ナイキの知られざる誕生秘話はここまで熱い(東洋経済オンライン)



思っている以上に時間は短く、人生は朝のランニングのように束の間であることを、私は痛切に感じていた。だからこそ自分の時間を意義あるものにしたかった。目的のあるもの、創造的で、重要なものに。そして何より……人とは違ったものに。
私は世界に足跡を残したかった。
私は勝ちたかった。
いや、そうじゃない。とにかく負けたくなかったのだ。
そして閃いた。私の若き心臓は脈打ち始め、ピンクの肺は鳥の翼のように膨れ上がった。木々が緑に染まるのを見ながら、私は自分の人生もスポーツのようでありたいと思った。(4ページより)

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■未来への野望

 ナイキの創業者であるフィル・ナイトによる著作『SHOE DOG(シュードッグ)』(フィル・ナイト著、大田黒奉之訳、東洋経済新報社)は、24歳だった彼が夜明け前のオレゴンを走りながら思いを巡らせる、このような描写からスタートする。

 この冒頭の数ページで心をわしづかみにされてしまうのは、未来への野望でいっぱいになった著者の思いがはっきり伝わってくるからである。並走しながら澄んだ空気を吸っているような、さわやかで、熱いリアリティがあるのだ。

 そしてこの日を境に、彼は“馬鹿げたアイデア”の実現のため動き出す。オニツカという会社のブランド「タイガー」のかっこよさに魅了されていたため、神戸のオフィスへ赴き、タイガーのシューズをアメリカで売りたいと交渉するのである。

「みなさん、アメリカの靴市場は巨大です。まだ手つかずでもあります。もし御社が参入して、タイガーを店頭に置き、アメリカのアスリートがみんな履いているアディダスより値段を下げれば、ものすごい利益を生む可能性があります」(39ページより)

 こうした部分だけを引き抜くと、当時からいかにも優秀なビジネスマンだったように思えるかもしれないが、このエピソードには最初からオチがある。なぜならこの時点で、著者にはビジネスの経験がなかったのだから。当然ながら自分の会社もなかったわけだが、そのことを指摘されても、なんとかハッタリで乗り切ってしまう。

「ミスター・ナイト、何という会社にお勤めですか」
「ああ、それはですね」と言いながら、アドレナリンが体中を流れた。逃げて身を隠したい気分になった。

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