辛子高菜 品切れ 「博多ラーメン」“名脇役”に異変 福岡県(日本農業新聞)



 福岡県名物「博多ラーメン」に欠かせない、「辛子(からし)高菜」の不足が深刻だ。コンビニ各社がおにぎりの具に採用したことを皮切りに、原料のタカナは全国で需要が急増。特に国産原料の引き合いが強い。旺盛な需要に対し、供給量は他品目への切り替えで漸減。漬物メーカーは「長期的に品不足が続きそうだ」と見通す。(金子祥也)

質高い国産争奪 漬物店も対応苦慮

 「当店から高菜が消えました」。福岡市内の人気ラーメン店「博多元気一杯!!」で5月、こんな紙が張り出された。豚骨スープの博多ラーメンに欠かせない辛子高菜は、どの店でも卓上に置く重要なトッピングだ。

 同店はこれまで「スープの味を邪魔してしまう」として紅ショウガやこしょうは一切置かず、スープを引き立てる国産の辛子高菜だけを卓上に置いていた。高菜を出せないのは同店にとって、客足に関わりかねない問題だ。

 中国産なども試食したが、スープに雑味が出てしまうなどラーメンとの相性が納得できなかった。店主の土井一夫さん(57)は「がっかりするお客が多く、いつ再開するのかと毎日のように聞かれ、申し訳ない」と表情を曇らせる。

 国産はタカナ独特の「えぐ味」が少なく、輸入物には替えられないと判断した。土井さんは「不足を受けて中国産を使う店も多いが、今後せっかく農家が作ってくれても、受け入れ先がなくなってしまうと困る。また扱える日を地道に待ちたい」と話す。

 辛子高菜の不足に苦しむのは同店だけではない。漬物メーカーの樽味屋(福岡県春日市)は「取引しているラーメン屋でも置けない店が次々と出てきた」と明かす。ここ数カ月はこれまで取引がなかったラーメン店からも、月に10件以上の問い合わせがあるという。

 同社は「漬物全般の消費が先細りの中、辛子高菜だけが異質だ」と評する。10年前は300トンだった販売量は、現在700トンに膨れ上がった。

コンビニ注目 価格輸入並み 生産者減少

 不足の背景には、ここ数年盛り上がるブームがある。コンビニエンスストア大手3社が相次いで辛子高菜のおにぎりを発売。九州限定だった販売エリアも、一部商品は全国区に広がった。他にもチャーハン、カップラーメンなど、辛子高菜を使った商品は枚挙にいとまがない。

 安全・安心な国産が輸入物並みの価格で手に入るのも、逼迫(ひっぱく)に拍車を掛ける。辛子高菜は国産と中国産原料のものが市場を二分するが、価格は大差ない。鹿児島県内のメーカーは「大手外食チェーンから、辛子高菜を使ったメニューを全て国産に切り替えたいと打診があった」と明かす。

 家庭での利用も広がっている。首都圏で139店を展開するスーパーのいなげやでは2015年に売り上げが1・5倍に急伸。16、17年も前年比を上回ったという。日本最大の料理レシピサイト「クックパッド」(cookpad)での検索頻度も5年で1・5倍超に上昇した。同社は「漬物としても料理の食材としても、家庭に受け入れられている」と分析する。

 需要が拡大する一方、国産タカナは生産者の減少や不作続きなどの理由から、供給量が減少している状況だ。主力産地の長崎県JAごとうは、最盛期だった13年に3700トンあった生産量が今年は約2400トンと、5年で7割以下に落ち込んだ。JAは「冷え込みなど、天候の影響で作柄が悪い年が2、3年続いている」と説明する。

 かつて一大産地だった福岡県JAみなみ筑後では、高齢化による引退やセロリやナスなどの園芸品目に転換する農家が増えて漸減。栽培面積は10年前の3分の1まで減った。JAは「これだけ減っても業者の買い取り価格は1割も上がらない。作り手が出てこない」とこぼす。原料品薄を受けて、鹿児島や大分の一部では、漬物メーカー主導で産地化を進める動きも出始めている。

日本農業新聞



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