「ふるさと納税」 10年の転機 地域元気に―趣旨浸透 大分県宇佐市佐田地区(日本農業新聞)



 自分が住んでいる地域ではなく、古里や応援したい地域を選んでお金を寄付する「ふるさと納税制度」が始まって30日で10年を迎える。豪華な返礼品競争の加速化に異論が出る一方、総務省によると、地域を応援したい気持ちで寄付する都市住民と農山村を同制度がつなげ、過疎地再生の財源にする自治体が増えてきた。農山村と関わる「関係人口」を育むなど、ふるさと納税が転換期を迎えている。(猪塚麻紀子、尾原浩子)

つながり重視 使途選び寄付 手紙添え返礼

 地区の特産品を作る煎餅を焼く機械、子どもたちが使うタブレット型端末、住民が集う施設の手洗い場──。いずれも、大分県宇佐市の住民らでつくる地域運営組織「佐田地区まちづくり協議会」が、ふるさと納税の寄付金を使って購入や設置したものだ。

 協議会事務局長の河野好昭さん(50)は「都会にいても佐田が元気でいてほしいという願いがこもったふるさと納税。ありがとうという気持ちでいっぱい。毎年、地域に役立つ使い方をしている」と笑顔で話す。

 400世帯の同地区。過疎化が進み、小学校は全児童31人にまで減少した。協議会では、地域のにぎわいを取り戻そうと祭りなどのイベントや農道の維持管理、古紙回収などの活動を行う。ふるさと納税は一般財源ではなく別枠にし、地域のために使う。

 寄付者には、返礼品とお礼の手紙などを届ける。寄付をした大分市の会社経営者、土屋和幸さん(65)は「15歳まで暮らした、かけがえのない古里。104歳まで佐田の人に支えられて長生きできたおやじの分も含めて、恩返しをしたい。消滅せずに古里が続いていくのが願い」と思いを明かす。

 同市では、暮らしを守り地域課題の解決に向けた活動を実践する16の地域運営組織が住民自治を担う。ふるさと納税はみそやジャムなど地域の特産品を返礼品とする。寄付金は運営組織の活動資金にする他、子育て支援、都市農村交流などを寄付者が選択できる仕組みを取る。

 2017年度は市全体で3700万円が寄付された。そのうち、運営組織全体への寄付金は636万4005円。佐田地区では20件82万5000円が集まった。

 他の運営組織でも、ふるさと納税は避難所のテレビや祭りの用具の購入、花壇の設置など地域のために使われる。市は「他の自治体に比べ返礼品は金額的に低く見劣りするが、宇佐を思って寄付する人の気持ちを受け取って、地域づくりに使っている」(観光まちづくり課)と主張する。

復興、過疎対策…

 08年4月30日、地方税法に明記されスタートしたふるさと納税。自治体による「返礼品合戦」が問題となった一方、総務省によると、最近では災害の復興支援の他、過疎対策に生かす自治体が目立つ。

 野田聖子総務相は27日、会見で「寄付してくれた人との継続的なつながりを持つことを重視してほしい」と呼び掛けた。同省が今年発行した事例集では農業高校のドローン(小型無人飛行機)を活用した調査研究(北海道遠別町)、雪下ろし代行サービス(秋田県湯沢市)、若者の地元定着支援(山口県宇部市)など、地域活性化に結び付けた66の現場を紹介した。同省によると、地域と寄付者を結び関係人口を育むケースも増えているという。

日本農業新聞



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