「ニュー・シネマ・パラダイス」―旋律の秘密(東洋経済オンライン)



11/9(金) 6:20配信

東洋経済オンライン

 今週は映画のサウンドトラック盤をご紹介したいと思います。『ニュー・シネマ・パラダイス』です。

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 ここには、胸を打つ音楽があります。美しい曲、哀愁のメロディー、可憐な調べ、悲しい響き――。旋律の宝庫です。

 そこで、旋律について考えてみます。そもそも、音楽は芸術である前に物理現象です。日常的に私たちの周りにはさまざまな音があります。音が空気を震わせ私たちの耳に届いて脳が感知します。そして、適切に組み合わされた特定の音の連なりは、神に祝福されるがごとく、心を揺さぶります。音楽の誕生です。

 1オクターブの中には、ドレミファソラシドとシャープあるいはフラットの半音階を合わせて12の音があります。それぞれの音の順列組み合わせにリズムとハーモニーが加わることで豊かな音楽が生まれます。ですが、言うはやすく、実際に心の襞(ひだ)を震わす旋律を生むのは至難の業です。

 ゆえに、音楽に魅せられた人々は音楽の奥義を探ってきました。和声、対位法、管弦楽法など、作曲のさまざまな技法が発展してきました。しかし、胸を打つ曲は、理論だけから生み出すことはできません。言葉にできないインスピレーション、ひらめきが音楽創造の源です。

 『ニュー・シネマ・パラダイス』には思わず涙腺が緩むような旋律があふれています。誰がこんな旋律を作ったのでしょうか。

 映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネです。

 エンニオ・モリコーネは、1928年11月10日、ローマに生を受けます。明日で90歳です。同世代には、すでに鬼籍に入っているマイルス・デイヴィスがいます。

 はっきり言って、モリコーネは天才です。これまでに手掛けた映画音楽は500本以上。モーツァルトが35歳の生涯で600曲以上残したのには及ばぬものの、そうとうな多作です。

 老いてなお、やんちゃな創造力があります。つい最近もクエンティン・タランティーノ監督と組んだ『ヘイトフル・エイト』でアカデミー作曲賞を受賞しています。映画はタランティーノ節です。リアルな暴力と激しいエゴが画面からあふれ出るのです。でも、モリコーネの音楽は画面に負けていません。暴力シーンに抵抗するでもなく静謐な響きで物語に深みを与えています。87歳の作品です。ちょっと驚異的ですね。実は、イタリアの大先輩、オペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディもまた、衰えることなき創造力で晩年に79歳で『ファルスタッフ』という傑作を仕上げています。

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