「経営意欲低い」に林業者反発 林野庁の資料修正に波紋(日本農業新聞)



 林野庁が森林経営管理法案の国会審議のために配布した資料の表記を修正した問題が、林業者に波紋を広げている。「法案を通すための恣意(しい)的な行為に思える」「経営を現状維持する大切さを分かってほしい」などと林政への信頼を問う声が続出。持続可能な自伐型林業が各地に広がるなど、新たな潮流が芽生えているだけに「現場を踏まえ政策を立案してほしい」と切実な訴えも挙がる。

関心を持つ若者に目を

 同法案は、新たに創設される森林環境税に関連する内容で、手入れが行き届かない森林を市町村が中心となって担い手に集約することが目的。同庁は「8割の森林所有者は経営意欲が低い」と森林の現状を表す資料の中で明記し、法案提出の理由としていた。根拠となったのは2015年度の林業者を対象にした調査。72%が「現状を維持したい」、7%が「規模を縮小したい」と回答していたが、「現状維持」も「意欲が低い」と丸めて表記していたことに野党から批判が挙がり、同庁は24日に表記を修正した。

 修正で問題が表面化し、現場からは林政に不信感を募らせる声が相次ぐ。42ヘクタールで林業を営む高知県佐川町の谷岡宏一さん(25)は「整備できていない山が多い現実はあるが、何とかしたいと思っている人は多い。林野庁はもっと現場と話し合って政策を考えてほしい」と訴える。

 新潟県村上市で100ヘクタールを経営する林業者の富樫勘十さん(62)は「林野庁の数字の捉え方は恣意的に思える。現状を維持したいという声の内実は多様なはず。大規模経営だけでなく、小さな目に届く範囲の林業こそ重要で、そこに若者の関心が高まっている」と語気を強める。

 谷岡さんや富樫さんは大型機械などを使わず作業道を確保して間伐を繰り返し、木材を搬出、販売する自伐型林業を進める。小規模でも持続可能な自伐型林業に共感が広がり、実践者は全国で2000人を超す。

 自伐型林業推進協会の上垣喜寛事務局長は「法案は、森林所有者が意欲がないという思い込みで制度設計されているのではないか。規模拡大しなければ意欲がないのと一緒だと決めつけられている。でも、維持することに価値はある」と主張。「(現状を維持したいと回答した)72%の声を現場に生かすような政策制度を作るよう、政治家や役人には努力してほしい」と切実に訴える。

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