“大阪流”起業家育成プログラム、1年半で総額16億円調達(日刊工業新聞電子版)



■資格参加企業、安定経営IPO視野

 大阪市がベンチャー企業を支援する「シードアクセラレーションプログラム」は、2016年6月の始動から約1年半に総額16億円超の資金を調達した。市の支援施設、大阪イノベーションハブ(大阪市北区)を拠点に進める同プログラムは1期当たり4カ月。これまで三つの期間に10社ずつ選定し、資金調達や大企業との事業提携などを後押しした。大阪発の起業を促す市の取り組みを探った。

 シードとは“企業の種”を指す。創業間もない会社が仕掛ける事業のアクセルを踏み、加速させる狙いだ。主な対象は起業前から創業5年ほど、売上高5000万円以内のベンチャー。有限責任監査法人トーマツが同プログラムを運営。ベンチャーキャピタル(VC)20社が起業家の気付きなどを促すメンタリングや、2日間の合宿などを通して事業を磨き上げる。6―9月に実施した第3期は、大企業やVCなどとのメンタリングを計400回以上実施した。

 3期目の事業提携は3件。さらに今後四十数件を見込む。同期の資金調達総額は9億1000万円以上。トーマツの関西地区リーダーを務める権基哲(コンキチョル)氏は「当初設定した3年間の目標額1億2000万円を大きく上回った」と手応えをつかむ。

 第1期に参加したeWeLL(イーウェル、大阪市中央区、中野剛人社長)は、ITを活用した訪問看護の業務支援を手がけ、4億5000万円の資金を調達。早期に新規株式公開(IPO)を計画している。

 同プロを通して、患者の電子カルテやスケジュールを一元管理するアプリケーション(応用ソフト)「iBow(アイボウ)」の機能を拡充。新たに地域の在宅医療と看護、介護の連携を促すサービスの準備を急ぐ。同プロ終了後も「業務提携先からの出向など、人材交流を通じ安定した経営につなげている」(中野社長)という。

■“地の利”武器 伸びしろ大

 第2期のワールドインキュベーター(大阪市中央区、野原智央社長)は、機械設備や資材の商社。製造業が海外の安価な資材を調達したいニーズに着目し、国内企業と海外のサプライヤーをつなぐビジネスモデルだ。

 日本政策金融公庫から、負債ではなく資本と見なされる「資本性ローン」を使い3000万円を調達。今後は「7月に開始したオンライン資材調達サービスで売り上げを伸ばし、半年から1年の間にVCから数億円規模の資金調達」(野原社長)を計画する。同社は全国のVC約15社などと経営戦略の意見を交換し、売り上げ予測に基づいた資本政策を細かく数値化してきた。野原社長は「“鳥の目とありの足”で計画、実行し最善策を作れた」と自信をみせる。

 1、2期は選定企業の20社全てが資金調達に成功した。権氏は資金調達ありきではなく「大阪のベンチャーの独自性を知ってもらうこと」を重視した。ただ、ふたを開けてみると「これまで関西に見向きもしなかったというVCも、採択企業への出資に踏み切った事例もあった」と、想定以上の成果に喜ぶ。

 大阪イノベーションハブが入居するグランフロント大阪は、大阪大学や大阪市立大学、日本医療研究開発機構(AMED)などが拠点を構える。7月には特許庁所管の工業所有権情報・研修館(INPIT)が拠点を開設、中小企業の知的財産に関する窓口として利用を促進している。さらに、開発が進むJR大阪駅北側の「うめきた2期」区域では、関西の研究開発拠点などの技術や人材の連携が進む。

 シードアクセラレーションプログラムは関西に限らず、全国のベンチャーが支援の対象。大阪・梅田は関西交通の要衝でもあり、多様な知見の交流が期待できる。こうした大阪の都市機能を上手に活用しつつ、起業支援の輪へ地域内外の知見をどう取り込むか。地の利を生かす余地はまだありそうだ。

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