スタンバイOK!! 宇宙で船外活動-金井飛行士(日刊工業新聞電子版)



■宇宙服は“小さな宇宙船”

 こんにちは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の金井宣茂です。2017年12月から国際宇宙ステーションに滞在しており、世界中の研究者から提案されたさまざまな科学実験や、宇宙ステーションの保守に関わる作業を、日々行っています。

 宇宙ステーションを安全に維持していく上で欠かせない保守・点検作業は、地上と同じとなるように気圧や空気に制御されている船内だけでなく、ときには船外の宇宙空間に出て行うこともあります。宇宙服を着て、宇宙ステーションの船外で行う作業は「船外活動(EVA)」と呼ばれます。

 この宇宙服は、宇宙ステーションから空気や電力の供給を受けることなく、独立して宇宙飛行士が活動を行うことができるシステムで、いわば“小型の有人宇宙船”としての機能を備えています。このため、サッと手早く身にまとってハッチの外に出るというわけにはいきません。

■伸びる身長に合わせる

 現在、16日に予定されてる船外活動に向けて、軌道上では少しずつ準備作業が進んでいます。宇宙服は、特大、大、中とサイズがあります。長期に宇宙滞在を続けていると、背骨と背骨の隙間が広がって身長が伸びるなど体形の変化が出ることがあるので、船外活動の前には、必ずサイズ合わせをする必要があります。

 本番と同じように宇宙服に身を包み、内部を加圧してみて、手足の長さがちょうど良くなるように、袖や裾を伸ばしたり縮めたりするのです。

■0.3気圧、エベレストの頂上

 「宇宙服を加圧する」と書きましたが、宇宙服は外気圧よりやや高い圧(約0.3気圧)を常に保つように中を空気(正確には純酸素)で満たして、人間が生存できる環境を維持する仕組みになっています。宇宙ステーションの内部にいるときは、1気圧よりやや高い圧となりますが、船外の宇宙空間に出たときの外気圧はほぼゼロですから、宇宙服の内部はおよそ0.3気圧に保たれます。これは地上でたとえるとエベレストの頂上と同じくらいの気圧なのですが、空気ではなく100%の酸素を使いますので高山病になることはありません。

 宇宙飛行士が呼吸することで減る酸素は、宇宙服の背中についたバックパックに収納された酸素タンクから補充されます。一方、宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素は、特殊な吸着キャニスターで吸収する仕組みになっています。

 このキャニスターの用意も、船外活動に向けての大切な準備作業です。ベイクアウトといって、特別な加熱処理をすることでキャニスターの内部に閉じ込められた二酸化炭素を追い出して、再度使えるようにするのです(船内のキャビンに放出された二酸化炭素は、宇宙ステーションの生命維持システムにより除去されます)。

 酸素タンクとは別に、宇宙服の背中のバックパックには水のタンクが備え付けられています。長時間の作業でのどが渇いたときのため…ではありません。

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