過熱する相撲報道 なぜ国民の関心が途切れないのか(日経トレンディネット)



『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第18回。

 年末から年始にかけて、日本のテレビで最も長い時間を割いて報じられたのは北朝鮮問題でも国内政治の問題でもなく、元横綱日馬富士の暴行問題をきっかけに噴出した大相撲および相撲協会に関する話題だった。もうかれこれ2カ月以上も続く異常事態が続いている。

 大相撲を巡る報道の是非や好悪は別として、この件がこれほど長く取り上げられる理由はいったい、何なのか。

 表面的な理由は単純だ。「相撲の話題は、視聴率が取れるから」である。同時間帯に複数の局のワイドショーで同じ内容を報じていることも少なくない。それらの番組の視聴率を合計すると、とてつもない数の視聴者が日々、大相撲問題に釘付けになっていることになる。

 こうした報道に嫌気がさしている人も多い。「もっと他に重要な事件があるのに……」「相撲の話題は大して新しい情報がない」などと批判する声も多い。だが、視聴率という総体を民意と捉えれば、現実として国民の関心事であることは否定できない。

 なぜ、特に目新しい情報があるわけでもないのに、多くの人が相撲報道から目が離せないのか。冷静に見れば、実に不可解な現象だ。その理由は、端的にいえばこういうことではないだろうか。

 「分かりそうで分からない」

 おそらく誰もがこうしたモヤモヤを抱えながら、一連の相撲報道を見続けているように思う。なにせ、いくらパネル解説や相撲記者ら専門家の話を聞いても、次々と疑問が湧いてくるのだ。それほど角界の常識や組織のあり方を理解するのは難しい。貴乃花親方の不可解なダンマリが謎を深め、その処分を巡る議論や判断がさらに波紋を広げている。

 今回の相撲報道の特徴は、謎や疑問が一向に解消されない点にある。無数に伏線が張り巡らされて、いつまでも回収されない連続ドラマのようだ(実際、そういった海外ドラマにハマってしまうことも多い)。それ故、2カ月以上もこの話題への興味が持続しているのだろう。

 そもそも100万人単位という圧倒的多数へ情報を届けるテレビメディアは、基本的に「分かりやすいこと」が求められる。大衆メディアにおいて、ただ単に「分からない」ものは「面白くない」と見なされ、チャンネルを変えられてしまうのだ。

 だから、一見「分かりそう」な対象は、テレビと相性がいい。老若男女あらゆる世代に親しまれてきた大相撲、そして登場人物の貴乃花親方は“平成の大横綱”と呼ばれた誰もが知る存在だ。これら「分かりそう」な要素が、「いつまで経っても分からない」という角界の闇と合わさり、ここまで尾を引いているのだろう。



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