バルブ+2ステージというのを採用していること。そればインテーク2バルブ/エグゾスト1バルブの3バルブに、インテーク側をそれぞれ吸気ポート形状、バルブ径、バルブ・タイミングを個別にした2ステージにして、パワーと経済性とを兼ね備えさせようというものだ。

 つまり、プライマリー吸気ポートは細く、オーバーラップも少なく、いわゆる低回点向き、燃費重視のセッティング。対してセカンダリーは高回転、パワー重視のもので、ポート径もプライマリーの倍、バルブも中空構造を採用するなど、高性能エンジンとしてのスペックが用意されていた。

 「シリウス・ダッシュ」のダッシュは、 Dual Action Super Head の頭文字だという。なんともこういう固有名詞をつくり出すのは得意だが、いま振り返ってみると調べねば意味が解らなかったりする。

 せっかくの新技術も時に、薄っぺらなネイミングで霞んでしまったり、はたまた、その場限りでブランドになり得ないのではもったいない。

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