パナソニックの将来語る弘兼憲史さん 「3年経験で35年も続いた…松下電器のおかげ」(産経新聞)



 人気漫画「島耕作シリーズ」を描く漫画家の弘兼憲史さん(70)は、今年3月で創業100年を迎えたパナソニックが松下電器産業だったころ、3年間の勤務経験がある。同社の創業者、松下幸之助の考え方について「今の僕にも浸透している」と漫画家活動に影響を与えたことを明かした。会社員時代のエピソードから、日本家電業界の現状分析、パナソニックの将来への提言を聞いた。(藤谷茂樹)

 「たった3年間の経験から35年も続いている。それも、みんな松下電器のおかげです」。昭和58年から現在も連載が続く「島耕作」シリーズ。大手電器メーカーに入社したサラリーマンが数々のトラブルを克服しながら出世していくストーリーのモデルは、松下電器での会社員経験だ。

 松下電器には45年に入社し、販売助成部に配属された。在籍時、幸之助は会長から相談役となり「社内の廊下ですれ違うときは直立不動になって、会釈していた」。販売店が得意先に配るカレンダーを作成した際、「見本刷りを見せて幸之助さんの許可をもらうが、『これはあんま好かんな』と言われて、部長が青い顔になり、差し替えで大変なことになった」という思い出もある。

 「松下電器の遵奉(じゅんぽう)すべき精神」を唱和する朝会があるが「異様な光景だと思ったが、3年経って自分も大きな声で言うようになっていた」と振り返る。

 それは幸之助の精神に納得し、共感したからだ。幸之助は「適正を欠く価格は高すぎても低すぎても罪悪」と断じるが、弘兼氏は「安売り競争をすると、デフレスパイラルになるということだ。1社が値下げすると、他社が追随して結局は自分の首を絞める」として、教えは現代にも通じると話す。

 「良い製品を送り出すという社会奉仕をした結果、報酬がもらえる」という幸之助の企業観も漫画家としての姿勢につながっているという。「自分の描きたい物を一生懸命に描く。売れるかは考えない。一生懸命描いた結果として、報酬がもらえる」と話す。

 幸之助は平成元年に亡くなった。平成不況と呼ばれた日本経済の冷え込みとともに家電メーカーも凋落。パナソニックも平成13年度以降、何度も赤字に陥り、23~24年度は2年連続で7千億円超の最終赤字を出す経営危機に陥った。

 弘兼さんは「国内だけで成り立ったため、海外に出遅れた。さらに日本製品は高くても品質で売れるという神話を過信した」と指摘する。日本家電メーカーが人口1億2千万人という市場にあぐらをかき、中韓メーカーが性能が劣っても価格競争力で海外市場を広げる間に、技術力も追いついたということだ。

 将来に向けては「家電メーカーといえども他業種に目を向け、多様性を持たないといけない」と提言する。例えば、高齢化社会への対応だ。「高齢化は日本が世界に先駆けて直面している問題。ITや人工知能(AI)を駆使した技術を開発し、中国や米国が高齢化社会になったとき、それを世界に売る」と、世界に先んじて解決策を生み出す必要性を示した。

 さらに世界的な人口増から食糧問題も喫緊の課題になろうとしている。世界的な問題の解決策を導き出すことを「パナソニックの仕事だ」と強調。「他の企業との提携、技術を持つベンチャー企業の買収を通じ、大きな販売網で製品や技術を広めることができる企業だ」として、古巣にエールを送った。



Related Post



コメントを残す